君は僕に似ている ◆h6KpN01cDg
屋内プール。
どの街にでもありそうな、ごくごくありふれたデザインのその施設。
入口から足を踏み入れると中には男女両方の更衣室があり、その先には50メートルのプールが6レーン、そして子供用と思われる底の浅い丸型のプールが脇に備え付けられている。
ここは園崎魅音がテッカマンエビル・こと相羽シンヤと待ち合わせをした場所でもあった。
どの街にでもありそうな、ごくごくありふれたデザインのその施設。
入口から足を踏み入れると中には男女両方の更衣室があり、その先には50メートルのプールが6レーン、そして子供用と思われる底の浅い丸型のプールが脇に備え付けられている。
ここは園崎魅音がテッカマンエビル・こと相羽シンヤと待ち合わせをした場所でもあった。
そして今その空間には、三人の人間が存在していた。
プールサイドにいるにも関わらず、水着姿の者はいない。ここがバトルロワイアルの会場である以上仕方ないのだが。
一人は、某赤い悪魔と同じ服を着た、ツインテールの『少女』。
一人は、活動的な印象を人に与えるポニーテールの少女。
一人は、頭に白いリボンをつけた、セーラー服の少女。
それだけ書けば、年頃の少女たちがプールサイドで戯れるという垂涎ものの光景にも思えるが、実際そうでないのは一目見れば分かる。
何故なら。
ポニーテールの少女の顔はひどく暗く。
リボンの少女は座り込んで泣き崩れており。
ツインテールの少女は、ただ二人をフォローしていたのだから。
プールサイドにいるにも関わらず、水着姿の者はいない。ここがバトルロワイアルの会場である以上仕方ないのだが。
一人は、某赤い悪魔と同じ服を着た、ツインテールの『少女』。
一人は、活動的な印象を人に与えるポニーテールの少女。
一人は、頭に白いリボンをつけた、セーラー服の少女。
それだけ書けば、年頃の少女たちがプールサイドで戯れるという垂涎ものの光景にも思えるが、実際そうでないのは一目見れば分かる。
何故なら。
ポニーテールの少女の顔はひどく暗く。
リボンの少女は座り込んで泣き崩れており。
ツインテールの少女は、ただ二人をフォローしていたのだから。
※
はじまりは、突然何もない空間に開いたスクリーン。
園崎魅音、6/、柊つかさがそれを聞いたのは、魅音の言葉に従って屋内プールに向かい、どうせなら水遊びしようよ、とどこか無理をした様子のつかさに提案され、プールサイドに入った時だった。
まず知らない男の声で訳の分からないセリフがつづられた後、つかさにとってどこかで聞き覚えのあるらしい少女の声が聞こえてきて、そしていったん沈黙が落ちる。
そこから始まったのは、死者を告げる定期放送だった。
告げられる禁止エリア。つかさは突然何もない場所から画面が現れるという現象におどおどしていたが、6/はさすがに慣れたもの、禁止エリアを素早く書きとる。
魅音の方も慌ててメモを取り出し、同じようにする。
そして、それに続いて、死者の発表をすると告げられる。
魅音はごくりと息を呑む。思わず柊つかさと『柊かがみ』に目線を向ける。
園崎魅音、6/、柊つかさがそれを聞いたのは、魅音の言葉に従って屋内プールに向かい、どうせなら水遊びしようよ、とどこか無理をした様子のつかさに提案され、プールサイドに入った時だった。
まず知らない男の声で訳の分からないセリフがつづられた後、つかさにとってどこかで聞き覚えのあるらしい少女の声が聞こえてきて、そしていったん沈黙が落ちる。
そこから始まったのは、死者を告げる定期放送だった。
告げられる禁止エリア。つかさは突然何もない場所から画面が現れるという現象におどおどしていたが、6/はさすがに慣れたもの、禁止エリアを素早く書きとる。
魅音の方も慌ててメモを取り出し、同じようにする。
そして、それに続いて、死者の発表をすると告げられる。
魅音はごくりと息を呑む。思わず柊つかさと『柊かがみ』に目線を向ける。
―――大丈夫だ、かがみは生きてるんだから。
魅音は思う。
ここに柊かがみは生きている。柊つかさは狂う心配はない。
そして、自らの仲間である圭一も、きっと。
魅音は思う。
ここに柊かがみは生きている。柊つかさは狂う心配はない。
そして、自らの仲間である圭一も、きっと。
しかし―――現実は非情であった。
『高良みゆき』
『前原圭一』
その名前は、はっきりと呼ばれたのだ。
「……え……?」
柊つかさの顔が、目に見えて凍りつく。
「……そんな、圭ちゃんが……?」
魅音もそれ以上の言葉を発することができず、動けない。
しかし、内心魅音はどこか、冷静でもあった。
―――つかさ、もしかしてさっき呼ばれた人って……
『あの』つかさを思い出し、不安になれるくらいには。
『前原圭一』
その名前は、はっきりと呼ばれたのだ。
「……え……?」
柊つかさの顔が、目に見えて凍りつく。
「……そんな、圭ちゃんが……?」
魅音もそれ以上の言葉を発することができず、動けない。
しかし、内心魅音はどこか、冷静でもあった。
―――つかさ、もしかしてさっき呼ばれた人って……
『あの』つかさを思い出し、不安になれるくらいには。
前原圭一が死んだ。
それは、魅音にとって衝撃的なことではある。
彼は同じ部活の仲間であり、想いを寄せている相手でもあるのだから当然だ。
悲しいし、辛い。
しかし、魅音は思っている。自分の先ほどたてた仮説は間違っていない、と。
―――うん、つまりはさ……別々の世界から同じ人間が連れてこられたってことなんだと思うんだよねー。
ついさっきまでの殺し合いの中じゃあ、別世界でも同一人物はいなかった。けど、ここではそうじゃない!
それは、魅音にとって衝撃的なことではある。
彼は同じ部活の仲間であり、想いを寄せている相手でもあるのだから当然だ。
悲しいし、辛い。
しかし、魅音は思っている。自分の先ほどたてた仮説は間違っていない、と。
―――うん、つまりはさ……別々の世界から同じ人間が連れてこられたってことなんだと思うんだよねー。
ついさっきまでの殺し合いの中じゃあ、別世界でも同一人物はいなかった。けど、ここではそうじゃない!
先ほど、同行者であった相羽シンヤに語ったその仮説。
前原圭一は、この場に二人いた。
ということは、そのうちのどちらか―――いや、もしかしたら両方かもしれない―――は、自分の知らない圭一であるかもしれない。
魅音やレナといった部活の仲間を知らない圭一という可能性もある。
前原圭一は、この場に二人いた。
ということは、そのうちのどちらか―――いや、もしかしたら両方かもしれない―――は、自分の知らない圭一であるかもしれない。
魅音やレナといった部活の仲間を知らない圭一という可能性もある。
もちろん、仮に自分の知らない圭一だったとしても、前原圭一という名前の知り合いが死んだことは辛いし、そいつに会ったら圭一になんとしても詫びさせてやりたいとは思う。
しかしもう一人の圭一が生きているのだ。もともとここに来る前からバトルロワイアルに参加させられていた魅音には耐性もあったということもある。それに、圭一の死はすでに一度乗り越えていることだ。二度目となれば、悲しみはやはり、少しは軽減する。
ともかく彼女は、落ち込みこそすれど我を失うことはなかった。
だからこそ考える―――目の前の少女のことを。
「……ゆき……ちゃん……?え?……ど、どういうこと……ねえ、お姉ちゃん……」
つかさは、『かがみ』の腕にしがみついている。
その顔は真っ青で、今にも崩れ落ちそうだった。
「……つ、つかさ、落ち着いて、ね……?」
姉のかがみが―――やや不自然なくらい冷静に―――慰めるも、つかさはその手を放そうとしない。
悲しんでいる、というより今の状況を理解できない、したくない様子、と言った方が正しいだろう。
「う、嘘、だよね……ゆきちゃんの名前が呼ばれたなんて……嘘だよねお姉ちゃん……?なんで、なんで……」
その声には力がない。
しかしもう一人の圭一が生きているのだ。もともとここに来る前からバトルロワイアルに参加させられていた魅音には耐性もあったということもある。それに、圭一の死はすでに一度乗り越えていることだ。二度目となれば、悲しみはやはり、少しは軽減する。
ともかく彼女は、落ち込みこそすれど我を失うことはなかった。
だからこそ考える―――目の前の少女のことを。
「……ゆき……ちゃん……?え?……ど、どういうこと……ねえ、お姉ちゃん……」
つかさは、『かがみ』の腕にしがみついている。
その顔は真っ青で、今にも崩れ落ちそうだった。
「……つ、つかさ、落ち着いて、ね……?」
