私が『私』であるために ◆DiyZPZG5M6
闇に閉ざされた空が徐々に青を取り戻してゆく。
漆黒に塗りつぶされた星空は深い藍色に染まり星の光が少なくなっていた。
西の空には沈みかけの月。
藍から白へ変わりゆく東の空。
夜明けはもうすぐだった。
漆黒に塗りつぶされた星空は深い藍色に染まり星の光が少なくなっていた。
西の空には沈みかけの月。
藍から白へ変わりゆく東の空。
夜明けはもうすぐだった。
こなたは普段の様子とは打って変わって不安な面持ちで爆弾に寄り添うように歩いている。
対して爆弾は脳天気そうな笑みを浮かべて歩いている。
今、このシーンだけを切り取って覗いてみれば、地球破壊爆弾のほうが普段の『泉こなた』らしく見えていた。
対して爆弾は脳天気そうな笑みを浮かべて歩いている。
今、このシーンだけを切り取って覗いてみれば、地球破壊爆弾のほうが普段の『泉こなた』らしく見えていた。
日常から切り離された殺し合いの場に放り込まれ、6/と爆弾と行動を共にするものの、予期せぬ桂言葉の襲撃で重傷を負ってしまったこなた。
すぐに適切な処置を行えば一命は取り留めるのだが、この場にそれが可能な設備と技術を持った人間はいない。
後はゆっくりと訪れる死を待つだけなのだが彼女は願った。「生きたい」と。
自ら望んだ事とは言え、人でなくなったその身体。昼の世界から目を背け、夜闇を徘徊し、人間の生き血を啜る化物である吸血鬼の身体。
まだその実感は無いもののやがて訪れる日の出が否応にも自らの変貌を思い知らされることになる。
それがこなたを内面に澱み、不安を呼び起させていた。
すぐに適切な処置を行えば一命は取り留めるのだが、この場にそれが可能な設備と技術を持った人間はいない。
後はゆっくりと訪れる死を待つだけなのだが彼女は願った。「生きたい」と。
自ら望んだ事とは言え、人でなくなったその身体。昼の世界から目を背け、夜闇を徘徊し、人間の生き血を啜る化物である吸血鬼の身体。
まだその実感は無いもののやがて訪れる日の出が否応にも自らの変貌を思い知らされることになる。
それがこなたを内面に澱み、不安を呼び起させていた。
「元気ないね~こなたちゃん。もっとテンション上げなよー。深窓の令嬢然とした表情は君らしくないZE!」
「……『私』らしくか。ねぇ爆弾さん?」
「ん? 何かな~」
「爆弾さんが知ってる『私』。爆弾さんが漫画やアニメで知ってる『泉こなた』という人間ってどんなキャラなの?」
「……『私』らしくか。ねぇ爆弾さん?」
「ん? 何かな~」
「爆弾さんが知ってる『私』。爆弾さんが漫画やアニメで知ってる『泉こなた』という人間ってどんなキャラなの?」
少し間だけ流れる沈黙の時。
こなたは自らと全く同じ容姿の爆弾の顔をじっと見つめていた。
その真剣な表情に爆弾からも脳天気な表情が消える。
そして爆弾は苦笑いを浮かべ言った。
こなたは自らと全く同じ容姿の爆弾の顔をじっと見つめていた。
その真剣な表情に爆弾からも脳天気な表情が消える。
そして爆弾は苦笑いを浮かべ言った。
「中々難しい意見だねえ……確かに私は表面的な部分しか知らない。ロリ体型でオタクで運動神経抜群のインドア派でオヤジ臭い言動と子供っぽさが同居する人間。それが私が知ってる『泉こなた』かな」
「あはは、自分の事ながら無茶苦茶なキャラだね」
「一言で言ってしまえばトリックスター、タロットカードで言うと愚者的な側面を持つ人間かな」
「むぅ……愚者か……微妙にけなされてる気が」
「そう? 私にとっては褒め言葉だけどなあ。主人公ぽくていいじゃん」
「主人公?」
「そ、全ての始まり。真理へ到るための遠き旅路。何物にも囚われない若き旅人の先に待つは無限の可能性、無限の未来。ほら、こう言うと主人公みたいでしょ?」
「物は言いようって奴だね」
「あはっ☆」
「あはは、自分の事ながら無茶苦茶なキャラだね」
「一言で言ってしまえばトリックスター、タロットカードで言うと愚者的な側面を持つ人間かな」
「むぅ……愚者か……微妙にけなされてる気が」
