第552話:道は通ずる 作:◆l8jfhXC/BA
「……そんな奴の、言うことなんて、聞く必要ないわ」
動揺を露わにする保胤に対し、リナは声を絞り出した。
呻き声のような弱々しさに自分でも頼りなさを覚えるが、仕方がない。
「……リナさん?」
訝しげに自分の名を呼ぶ声には、微笑だけを返した。
そして彼から周囲へと視線を巡らし、室内の惨状を目に焼き付ける。
この状況は、自分が作り出したものだ。
八つ当たりで感情を爆発させた結果、ベルガーを瀕死の重体にし、保胤を追い込むこととなった。
この島では、こんな暴走と空回りの連続だった。ガウリイの死に絶望してゲームに乗ったときから、歯車が狂い続けていた。
自分は何一つ救えていない。何一つ成していない。
だからもう、間違えたくはなかった。
改めて覚悟を決めると、わずかに眉をひそめた臨也が問いかけてきた。
「それは、どういう意味だい?」
「仲間を陥れようとする奴なんかに、扇動されるな、ってことよ」
切れ切れの声を発しながら、無理矢理口元を吊り上げた笑みを臨也に向ける。
言葉を紡ぐたびに命がすり減っていく感覚を覚え、目眩がした。
しかしまだ先は長く、我慢するしかない。視線だけを彼に向けながら、床に意志を刻むように指を這わせる。
あからさまな虚勢の挑発を受けた彼は、ただ目を細めるだけだった。
「失礼だなぁ。ただ心を鬼にして、現実を語ってるだけじゃないか」
「確かに、今のことだけなら、そうとも言えるでしょうね」
当事者でなければ、リナも同じことを保胤に言ったかもしれない。
半分の不死の酒で、二人とも助けられる可能性は薄い。
たとえ中途半端に助かったとしても、完全に治療できるメフィストが戻ってくるのはいつになるか。
彼とベルガー、終が向かった先からは、今も破砕音と咆哮が鳴り響いている。
状況が切迫しすぎていた。臨也の言うとおり、現実的に考えればどちらかを見捨てることが不可欠だった。
だからこそ。
同じ思考に行き着いたからこそ、こうして貴重な時間を割いて、口を動かしている。
「だけど、志摩子を殺したことは許せない」
致命的な言葉に、場の空気が凍る。
それにはかまわず床に腕を滑らせながら、続ける。
「声を聞いてたけど、あんたは保胤に不死の酒を渡して、志摩子に飲ませたわね?
それなのに、ここにある酒の量が、半分から減ってないのはなぜ?」
「! 確かに……」
それに気づいたのは、ベルガーの刃に倒れた後だった。
皮肉にも臨也自身が話題に出さなければ、気づく機会はなかっただろう。
「へぇ、そうなんだ? 俺はあの時に見たのが初めてだったし、それもすぐに渡しちゃったから、元の量はわからないな。
それに、俺は渡しただけだよ? 実際に飲ませたのは保胤だ」
指摘に対しても、臨也は大仰に肩をすくめただけだった。
矛先を向けられた保胤は、顔を俯かせたまま何も言わない。歯痒さを感じながら、指が床を掻く。
確かにこの弾劾だけでは、彼に対して疑念が生じるだけだ。
だがもう一つの証拠と、先程彼が言った“友”という言葉が、リナに雑念を抱かせない。
(あたしは、保胤を信じている)
「あたしは、見てたのよ。
あたしが、ライティングを唱える前に、あんたが、デイパックに酒瓶を――中身が八割以上残った酒を、戻すのをね」
臨也の表情がわずかに強ばるのを見ながら、何かを掴んだ感触を得た。
「武装解除の際の、あのウォッカの瓶か……!」
証明の続きを、アラストールが継いだ。限界に近づいていたので助かった。
彼の行動を目撃した時点では、指摘以前に気にする余裕などなかった。思い出したのは、やはりたった今だ。
おそらく彼は、自分の酒を不死の酒とすり替え、保胤に使わせた後うまく回収したのだろう。
デイパックに戻された酒瓶を確認して、その残量が減っていれば言い逃れは不可能だ。
動揺を露わにする保胤に対し、リナは声を絞り出した。
呻き声のような弱々しさに自分でも頼りなさを覚えるが、仕方がない。