姉のかがみが―――やや不自然なくらい冷静に―――慰めるも、つかさはその手を放そうとしない。
悲しんでいる、というより今の状況を理解できない、したくない様子、と言った方が正しいだろう。
「う、嘘、だよね……ゆきちゃんの名前が呼ばれたなんて……嘘だよねお姉ちゃん……?なんで、なんで……」
その声には力がない。
―――こ れ は や ば い。
魅音は不安そうな顔で、そんなことを考えていた。
高良みゆき。魅音は初めて聞く―――少なくとも前の会場にはいなかった―――名前だが、この様子からして柊つかさの友人、知り合いであることは想像に難くない。
つかさの精神状態は正直言っていいとは言えない。彼女を今つなぎとめているのは、横にいる姉の存在だけだろう。
―――こ、これやばくない……?ど、どうしよう、またつかさが……。
今のところは落ち着いていたように見えたつかさ。しかし、この現在の取り乱しようを見ていると、背筋が凍る。
また、あの驚きの黒さがよみがえってしまうのではないか、と。
彼女は自分の知る柊つかさではないとしても、それでも。
「……つかさ……」
かがみがつかさを辛そうに見つめ、抱き締める。
「……つかさ、大丈夫、私がいる、いるから、だから―――」
「……っ」
つかさが、そのぬくもりに喉を鳴らし、そして大声で泣き出す。
その姉の優しさ故、言葉で悟ったのだろう。
これは事実であると。
友人の高良みゆきは死んだのだと。
それを認めることから逃げるようにつかさはひたすらに涙を流し―――そしてそのままかがみに倒れ込んだ。
ショックのあまり意識を失ってしまったらしい。
魅音は不安そうな顔で、そんなことを考えていた。
高良みゆき。魅音は初めて聞く―――少なくとも前の会場にはいなかった―――名前だが、この様子からして柊つかさの友人、知り合いであることは想像に難くない。
つかさの精神状態は正直言っていいとは言えない。彼女を今つなぎとめているのは、横にいる姉の存在だけだろう。
―――こ、これやばくない……?ど、どうしよう、またつかさが……。
今のところは落ち着いていたように見えたつかさ。しかし、この現在の取り乱しようを見ていると、背筋が凍る。
また、あの驚きの黒さがよみがえってしまうのではないか、と。
彼女は自分の知る柊つかさではないとしても、それでも。
「……つかさ……」
かがみがつかさを辛そうに見つめ、抱き締める。
「……つかさ、大丈夫、私がいる、いるから、だから―――」
「……っ」
つかさが、そのぬくもりに喉を鳴らし、そして大声で泣き出す。
その姉の優しさ故、言葉で悟ったのだろう。
これは事実であると。
友人の高良みゆきは死んだのだと。
それを認めることから逃げるようにつかさはひたすらに涙を流し―――そしてそのままかがみに倒れ込んだ。
ショックのあまり意識を失ってしまったらしい。
「……目覚めた時には、落ち着いてくれてるといいんだけど……」
かがみが呟く。
その声には悪意はなく、優しさに満ちているようにしか聞こえなかった。
かがみが呟く。
その声には悪意はなく、優しさに満ちているようにしか聞こえなかった。
―――大丈夫、だよね?かがみは―――普通の女子高生だよね?
三村の言葉は嘘だと、魅音はそう思いたかった。
目の前の少女は、妹を思う一般人女性にしか見えなかったから。
「……えっと、あの、さ」
だから、思わず声をかけてしまう。
つかさを心配するその背中に。
「……お、おじさんうまく言えないけどさ、あの……お、お友達は多分かがみとつかさに悲しんでほしくないって思ってるよ!」
言葉かけは慎重に行わないといけない、そう思っていた。もし間違えたら、姉もつかさと同じように化けてしまうかもしれない。それだけは嫌だった。彼女には、優しいままでいてほしいし、そうでないと困る。
「だ、だからさ!ふ、復讐とかそういうのには走らないで頑張っていこうよ!」
いまいちいい言葉が思いつかなかったが、意図はくみ取ってくれたと信じたい。
かがみは少しだけ首をかしげていたが、やがて理解したように小さく笑う。
「そうだ…………そうよね、……分かってるわ」
三村の言葉は嘘だと、魅音はそう思いたかった。
目の前の少女は、妹を思う一般人女性にしか見えなかったから。
「……えっと、あの、さ」
だから、思わず声をかけてしまう。
つかさを心配するその背中に。
「……お、おじさんうまく言えないけどさ、あの……お、お友達は多分かがみとつかさに悲しんでほしくないって思ってるよ!」
言葉かけは慎重に行わないといけない、そう思っていた。もし間違えたら、姉もつかさと同じように化けてしまうかもしれない。それだけは嫌だった。彼女には、優しいままでいてほしいし、そうでないと困る。
「だ、だからさ!ふ、復讐とかそういうのには走らないで頑張っていこうよ!」
いまいちいい言葉が思いつかなかったが、意図はくみ取ってくれたと信じたい。
かがみは少しだけ首をかしげていたが、やがて理解したように小さく笑う。
「そうだ…………そうよね、……分かってるわ」
―――そう、大丈夫だよね、分かってくれてる、きっと。
今の魅音は、そう思うしかなかった。
今の魅音は、そう思うしかなかった。
※
ピンク髪が死んだ。
まあ、正直予想の範囲内だ。悲しくないわけじゃないが、かがみやみなみと比べりゃ縁はないようなもんだし、ロワ的にみゆきさんが長生きできる気もしていなかった。
しかしこれは、まずい。
ただでさえ自分と同じ顔をした女が死んだことで不安定だったつかさが、みゆきさんの死で完全にやばくなってきやがった。
おそらくつかさは、今俺の存在で何とか逃げ出すことを堪えているのだろう。
ここに俺、いや違うな、『お姉ちゃん』がいなけりゃ、この子は現実を受け止めきれず、絶望して自殺でもしかねないかもしれない。
とりあえず、少しは落ち着いたか……。
俺は再び眠ってしまった(すっかり泣きはらした跡がある)つかさを抱きかかえた。
―――ああ、さっき思わず抱きしめてしまったことは謝ろう。だってどうしろって言うんだ。
まあ、正直予想の範囲内だ。悲しくないわけじゃないが、かがみやみなみと比べりゃ縁はないようなもんだし、ロワ的にみゆきさんが長生きできる気もしていなかった。
しかしこれは、まずい。
ただでさえ自分と同じ顔をした女が死んだことで不安定だったつかさが、みゆきさんの死で完全にやばくなってきやがった。
おそらくつかさは、今俺の存在で何とか逃げ出すことを堪えているのだろう。
ここに俺、いや違うな、『お姉ちゃん』がいなけりゃ、この子は現実を受け止めきれず、絶望して自殺でもしかねないかもしれない。
とりあえず、少しは落ち着いたか……。
俺は再び眠ってしまった(すっかり泣きはらした跡がある)つかさを抱きかかえた。
―――ああ、さっき思わず抱きしめてしまったことは謝ろう。だってどうしろって言うんだ。
だって俺は『かがみ』じゃない。
あいつのことは嫌になるくらい知っちゃいるが、それでも俺はあいつじゃない。
つかさに気を利かせたことを言える自信がない。元よりそんなに女性の扱いがうまい訳ではないし、第一ロワ慣れしすぎた俺の言葉がどこまでつかさに届くかどうか。
あいつのことは嫌になるくらい知っちゃいるが、それでも俺はあいつじゃない。
つかさに気を利かせたことを言える自信がない。元よりそんなに女性の扱いがうまい訳ではないし、第一ロワ慣れしすぎた俺の言葉がどこまでつかさに届くかどうか。
ちなみに言っておくが、俺の妻はみなみだ。
俺の妻はみなみだからな!
大事なことなので二回言いました。別にらき☆すたキャラなら誰でもいいとかそんなんじゃないんだからな!
俺の妻はみなみだからな!
大事なことなので二回言いました。別にらき☆すたキャラなら誰でもいいとかそんなんじゃないんだからな!
ちなみにアムンゼンやランキング作成人と言った知り合いは生き延びているらしい。
まあ、だろうなあ。しぶといと思ってたぜ。
俺には言われたくないだろうがな。
まあ、だろうなあ。しぶといと思ってたぜ。
俺には言われたくないだろうがな。
さてと、じゃあこれからどうするか。
つかさはひとまず寝かせておかなければならない。起きた後どうなるかは、ぶっちゃけ分からない。
目覚めただけで落ち着くとも到底思えない。つかさにとってみゆきさんは親友だし、ショックも大きかろう。
俺は何をすべきだ?
今は6/としてではなく、かりそめとはいえつかさの『姉』として。
つかさはひとまず寝かせておかなければならない。起きた後どうなるかは、ぶっちゃけ分からない。
目覚めただけで落ち着くとも到底思えない。つかさにとってみゆきさんは親友だし、ショックも大きかろう。
俺は何をすべきだ?