「そう? 私にとっては褒め言葉だけどなあ。主人公ぽくていいじゃん」
「主人公?」
「そ、全ての始まり。真理へ到るための遠き旅路。何物にも囚われない若き旅人の先に待つは無限の可能性、無限の未来。ほら、こう言うと主人公みたいでしょ?」
「物は言いようって奴だね」
「あはっ☆」
「私が『愚者』なら、かがみやつかさ、みゆきさんをタロットで表すと何になりそう?」
こなたの問いかけに爆弾は顎に手を当てうーんと声を上げ思案する。
そして手をぽんっと叩いて答えた。
そして手をぽんっと叩いて答えた。
「そだねぇ……みゆきさんは『女教皇』、つかさは『女帝』かな」
「あー二人ともそれっぽいねぇ。んじゃかがみは?」
「さしずめ『戦車』か『力』だね」
「なるほどかがみらしいや」
「あー二人ともそれっぽいねぇ。んじゃかがみは?」
「さしずめ『戦車』か『力』だね」
「なるほどかがみらしいや」
こなたはくすりと笑みを浮かべるものの少しだけ肩を落とす。
「ありゃ、どうしたの?」
「ん……ここにかがみがいたら絶対『おい、あんたら普段から私をどんな目でみてるんだ』ーーってツッコミが入ると思っちゃって。かがみいないのに期待しちゃうんだよね、いつもの癖で」
「……みんなと会いたい?」
「うん……会いたい。でも今は会うのが怖い……だって今の私は……」
「ん……ここにかがみがいたら絶対『おい、あんたら普段から私をどんな目でみてるんだ』ーーってツッコミが入ると思っちゃって。かがみいないのに期待しちゃうんだよね、いつもの癖で」
「……みんなと会いたい?」
「うん……会いたい。でも今は会うのが怖い……だって今の私は……」
こなたの小さな肩が震えている。
それは怯え、化物と化してしまった自分と相対した彼女達の反応への恐怖。
それは怯え、化物と化してしまった自分と相対した彼女達の反応への恐怖。
「大丈夫だよこなたちゃん。君の友だちはそんな事で君を嫌いになんかなったりしないよ。こなたちゃんはこなたちゃん、そこに人も吸血鬼も関係ないんだから」
「ありがとう爆弾さん、でもまだ私にそこまでの勇気は持てないよ……」
「当然だよ、ゲームと現実は違う。簡単に主人公覚醒イベントなんて起きない物なのだよ」
「ありがとう爆弾さん、でもまだ私にそこまでの勇気は持てないよ……」
「当然だよ、ゲームと現実は違う。簡単に主人公覚醒イベントなんて起きない物なのだよ」
ちっちと指を振ってにやりと笑う爆弾。
こなたは少しだけ気が晴れたような気がした。
こなたは少しだけ気が晴れたような気がした。
「おっと! 雑談に興じて本来の目的を忘れていたと思いきや、あれを見るのだこなたちゃん!」
「えっどうしたの!?」
「えっどうしたの!?」
爆弾が指差す方向にそれはあった。
象の姿をしたマスコットが店頭に飾られている、とある店舗。
紛れもなくそれはその店が薬局であることを示していた。
象の姿をしたマスコットが店頭に飾られている、とある店舗。
紛れもなくそれはその店が薬局であることを示していた。
「ここならきっと日焼け止めクリームあるよっ! さ、もうすぐ夜が明ける。早く行こ!」
「あっ……ちょっと爆弾さん!」
「あっ……ちょっと爆弾さん!」
こなたの手を引いて駆け出す爆弾。
突然手を引かれ躓きそうになったがこなたはそのまま手を引かれ走り出した。
突然手を引かれ躓きそうになったがこなたはそのまま手を引かれ走り出した。
手入れが行き届いていた店内。
まるでついさっきまで人がいたかのような空間の痕。
店は綺麗に関わらず人の気配だけが消失していた。
まるでついさっきまで人がいたかのような空間の痕。
店は綺麗に関わらず人の気配だけが消失していた。
「おーっさすがは薬局。こんなに多くの日焼け止め用品があるぜぃ!」
「そういえばさ、気になってた事があったんだけど……」
「ん? どうしたの?」
「確かに私は吸血鬼になったんだけど……特にニンニクが苦手と言うわけでもないし十字架が駄目と言う事もなさそう。吸血鬼ってそういうの弱点じゃないの?」
