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その少女、ゼロのリスタート

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その少女、ゼロのリスタート  ◆BOMB.pP2l.



まんまるの、大きな大きな鯨でも入れられそうな大きな空っぽの水槽。
静かな水面の真ん中に浮かぶ白い月を、赤い髪の少女はなんとなしにただぼぅっと見下ろしていた。


結城奈緒の現状に対する感想は、一言で表せば――馬鹿馬鹿しいだった。
それはそうであろう。
どこの誰とも知らぬ相手より殺し合いを強制されて、多少は自分なりに頑張ったと彼女は自負している。
それなのにも関わらず、ゲームの盤は引っくり返されまたいちからやり直し。
最初はHiME同士による蝕の祭。次は螺旋王による実験。そして此度は、怪しい怪人らによる殺し合い……。

「……ふざけんな」

昼間ならイルカが芸を見せているであろうそこには今は何もいない。広い観客席にいるのも奈緒一人だ。
とても寂しい空間だ。そして、彼女も寂しかった。

「金ぴかは……どう思う?」

問う。しかし答えは返ってこない。
彼女の手のひらには一つの金塊が乗っていた。
なぜかポケットではなく鞄の中に入っていた、とある傲慢な王の前の世界での成れの果てである。
一緒に歩いていた。後をついて行っていた。引きずられていたとも、追いつくのに精一杯だったともいう。
ただ、いつかは隣に立って歩きたいと彼女はそう思っていた。
そんな王様がいたという証拠で、そしてもう彼はいなくなってしまったという証拠だった。

「あんたはいないのに……、どうしてあいつらは……っ!」

鞄の中に入っていた名簿の中に「ギルガメッシュ」という名前はなかった。
死者すらも呼び出される対象ならば、いてもよかっただろうと何度読み直してもしかし、やっぱりそこにはなかった。
なのに、奈緒にとって最悪と言える名前が2つとも揃って名簿の中に存在していた。

 「衝撃のアルベルト」 「柊かがみ

彼らのことを考えると、特に柊かがみのことを考えると奈緒の身体に止められない震えが走る。
彼女は左腕に巻かれた黒いリボンを見る。それは柊かがみが己に施した魔女の呪い。その証であった。
リボンを解こうとしたり約束を破ると、呪いが発動して奈緒の身体へとかがみに与えた無数の傷が返されるという。
倍返しの呪詛――柊かがみのような不死身の身体を持っていない奈緒からすればそれは死に等しい。

「くそっ! くそっ! どうしてっ! どうして、こんなのばっかなんだ……っ!」

瞬間。奈緒の手にエレメントの力による手甲が現れ、真紅の爪先から幾本ものワイヤーが飛び出した。
それはプラスチックの椅子を割り、コンクリートの床に深い傷跡を刻み、鉄でできた支柱を切り刻み、荒れ狂う。
彼女の強い心を、彼女の激しい感情を伝える糸として、破壊の限りを尽くす。

いつも、大事なものがそうだとわかった時に、誰かがそれを持っていってしまう。だから、いつもひとりぼっち。

一本の線が見下ろしていた水面に映る月を割り、そのまま水槽の端まで達して分厚いアクリル板を切り裂いた。
僅かな時間の後、水槽は決壊しそこから1000トンを超える水が激しく溢れ出し始め、観客席を水中へと沈んでゆく。
我を忘れていた奈緒もここにきて冷静さを取り戻し、鞄を片手に取ると観客席を登ってその場を離れた。


 ★ ★ ★


「……あたしってついてないんだろうな。今更だけどさ」

動き出すに当たって使える物は入ってないかと鞄を検めた彼女の感想がそれであった。
前回に引き続きハズレとしか呼べない物ばっかりだったということだ。
金ぴかの鎧の破片に関しては役立たないとしても嬉しいところはあったが、他はハズレと断言できた。
いくら高性能であったとしても一度かぶると二度と脱げないヘルメットとか、どう考えても無用の長物である。

結局、戦うにはこの身とHiMEとしての能力であるエレメントしかないと改めて認識すると奈緒は動き始めた。


 ★ ★ ★


――それにしても……柊かがみ、か。これはまた相当な難敵が居たものだ。


水族館の中をなんとなしに歩いていた奈緒は聞こえてきた声に足を止め、そっと近づくと聞き耳を立てる。
聞こえてくるのは女と男の声で、どうやら二人は”柊かがみ”の正体について語っているらしい。