「……リナさん?」
訝しげに自分の名を呼ぶ声には、微笑だけを返した。
そして彼から周囲へと視線を巡らし、室内の惨状を目に焼き付ける。
この状況は、自分が作り出したものだ。
八つ当たりで感情を爆発させた結果、ベルガーを瀕死の重体にし、保胤を追い込むこととなった。
この島では、こんな暴走と空回りの連続だった。ガウリイの死に絶望してゲームに乗ったときから、歯車が狂い続けていた。
自分は何一つ救えていない。何一つ成していない。
だからもう、間違えたくはなかった。
改めて覚悟を決めると、わずかに眉をひそめた臨也が問いかけてきた。
「それは、どういう意味だい?」
「仲間を陥れようとする奴なんかに、扇動されるな、ってことよ」
切れ切れの声を発しながら、無理矢理口元を吊り上げた笑みを臨也に向ける。
言葉を紡ぐたびに命がすり減っていく感覚を覚え、目眩がした。
しかしまだ先は長く、我慢するしかない。視線だけを彼に向けながら、床に意志を刻むように指を這わせる。
あからさまな虚勢の挑発を受けた彼は、ただ目を細めるだけだった。
「失礼だなぁ。ただ心を鬼にして、現実を語ってるだけじゃないか」
「確かに、今のことだけなら、そうとも言えるでしょうね」
当事者でなければ、リナも同じことを保胤に言ったかもしれない。
半分の不死の酒で、二人とも助けられる可能性は薄い。
たとえ中途半端に助かったとしても、完全に治療できるメフィストが戻ってくるのはいつになるか。
彼とベルガー、終が向かった先からは、今も破砕音と咆哮が鳴り響いている。
状況が切迫しすぎていた。臨也の言うとおり、現実的に考えればどちらかを見捨てることが不可欠だった。
だからこそ。
同じ思考に行き着いたからこそ、こうして貴重な時間を割いて、口を動かしている。
「だけど、志摩子を殺したことは許せない」
致命的な言葉に、場の空気が凍る。
それにはかまわず床に腕を滑らせながら、続ける。
「声を聞いてたけど、あんたは保胤に不死の酒を渡して、志摩子に飲ませたわね?
それなのに、ここにある酒の量が、半分から減ってないのはなぜ?」
「! 確かに……」
それに気づいたのは、ベルガーの刃に倒れた後だった。
皮肉にも臨也自身が話題に出さなければ、気づく機会はなかっただろう。
「へぇ、そうなんだ? 俺はあの時に見たのが初めてだったし、それもすぐに渡しちゃったから、元の量はわからないな。
それに、俺は渡しただけだよ? 実際に飲ませたのは保胤だ」
指摘に対しても、臨也は大仰に肩をすくめただけだった。
矛先を向けられた保胤は、顔を俯かせたまま何も言わない。歯痒さを感じながら、指が床を掻く。
確かにこの弾劾だけでは、彼に対して疑念が生じるだけだ。
だがもう一つの証拠と、先程彼が言った“友”という言葉が、リナに雑念を抱かせない。
(あたしは、保胤を信じている)
「あたしは、見てたのよ。
あたしが、ライティングを唱える前に、あんたが、デイパックに酒瓶を――中身が八割以上残った酒を、戻すのをね」
臨也の表情がわずかに強ばるのを見ながら、何かを掴んだ感触を得た。
「武装解除の際の、あのウォッカの瓶か……!」
証明の続きを、アラストールが継いだ。限界に近づいていたので助かった。
彼の行動を目撃した時点では、指摘以前に気にする余裕などなかった。思い出したのは、やはりたった今だ。
おそらく彼は、自分の酒を不死の酒とすり替え、保胤に使わせた後うまく回収したのだろう。
デイパックに戻された酒瓶を確認して、その残量が減っていれば言い逃れは不可能だ。
(まだ、大丈夫よね)
言うべきこととすべきことを終えた後、リナは同じく横たわるベルガーを見た。
両の肺を傷つけられても、彼は意識を保っていた。弱々しいが明確な怒りが込められた視線で、臨也を見据えている。
異種族の血が混じる彼は、リナよりもタフだ。肉体的にも、そして精神的にも。