「あー……たぶんそれは私の吸血鬼観とこなたちゃんの吸血鬼観にあるんだと思う」
「吸血鬼観……?」
「そ、十字架に弱いってのは吸血鬼が生前キリスト教徒だったからてのがあるみたい。こなたちゃんはキリスト教徒ってわけじゃないでしょ?」
「そだね、家に仏壇があるけど特定の宗教を信仰をしてるわけじゃないかな。クリスマスも初詣もするよ」
「まあ、何というか生前の文化・生活に影響されると私は推測するけどね」
「じゃあ日光に弱いってのは」
「それは吸血鬼の弱点の最たるものだからねー。世界中の人間の共通認識だから誰にでもその弱点は出てくるんだと思うよ」
「だったら爆弾さんが平気なのはなぜ?」
「そりゃあ私は真祖だもん。真祖の吸血鬼は日光が平気と相場が決まってるのさー。ま、こなたちゃんの明確な弱点は日光に弱いのと、流れる水を渡れない……つまり泳げないぐらいじゃないかな」
「ふぅん……」
「その日光も紫外線をカットすることで克服できるしねー。そのための日焼け止めクリームだよ」
「でも……なんで紫外線が吸血鬼の弱点になってるんだろ……」
「ジョジョの影響だよきっと」
「うわっ安直」
「大丈夫、効果は私が保障するから。んじゃクリーム塗るから服脱いでー」
「おっけー」
「そういえばさ、気になってた事があったんだけど……」
「ん? どうしたの?」
「確かに私は吸血鬼になったんだけど……特にニンニクが苦手と言うわけでもないし十字架が駄目と言う事もなさそう。吸血鬼ってそういうの弱点じゃないの?」
「あー……たぶんそれは私の吸血鬼観とこなたちゃんの吸血鬼観にあるんだと思う」
「吸血鬼観……?」
「そ、十字架に弱いってのは吸血鬼が生前キリスト教徒だったからてのがあるみたい。こなたちゃんはキリスト教徒ってわけじゃないでしょ?」
「そだね、家に仏壇があるけど特定の宗教を信仰をしてるわけじゃないかな。クリスマスも初詣もするよ」
「まあ、何というか生前の文化・生活に影響されると私は推測するけどね」
「じゃあ日光に弱いってのは」
「それは吸血鬼の弱点の最たるものだからねー。世界中の人間の共通認識だから誰にでもその弱点は出てくるんだと思うよ」
「だったら爆弾さんが平気なのはなぜ?」
「そりゃあ私は真祖だもん。真祖の吸血鬼は日光が平気と相場が決まってるのさー。ま、こなたちゃんの明確な弱点は日光に弱いのと、流れる水を渡れない……つまり泳げないぐらいじゃないかな」
「ふぅん……」
「その日光も紫外線をカットすることで克服できるしねー。そのための日焼け止めクリームだよ」
「でも……なんで紫外線が吸血鬼の弱点になってるんだろ……」
「ジョジョの影響だよきっと」
「うわっ安直」
「大丈夫、効果は私が保障するから。んじゃクリーム塗るから服脱いでー」
「おっけー」
こなたは上着を脱ぐ。今頃になって血で汚れたセーラー服に気がつき。別の服を着たいなと思いつつ肌を晒す。
腹部に負った傷は完全に塞がっている。
あれだけ深い傷だったのに痕一つ残していなかった。
腹部に負った傷は完全に塞がっている。
あれだけ深い傷だったのに痕一つ残していなかった。
「それじゃあ背中からお願い」
上半身裸になったこなたは爆弾に背を向ける。
しかし爆弾は……
しかし爆弾は……
「だめだよ~ちゃんと全裸にならないと。じゃないと隅々まで塗りこめないからねー」
「えっ!?」
「えっ!?」
爆弾の手が一閃し、一瞬にして全裸に剥かれるこなた。
とてつもなく嫌な予感がこなたの脳裏に走る。
一方、爆弾の方は両手をわきわきさせながらにやりと笑っている。
とてつもなく嫌な予感がこなたの脳裏に走る。
一方、爆弾の方は両手をわきわきさせながらにやりと笑っている。
「いやー私ったら可愛い女の子を見るとついつい過度のスキンシップを取りたくなっちゃうんだよねぇ」
「嘘っ!?」
「大丈夫、優しくしてあげる☆」
「嘘っ!?」
「大丈夫、優しくしてあげる☆」
むふふと笑った爆弾により押し倒されるこなた。