今は6/としてではなく、かりそめとはいえつかさの『姉』として。
「……えっと、あの、さ」
俺は声をかけられ振り返る。
そこには園崎魅音―――すまん、一瞬忘れてたな―――が立っていた。
ものすごく心配そうな顔をしている。
ああ、そういや圭一も死んでたな。こいつもそれなりにショックに違いない。
「……お、おじさんうまく言えないけどさ、あの……お、お友達は多分かがみとつかさに悲しんでほしくないって思ってるよ!」
だろうな。それくらい俺にも分かる。
「だ、だからさ!ふ、復讐とかそういうのには走らないで頑張っていこうよ!」
どうやら俺を励まそうとしてくれているらしい―――やや動揺しているように見えるのは何故だろうな?―――魅音。
俺は声をかけられ振り返る。
そこには園崎魅音―――すまん、一瞬忘れてたな―――が立っていた。
ものすごく心配そうな顔をしている。
ああ、そういや圭一も死んでたな。こいつもそれなりにショックに違いない。
「……お、おじさんうまく言えないけどさ、あの……お、お友達は多分かがみとつかさに悲しんでほしくないって思ってるよ!」
だろうな。それくらい俺にも分かる。
「だ、だからさ!ふ、復讐とかそういうのには走らないで頑張っていこうよ!」
どうやら俺を励まそうとしてくれているらしい―――やや動揺しているように見えるのは何故だろうな?―――魅音。
まあつかさが起きていたらこのタイミングで思い出させるようなこと言うなよ空気嫁、と言いたいところだが、悪気はないようだしつかさも眠っているのであえて突っ込まないでやろう。
「そうだ…………そうよね、……分かってるわ」
おっといけない。俺はかがみだった。少なくともこの空間ではな。
さて、ではこれからどうするか?
つかさが目覚めるまで、危険人物が現れない限りここにとどまることにしよう。どうせ待ち合わせとやらもあるようだし。
確か相羽シンヤはものすっごく危険人物だった気がするんだが本当に大丈夫なのかかなり不安だが……魅音がこうして生きている以上、交渉の余地はある……んだと信じたい。
「そうだ…………そうよね、……分かってるわ」
おっといけない。俺はかがみだった。少なくともこの空間ではな。
さて、ではこれからどうするか?
つかさが目覚めるまで、危険人物が現れない限りここにとどまることにしよう。どうせ待ち合わせとやらもあるようだし。
確か相羽シンヤはものすっごく危険人物だった気がするんだが本当に大丈夫なのかかなり不安だが……魅音がこうして生きている以上、交渉の余地はある……んだと信じたい。
まずやるべきは、園崎魅音との情報交換、か。
結局先ほどは名前を言ったくらいしかしていない。本当は詳しく聞きたかったのだが、爆発にあっけにとられ、そのことを話しているうちにここについてしまったのだ。
魅音は俺をかがみだと思っている。そして、つかさのことを知っているらしい。
二人のどちらか、もしくは両方と面識があると思って間違いないだろう。
それに対してつかさが反応しなかったのも至極簡単。魅音とは出典が違うに違いない。
やはりここはリピーターロワ……あらゆるロワからの参加者が集められている。今だにらき☆すたキャラの扱いの違いがよく分からずいるが。
一つ言えるのは、リピーターロワの醍醐味は、俺の18番(認めるのは嫌だが)である「誤解フラグ」だということだ。
例えば参加者である涼宮ハルヒ。彼女はロワによって正統派対主催であったりもすれば、神(笑)と呼ばれる壮絶クリーチャ―だったこともある。
今回のハルヒがどこから来ているのか、対主催か危険人物かは今のところ分からない。しかし、少なくとも綺麗な対主催のハルヒを知る人間が神(笑)を見たらそのギャップに恐怖し、ショックを覚えるに違いない。
もしかしたら、『ハルヒが狂ってしまったと思いこみ、昔の綺麗なハルヒに戻そうとするお人よし』もいるかもしれない。
そういやキョンが死んでたっけ。あいつどうなるんだろうな。まあいいや。
そう言った「ちょwwwお前それ勘違いwww」なフラグを積み重ねることこそリピーターロワの醍醐味をいえよう。
だからこそ、把握。
園崎魅音が『どこ』で柊つかさとかがみを知ったのか、そして彼女の中のかがみ像はどんなものか、把握しなければ。
もし彼女の知るかがみがガチレズ悪臭ツインテールなら、いっそ正体を明かした方がいいのかもしれないな。あいつの汚名を俺まで被るのはごめんだ。
記憶を失ったことにでもしておけばいい。そうすれば、誤解や余計ないざこざも生じないだろう。
「……あの……」
俺は魅音に声をかけた。
つかさを起こさないようにそっと。
「……魅音さん、よろしければ貴方の仲間のことを……」
結局先ほどは名前を言ったくらいしかしていない。本当は詳しく聞きたかったのだが、爆発にあっけにとられ、そのことを話しているうちにここについてしまったのだ。
魅音は俺をかがみだと思っている。そして、つかさのことを知っているらしい。
二人のどちらか、もしくは両方と面識があると思って間違いないだろう。
それに対してつかさが反応しなかったのも至極簡単。魅音とは出典が違うに違いない。
やはりここはリピーターロワ……あらゆるロワからの参加者が集められている。今だにらき☆すたキャラの扱いの違いがよく分からずいるが。
一つ言えるのは、リピーターロワの醍醐味は、俺の18番(認めるのは嫌だが)である「誤解フラグ」だということだ。
例えば参加者である涼宮ハルヒ。彼女はロワによって正統派対主催であったりもすれば、神(笑)と呼ばれる壮絶クリーチャ―だったこともある。
今回のハルヒがどこから来ているのか、対主催か危険人物かは今のところ分からない。しかし、少なくとも綺麗な対主催のハルヒを知る人間が神(笑)を見たらそのギャップに恐怖し、ショックを覚えるに違いない。
もしかしたら、『ハルヒが狂ってしまったと思いこみ、昔の綺麗なハルヒに戻そうとするお人よし』もいるかもしれない。
そういやキョンが死んでたっけ。あいつどうなるんだろうな。まあいいや。
そう言った「ちょwwwお前それ勘違いwww」なフラグを積み重ねることこそリピーターロワの醍醐味をいえよう。
だからこそ、把握。
園崎魅音が『どこ』で柊つかさとかがみを知ったのか、そして彼女の中のかがみ像はどんなものか、把握しなければ。
もし彼女の知るかがみがガチレズ悪臭ツインテールなら、いっそ正体を明かした方がいいのかもしれないな。あいつの汚名を俺まで被るのはごめんだ。
記憶を失ったことにでもしておけばいい。そうすれば、誤解や余計ないざこざも生じないだろう。
「……あの……」
俺は魅音に声をかけた。
つかさを起こさないようにそっと。
「……魅音さん、よろしければ貴方の仲間のことを……」
瞬間、かちゃりという小さな音がした。
普通の人間だったら気付かなかったかもしれない。
だが、ロワにさんざん出続けていやに敏感になってしまっていた俺は認識した。
『何か』が、屋内プールの裏口に立っていることを。
普通の人間だったら気付かなかったかもしれない。
だが、ロワにさんざん出続けていやに敏感になってしまっていた俺は認識した。
『何か』が、屋内プールの裏口に立っていることを。
それは、男。
男のくせにウェディングドレスを着ている。
男は俺達を見、一瞬何かに戸惑ったような顔をしていたが、脇に隠していた刃物を取り出してすぐに―――
男のくせにウェディングドレスを着ている。
男は俺達を見、一瞬何かに戸惑ったような顔をしていたが、脇に隠していた刃物を取り出してすぐに―――
俺は気付いてしまったんだ。
そいつは、たしかに変な格好だったし、どう見ても危険人物、マーダーだ。
でも、そんなことよりもっと大切なことに。
そのウェディングドレスには見覚えがあった。ありすぎた。
そして、そのインパクトにかき消されがちのその顔にも―――
そいつは、たしかに変な格好だったし、どう見ても危険人物、マーダーだ。
でも、そんなことよりもっと大切なことに。
そのウェディングドレスには見覚えがあった。ありすぎた。
そして、そのインパクトにかき消されがちのその顔にも―――
男が、動く。
「嘘、だろ?」
見間違いようもなく。
それは―――『俺』だった。
見間違いようもなく。
それは―――『俺』だった。
※
放送が流れた際、俺はひたすら歩き続けていた。
向かうあてはない。かがみの誤解フラグを撒くために三村信司を利用するとは決めたが、俺はあいつの居場所を知りはしないのだから。
ジョジョとやる夫の向かった方向にはいかない方がいい、俺はそう感じてとりあえず西へと歩を進めた。
放送には、特に何も心を動かされることもなかった。
知った名前がいくつも呼ばれたが知ったことか。俺はマーダーだ、死人に感傷を抱いている時間も余裕も権利もない。
向かうあてはない。かがみの誤解フラグを撒くために三村信司を利用するとは決めたが、俺はあいつの居場所を知りはしないのだから。
ジョジョとやる夫の向かった方向にはいかない方がいい、俺はそう感じてとりあえず西へと歩を進めた。
放送には、特に何も心を動かされることもなかった。
知った名前がいくつも呼ばれたが知ったことか。俺はマーダーだ、死人に感傷を抱いている時間も余裕も権利もない。
とりあえず、かがみはまだ生きているようだな。そして、見知らぬ世界の『俺』も。
さすがだ。そうでなければ困る。
俺はお前たちに誤解フラグをなすりつけて利用するつもりなんだから、まだ死ぬには早い。無論いらなくなれば殺すがな。
自然に口角がつり上がる。あいつらは俺に利用されるのだ。悪い気分じゃない。
やる夫やアナゴは確かに殺し損ねたが、逆に幸運。あいつらが俺の悪評を流せば流すほど、追いつめられるのはマーダーの俺じゃない、対主催の『俺』だ。
さすがだ。そうでなければ困る。
俺はお前たちに誤解フラグをなすりつけて利用するつもりなんだから、まだ死ぬには早い。無論いらなくなれば殺すがな。
自然に口角がつり上がる。あいつらは俺に利用されるのだ。悪い気分じゃない。
やる夫やアナゴは確かに殺し損ねたが、逆に幸運。あいつらが俺の悪評を流せば流すほど、追いつめられるのはマーダーの俺じゃない、対主催の『俺』だ。
「……て……え……ん……」
この声は……。
俺はそこで立ち止まる。
その声は紛れもなく、俺の知るものだった。
あれはかがみ―――ではない。かがみの双子の妹、柊つかさのものだ。
特徴的な声だ。つかさ以外にいないだろう。
つまり、彼女はここにいる。
―――これはいいかもしれないな。
この声は……。
俺はそこで立ち止まる。
その声は紛れもなく、俺の知るものだった。
あれはかがみ―――ではない。かがみの双子の妹、柊つかさのものだ。
特徴的な声だ。つかさ以外にいないだろう。
つまり、彼女はここにいる。
―――これはいいかもしれないな。
先ほど思い出したディスクの中身を反芻する。
そこに柊つかさはいた。
そして、彼女と長く時間を共にした、二人の人間の名前も、はっきり覚えている。
桂ヒナギク。
川田章吾。
漫画ロワのつかさと深くかかわり―――そして既に死んでしまった二人。
もし、中にいるつかさがそのつかさだったら?