(……この世界には光が必要だって、ダナティアは言ってたわね)
ふと、そんなことを思い出す。
彼女はそのために感情を凍らせ、自らを犠牲にし、その存在を島中に訴えた。
リナに同じ真似はできなかった。ただ感情に振り回され続け、そこまでの強い決意を抱けなかった。
だからせめて、その意志を繋がなければならない。
と、ベルガーの視線がリナの腕に向けられ、その表情に驚愕が浮かんだ。
意図に気づかれたらしい。だが肺を損傷した彼は、それを仲間に伝えられない。
ただ苦笑だけを彼に送ると、視線をふたたび臨也に向けて、叫んだ。
「あんたなんかに、あたし達は弄ばれない。あんたなんかに、あたし達は負けない!」
宣言と同時に、最後の力を振り絞って腕を――光の剣の柄を握った腕を、胸部へと引き寄せた。
ベルガーに斬られ落としていたこれを掴むために、今までずっと注意をそらさせ、時間を稼いでいた。
見つかれば、絶対に止められるだろうから。
案の定青い顔で腕を伸ばす保胤を見つめながら、リナは小さく息を吸う。
最期の一瞬に考えたのは、この剣の本来の持ち主のことだった。
「光よ!」
胸を貫いたそれは、とても暖かかった。
言うべきこととすべきことを終えた後、リナは同じく横たわるベルガーを見た。
両の肺を傷つけられても、彼は意識を保っていた。弱々しいが明確な怒りが込められた視線で、臨也を見据えている。
異種族の血が混じる彼は、リナよりもタフだ。肉体的にも、そして精神的にも。
(……この世界には光が必要だって、ダナティアは言ってたわね)
ふと、そんなことを思い出す。
彼女はそのために感情を凍らせ、自らを犠牲にし、その存在を島中に訴えた。
リナに同じ真似はできなかった。ただ感情に振り回され続け、そこまでの強い決意を抱けなかった。
だからせめて、その意志を繋がなければならない。
と、ベルガーの視線がリナの腕に向けられ、その表情に驚愕が浮かんだ。
意図に気づかれたらしい。だが肺を損傷した彼は、それを仲間に伝えられない。
ただ苦笑だけを彼に送ると、視線をふたたび臨也に向けて、叫んだ。
「あんたなんかに、あたし達は弄ばれない。あんたなんかに、あたし達は負けない!」
宣言と同時に、最後の力を振り絞って腕を――光の剣の柄を握った腕を、胸部へと引き寄せた。
ベルガーに斬られ落としていたこれを掴むために、今までずっと注意をそらさせ、時間を稼いでいた。
見つかれば、絶対に止められるだろうから。
案の定青い顔で腕を伸ばす保胤を見つめながら、リナは小さく息を吸う。
最期の一瞬に考えたのは、この剣の本来の持ち主のことだった。
「光よ!」
胸を貫いたそれは、とても暖かかった。
「リナさん!」
保胤の手がリナに届いたときには、柄から伸びた光が彼女の命を奪っていた。
持ち主の死と共に光刃は消え、柄を握った手が血を流す胸に重ねられる。
「なぜ……」
呟きが漏れるが、答えは既に理解していた。
彼女は保胤の迷いを断ち切るために、自ら死んだ。
わかっていて、それでも否定したかった。
彼女は死んでいい人間などではなかった。彼女に生きていてほしかった。
こんな状況でも最後まで方法を模索して、二人ともを助けたかった。
保胤の手がリナに届いたときには、柄から伸びた光が彼女の命を奪っていた。
持ち主の死と共に光刃は消え、柄を握った手が血を流す胸に重ねられる。
「なぜ……」
呟きが漏れるが、答えは既に理解していた。
彼女は保胤の迷いを断ち切るために、自ら死んだ。
わかっていて、それでも否定したかった。
彼女は死んでいい人間などではなかった。彼女に生きていてほしかった。
こんな状況でも最後まで方法を模索して、二人ともを助けたかった。
そんな絶望に沈む保胤を引き戻したのは、場違いな両手を叩く音だった。
「いやぁ、まさかこんな展開になるとは思っても見なかったよ。
仲間の葛藤を潰すために――自分が死ぬために俺を利用するとはね!