何の抵抗も出来ずに組み伏せられる。
何の抵抗も出来ずに組み伏せられる。
「ちょっ……いくら私がエロゲ好きでもリアルでひぎぃはノーサンキュー!!!!」
「女は度胸! 何でも試してみるものさ!」
「それってキャラがちが……アッー」
「女は度胸! 何でも試してみるものさ!」
「それってキャラがちが……アッー」
こうしてこなたは体中隅々まで日焼け止めクリームを塗りたくられましたとさ。
☆
目の前に広がる一面の赤。
上を向いても下を向いても広がる赤い闇。
気持ち悪さと気持ち良さが入り混じった奇妙な浮遊感が私を包む。
この感触は前にも経験がある。爆弾さんに最初に血を吸われた時だ。
ということはまた血を吸われたんだ私……
上を向いても下を向いても広がる赤い闇。
気持ち悪さと気持ち良さが入り混じった奇妙な浮遊感が私を包む。
この感触は前にも経験がある。爆弾さんに最初に血を吸われた時だ。
ということはまた血を吸われたんだ私……
ふと前を見ると赤い霧がゆっくりと晴れてきた。
もうすぐ目が覚めると思いきやそれは違っていた。
霧は完全には晴れていない。でも目の前に広がる光景。
ノイズ交じりの不安定な空間はどこかのファミレスを投影している。
私は身体が無くなって意識だけがそこにある。そう、まるで夢の中のような感覚。
ザァっと砂嵐のようなノイズが時折みせる赤いファミレスの中に誰かがいた。
もうすぐ目が覚めると思いきやそれは違っていた。
霧は完全には晴れていない。でも目の前に広がる光景。
ノイズ交じりの不安定な空間はどこかのファミレスを投影している。
私は身体が無くなって意識だけがそこにある。そう、まるで夢の中のような感覚。
ザァっと砂嵐のようなノイズが時折みせる赤いファミレスの中に誰かがいた。
(ぶっ! かがみん!?)
私がもっとも良く知る人物がそこにいた。
だけどその姿はなんと裸エプロン一枚というとんでもない格好だった。
まあ裸エプロン姿のかがみんを妄想したことなんていくらでもあるけど、本当にそれが目の前の光景にあるなんて思ってみなかった。
その何だ。やっぱ妄想は妄想で留めておいたほうがいいよね。リアルで見ると結構引く。
でも……こんな光景は私は知らない。
まさかかがみは内緒でこんないけないバイトをッ!?
ってかがみん限ってそんなことあるはずないか……
ならこの光景は一体何だろう……
だけどその姿はなんと裸エプロン一枚というとんでもない格好だった。
まあ裸エプロン姿のかがみんを妄想したことなんていくらでもあるけど、本当にそれが目の前の光景にあるなんて思ってみなかった。
その何だ。やっぱ妄想は妄想で留めておいたほうがいいよね。リアルで見ると結構引く。
でも……こんな光景は私は知らない。
まさかかがみは内緒でこんないけないバイトをッ!?
ってかがみん限ってそんなことあるはずないか……
ならこの光景は一体何だろう……
と、ファミレスの自動ドアをくぐり誰かが入ってきた―――って私!?
目の前の『私』はかがみを見るやいなや服を脱ぎ彼女を押し倒していた。
『私』は口を大きく開くとかがみの首筋にその鋭い犬歯を突き立てていた。
目の前の『私』はかがみを見るやいなや服を脱ぎ彼女を押し倒していた。
『私』は口を大きく開くとかがみの首筋にその鋭い犬歯を突き立てていた。
(違う……これは私じゃない。きっと爆弾さんだ……)
音も声も聞こえず静寂の中絡み合う二つの肢体。
どうみても18禁スレスレの光景が広がってる。
私が血を吸われている時もこんなのだっただろうか、少しだけ6/さんの気持ちがわかったような気がする。
だけどどうして私はこの光景を見ているのだろう。
たぶん、理由は一つ。
爆弾さんの吸血鬼としての能力はアーカードを元にしている。
ヘルシングにおいて吸血とは血を通貨とした魂と命の同化。
だからこの光景は爆弾さんの記憶なのだろう。私と出会う前に経験した殺し合いの一場面。
爆弾さんの姿が私を元にしてるようにかがみを元とした誰かとの行為。
それだけにすぎない……のだけど……
本当に?