ここがあらゆるロワや媒体から連れてこられた会場であることは既に理解している。だからここにいるつかさがその柊つかさであるかどうかまでは分からない。
しかし、別にかまわない。
漫画ロワ出典なら最高、というだけの話。そうでなくても、彼女は柊かがみの妹。かがみの誤解フラグを撒くには、十分すぎるくらいの相手だ。
そこに柊つかさはいた。
そして、彼女と長く時間を共にした、二人の人間の名前も、はっきり覚えている。
桂ヒナギク。
川田章吾。
漫画ロワのつかさと深くかかわり―――そして既に死んでしまった二人。
もし、中にいるつかさがそのつかさだったら?
ここがあらゆるロワや媒体から連れてこられた会場であることは既に理解している。だからここにいるつかさがその柊つかさであるかどうかまでは分からない。
しかし、別にかまわない。
漫画ロワ出典なら最高、というだけの話。そうでなくても、彼女は柊かがみの妹。かがみの誤解フラグを撒くには、十分すぎるくらいの相手だ。
作戦は、既に決めていた。
初めは普通の対主催として近づき、同行する。その上で柊かがみや他の6/に対する誤解フラグをばらまこう。いきなりではだめだ、じわじわとだ。
基本的にお人好しで子供っぽいつかさだ。きっと俺という仲間のことを完全に疑いきることはできまい。そしてかがみに対する誤解を植え付けるのだ。
三村は暴走しているかもしれないが、基本方針は対主催だろう。それならば俺も対主催集団に紛れ込んだ方がいい。
初めは普通の対主催として近づき、同行する。その上で柊かがみや他の6/に対する誤解フラグをばらまこう。いきなりではだめだ、じわじわとだ。
基本的にお人好しで子供っぽいつかさだ。きっと俺という仲間のことを完全に疑いきることはできまい。そしてかがみに対する誤解を植え付けるのだ。
三村は暴走しているかもしれないが、基本方針は対主催だろう。それならば俺も対主催集団に紛れ込んだ方がいい。
俺はつかさの泣き声がやむのを確認し、裏口からプールへと入っていった。
―――そして、俺は見ちまった。思わず目を疑ったね。
そこには、よりにもよってあいつがいた。
俺が誤解フラグを立てようとしていた張本人―――柊かがみが!
ああ、いったい―――俺はどれだけあいつと縁があれば気が済むんだ。
そこには、よりにもよってあいつがいた。
俺が誤解フラグを立てようとしていた張本人―――柊かがみが!
ああ、いったい―――俺はどれだけあいつと縁があれば気が済むんだ。
つかさが他の人間と一緒に行動している可能性はあった。寧ろ、ほぼ100%そうだろう、とは思っていた。
しかしいきなりかがみとは……同作品キャラのジンクスって奴を知らないのか!?
どうする。引き返すか?いや、ここまで来てそんなことができるかよ。
先ほどのやる夫との戦いが頭をよぎる。
―――それじゃあ、かがみ以外を殺すか。
俺はすぐさま対応を切り替えた。
何故かがみを殺害対象から外したのかは、俺にもよく分からなかったが、ともかく。
運が悪かったな、かがみ。
本当は俺はまだ妹のつかさを殺す気はなかったんだぜ?
ただ、ここで会ってしまった以上、誤解フラグを撒くのは難しい。
誤解フラグってのは、出会わないからこそ上手く左右するんだ。
幸い、仲間はつかさと園崎魅音。殺すのに時間はかかるまい。
このままサラマンダーってのもあれだ、かがみに誤解をなすりつけるための犠牲になってもらおう。
しかしいきなりかがみとは……同作品キャラのジンクスって奴を知らないのか!?
どうする。引き返すか?いや、ここまで来てそんなことができるかよ。
先ほどのやる夫との戦いが頭をよぎる。
―――それじゃあ、かがみ以外を殺すか。
俺はすぐさま対応を切り替えた。
何故かがみを殺害対象から外したのかは、俺にもよく分からなかったが、ともかく。
運が悪かったな、かがみ。
本当は俺はまだ妹のつかさを殺す気はなかったんだぜ?
ただ、ここで会ってしまった以上、誤解フラグを撒くのは難しい。
誤解フラグってのは、出会わないからこそ上手く左右するんだ。
幸い、仲間はつかさと園崎魅音。殺すのに時間はかかるまい。
このままサラマンダーってのもあれだ、かがみに誤解をなすりつけるための犠牲になってもらおう。
ぽかんとしているかがみに俺は、切りかかる。
横一閃にする、それだけで終わる。簡単だ。
狙うはかがみではなく―――かがみに抱きかかえられている柊つかさだ。
つかさという人間を抱えたかがみが、俺の攻撃にすばやい対処ができるはずもない。
そう思っていた、のだが。
「……ま、待て!」
どうしたことか、かがみは。
つかさを抱きかかえたまま、プールに飛び込んだのだ。
激しい水飛沫の音。ふん、なかなかいい動きをするじゃないか。
どこ出典のかがみだ?誤解フラグの立て甲斐があるってもんだ。
「魅音!お前はつかさを連れて逃げろ!早く!」
かがみはつかさをプールから上げ、魅音に怒鳴る。
ようやく今の状況を把握したらしい魅音は、はっと顔を上げ慌ててつかさの手をとった。その顔はどこか青白い。
つかさは今も眠ったままだ。
「……で、でも、かがみは……」
「いいから逃げろっ!俺たちが出会ったとこで落ち合うぞ!つかさを守らなきゃ承知しっ……!」
逃がしてたまるかよ。
俺は再び刃を振るう。
今のお前は隙だらけだぜ、かがみ!
今は殺すつもりはないが、その邪魔な腕一本でも駄目にしてやるよ。
「……っ!?」
「だから待てってんだろ……!」
しかし。
それはかがみの腕を切り裂くことはなかった。。
なぜなら柊かがみのカリバーンが、俺のバヨネットを押さえつけていたから。
「……お前……」
くそ、お前は俺に立ちふさがるのか。
視線をわずかに向ける。わずかな間に、魅音とつかさは姿を消していた。
くそ、仕止め損ねたか……。まあいい、すでに二人ほど取り逃がしている。マーダーのオレにはもう恐れるものなどないから問題ない。
さて、問題は。
このかがみが、いったいどこのかがみかってことだが。
かがみの顔に浮かぶのは、わずかな怒り。そりゃそうだな、妹を殺そうとしたんだから。
しかし、それ以上に強いのは驚愕。
間違いない―――こいつは、俺を知っている。
カオスか、それともここの前にいたロワの出身か。しかし雰囲気を見る限りあの変態かがみじゃあなさそうだがな。
「……よお、『かがみ』。元気してたか?」
俺は薄く笑いながらも、決して手元を緩めない。
それはかがみも同じらしく、俺たちは剣を交わしたまま睨み合った。
沈黙が落ちる。どのくらいの長さだったかは覚えていない。
やがて、かがみが口を開く。
聞き覚えのありすぎるその声が吐き出した言葉は―――
「……違う」
俺の予想だにしないものだった。
「……は?」
思わず、手元がゆがんだ。
しかし、相手がこちらに攻撃してくる気配はなかった。
「俺はかがみじゃねえ。俺の名前は―――6/。『お前だよ』」
横一閃にする、それだけで終わる。簡単だ。
狙うはかがみではなく―――かがみに抱きかかえられている柊つかさだ。
つかさという人間を抱えたかがみが、俺の攻撃にすばやい対処ができるはずもない。
そう思っていた、のだが。
「……ま、待て!」
どうしたことか、かがみは。
つかさを抱きかかえたまま、プールに飛び込んだのだ。
激しい水飛沫の音。ふん、なかなかいい動きをするじゃないか。
どこ出典のかがみだ?誤解フラグの立て甲斐があるってもんだ。
「魅音!お前はつかさを連れて逃げろ!早く!」
かがみはつかさをプールから上げ、魅音に怒鳴る。
ようやく今の状況を把握したらしい魅音は、はっと顔を上げ慌ててつかさの手をとった。その顔はどこか青白い。
つかさは今も眠ったままだ。
「……で、でも、かがみは……」
「いいから逃げろっ!俺たちが出会ったとこで落ち合うぞ!つかさを守らなきゃ承知しっ……!」
逃がしてたまるかよ。
俺は再び刃を振るう。
今のお前は隙だらけだぜ、かがみ!
