[Chapter 21] ギコ

ようやく橋を渡りきった。
モララーは、俺が攻撃しようとした時、
「ちっ…ひとまずここはおひらきだ」
と言ってどこかへ飛び去ってしまった。

荒野に着く。
『Logout』と書かれた矢印形の看板がある。
その直前で、何故かしぃが止まった。
「何止まってんだゴルァ。さあ、早く行こう」
「…ありがとう。でも、私はここから先には行けない」
「…?何を…」
しぃを連れようと、少し戻ろうとする。
「来ないで!」

しぃがそう叫んだとたん、その矢印看板を境に巨大な壁が次々と現れた。
「…なんだゴルァ」
超えるにしても相当高い壁だ。
その時、地面がタイル状になって崩れ始めた。
「早く…行きなさい…」
壁の向こうからしぃの声が聞こえる。涙ぐんだ声になっている。
ついに自分の足元も崩れ落ちる。
俺はどんどん落ちていく。
恐らくこれが正規のログアウト方法なのだろう。

しぃ…待ってろ。
必ず救い出してやる。



[Chapter 22] しぃ

「…よくもログアウト者を出してくれたな」
後ろに誰かいる。
さっき逃げたモララーだ。
「残念だがお前も消えてもらうことになるぞ」
モララーはそういって飛び上がる。
そして剣を振りかざす。

「…ギコくんのためよ!」 
私は弓矢を取り出す。
モララーに向かって射抜いた。



[Intermisson 2] ギコ

ピコーン、と何かを知らせる音が研究室に響く。

「3階E列、被験者No.2359、今覚醒しました!」
「本当か!良かった!本当に良かった!」

ログアウト方法を覚えていたのが幸いだった。
俺は無事にログアウトでき、見事覚醒することができたのだ。
階下から慌ただしい足音が聞こえる。誰か来る。
その慌ただしい音は俺の方に向かってきて、すかさずカプセルを開けられた。
「猫村儀古君か、大丈夫だったか!?」
「ええ、まあ…」
「今管理AIが反乱を起こして、被験者を次々と虐殺し始めたんだ」
「管理AI…もしかして」
「心当たりがあるか」
「それっていくつあるんですか」
「5つだ」
「5つ…?」
俺が確認したもので言えば、モララー、つー、モナー、八頭身…4つしかない。
ということは街にいる誰かが5つ目のAIということになる。
「とにかく実験は中止だ。早くカプセルから…」
「もう一度行かせてください。みんなを助け出したいんです」
「キミ、正気か?戻ったら生きて帰れないかも知れないんだ。それから二回目の進入は前例がない」
「いいから行かせてください。お願いします」
「…わかった。すぐ準備する」
カプセルを閉じる。深く深呼吸して、二回目の進入に備える。
「ゴルァ…」

必ず生きて戻ってきてやる。
みんなを守ってやる。
しぃを…助け出してみせる。

目をつむる。

そこはもうナイトメアシティだった。二回目の進入に成功したのだ。



[Intermisson 3] 研究者たち

「彼、大丈夫ですかね」
「うむ…これからどうなるのかは知らんが」
「博士!そんな投げやりな」
「街の保全は彼の手に託されたのだ。…彼を信用しようではないか」
「そうですね……」
「…」
「…そういえば5つ目のAI、まだ暴走していませんよね」
「ああ、あれか。あれは暴走させないようにしているのだ」
「…どういう事ですか」
「もしこのような事態に陥った時のために彼女を作ったのだ。反乱は起こさないだろう」
「しかし、ないとは言い切れないはずでは…」
「いや、それが言い切れるのだ。どうも彼女は何かに目覚めたようでな…」
「…?」
「頼んだぞ、儀古君…C… わしらはモニターで見守ることしか出来ないが頑張るのだ」

システムを作動させる。計算が正しければ、彼はもう街に行くことが出来たはずだ。


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最終更新:2012年08月02日 10:05