「ユリーラ」
扉の此方側に、ジェイドが立っている。
「何さ、こんな夜中に……」
そう言いかけて、何かを察知して顔を上げた魔導師だったが、
それは一瞬の出来事だった。
__ガンッ!!
「!!」
突然、壁に押し付けられた魔導師。
彼女の首は、近衛兵の手で絞められていた。
「な……に…を……!!」
相手は魔物と戦うため訓練された兵士、逃れられる可能性は希薄である。
ユリーラは平静になろうとした。一人の「魔導師」として然るべき行動を取り、
目の前に立ちふさがっている者を「敵」と認識しようと……
しかし、彼女は「魔導師」になれなかった。
目の前の男の、光の失せた目。
その内に目の前は朧になり……そして視界が閉じていった。
最終更新:2012年09月19日 19:23