今は殺すつもりはないが、その邪魔な腕一本でも駄目にしてやるよ。
「……っ!?」
「だから待てってんだろ……!」
しかし。
それはかがみの腕を切り裂くことはなかった。。
なぜなら柊かがみのカリバーンが、俺のバヨネットを押さえつけていたから。
「……お前……」
くそ、お前は俺に立ちふさがるのか。
視線をわずかに向ける。わずかな間に、魅音とつかさは姿を消していた。
くそ、仕止め損ねたか……。まあいい、すでに二人ほど取り逃がしている。マーダーのオレにはもう恐れるものなどないから問題ない。
さて、問題は。
このかがみが、いったいどこのかがみかってことだが。
かがみの顔に浮かぶのは、わずかな怒り。そりゃそうだな、妹を殺そうとしたんだから。
しかし、それ以上に強いのは驚愕。
間違いない―――こいつは、俺を知っている。
カオスか、それともここの前にいたロワの出身か。しかし雰囲気を見る限りあの変態かがみじゃあなさそうだがな。
「……よお、『かがみ』。元気してたか?」
俺は薄く笑いながらも、決して手元を緩めない。
それはかがみも同じらしく、俺たちは剣を交わしたまま睨み合った。
沈黙が落ちる。どのくらいの長さだったかは覚えていない。
やがて、かがみが口を開く。
聞き覚えのありすぎるその声が吐き出した言葉は―――
「……違う」
俺の予想だにしないものだった。
「……は?」
思わず、手元がゆがんだ。
しかし、相手がこちらに攻撃してくる気配はなかった。
「俺はかがみじゃねえ。俺の名前は―――6/。『お前だよ』」
※
俺はカリバーンを構えたまま、考える。
今は先ほどと違い一触即発な様子ではないが、気は抜けない。
目の前の男、『俺』は、明らかに俺たちに向って攻撃をしてきたのだから。
そう、目の前の人物は、俺。
俺がかがみになる前の―――本来の『俺』。
名簿に載っていた、自分以外の二人の俺のどちらかだ。
だというのに、何だこれは?
どうして俺は『俺』に刃を向けられなきゃならない?
どうやらこっちの俺は、かがみに憎しみでも抱いているらしい。
……まあ、そりゃそうか。いろいろされたしな。無理もないか。
しかし、だからと言って。
『俺』は無関係で力のないつかさや魅音まで本気で殺そうとするような外道じゃなかったはずだ。
「……俺、だって?……ああ、そうか、……分かった」
意外なことに、目の前の俺はあっさりとそれに納得した。
「なんでこうなったかは聞かないのか?」
「俺のことだ。どうせ何かやらかしたんだろう?それに、これがバトルロワイアルってもんだろう」
そりゃそうだ。さすが俺、慣れているな。
今は先ほどと違い一触即発な様子ではないが、気は抜けない。
目の前の男、『俺』は、明らかに俺たちに向って攻撃をしてきたのだから。
そう、目の前の人物は、俺。
俺がかがみになる前の―――本来の『俺』。
名簿に載っていた、自分以外の二人の俺のどちらかだ。
だというのに、何だこれは?
どうして俺は『俺』に刃を向けられなきゃならない?
どうやらこっちの俺は、かがみに憎しみでも抱いているらしい。
……まあ、そりゃそうか。いろいろされたしな。無理もないか。
しかし、だからと言って。
『俺』は無関係で力のないつかさや魅音まで本気で殺そうとするような外道じゃなかったはずだ。
「……俺、だって?……ああ、そうか、……分かった」
意外なことに、目の前の俺はあっさりとそれに納得した。
「なんでこうなったかは聞かないのか?」
「俺のことだ。どうせ何かやらかしたんだろう?それに、これがバトルロワイアルってもんだろう」
そりゃそうだ。さすが俺、慣れているな。
「……分かってくれたならいい。じゃあ聞こうか、6/。お前まさか―――殺し合いに乗っているのか?」
俺は、『俺』にそう尋ねた。
そして返ってきたのは。
「ああ、そうだ」
あまりにも簡潔な解答だった。
やっぱりかよ、嫌な予感ってのは当たるもんだ。
「……誰か殺したのか?」
「『ここ』じゃあまだ、だな。ここに来る前は4人ほど、だな。それが何だって言うんだ?」
俺は、『俺』にそう尋ねた。
そして返ってきたのは。
「ああ、そうだ」
あまりにも簡潔な解答だった。
やっぱりかよ、嫌な予感ってのは当たるもんだ。
「……誰か殺したのか?」
「『ここ』じゃあまだ、だな。ここに来る前は4人ほど、だな。それが何だって言うんだ?」
そりゃ俺だって、誰も殺してないかと言われたら嘘になる。
でも、あれは誤解とか誤解とか誤解がいろいろあってのことだ。それにここは明らかにカオスロワじゃない、あそこと同じ感覚で考えていいものだろうか。
でも、あれは誤解とか誤解とか誤解がいろいろあってのことだ。それにここは明らかにカオスロワじゃない、あそこと同じ感覚で考えていいものだろうか。
だから俺は、この『俺』を認めたくない。
PKKでも襲われたから殺したのでもなく、気絶したつかさすら殺そうとした『俺』を。
「……俺と協力する気は?」
「悪いが、ないな。俺はマーダーになるって決めたんだよ」
そして、『俺』は言う。
その所作は嫌になるくらい俺そのものだった。
目標とするところは、全く違うようだがな。
「お前こそ、俺と協力する気はないか?」
それは、どういうことだ?
俺にもマーダーになれと、そういうのか?
俺のくせに、何を言う。
「断る」
俺は真っすぐに断ってやった。まあ、おそらく『俺』の予想の範疇だろうがな。
「俺はつかさのお姉ちゃんになるって決めたんだよ」
かがみの代わりになって。
不安定なつかさを、少しでも励ましてやりたかったから。
そして、知り合いとここから再び脱出することにしたから。
「だから、殺し合いに乗れるわけないだろ」
PKKでも襲われたから殺したのでもなく、気絶したつかさすら殺そうとした『俺』を。
「……俺と協力する気は?」
「悪いが、ないな。俺はマーダーになるって決めたんだよ」
そして、『俺』は言う。
その所作は嫌になるくらい俺そのものだった。
目標とするところは、全く違うようだがな。
「お前こそ、俺と協力する気はないか?」
それは、どういうことだ?
俺にもマーダーになれと、そういうのか?
俺のくせに、何を言う。
「断る」
俺は真っすぐに断ってやった。まあ、おそらく『俺』の予想の範疇だろうがな。
「俺はつかさのお姉ちゃんになるって決めたんだよ」
かがみの代わりになって。
不安定なつかさを、少しでも励ましてやりたかったから。
そして、知り合いとここから再び脱出することにしたから。
「だから、殺し合いに乗れるわけないだろ」
「でもお前には、俺の気持ちが分かるはずだ。いや、分からないはずがない。だってお前は『俺』だろ?
