店を出た二人は、町灯りの中を歩いていた。
ケインが話を持ちかけては、ジェイドは前を向いたまま受け流す。
「お前さ、あの魔導師の事好きなんだろ?」
「……それがどうした」
「どうしたって言われてもなあ……最近何かおかしいんじゃねえか?」
「この頃会わないから知らん」
「魔導師の事じゃねえ、お前の事だぞ?随分暗い顔してるんじゃね?」
ケインは親友の異変に気付いていた。
数日前から、徐々にジェイドの顔から生気が消えていたのだ。
しかし、当の本人は別の事で頭を抱えているらしく、自分の異変には気付かない。
「気のせいだろ」
そのうちに、二人は町内最後の外灯の下に到った。
「じゃあ俺はこれで。……何かあれば言えよ?」
「ああ」
ケインは来た道を引き返し、ジェイドは親友の姿をぼんやり見つめていた。
しかし、彼の頭の中に親友の姿は無い。
彼が見ていたのは、屋敷の部屋の中、黒髪の男と親しげに並ぶ魔導師の姿だった。
「……」
やがてジェイドは自身も住む屋敷へと向かうが、その目には屋敷の微かな光さえ映らなかった。
最終更新:2012年10月21日 21:49