どうみても18禁スレスレの光景が広がってる。
私が血を吸われている時もこんなのだっただろうか、少しだけ6/さんの気持ちがわかったような気がする。
だけどどうして私はこの光景を見ているのだろう。
たぶん、理由は一つ。
爆弾さんの吸血鬼としての能力はアーカードを元にしている。
ヘルシングにおいて吸血とは血を通貨とした魂と命の同化。
だからこの光景は爆弾さんの記憶なのだろう。私と出会う前に経験した殺し合いの一場面。
爆弾さんの姿が私を元にしてるようにかがみを元とした誰かとの行為。
それだけにすぎない……のだけど……
本当に?
嫌な考えが脳裏によぎる。
これは爆弾さんの記憶なんかじゃなくて私の願望を投影してるのだとしたら。
これは爆弾さんの記憶なんかじゃなくて私の願望を投影してるのだとしたら。
友だちに対してこんなことをしたいと思っている。
かがみにあんなことをしたい私。
かがみをそういう目で見てる私の無意識の願望が私にそれを見せているのだとしたら?
かがみにあんなことをしたい私。
かがみをそういう目で見てる私の無意識の願望が私にそれを見せているのだとしたら?
(最低だ私……)
気持ち悪い。
吐き気がする。
世界が赤く赤く染まってゆく。
砂嵐が、ノイズがファミレスを満たしてゆく。
一心不乱に行為に耽っている二人もまた赤いノイズに掻き消されてゆく。
吐き気がする。
世界が赤く赤く染まってゆく。
砂嵐が、ノイズがファミレスを満たしてゆく。
一心不乱に行為に耽っている二人もまた赤いノイズに掻き消されてゆく。
私はそのまま意識を失い―――現実に舞い戻っていた。
☆
目を覚ました『私』はゆっくりと身体を起こした。
目覚めはアンニュイ、硬い床の上で意識を失っていた。
『私』は誰? そう私は泉こなた。
どうも血を吸われると自分と他人の(この場合は爆弾さんだけど)境界が曖昧になる。本当に慣れない感覚だよ。
目覚めはアンニュイ、硬い床の上で意識を失っていた。
『私』は誰? そう私は泉こなた。
どうも血を吸われると自分と他人の(この場合は爆弾さんだけど)境界が曖昧になる。本当に慣れない感覚だよ。
「おはよ、こなたちゃん」
「また私の血を吸ってるし……」
「また私の血を吸ってるし……」
首筋には二本の牙の痕がくっきりと残っている。
日焼け止めクリームを塗るにかこつけて私の血を吸うのが第一目的だったに違いない。
日焼け止めクリームを塗るにかこつけて私の血を吸うのが第一目的だったに違いない。
「どれくらいの間眠ってたの?」
「せいぜい30分てところかな。夜はほとんど明けた。そして……もうすぐ放送が始まると思う」
「せいぜい30分てところかな。夜はほとんど明けた。そして……もうすぐ放送が始まると思う」
ふと気がつくと私はいつのまにかに服を着ていた、が身体中がべとべとしている。
手足や身体どころか顔にまでクリームを塗られていた。
手足や身体どころか顔にまでクリームを塗られていた。
「うぇ……気持ち悪い……」
「これぐらい塗らないと防げないからねー。目一杯塗らせてもらったよ」
「うん、ありがと。とりあえず目的は達成だね。早く6/さんと合流しないと」
「そうだね急ごう」
「これぐらい塗らないと防げないからねー。目一杯塗らせてもらったよ」