お前なら、お前だけは分かるはずだ。俺がどうしてマーダーになったのか」
「そんなの―――」
俺は言葉を紡ごうとして―――それが出なかった。
お前なら、お前だけは分かるはずだ。俺がどうしてマーダーになったのか」
「そんなの―――」
俺は言葉を紡ごうとして―――それが出なかった。
―――分からない、とは言えなかった。
俺には、分かってしまった。
手に取るように、『俺』が殺し合いに乗った理由が。
俺には、分かってしまった。
手に取るように、『俺』が殺し合いに乗った理由が。
「俺は誤解され続けてきた。どこに行っても、何をしても、人の命を救っても、守ろうとしても、殺されかけても、俺から誤解は離れてくれなかった。
それでも俺は対主催を目指す。いつもそうだ。どれだけ誤解されても、俺はいつだって対主催をし続けようとする。
だから―――もういいだろ?疲れたんだよ。信じることに。誰かに誤解され、そのたびに苦しみ疲れ果てるのは。
どうせこの世界に、神なんていやしないんだから」
それでも俺は対主催を目指す。いつもそうだ。どれだけ誤解されても、俺はいつだって対主催をし続けようとする。
だから―――もういいだろ?疲れたんだよ。信じることに。誰かに誤解され、そのたびに苦しみ疲れ果てるのは。
どうせこの世界に、神なんていやしないんだから」
それは、どこまでも6/の言葉だった。
こいつの体験してきた出来事は、当たり前のように俺と同じで。
こいつは俺と同じように殺し合いに巻き込まれ、そして―――『切れて』しまった。
何が原因かは分からない。ここに来る前のロワ辺りで何かあったのかもしれない。だけど大事なのはその理由などではない。
本当に俺が理解しなきゃいけないのは―――これが『俺』だってことだ。
こいつの体験してきた出来事は、当たり前のように俺と同じで。
こいつは俺と同じように殺し合いに巻き込まれ、そして―――『切れて』しまった。
何が原因かは分からない。ここに来る前のロワ辺りで何かあったのかもしれない。だけど大事なのはその理由などではない。
本当に俺が理解しなきゃいけないのは―――これが『俺』だってことだ。
それでも、屈する訳がない。
俺はつかさを守って、前と同じように主催者を倒すだけなんだ。
「だが、俺はつかさを守るんだ。そのためには、俺が汚れるわけにはいかんだろ」
「そうか、できないか。それなら俺は柊かがみと岩崎みなみを殺す。……いや、柊つかさや泉こなたも、お前の知っていそうな奴は全員殺してやる」
『俺』が、一歩足を踏み出す。
これがウェディングドレスじゃなきゃそれなりに様になってるんだがな、6/。
「……やるならやれよ。それより先に俺がお前を止めてやる」
「好きにしろ。……まあ、気をつけろよ、6/。お前の今の姿をもう一度鏡で見て、それでも行動するってなら俺は止めんぞ」
……俺の、姿。
それは紛れもない、俺の腐れ縁・柊かがみのものだった。
「お前も気づいているはずだ。これはいわゆるクロスロワ……あらゆるロワで活躍したキャラが集められているってことにな」
そんなことは、『俺』に言われずとも分かっている。
一体何回ロワに出たと思っている。数えるのも億劫になる数だぜ?
「……だから、何だ?」
「分かるだろ?その他のバトロワで……『柊かがみ』が―――何をしてきたか」
俺はつかさを守って、前と同じように主催者を倒すだけなんだ。
「だが、俺はつかさを守るんだ。そのためには、俺が汚れるわけにはいかんだろ」
「そうか、できないか。それなら俺は柊かがみと岩崎みなみを殺す。……いや、柊つかさや泉こなたも、お前の知っていそうな奴は全員殺してやる」
『俺』が、一歩足を踏み出す。
これがウェディングドレスじゃなきゃそれなりに様になってるんだがな、6/。
「……やるならやれよ。それより先に俺がお前を止めてやる」
「好きにしろ。……まあ、気をつけろよ、6/。お前の今の姿をもう一度鏡で見て、それでも行動するってなら俺は止めんぞ」
……俺の、姿。
それは紛れもない、俺の腐れ縁・柊かがみのものだった。
「お前も気づいているはずだ。これはいわゆるクロスロワ……あらゆるロワで活躍したキャラが集められているってことにな」
そんなことは、『俺』に言われずとも分かっている。
一体何回ロワに出たと思っている。数えるのも億劫になる数だぜ?
「……だから、何だ?」
「分かるだろ?その他のバトロワで……『柊かがみ』が―――何をしてきたか」
そりゃあ、分かる。
カオスじゃあ強姦したり、主催やったり……ってはっ!?
カオスじゃあ強姦したり、主催やったり……ってはっ!?
「つまり、お前はその柊かがみの罪を背負っていると、そういうことだ」
『俺』は笑う。何を考えているかはだいたい分かった。俺だからな。
こいつは―――俺を試している。
何度ロワに出ても対主催を続ける俺を嘲笑い、「今のお前に誤解フラグを回避するのは不可能だ」と、そう言いたいのだろう。
「カオスだけじゃない。あいつは他のバトルロワイアルにも出ているのはお前も知っているだろ?あいつがそこで何をしたかお前に分かるか?
もしかしたら、『柊かがみのために人を殺そうとする人外の生物』や、『柊かがみを悪魔だと疑い殺そうとしている人間』がいるかもしれない。
そして、お前は俺と同じ6/である以上、誤解フラグからは逃れようもない。お前が何をしようと、最終的にお前は誤解される。どうせつかさにだって姉と誤解されたんだろう?
―――つまり、だ」
『俺』は笑う。何を考えているかはだいたい分かった。俺だからな。
こいつは―――俺を試している。
何度ロワに出ても対主催を続ける俺を嘲笑い、「今のお前に誤解フラグを回避するのは不可能だ」と、そう言いたいのだろう。
「カオスだけじゃない。あいつは他のバトルロワイアルにも出ているのはお前も知っているだろ?あいつがそこで何をしたかお前に分かるか?
もしかしたら、『柊かがみのために人を殺そうとする人外の生物』や、『柊かがみを悪魔だと疑い殺そうとしている人間』がいるかもしれない。
そして、お前は俺と同じ6/である以上、誤解フラグからは逃れようもない。お前が何をしようと、最終的にお前は誤解される。どうせつかさにだって姉と誤解されたんだろう?
―――つまり、だ」
悔しいが、こいつは間違いなく俺の知らない情報を持っている。
おそらくは―――他のロワの『柊かがみ』の情報を。
思わず舌打ちする。俺のくせに俺と情報を共有しないなんて卑怯だ!
おそらくは―――他のロワの『柊かがみ』の情報を。
思わず舌打ちする。俺のくせに俺と情報を共有しないなんて卑怯だ!
「……お前が行動すればするほど、首を絞めるのはお前だけじゃない、柊かがみも同じってことだよ。
今のお前とあいつは―――文字通り一心同体だってことだ」
今のお前とあいつは―――文字通り一心同体だってことだ」
うるせえよ。
分かってるよ。そんなこととっくに分かってるっつの。
だが―――そうだった。
俺は、少し忘れていたかもしれない。
つかさに姉になってほしいといわれ、かがみに会うまで姉を演じようとしていた俺は。
かがみの姿でいることの不幸を考えることを―――忘れていた。
「……」
「……おいおい、そんなに暗くなるなよ。前向きに考えようぜ。お前だって分かるだろ?今のお前とかがみは一心同体……それはつまり、お前のやったことは、全てかがみのせいになる、そういうことだ」
「……」
「何だったら、尻でも叩いてやろうか。つかさの前でかがみが特殊な性癖の持ち主なんですってばらしてやってもいいぜ」
ああ、うるせえな。
そんなこと―――俺だってすぐに分かったし、そんなことまっぴらごめんなんだよ。
みなまで言うな。何でこいつは同じ俺のくせに上から目線なんだ?
分かってるよ。そんなこととっくに分かってるっつの。
だが―――そうだった。
俺は、少し忘れていたかもしれない。
つかさに姉になってほしいといわれ、かがみに会うまで姉を演じようとしていた俺は。
かがみの姿でいることの不幸を考えることを―――忘れていた。
「……」
「……おいおい、そんなに暗くなるなよ。前向きに考えようぜ。お前だって分かるだろ?今のお前とかがみは一心同体……それはつまり、お前のやったことは、全てかがみのせいになる、そういうことだ」
「……」
「何だったら、尻でも叩いてやろうか。つかさの前でかがみが特殊な性癖の持ち主なんですってばらしてやってもいいぜ」
ああ、うるせえな。
そんなこと―――俺だってすぐに分かったし、そんなことまっぴらごめんなんだよ。
みなまで言うな。何でこいつは同じ俺のくせに上から目線なんだ?
「それなら、殺せばいい」
『俺』は、その刃先を俺の喉元に向け、それだけぽつりと漏らした。
そこに、享楽的な響きはない。
それは俺には、ただの諦念、そして放棄にしか見えなかった。
「つかさを守りたいんだろ?脱出したいんだろ?誤解されたくないんだろ?
それなら寧ろ、お前は殺し合いに乗るべきだ。まさか嫁でもないかがみに罪をなすりつけるのは忍びない、なんて情けないことは言う訳ないよな?」
『俺』は、その刃先を俺の喉元に向け、それだけぽつりと漏らした。
そこに、享楽的な響きはない。
それは俺には、ただの諦念、そして放棄にしか見えなかった。
「つかさを守りたいんだろ?脱出したいんだろ?誤解されたくないんだろ?
それなら寧ろ、お前は殺し合いに乗るべきだ。まさか嫁でもないかがみに罪をなすりつけるのは忍びない、なんて情けないことは言う訳ないよな?」
―――お姉ちゃんって、呼んでもいいですか?