ああ、人間はいつも俺の想像を超えてくれる」
リナに対し純粋な感嘆を見せながらも、心底楽しそうに臨也は笑っていた。
「あなたは……!」
「俺に構うよりも先にすべきことがあるだろう? 彼女の命を無駄にしないためにもさ」
非難を遮る声も、惨劇が起こる前と変わらず軽い。殺人を暴かれた直後だとは到底思えない態度だった。
しかし、ベルガーの治療を最優先で行うべきなのは確かだ。
警戒は緩めぬまま、不死の酒を手に取る。
「確かに俺は、藤堂志摩子の命よりも不死の酒を優先させた。でも、こんな状況でそれを責められる筋合いはないよ?
彼女に不死の酒を使っていれば、選択すらできずに二人とも死ぬしかなかったんだから」
淡々と紡がれる言葉に反論はせず、ただ唇を噛んでベルガーの方へと向かう。
向けられた彼の視線は弱々しかった。その口が何かを告げようとして動くが、空気が抜ける音しか届かない。
「ああ、それともやっぱり、二人よりも志摩子ちゃんの方が大事だった?
確かに今よりも、志摩子ちゃんのときの方が焦ってたね」
予想外の指摘に、腕の動きが止まる。
保胤にとっては、三人ともが大切な仲間だ。そこに差異はない、と自分では思っている。
「それなら理解できるよ。
確かに君は、仲間を利害でしか考えていないと俺を非難していた。
もし今回の選択肢に志摩子ちゃんがあれば、君は彼女を選んだんだろうねぇ。
この緊迫した状況よりも二人の命よりも、何よりも彼女が大事なんだからさ」
「そんな――」
「俺の行為を否定するってことは、そういうことだよ?
しかし今となっては、君はもうダウゲ・ベルガーを助けることしかできない。
藤堂志摩子が死んでくれたおかげで、生き残れる彼をね。
……いや、あくまで感情を貫き通すってのもありかな?」
言葉と共に、酒瓶が保胤の足下まで転がってきた。
臨也が持っていた、スピリタスという名の酒だった。こちらが葛藤している間に、デイパックから取り出したらしい。
不死の酒とは瓶の形こそ似ているが、よく見れば中身や瓶の色、ラベルなどが明確に違っていた。
リナの言葉を証明するように、その中身は武装解除時に確認された状態よりも、少し減っていた。
これが、志摩子を殺した。――そして、ベルガーを生かすこととなった?
「……僕に、何をしろと言うのですか」
「ん? 俺は何も言わないよ? ただ選択肢を増やしただけさ。その内容はわかるだろう?
――選ぶのは君だよ、慶滋保胤。今度こそ、君自身が選ぶのさ」
顔を上げた先の臨也は、やはり笑んでいた。吐き気がするほど悪意に満ちた笑顔で、こちらを見据えている。
答えなんて決まっている、はずだ。ベルガーは、助けなければならない。
しかし、臨也の言葉が頭にこびりついて離れない。
ベルガーの命を助けることが、志摩子の死の肯定に繋がるのか。
志摩子の死を拒絶することが、ベルガーの命の否定に繋がるのか。
「いやぁ、まさかこんな展開になるとは思っても見なかったよ。
仲間の葛藤を潰すために――自分が死ぬために俺を利用するとはね!
ああ、人間はいつも俺の想像を超えてくれる」
リナに対し純粋な感嘆を見せながらも、心底楽しそうに臨也は笑っていた。
「あなたは……!」
「俺に構うよりも先にすべきことがあるだろう? 彼女の命を無駄にしないためにもさ」
非難を遮る声も、惨劇が起こる前と変わらず軽い。殺人を暴かれた直後だとは到底思えない態度だった。
しかし、ベルガーの治療を最優先で行うべきなのは確かだ。
警戒は緩めぬまま、不死の酒を手に取る。
「確かに俺は、藤堂志摩子の命よりも不死の酒を優先させた。でも、こんな状況でそれを責められる筋合いはないよ?
