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君は僕に似ている(後編)

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君は僕に似ている(後編) ◆h6KpN01cDg




―――何さ、あれ。
魅音は走っていた。
その震える口から零れたのは、恐怖を帯びた呟き。

あの男は殺し合いに乗っていた。
それは魅音にもすぐに分かった。
しかし、魅音は男に恐怖しているのではない。
彼女が、今背筋を凍らせているのは―――

―――かがみ……明らかに様子がおかしかったよね?

つかさは、暗黒面さえ覗かせなければ、ごく普通の学生だ。そのことは魅音も知っている。
であるならば、その姉も当然同じであるはずだ。
しかし先ほどのかがみの対応は、魅音をびびらせるに十分だった。

―――だって、あんなのありえないよ。
一般人があんなに早く反応できるなんて思えない……。それに、明らかに初め会ったときと口調が違った……。

出会った時のかがみの口調は、女性的で丁寧なものだった。
しかし、あの男に会った瞬間、かがみの目つきは一転し、口調も男らしく荒荒しいものに変わっていた。
それは魅音に、『あの』つかさの背筋が凍るような変化を思い起こさせるにはあまりに足りすぎた。

更に、もう一つある。
かがみは、その危険人物たる男に向かって何と言った?
それは一言―――『待て、』と。
普通、初対面の、しかも明らかに殺し合いに積極的に見える人間に、咄嗟に待てなどという言葉が出てくるだろうか?
園崎組のような社会の暗部に足を突っ込んだ人間ならともかく、かがみが平凡な女子高生であるならば尚更だ。
そこから思い浮かぶ、一つの仮説。
かがみは、あの男を『知っていたのではないか』。

かがみから、殺意は感じられなかった。
むしろ彼女は、自分達を逃がそうとしてくれた。いい人なんだ。
つかさだってそうだ。かがみさえ生きていれば―――もっとも、他に友人がいることが分かった以上確証は持てないが―――、つかさは優しいつかさのままなのだ。
だからあれはきっとマーダーを相手にして血が上っただけだ。きっとそうだ。
元来はお人好しである魅音は、そう言い聞かせようとする。
しかし、魅音の頭の中には三村から聞いた言葉がぐるぐると回り始めていた。

――――柊かがみは、人の信頼を弄ぶ悪魔だ。前回の殺し合いで俺の仲間は、奴に殺されてしまった…… 奴はおそらく、いや間違いなく、今回の殺し合いにも乗り気なはずだ!
―――奴は恐ろしいまでに、演技力と対人スキルに優れている。俺は、奴に完全に騙され、あの女の傀儡と化している三人組にも会ったんだ!知らず知らずのうちに俺達の輪の中に入り込み、決定的な隙を突いて集団を皆殺しにする。これが奴の常套手段だ!

三村は、そう言っていた。
鵜呑みにするつもりはなかった。仮に本当だとしても、つかさほどではないし、合流して自分が助けてやればいい。そう思っていた。
しかし、思ってしまった。
一瞬だけ―――魅音はわずかに思ってしまったのだ。

(もし―――もし、あれが演技だとしたら?)
三村の言うとおり、かがみが本当に、狡猾な魔女だとしたら?
つかさの話ではかがみは善良な人間なはずだ。しかし。
―――もし、実の妹のつかさすら欺いているとしたら?
―――もし、本当はあの男と知り合いで……三村の言う『傀儡』だったとしたら?

「いや、そんなことは……さすがに……」
否定しきれていないことは、魅音の頬を伝う汗が証明していた。

―――でも、さっきつかさの友達の名前が呼ばれたみたいだった。
―――それに、ここはあと数時間で禁止エリアになる場所、だよね。
―――普通に考えて、いくら剣があるとはいえ女の子があんな危険な男(しかも変態っぽい)に勝てるわけないじゃん。
―――もし、かがみが私たちのところに怪我ひとつせず戻ってきたら……?
―――もしかして、もしかして、かがみは―――

「……はははっ、何言ってんだよ私は!二人を守るんだろっ!」
わざとらしく冗談めかして笑ったつもりでも、その表情は引きつったままだった。

魅音は、双子の絆をよく知っている。
自らにも同じ顔をした双子の妹―――正確には複雑な事情があるので『妹』というには間違っているかもしれない―――がいるからだ。
自分をからかったり、調子のいいことを言ったりする。傷つけられたこともある。
それでも妹・詩音は魅音にとって大切な家族。
例え、ここに来る前の場で彼女が亡くなっていたとしても。
だから、本当は知っている。
かがみがつかさのことを騙しているなど、ありえないと。
普通の双子の姉妹ならば、そんなことできるはずがない、と。
きっと―――

