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救いを求めるその相手

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救いを求めるその相手 ◆0O6axtEvXI



一人の女性が森の中で立ちつくしていた。
黒いスーツと金色の長い髪が木々の隙間から入る月明かりに照らされ、女性に何とも言えない魅力を与えていた。
だが、肝心の女性自身の表情は暗い。
それどころか、その美しい顔を歪め、今にも泣き出してしまいそうにさえ見えた。
悲しみの感情、それを全身から感じさせながら口を開き、

「ごめん……な、さい……」

小さく、消え入りそうな声で謝罪の言葉を口にした……


彼女、フェイト・T・ハラオウンが殺し合いを強要される状況に陥ったのは、これが二度目である。
事の始まりは巨大隕石の衝突により死の星と化した地球、その隕石から現れたワームと呼ばれる怪物とフェイトは戦い続けていた。
昔からの戦友であるシグナムの他、対ワーム用の切り札「マスクドライダーシステム」の使い手と共に親友の故郷、海鳴市へと向かう途中のこと。
突然意識が遠のき、次の瞬間にはバインドで拘束されていた。
そして、一度目の殺し合いの舞台へと連れてこられたのだ……フェイトの母、プレシア・テスタロッサによって。

その殺し合いの中、フェイトは一人の少女と出会った。
柊つかさ――先ほど道化師のような異形の生物に殺された、彼女と瓜二つの少女と。

「ごめんなさい……ごめん、つかさ……」

フェイトはずっとつかさへの謝罪を繰り返していた。
赤いジャケットを着た青年に追われているつかさと出会い、ただの女子高生にはとても耐えきれない現実に混乱する彼女を諭し、元気付け、ようやく正気を取り戻してもらえた。
それからほとんど時を待たずして、フェイトは即席のバリケードの中につかさを待たせ、外部の偵察へと向かうことになる。
つかさが隠れているデパートから外に出た瞬間の事だった、二回目の殺し合いへと連れてこられたのは。

突然変わった景色に戸惑い、前回の事を思い出し、持っていたデバイスがなくなっていることに困惑する。
気づけば……目の前で、つかさが異形の生物によって殺されていた。

「――つかさ……っ!」

どうしようもなかったのかもしれない。
例えどう足掻こうが、こうなる運命だったとも考えられる。
だが、それでも悔んでしまう。
つかさを一人残さなければ。
デバイスのことよりも先につかさの事を気にかけていれば。
もしかしたら……助けられたかもしれない。

真実を言えば、あの場で殺されたのはつかさではないし、フェイトの選択もつかさを守るという一点に関してみれば間違いではなかった。
だが、フェイトはその事に気づけない。
デイパックを確認することすら忘れ、ただ自らの心を自身の感情で食らいつくしていく。

「……………さい」
「……え?」

かすかに聞こえた声に顔を上げる。

「……した………ごめん……なさい」

どこからか、小さく、何かに怯えるように謝り続ける声が聞こえる。
光源はわずかに漏れる月明かりだけで回りがよく見えない。
フェイトは声を頼りにその人の方へと近寄っていき、少しずつ見えるようになってきた姿に目を見開く。

「なのは……!?」

蹲りながらデイパックを探り続けているその人影、
薄暗いためよく見えないが、栗色のツインテール、それは彼女の親友、高町なのはのものとそっくりであった。
しかし先ほどから続いている謝罪の言葉、その声はなのはの物とは思えない、まるで男性のような声だ。
わずかに戸惑いながら、もしや喉が潰れるほどこの謝罪を繰り返しているのか、と慌てて声をかける。

「なのは! いったいどうしたの!?」
「……? 失くして、しまった……あの人の……ごめんなさい……」
「失くしたって、何を? 私も一緒に探すよ、ね、なのは」
「失くして……ごめんなさい……ずっとはめ込んでいたのに……なくしたら……」

フェイトの言葉に気づいたのか、ゆらり、と立ち上がりながらも呆然と謝罪を繰り返す。
その姿に言いえぬ嫌な予感を感じながら、フェイトはその様子を窺う。

「失くしてしまった……あの人の……」
「あの人の……何?」

一歩、フェイトの方へと『なのは』は近づく。
丁度その位置に月明かりが入り込み、その姿を、顔を照らし出す。

そう――


「 あ の 人 の 眼 を !」


両の瞳を潰された、その顔を。

「――――っ!?」

想像を超えた情景にフェイトは声を失い、数歩後ろへと下がってしまう。
月明かりによってはっきりと浮かび上がった姿は、高町なのはとはまるで別物だった。
その体は全身が黒いが……ウルトラマンレオの物。
その声は男の……赤木しげるの物。
唯一その頭部だけは、両の眼を失っていることと、やはり肌が黒いことを除けば高町なのはの物であった。
だが、当然ながらこの人物は高町なのはではない。
この男の名は熱血王子、漫画ロワの書き手である。

「い、いったい、何があったの……? どうして、なのはの顔を……」

幾分か声が上ずっているのを感じながら、フェイトはそれでも呼びかけるのを止めない。
なのはでなかったからどうだというのだ、目の前で苦しんでいる人を見捨てるわけにはいかない。
もう、つかさのような犠牲者は出したくないのだ。

「どうしよう、どうしよう、失くしてしまったら、許されない……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!」
「お、落ち着いて……あ、あの人の眼って……?」

だがフェイトの言葉は熱血王子には届かない。
そう、今の彼には何人の言葉も届きはしないのだ。


『分かってるよね? これでようやくサラマンダー卒業だけど、
 私が手伝ってようやく殺せたんだから、まだ半人前……仮免マーダーってところだよ。こんなんじゃ誰も許してくれないよ?』