彼女に不死の酒を使っていれば、選択すらできずに二人とも死ぬしかなかったんだから」
淡々と紡がれる言葉に反論はせず、ただ唇を噛んでベルガーの方へと向かう。
向けられた彼の視線は弱々しかった。その口が何かを告げようとして動くが、空気が抜ける音しか届かない。
「ああ、それともやっぱり、二人よりも志摩子ちゃんの方が大事だった?
確かに今よりも、志摩子ちゃんのときの方が焦ってたね」
予想外の指摘に、腕の動きが止まる。
保胤にとっては、三人ともが大切な仲間だ。そこに差異はない、と自分では思っている。
「それなら理解できるよ。
確かに君は、仲間を利害でしか考えていないと俺を非難していた。
もし今回の選択肢に志摩子ちゃんがあれば、君は彼女を選んだんだろうねぇ。
この緊迫した状況よりも二人の命よりも、何よりも彼女が大事なんだからさ」
「そんな――」
「俺の行為を否定するってことは、そういうことだよ?
しかし今となっては、君はもうダウゲ・ベルガーを助けることしかできない。
藤堂志摩子が死んでくれたおかげで、生き残れる彼をね。
……いや、あくまで感情を貫き通すってのもありかな?」
言葉と共に、酒瓶が保胤の足下まで転がってきた。
臨也が持っていた、スピリタスという名の酒だった。こちらが葛藤している間に、デイパックから取り出したらしい。
不死の酒とは瓶の形こそ似ているが、よく見れば中身や瓶の色、ラベルなどが明確に違っていた。
リナの言葉を証明するように、その中身は武装解除時に確認された状態よりも、少し減っていた。
これが、志摩子を殺した。――そして、ベルガーを生かすこととなった?
「……僕に、何をしろと言うのですか」
「ん? 俺は何も言わないよ? ただ選択肢を増やしただけさ。その内容はわかるだろう?
――選ぶのは君だよ、慶滋保胤。今度こそ、君自身が選ぶのさ」
顔を上げた先の臨也は、やはり笑んでいた。吐き気がするほど悪意に満ちた笑顔で、こちらを見据えている。
答えなんて決まっている、はずだ。ベルガーは、助けなければならない。
しかし、臨也の言葉が頭にこびりついて離れない。
ベルガーの命を助けることが、志摩子の死の肯定に繋がるのか。
志摩子の死を拒絶することが、ベルガーの命の否定に繋がるのか。
「惑わされるな!」
迷走する思考を断ち切ったのは、アラストールの言葉だった。
遠雷のような重い声が、ベルガーの胸元から響き渡る。
「偶然で生じた結果からのこじつけなど、何の意味もない。
こんな下衆の詭弁で、リナの犠牲を無駄にする気か? 先程彼女が言った言葉を忘れたか!」
――あんたなんかに弄ばれない。負けない。
「確かに藤堂志摩子の命は失われて、戻らぬ。それはもう覆せないだろう。
だが、おまえには今この時に取り戻せるものがあるだろうが!