「うん、ありがと。とりあえず目的は達成だね。早く6/さんと合流しないと」
「そうだね急ごう」
私たちは店を出ようとするが私は足を止めてしまう。
店の外には顔を出したばかりの太陽の光が路上を照らしている。
本当に大丈夫なのかな……
恐る恐る一歩を踏み出す。熱い光が肌を射す。
少し熱いけど耐えられない熱さではなかった。紫外線対策は本当に効果があってびっくり。
店の外には顔を出したばかりの太陽の光が路上を照らしている。
本当に大丈夫なのかな……
恐る恐る一歩を踏み出す。熱い光が肌を射す。
少し熱いけど耐えられない熱さではなかった。紫外線対策は本当に効果があってびっくり。
「ねっ大丈夫だったでしょ」
「あはっほんとだ」
「これで不完全ながらもデイウォーカーの仲間入りだね」
「あはっほんとだ」
「これで不完全ながらもデイウォーカーの仲間入りだね」
くすりと笑い合う私たち。
そんな私たちの前……正確には空に大きなスクリーンが突然映し出されていた。
そんな私たちの前……正確には空に大きなスクリーンが突然映し出されていた。
「何……これ」
「多分放送……だね」
「多分放送……だね」
『おまえら人間じゃねぇ!』
『あぁん?あんかけチャーハン?』
『おいこら、お前らか、私の服を剥ぎ取っt
『あぁん?あんかけチャーハン?』
『おいこら、お前らか、私の服を剥ぎ取っt
突然意味不明な映像と音声がスクリーンに映し出されたかと思った瞬間、画面は砂嵐状態になる。
そして画面が復帰した後、ピエロ姿の怪人が現れた。
そして画面が復帰した後、ピエロ姿の怪人が現れた。
『いきなりの放送事故失礼しました。 では早速ですが第一回定時放送を始めさせてもらいましょう……おい』
『は、はいピエモン様、それでは禁止エリアの発表を始めます』
『は、はいピエモン様、それでは禁止エリアの発表を始めます』
読み上げられる禁止エリア。
私はほとんどその話を聞いてはいなかった。
ただひたすら死んだ人間の中に私の友達がいないことを祈りながら―――
私はほとんどその話を聞いてはいなかった。
ただひたすら死んだ人間の中に私の友達がいないことを祈りながら―――
『高良みゆき』
「えっ……みゆき……さんが、死ん……だ?」
儚くも私の願いは届かなかった。
非情な現実は私に友達の死を告げる。
頭を思いっきりハンマーで殴られたような眩暈がして私はがっくりと膝をついた。
非情な現実は私に友達の死を告げる。
頭を思いっきりハンマーで殴られたような眩暈がして私はがっくりと膝をついた。
「こなたちゃん!?」
爆弾さんが何か言っている。だけど今の私に何も聞こえない。悲しみも沸かない。
ただ胸をするどいナイフで抉り取られたように心がからっぽだった。
唐突に訪れたみゆきさんの死は私に哀しみという感情すらも麻痺させていた。
ほら、事故で家族を亡くした人の話ってあるじゃない?
昨日まで元気だった人が今日は無言で帰宅ってやつ。
何が起こったのかさっぱりわからず。ただ呆然と周りの状況を眺めているだけ。
親類の人や葬式屋さんがお葬式の準備で忙しい中、魂が抜けたように呆然としていたって。
ただ胸をするどいナイフで抉り取られたように心がからっぽだった。
唐突に訪れたみゆきさんの死は私に哀しみという感情すらも麻痺させていた。
ほら、事故で家族を亡くした人の話ってあるじゃない?