――ごめんなさい

『熱血王子さんがのろまだったせいでまた少数派が減っちゃうの……だからいっぱい殺して、もっといっぱい殺しきってね?』

――ごめんなさい

『あー、でも、目が無いってのもスカスカして不安だよね』

――あの人の眼……嫌だ、嫌だ、ごめんなさい、ごめんなさい

『それも落としたら、本 当 に 許 さ な い か ら ね ? 』

「あ、ああああ、あああああああ!!!!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!」

突然の叫びにフェイトは身をすくませる。
今までとは様子が違う、何があったのかまったくわからないが、どう見ても放っておいていい状態ではないだろう。
多少手荒になろうともまずは抑えなくては、そう思い手を伸ばすが――逆にその手を切りつけられる。

「あうっ!?」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

咄嗟に右手を抑えながら距離を取る。
熱血王子はアーミーナイフを片手に、謝罪の言葉を繰り返しながら更に斬りかかった。

「くっ……!」

その斬撃を更に後ろへ飛んで回避。
両目が失われているというのに、自分の位置を正確に掴んでいるかのような動きにフェイトは焦る。
音か、魔力か、どちらにしろ後手に回ったこの状況はまずい。
何せ相手は全身が文字通り黒ずくめなのだ、光源の少ないこの場所では気を抜いたらその姿はすぐに闇へと紛れてしまう。
今更ながら荷物を確認しておくべきだったと後悔しながら、なんとかこの場を切り抜ける方法を考える。

「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」
「お願い、話を聞いて! 私はあなたの敵じゃない!」

それでも呼びかけを続けるが、まったく意に介さず一歩、また一歩とフェイトへと近づいていく。
その反応に、フェイトは悔しそうに顔を歪めながら素早く詠唱を開始する。
デバイスが無い以上、自分の長所であるスピードは生かしきれないが――

「プラズマランサー、ファイアッ!!」

雷撃を纏った金色の魔力球を一度に二つ生み出し、熱血王子へと解き放つ。
狙いは甘い、熱血王子は数歩立ち位置をずらしただけでその魔力球を回避する。
改めてフェイトの方を向こうとし……全身に衝撃が走り、倒れ伏す。

「……っ!?」
「よし……!」

自らの体に隠すように作りだしていた、もう一つの魔力球を当てられたことに顔を綻ばせる。
ほんの少しの間、悔しげに熱血王子の事を見ながらフェイトはそのまま背を向け走り出した。


デバイス抜き、非殺傷設定の魔力球だ。大したダメージは与えられない。
まだ相手は何か手札を隠しているようだった、今の自分では相手を傷つけずに制することは難しいだろう。

だから退いた。
そう、自分はまた、一人の人間を置き去りにしたのだ。
斬りつけられたからといって、彼が危険人物とは限らない。
むしろあの様子を見る限り、何者かに想像を絶するような目にあわされ、恐怖から混乱していると考えられる。
そんな人間を、いわば被害者を自分は見捨てたのだ。

「ごめんなさい……!」

フェイトはただ走る。
その心に深い影を落としながら……ただ、走る。

 【A-3/森/1日目-深夜】
 【フェイト・T・ハラオウン@なのはロワ】
 [状態]:右手に浅い切り傷
 [装備]:無し
 [持物]:デイパック、基本支給品一式、ランダム支給品1~3
 [方針/行動]
 基本方針:一般人の保護
 1:なのはに似た相手(熱血王子)の事情を聞き、救いたい。

 ※荷物をまだ確認していません
 ※愛媛のことをつかさだと思っています
 ※なのはロワ58話「やわらかな温もりに瞳閉じ」から参加

逃げられた。

殺せなかった。

まただ、

また殺すことができなかった。

結局自分はサラマンダーなのか、誰かの手助けがなければ誰も殺せないのか。

殺されてくれないのなら、頼む。

俺を、

この俺を殺してくれ。

俺を苦しみから解き放ってくれ!

――『何言ってるのかなあ、熱血王子さんは。
   そんなんじゃ私もみんなも許してくれるはずないじゃない。
   それでもいいの?』

「あ、ああ……!」

――『許されたかったら、もっといっぱい殺さないと、ね?』

「あああああああ!」

嫌だ、嫌だ、嫌だ!

誰にも許されないのは嫌だ!!

「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……!」


熱血王子は切望する。
許しを願う、救いを求む。

だが、彼は知らない。
彼が許しを求める者、書き手2ndジョーカー、愛媛はすでにこの世に存在しないことを。
彼女が残した黒の心に追われ、彼はただ許しを乞う。

 【A-3/森/1日目-深夜】
 【熱血王子@書き手2nd】
 [状態]:黒化、両目損失、変身中
 [装備]:朝倉涼子のアーミーナイフ@書き手2nd
 [持物]:デイパック、基本支給品一式、ランダム支給品0~2
 [方針/行動]
 基本方針:愛媛に許されるために殺す
 1:黒く染まってない奴を優先して殺す
 2:白に寝返りそうな奴も殺す。
 3:お姉さまの眼はどこに……?

 ※書き手ロワ2nd、247話「熱血対熱血~正義の系譜~」熱血怪人との戦いの直前から参加


026:鳥獣闘劇戯画 投下順に読む 028:その少女、ゼロのリスタート
026:鳥獣闘劇戯画 時系列順に読む 028:その少女、ゼロのリスタート
フェイト・T・ハラオウン(StS) 067:彼女のフラグ取捨選択
熱血王子 066:ピンク色の誓い・らきロワ編


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