――変身して戦う能力があり。
――狡猾で善良な人間を利用する才に長けている。
――実力と知性を兼ね備え、卑怯な手を使うことも辞さない実力者。
――死んでは蘇って何度も殺し合いに参加しているのかもしれない。


廊下の隅でしゃがみこみ、また奈緒はガタガタとその身体を震わせていた。
柊かがみは間違いなく魔女だったのだ。
そして、螺旋王の実験場でもそうであったように他の場所でも同じ様に皆に災厄を齎していると言う。

変身できて、狡猾な知性と高い実力を兼ね備え、呪いを操り、不死身であって仮に殺しても蘇って来る……。

奈緒にとってはただただ恐ろしい話であった。
そして今回の殺し合い。おそらくは”柊かがみに目をつけられた者が集められている”と彼女は想像した。
先程の声の主も、彼らに忠告した電話の主も柊かがみを知っており、同時に少しずつそれは食い違っている。
つまりは、柊かがみが暗躍した幾つもの殺し合いの場から、彼女自身がお気に入りを集めて――


「――死ぬまで玩ばれる? いや、死んでも……何回死んでも、あいつの……あいつの、玩具」


奈緒の頬を、ボロボロと恐怖の涙が止め処なく零れ落ちていた。


 ★ ★ ★


「さっきの人達どこにいったんだろう……?」

水族館を出て奈緒は夜の市外を走る。
彼女は先程の声の主である男女を探していたが、震えと涙が止まり冷静さを取り戻すまでに時間が掛かった為見失っていた。
本来彼女は仲間を作ったり仲良しこよしとすることは好きじゃない。大嫌いと言ってもいい。
だがしかし、今は違う。柊かがみが敵である今だけは、主義を曲げてでも仲間を作るべきだと思った。

「……うぅ」

というよりも、もはや一人ではいられなかった。それぐらいに柊かがみが怖い。
前の世界では呪いに対しても嘘だと強がるぐらいはできたが、立て続けの異常事態と別世界の柊かがみの情報により
彼女のトラウマは主義や矜持を維持してはいられないほどに膨れ上がっていたのだ。

「探さないと……、あの魔女を倒してくれる……金ぴかみたいな強いやつ……っ!」

赤い髪の少女は走る。
救いを求めて。柊かがみのいない安息の世界を齎す何者かを求めて。



”柊かがみを滅ぼせばこの無限の殺し合いは終わる”とそう信じて――……





 【C-6/市街/1日目-深夜】
 【結城奈緒@アニメキャラ・バトルロワイアル2nd】
 [状態]:健康、柊かがみ恐怖症
 [装備]:エレメント(能力)、黒いリボン@アニ2
 [持物]:デイパック、基本支給品一式、黄金の鎧の欠片@アニ2、ゼロの仮面(蝶高性能)@書き手2
 [方針/行動]
  基本方針:柊かがみを滅ぼしてこの殺し合いを終わらせ、元の世界に帰る。
  1:柊かがみを倒してくれる人を探して協力を仰ぐ。

 [備考]
  ※登場時期は、212話「その少女、ゼロのリスタート」の直後です。
  ※柊かがみが全ての元凶であり、魔女である彼女を滅すれば殺し合いはなくなると思い込んでいます。
  ※左腕の黒いリボンを解くと、倍返しの呪いによって死ぬと思い込んでいます。
  ※衝撃のアルベルトは柊かがみの手下だと思い込んでいます。


 【黒いリボン@アニ2】
 アニ2内において、不死身の柊かがみにより奈緒の左手に巻かれた彼女の髪留めリボン。
 これを勝手に解くと、与えた傷が倍になって帰ってくる呪いをかけたと脅されているため、奈緒はこれが解けない。

 【黄金の鎧の欠片@アニ2】
 アニ2内において、衝撃のアルベルトより破壊された黄金の鎧の破片。
 路上に落ちていたこれを拾って奈緒はギルガメッシュが死んでると確信した……が、実は彼は死んでなかったりする。

 【ゼロの仮面(蝶高性能)@書き手2)】
 ぱっと見はルルーシュが被るゼロの仮面と同じだが、その耐久性は核爆発にびくともしないほど高い。
 ヘルメットがなければ即死だったというシーンで確実に即死を防いでくれるが、一度装備すると死ぬまで外せない。


027:救いを求めるその相手 投下順に読む 029:空を見上げる少女達の瞳に映る世界
027:救いを求めるその相手 時系列順に読む 030:夜天の天使、飛び立つ
結城奈緒 069:ネクストらき☆ロワヒント「窓からの視線」


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