昨日まで元気だった人が今日は無言で帰宅ってやつ。
何が起こったのかさっぱりわからず。ただ呆然と周りの状況を眺めているだけ。
親類の人や葬式屋さんがお葬式の準備で忙しい中、魂が抜けたように呆然としていたって。
その感覚って本当だったんだね。
きっと今の私の感覚もきっと同じ物。
あはは……突然の出来事に脳が処理能力を超えてフリーズ状態になってるんだ。
きっと今の私の感覚もきっと同じ物。
あはは……突然の出来事に脳が処理能力を超えてフリーズ状態になってるんだ。
「こなたちゃん……! しっかりして!」
「あ……ぅ……」
「あ……ぅ……」
爆弾さんの呼びかけにも私はうまく言葉を発せられない。
それでも必死に喉の奥から声を絞り出す。
それでも必死に喉の奥から声を絞り出す。
「ね……ぇ、爆弾さん、お父さんもこんな感覚だったのかな……?」
「えっ……?」
「空っぽなんだよ、心が。みゆきさんが死んじゃったのに悲しいなんて感覚が沸かないよ。ひたすら空っぽで何も考えられない」
「……………………」
「お母さんが死んだ時もお父さんはこんな感覚だったのかな? あはっ……違うよね。お母さんは病気で死んだ。きっとお母さんもお父さんもその最期の時を受け入れていたはず。
でもみゆきさんは違う……! 別に自分がもうすぐ死ぬなんて決して思ってなんかいない。不慮の事故で死んだ訳でもない」
「えっ……?」
「空っぽなんだよ、心が。みゆきさんが死んじゃったのに悲しいなんて感覚が沸かないよ。ひたすら空っぽで何も考えられない」
「……………………」
「お母さんが死んだ時もお父さんはこんな感覚だったのかな? あはっ……違うよね。お母さんは病気で死んだ。きっとお母さんもお父さんもその最期の時を受け入れていたはず。
でもみゆきさんは違う……! 別に自分がもうすぐ死ぬなんて決して思ってなんかいない。不慮の事故で死んだ訳でもない」
そうだ、お母さんとみゆきさんでは前提とする物が全く違う。
お母さんは若くして死んじゃったけど、その運命を呪ってなんかいなかったはず。
みゆきさんはこれっぽっちも死ぬいわれは無かったんだ。
ただ誰かが……誰かが生き残るがために……殺された。
ここがそういう場であることは解っていたのに、私自身一度殺されかけていたいうのに。
お母さんは若くして死んじゃったけど、その運命を呪ってなんかいなかったはず。
みゆきさんはこれっぽっちも死ぬいわれは無かったんだ。
ただ誰かが……誰かが生き残るがために……殺された。
ここがそういう場であることは解っていたのに、私自身一度殺されかけていたいうのに。
ああ……空っぽの心に悲しみと違う感情が沸き上がる。
どろどろとした嫌なものが沸き上がる。
どろどろとした嫌なものが沸き上がる。
―――殺してやる。
みゆきさんを殺した奴を殺してやりたい。
これから私の友達を殺そうとする人間を殺してやりたい。
縊り殺して、その血を空っぽになるまで啜ってやりたい。
赤い血を赤赤赤赤。
目の前が真っ赤に染まる。
赤いのは周りの景色じゃない、赤く染まってるのは私の瞳。
これから私の友達を殺そうとする人間を殺してやりたい。
縊り殺して、その血を空っぽになるまで啜ってやりたい。
赤い血を赤赤赤赤。
目の前が真っ赤に染まる。
赤いのは周りの景色じゃない、赤く染まってるのは私の瞳。
「こなたちゃんっ!」
ふわりと誰かが私を抱きしめていた。
長い髪と緑色の瞳の女の子、私と同じ姿の女の子の顔をがすぐ近くにあった。
長い髪と緑色の瞳の女の子、私と同じ姿の女の子の顔をがすぐ近くにあった。
「爆弾さん……?」
赤一色の世界が色を取り戻してゆく。
空っぽの心に満たされた嫌なものが引き潮のように遠ざかってゆく。
空っぽの心に満たされた嫌なものが引き潮のように遠ざかってゆく。
「君は『泉こなた』だから……! そんな事をするために人じゃなくなった訳じゃない。自分を見失わないで……!」
「あっ……」
「あっ……」
ああ、見抜かれていたんだ。
化物となって感情のままにその暴力を行使する私の内に澱む汚いものを。
どうして彼女はここまで私に優しくしてくれるんだろう。
私と同じ姿をしているから?
それとも他の理由があるの?
彼女の真意はわからない。彼女こそ掴みどころのない。登場人物を煙に巻くトリックスター。
だけどその感情は本物だと信じたかった。
化物となって感情のままにその暴力を行使する私の内に澱む汚いものを。
どうして彼女はここまで私に優しくしてくれるんだろう。
私と同じ姿をしているから?
それとも他の理由があるの?