つかさを思い出す。
まだ出会ってそんなに時間は立っていない。
俺の腐れ縁の相手である柊かがみの妹―――それだけの関係。
それだけの関係のはずだ。
お姉ちゃんなんて、ただの偽物。
本物がつかさの前に現れれば、すぐに瓦解してしまうだけの関係。
だが―――
それでも、俺はつかさに、辛い現実を突きつけたくない。
それがただの逃避でしかないと分かっていても。
俺は『姉』として―――つかさの前で人を殺すなんてできないんだよ。
「……知るかよ」
俺は、それだけ吐き捨て、目の前の『俺』を睨みつける。
かがみの姿じゃ威厳も何もあったもんじゃないが、相手だってウェディングドレスだからそう変わらんだろ。
まだ出会ってそんなに時間は立っていない。
俺の腐れ縁の相手である柊かがみの妹―――それだけの関係。
それだけの関係のはずだ。
お姉ちゃんなんて、ただの偽物。
本物がつかさの前に現れれば、すぐに瓦解してしまうだけの関係。
だが―――
それでも、俺はつかさに、辛い現実を突きつけたくない。
それがただの逃避でしかないと分かっていても。
俺は『姉』として―――つかさの前で人を殺すなんてできないんだよ。
「……知るかよ」
俺は、それだけ吐き捨て、目の前の『俺』を睨みつける。
かがみの姿じゃ威厳も何もあったもんじゃないが、相手だってウェディングドレスだからそう変わらんだろ。
「……そうか、しかたない。悪いが俺には仕事があるんでね、邪魔をしないでくれると助かるな。……じゃあな、もう会わないことを祈るぜ」
『俺』はそれだけ言い残し、背を向けプールから立ち去っていく。
元来た裏口を通って。
俺があいつに攻撃を仕掛けたところで、勝てるかどうか分からない。
経験はあいつと俺は同じ―――しかし、俺の体は女子高校生だ。さすがに無茶だろう。
それに俺は、俺を殺すなんてまっぴらごめんだった。
やがて『俺』の姿は俺の前から消え、見えなくなった。
ドアが閉まる、音。
『俺』はそれだけ言い残し、背を向けプールから立ち去っていく。
元来た裏口を通って。
俺があいつに攻撃を仕掛けたところで、勝てるかどうか分からない。
経験はあいつと俺は同じ―――しかし、俺の体は女子高校生だ。さすがに無茶だろう。
それに俺は、俺を殺すなんてまっぴらごめんだった。
やがて『俺』の姿は俺の前から消え、見えなくなった。
ドアが閉まる、音。
「……なんだってんだよ……」
俺は殺し合いには乗らない。
ここから脱出する。脱出するんだ。
いつもやってきたように。
何回目か数えるのも面倒になったバトルロワイアル出場の経験を生かして、主催を倒してさっさと帰る。
ついでに妻のみなみやかがみも拾って、一緒に帰るんだ。
だから俺は殺し合いには乗らない。
乗らないんだ。
俺は殺し合いには乗らない。
ここから脱出する。脱出するんだ。
いつもやってきたように。
何回目か数えるのも面倒になったバトルロワイアル出場の経験を生かして、主催を倒してさっさと帰る。
ついでに妻のみなみやかがみも拾って、一緒に帰るんだ。
だから俺は殺し合いには乗らない。
乗らないんだ。
―――今なら、お前のやったことは全部かがみのせいになるじゃないか。
―――どうせ、何をやっても最終的には誤解されて死ぬだけなんだ。
―――どうせ、何をやっても最終的には誤解されて死ぬだけなんだ。
他の人間の言葉なら、笑って切り捨てることができた。
俺はそこまで精神的にやわじゃない。
だが、相手は、俺と違うところから来た『俺』。
あいつは俺と同じ経験を、思考を、そして悲劇を知っている。
それ故に、俺にはとてもあいつの言葉を真っ向から否定することなどできるはずがない。
あれは俺の―――道を誤っただけの『俺』そのものなのだから。
俺はそこまで精神的にやわじゃない。
だが、相手は、俺と違うところから来た『俺』。
あいつは俺と同じ経験を、思考を、そして悲劇を知っている。
それ故に、俺にはとてもあいつの言葉を真っ向から否定することなどできるはずがない。
あれは俺の―――道を誤っただけの『俺』そのものなのだから。
「……あいつらのとこ、行かないとな」
魅音とつかさが心配だった。
今はとにかくそのことだけを考えよう。
あそこは9時からの禁止エリアになっていた。今はまだ間に合うが、もたもたしていると首輪が爆発しちまう。
本当はもっといい場所を待ち合わせに使いたかったが、咄嗟にあいつにばれない場所が百貨店しか思いつかなかったのだから仕方ない。
「……無事だよな?」
この短時間で、あの二人の命が刈り取られていないことを祈りながら、俺は屋内プールを後にした。
魅音とつかさが心配だった。
今はとにかくそのことだけを考えよう。
あそこは9時からの禁止エリアになっていた。今はまだ間に合うが、もたもたしていると首輪が爆発しちまう。
本当はもっといい場所を待ち合わせに使いたかったが、咄嗟にあいつにばれない場所が百貨店しか思いつかなかったのだから仕方ない。
「……無事だよな?」
この短時間で、あの二人の命が刈り取られていないことを祈りながら、俺は屋内プールを後にした。
「……くそっ」
対主催を、やる。
そう、決意しているのに。
ひたすら歩を進める俺の頭の中からは、『俺』の言葉が完全に消えてはくれなかった。
対主催を、やる。
そう、決意しているのに。
ひたすら歩を進める俺の頭の中からは、『俺』の言葉が完全に消えてはくれなかった。
【F-4/屋内プール入口/1日目-朝】
【6/氏(外見かがみ)@オールジャンルバトルロワイアル】
[状態];健康、わずかな迷い
[装備]:遠坂凛の服、カリバーン@アニロワ2nd
[持物]:デイパック、基本支給品、コッペパン@らき☆すた、不明支給品x1
[方針/目的]
基本方針:このロワから脱出する。
0;魅音、つかさと合流する
1:つかさの姉を演じ、彼女がかがみに会えるよう努力する?
2:このロワについて考える。
3;6/(神)に関して複雑な感情。殺したくはないが……
4:かがみの誤解フラグ……か……
[状態];健康、わずかな迷い
[装備]:遠坂凛の服、カリバーン@アニロワ2nd
[持物]:デイパック、基本支給品、コッペパン@らき☆すた、不明支給品x1
[方針/目的]
基本方針:このロワから脱出する。
0;魅音、つかさと合流する
1:つかさの姉を演じ、彼女がかがみに会えるよう努力する?
2:このロワについて考える。
3;6/(神)に関して複雑な感情。殺したくはないが……
4:かがみの誤解フラグ……か……
[備考]
※ランキング作成人に会うらへんからの参戦です。
※6/(神)のマーダーになった経緯を把握しました。
※ランキング作成人に会うらへんからの参戦です。
※6/(神)のマーダーになった経緯を把握しました。
※
「……やはり俺は俺、か」
俺はプールを出て、思わず溜息を洩らした。
予想通りではあったが、実際目にすると酷く滑稽だった。
俺は、やはり対主催で、弱者を守るために動いていた。
どうせ、誤解されるだけなのに。
今はつかさは、あのかがみの姿をした『俺』を慕っているかもしれない。しかし、そんな関係がいつまで持つか。
みゆきだけならいい。次の放送でこなたが、ゆたかが、みなみが、ななこが、そしてかがみ本人が死んだらどうなる?
どんな疑心暗鬼にとらわれ、どんな誤解を押し付けられるか分かったもんじゃない。
実際、あのキョドり具合からして魅音も明らかに何らかの誤解を抱いていたようだしな。
そう、だから無意味なんだ。
どうせ誤解されるなら、人を助けたって意味がない。
いくら優しくしても、最終的に待つのは誤解フラグ、誤解フラグ、誤解フラグ、そして死。
誤解で崩壊する絆など、慣れ合いなどない方がいい。
お前だって知っているだろ、もう一人の6/。
俺の方が、お前より早く気づいたようだがな。ほら、お前たちと俺が少し違うってことが分かっただろう?
この世界に―――神はいないってことに。
神様なんてのは、普段は助けてくれもしない癖に、要らない時にばかり現れる、人間以上に信頼のおけない屑だってことにな。
俺はプールを出て、思わず溜息を洩らした。
予想通りではあったが、実際目にすると酷く滑稽だった。
俺は、やはり対主催で、弱者を守るために動いていた。
どうせ、誤解されるだけなのに。
今はつかさは、あのかがみの姿をした『俺』を慕っているかもしれない。しかし、そんな関係がいつまで持つか。
みゆきだけならいい。次の放送でこなたが、ゆたかが、みなみが、ななこが、そしてかがみ本人が死んだらどうなる?