だから、魅音は走る。
『かがみ』に言われた場所をひたすら、目指して。
―――かがみ、お願い、無事でいて―――!
そこで何が起こっているのか、知りもしないままに。


お姉ちゃん。
私はお姉ちゃんを必死で呼んだ。

お姉ちゃんは、私の前を、ひたすら歩き続けています。
私はお姉ちゃんを追いかけながら、必死でお姉ちゃんと叫んだ。
でも、お姉ちゃんは私の呼びかけに応えてくれない。
お姉ちゃんは、私のために立ち止まってくれない。

「おねえちゃん、」
お姉ちゃん、何で私のこと無視するの?
お姉ちゃん、そこにいるのに、何で?

「おねえ―――」
私が泣きそうになったその時、お姉ちゃんと私の前に白い画面が突然出てきた。
出てきた、としか言いようがない。
そんなもの、今までそこになかったんだから。
「……え……?」

ぽかんとする私の前で、勝手にスクリーンは動き出す。
「始まるザマスよ」
そしてぱっと画面に色が付き、そこに映っていたのはこなちゃんだった。
ううん、こなちゃんだけじゃない。お姉ちゃんとゆきちゃんと、そして―――私もいる。
「……なんで?」
どうしてテレビ(?)の中にこなちゃんや私がいるんだろう。
私は首をかしげた。
「い、いくでガンス」
「フンガー」
「まともに始めなさいよ」
こなちゃんが喋り、私も、お姉ちゃんも、ゆきちゃんも喋る。
何が起こっているのかよく分からない。
始まるって、何が?

そしてすぐに私たちの写った画面は消える。
……何、だったの?
私は一瞬そう考えたけど、すぐに考えは止められた。
だって。

「……え?」
再び電源の入った画面には。

私が映っていたんだから。

「なに、これ……」

信じられないことに。
それは、私だった。

画面は、4つ。
「……あ、……あ……」
それは、すごく、怖くて。
でも私は―――それから目を離すことができなかった。

右上の画面では、私は制服を着た女の子に首を刈り取られ、お姉ちゃんに抱きかかえられていた。
左上の画面では、私は女の子に刺され、知らない男の子に愛の言葉を囁き死んでいた。
右下の画面では、私は笑顔で銃を構え、アザラシや男の人を撃ち抜いていた。
そして左下の画面では、私は『お姉ちゃん』に背負われ、眠っていた。……これは、さっきまでの私だ。

「……うっ……げほっ……」
吐き気がした。
自分が殺されている場面、自分が人を殺している場面の両方がそこにあることだけは分かった。
まるで、自分を主役にした趣味の悪い映画でも見てるみたいで。
気持ち悪くなり、胃の中のものを吐き出す。
それなのに私は、戻しながらもその画面から視線を外せない。

―――なに、これ?
言葉にならない。
この怖い光景のなかにいるのは、本当に、『私』―――
そこまで考えて、私の意識は途切れた。

それを、本当に私は見たんだろうか?
そんなことすら、よく分からないまま。

―――つかさ。

最後に聞こえた声は、自分の良く知る『姉』のものだった。


 【E-4/道路/1日目-朝】

 【園崎魅音@ニコロワ】
 [状態]:右腕打撲
 [装備]:
 [持物]:デイパック、支給品一式、包帯@現実、不明支給品x1
 [方針/目的]
  基本方針:つかさが豹変しないよう柊姉妹を保護する。
  0:かがみは……本当に……?
  1:かがみと合流し、シンヤとも行動を共にする。
  2:柊姉妹からは目を離さないようにし、危険からも遠ざける。
  3:放送局に向かった三村を追い、彼を止める(?)
  4:放送局に向かい、そこから情報(村雨が危険など)を流す。

 [備考]
  ※死亡直前からの参戦です。
  ※6/氏(外見かがみ)が本物のかがみだと勘違いしています。


 【柊つかさ@原作】
 [状態]:健康、現実逃避気味
 [装備]:
 [持物]:不明支給品x3
 [方針/目的]
  基本方針:怖いことを避ける。姉や友人と再会する。
  0:(気絶中)

※夢の中で自らのロワでの様子を見ました。
起きた時に内容を覚えているか、またスタンスがどうなるかは不明です。


081:君は僕に似ている 投下順 082:……も死んだし、そろそろ本気出す
時系列順 082:……も死んだし、そろそろ本気出す
6/氏(外見かがみ) 088:HAL・スクリーミング・ショウ
園崎魅音
柊つかさ
6/氏(神) 091:後夜祭



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