彼女の真意はわからない。彼女こそ掴みどころのない。登場人物を煙に巻くトリックスター。
だけどその感情は本物だと信じたかった。
でも私の心の奥底に澱むモノは完全に消えたわけじゃない。
徐々に降り積もったソレが決壊してしまった時……それがひどく怖かった。
徐々に降り積もったソレが決壊してしまった時……それがひどく怖かった。
【B-6/1日目 市街 -朝】
【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:吸血鬼、疲労小 、精神的ショック中
[装備]:エンフィールドNo.2@アニ2(6/6+予備弾24発)、団長腕章@ニコロワ
[持物]:デイパック、支給品一式、魔法『フレイム・ボール』inエニグマの紙@漫画ロワ 日焼け止めクリーム@現実
[方針/行動]
基本方針:地球破壊爆弾No.V-7と同行して、何とか事態を解決できないか探ってみる。
1:みゆきさん……
2:6/と合流する。
3:自分や爆弾の知り合いを見つけ出して一緒に行動する。
4:”涼宮ハルヒ”に会えるのが楽しみ♪
[状態]:吸血鬼、疲労小 、精神的ショック中
[装備]:エンフィールドNo.2@アニ2(6/6+予備弾24発)、団長腕章@ニコロワ
[持物]:デイパック、支給品一式、魔法『フレイム・ボール』inエニグマの紙@漫画ロワ 日焼け止めクリーム@現実
[方針/行動]
基本方針:地球破壊爆弾No.V-7と同行して、何とか事態を解決できないか探ってみる。
1:みゆきさん……
2:6/と合流する。
3:自分や爆弾の知り合いを見つけ出して一緒に行動する。
4:”涼宮ハルヒ”に会えるのが楽しみ♪
[備考]
※登場時期は3年生になってから卒業するまでのうちのどこかです。
※地球破壊爆弾No.V-7の話を聞いて、参加者がフィクションを含む多数の世界から集められたものと知りました。
※こなたの備考に『6/の話を聞いて、フィクションが現実に存在する可能性も知りました』を追加で
※登場時期は3年生になってから卒業するまでのうちのどこかです。
※地球破壊爆弾No.V-7の話を聞いて、参加者がフィクションを含む多数の世界から集められたものと知りました。
※こなたの備考に『6/の話を聞いて、フィクションが現実に存在する可能性も知りました』を追加で
【地球破壊爆弾No.V-7@書き手ロワイアル2nd】
[状態]:(〓ω〓.)
[装備]:ソード・カトラス(能力)x2
[持物]:デイパック、支給品一式
[方針/行動]
基本方針:『らき☆すた計画』を成功させる。
1:こなたの精神状態が心配。
2:6/と合流する。
3:こなたを吸血鬼にしたことでロリスキーに罪悪感。
4:こなたや自分の知り合いを見つけ出しパーティに加える。
5:”涼宮ハルヒ”に会えるのが楽しみ♪
6:チート関係に関しては空気読む方向で。また簡単に変身しない。
[備考]
※登場時期は「238:trigger」の冒頭辺り。ウッカリデスが死亡するより前です。
※嫁はロリスキー一筋です。
※『らき☆すた計画』が何かは現在全くもって不明です。
深遠なる野望があるのかもしれませんが、ただらき☆すたキャラと親睦を深めたいだけかもしれません。
※投影したソード・カトラスは弾丸無限のコスモガンですが、撃つほどに体力を消耗します。
[状態]:(〓ω〓.)
[装備]:ソード・カトラス(能力)x2
[持物]:デイパック、支給品一式
[方針/行動]
基本方針:『らき☆すた計画』を成功させる。
1:こなたの精神状態が心配。
2:6/と合流する。
3:こなたを吸血鬼にしたことでロリスキーに罪悪感。
4:こなたや自分の知り合いを見つけ出しパーティに加える。
5:”涼宮ハルヒ”に会えるのが楽しみ♪
6:チート関係に関しては空気読む方向で。また簡単に変身しない。
[備考]
※登場時期は「238:trigger」の冒頭辺り。ウッカリデスが死亡するより前です。
※嫁はロリスキー一筋です。
※『らき☆すた計画』が何かは現在全くもって不明です。
深遠なる野望があるのかもしれませんが、ただらき☆すたキャラと親睦を深めたいだけかもしれません。
※投影したソード・カトラスは弾丸無限のコスモガンですが、撃つほどに体力を消耗します。
082:……も死んだし、そろそろ本気出す | 投下順 | 084:たった一人守れないで 生きてゆく甲斐がない |
082:……も死んだし、そろそろ本気出す | 時系列順 | 084:たった一人守れないで 生きてゆく甲斐がない |
069:ネクストらき☆ロワヒント「窓からの視線」 | 泉こなた | 085:大都会交響楽 |
地球破壊爆弾No.V-7 |