どんな疑心暗鬼にとらわれ、どんな誤解を押し付けられるか分かったもんじゃない。
実際、あのキョドり具合からして魅音も明らかに何らかの誤解を抱いていたようだしな。
そう、だから無意味なんだ。
どうせ誤解されるなら、人を助けたって意味がない。
いくら優しくしても、最終的に待つのは誤解フラグ、誤解フラグ、誤解フラグ、そして死。
誤解で崩壊する絆など、慣れ合いなどない方がいい。
お前だって知っているだろ、もう一人の6/。
俺の方が、お前より早く気づいたようだがな。ほら、お前たちと俺が少し違うってことが分かっただろう?
この世界に―――神はいないってことに。
神様なんてのは、普段は助けてくれもしない癖に、要らない時にばかり現れる、人間以上に信頼のおけない屑だってことにな。
―――ほら、行くわよ、6/!
「……ちっ」
理由は分からない。
何故か主催を共に務めた時の柊かがみの顔を思い出して、舌打ちする。
「……ちっ」
理由は分からない。
何故か主催を共に務めた時の柊かがみの顔を思い出して、舌打ちする。
そう、分かっていたじゃないか。
俺が一番あの場で先に殺しておくべきは、柊かがみだった。
いくら誤解フラグを立てて利用するという目的があったとはいえ、あの場で俺が一番はじめに片付けておくべきはどう考えても一番近くにいたかがみの姿をした俺だった。
なのに俺は、かがみを殺すことではなく、怪我を負わせることを選んだ。
それをしなかった『後付けの理由』ならいくつでもある。
一つは、かがみ―――いや、俺がつかさを抱きかかえていたから。
もう一つは、フラグ作りに有用だと思ったから。
そしてもう一つは―――
俺にとって、あまり認めたくないことでもあった。
俺が一番あの場で先に殺しておくべきは、柊かがみだった。
いくら誤解フラグを立てて利用するという目的があったとはいえ、あの場で俺が一番はじめに片付けておくべきはどう考えても一番近くにいたかがみの姿をした俺だった。
なのに俺は、かがみを殺すことではなく、怪我を負わせることを選んだ。
それをしなかった『後付けの理由』ならいくつでもある。
一つは、かがみ―――いや、俺がつかさを抱きかかえていたから。
もう一つは、フラグ作りに有用だと思ったから。
そしてもう一つは―――
俺にとって、あまり認めたくないことでもあった。
「……迷ったのか、俺は」
ここに来る前から、危惧していたことでもあった。
『俺は、柊かがみを殺せるのか?』
もしかしたら、不意打ちでもしなければ殺しきれないかもしれない。
技術的な問題ではなく、もっと―――精神的な意味で。
その不安が、現実となってのしかかってきたように思えた。
結果的にあれは俺でありかがみではなかった訳だが。
ここに来る前から、危惧していたことでもあった。
『俺は、柊かがみを殺せるのか?』
もしかしたら、不意打ちでもしなければ殺しきれないかもしれない。
技術的な問題ではなく、もっと―――精神的な意味で。
その不安が、現実となってのしかかってきたように思えた。
結果的にあれは俺でありかがみではなかった訳だが。
本当に、俺はあいつを殺せるのだろうか。
それこそ、神の力でもないと―――って、何を考えているんだ俺は。そもそもあれはここにはないし、第一俺は神になんて絶対に頼らないっ!!!
それこそ、神の力でもないと―――って、何を考えているんだ俺は。そもそもあれはここにはないし、第一俺は神になんて絶対に頼らないっ!!!
……落ち着け6/。とにかく、俺は早くここから帰るんだ。誰を殺そうと知ったことか。
迷いは―――ない。
あとはあいつが、どう動いてくれるか。
そう簡単にマーダーになってくれるとは思えない。なぜならあいつは『俺』だから。
俺だってこれでも、ここに来る前のロワでは、ちゃんと対主催としての計画を練っていたんだぜ?
だから、本気でマーダーになってもらおうなんて思っちゃいない。あいつがつかさを守り、絶対に脱出する、人を殺さないというならそれも構わない。というか理解の範囲内すぎる。
だが、お前はいつか思い知るだろうよ、『俺』。
柊かがみの外見をしていることが、どれだけの誤解を招くか、お前は俺以上にわかっちゃいない。
いや、きっとまだ俺も完全に分かっているわけじゃない。かがみに漫画ロワ以外でのフラグが積み重なっている可能性は高いからだ。
ただでさえ俺は誤解に振り回され続ける人間―――それにかがみが加われば、いったいどれだけの数の誤解を受けるだろう。
そして場慣れした俺はいったいどのように鮮やかにそれを裁き、仲間を殺さず、つかさを守り、この場から脱出するのか―――可能かどうかも含めて、非常に興味深い。
「……馬鹿だな」
迷いは―――ない。
あとはあいつが、どう動いてくれるか。
そう簡単にマーダーになってくれるとは思えない。なぜならあいつは『俺』だから。
俺だってこれでも、ここに来る前のロワでは、ちゃんと対主催としての計画を練っていたんだぜ?
だから、本気でマーダーになってもらおうなんて思っちゃいない。あいつがつかさを守り、絶対に脱出する、人を殺さないというならそれも構わない。というか理解の範囲内すぎる。
だが、お前はいつか思い知るだろうよ、『俺』。
柊かがみの外見をしていることが、どれだけの誤解を招くか、お前は俺以上にわかっちゃいない。
いや、きっとまだ俺も完全に分かっているわけじゃない。かがみに漫画ロワ以外でのフラグが積み重なっている可能性は高いからだ。
ただでさえ俺は誤解に振り回され続ける人間―――それにかがみが加われば、いったいどれだけの数の誤解を受けるだろう。
そして場慣れした俺はいったいどのように鮮やかにそれを裁き、仲間を殺さず、つかさを守り、この場から脱出するのか―――可能かどうかも含めて、非常に興味深い。
「……馬鹿だな」
思わずその言葉が漏れた。
ああ、本当に俺はバカだった。
ああ、本当に俺はバカだった。
だから―――俺はもう一人の『俺』にも分かってほしかったのかもしれない。
どうせ、お前も信じてもらえないに違いない、と。
誰からも誤解され、悲劇を見るくらいなら―――その作り手になった方がましだ、と。
どうせ、お前も信じてもらえないに違いない、と。
誰からも誤解され、悲劇を見るくらいなら―――その作り手になった方がましだ、と。
……まあ、そんな感傷に浸っている場合じゃない。
ともかくあのかがみはかがみじゃなかった。それでいいだろう。
今は手っ取り早く参加者を殺すこと、そしてかがみを誤解フラグにはめることを考えよう。
ともかくあのかがみはかがみじゃなかった。それでいいだろう。
今は手っ取り早く参加者を殺すこと、そしてかがみを誤解フラグにはめることを考えよう。
そう、余計なことは考えないに、限るってもんだ。
さて―――三村を探すとしようか。
さて―――三村を探すとしようか。
【F-4/プール裏/1日目-朝】
【6/氏(神)@オールロワ】
[状態]:疲労(小)、精神疲労(中)
[装備]:バヨネットx2@漫画ロワ、マジシャンズレッド(魔術師の赤)のDISC@漫画ロワ
[持物]:
[方針/行動]
基本方針:何がなんでも元の世界に帰る。
0:誤解をうまく使い、他の6/やかがみを陥れる。
A)自分自身である他の6/に誤解をなすりつける。
B) スタンドDISC(漫画ロワ)の記憶を使ってかがみに誤解フラグを立てる。
1:どこかでまともな服を調達する。
2:6/(かがみ)がどうなるか気になる
3:かがみを殺すことについては……
[状態]:疲労(小)、精神疲労(中)
[装備]:バヨネットx2@漫画ロワ、マジシャンズレッド(魔術師の赤)のDISC@漫画ロワ
[持物]:
[方針/行動]
基本方針:何がなんでも元の世界に帰る。
0:誤解をうまく使い、他の6/やかがみを陥れる。
A)自分自身である他の6/に誤解をなすりつける。
B) スタンドDISC(漫画ロワ)の記憶を使ってかがみに誤解フラグを立てる。
1:どこかでまともな服を調達する。
2:6/(かがみ)がどうなるか気になる
3:かがみを殺すことについては……
[備考]
※涼宮ハルヒの出展元を分かっていません。
※6/(かがみ)が、かがみの外見をしていることを認識しました。(経緯は知りません)
※漫画ロワ以外にも、かがみが参加しているロワがあるかもしれないと考えています。
※涼宮ハルヒの出展元を分かっていません。
※6/(かがみ)が、かがみの外見をしていることを認識しました。(経緯は知りません)
※漫画ロワ以外にも、かがみが参加しているロワがあるかもしれないと考えています。
080:性欲の!熱いホモ! | 投下順 | 081:君は僕に似ている(後編) |
080:性欲の!熱いホモ! | 時系列順 | |
060:誰かが死ぬのが怖いのか? | 6/氏(外見かがみ) | |
園崎魅音 | ||
柊つかさ | ||
070:1984年 | 6/氏(神) |