それを見捨てることは、彼女の――なによりおまえの意志に適うことか!?」
頭に雷を撃たれたような一喝だった。
自分の命が危ぶまれる状況でさえ、他人を慈しんでいた志摩子が望んでいたこと。
そして何よりも、自分が願っていること。
「……ありがとうございます、アラストールさん」
それが明確に思い出されると、迷いは消え去った。
コキュートスに向けて礼を言うと、保胤はふたたび臨也を見据えた。
先程とは変質した眼光を受けて、彼に緊張が走る。
「これが、僕の答えです」
その視線はそらさぬまま片手でスピリタスを取ると、保胤はそれを床に叩きつけた。
高い音と共に呆気なく瓶が壊れ、こぼれた中身が床と直垂を濡らす。
それにはかまわず、すぐにもう片方の手にあった不死の酒の栓を抜き、ベルガーの口に付けた。
彼の意識は既にない。まだ息はあったが、そこまで時間を浪費してしまったことに自責の念を覚える。
「……凄いな。今、何が“出た”?」
畏怖と興奮が入り交じった声が聞こえたが、答える暇などない。
注意は臨也に向けたまま、慎重に酒瓶を傾け続ける。
当然ではあったが、志摩子のような拒絶反応がないことに安堵した。
「死者をどうこうできる力の他に、そんなものもあるとはねぇ。
そっちのアラストールとやらも、あのシャナちゃんの身内だ、さぞかし凄い存在なんだろうな」
「あの子の名を、貴様のような人間が気安く呼ぶな」
「本人は別に嫌がらなかったよ?」
抵抗も逃亡もせず、開き直ったかのように臨也は喋り続ける。
実際のところ、彼にこの状況を打開できる手段はなかった。
この場にある武器はすべて、保胤の近く――倒れ伏すリナとベルガーの付近にある。
彼が元から所持していたものは、既に雑貨を除いてすべて没収されている。
荒事には慣れているが、卓越した戦闘能力はないとセルティから聞いていた。ならば、こちらが符で動きを止める方が早い。
それでも念のため、警戒は一切緩めなかった。
「しかし、本当にこの集団はもったいなかったなぁ。興味深い人間がたくさんいた。脱出できる力も意志もあった。
こんなに運が悪くなければ、もっと色々楽しめただろうにねぇ。
ああ、本当に――」
だから、すぐに対応できた。
半分残っていた酒の、三分の二程度を飲ませた直後だった。
視界の端で、臨也の左手が動きを見せた。
その指が袖口に収まったかと思うと、何かが高速で投げ放たれた。小さな銀色の、直方体の箱。
咄嗟に片手を瓶から離し、手首で払いのけ、その直後初めて気づいた。
箱の裂け目、蓋のように開いた部分から、小さな火が漏れていることに。
「とても残念だ」
酒で濡れた床に落ちた瞬間、それは紅蓮の猛火に変化した。
迷走する思考を断ち切ったのは、アラストールの言葉だった。
遠雷のような重い声が、ベルガーの胸元から響き渡る。
「偶然で生じた結果からのこじつけなど、何の意味もない。
こんな下衆の詭弁で、リナの犠牲を無駄にする気か? 先程彼女が言った言葉を忘れたか!」
――あんたなんかに弄ばれない。負けない。
「確かに藤堂志摩子の命は失われて、戻らぬ。それはもう覆せないだろう。
だが、おまえには今この時に取り戻せるものがあるだろうが!
それを見捨てることは、彼女の――なによりおまえの意志に適うことか!?」
頭に雷を撃たれたような一喝だった。
自分の命が危ぶまれる状況でさえ、他人を慈しんでいた志摩子が望んでいたこと。
そして何よりも、自分が願っていること。
「……ありがとうございます、アラストールさん」
それが明確に思い出されると、迷いは消え去った。
コキュートスに向けて礼を言うと、保胤はふたたび臨也を見据えた。
先程とは変質した眼光を受けて、彼に緊張が走る。
「これが、僕の答えです」
その視線はそらさぬまま片手でスピリタスを取ると、保胤はそれを床に叩きつけた。
高い音と共に呆気なく瓶が壊れ、こぼれた中身が床と直垂を濡らす。
それにはかまわず、すぐにもう片方の手にあった不死の酒の栓を抜き、ベルガーの口に付けた。
彼の意識は既にない。まだ息はあったが、そこまで時間を浪費してしまったことに自責の念を覚える。
「……凄いな。今、何が“出た”?」
畏怖と興奮が入り交じった声が聞こえたが、答える暇などない。
注意は臨也に向けたまま、慎重に酒瓶を傾け続ける。
当然ではあったが、志摩子のような拒絶反応がないことに安堵した。
「死者をどうこうできる力の他に、そんなものもあるとはねぇ。
そっちのアラストールとやらも、あのシャナちゃんの身内だ、さぞかし凄い存在なんだろうな」
「あの子の名を、貴様のような人間が気安く呼ぶな」
「本人は別に嫌がらなかったよ?」
抵抗も逃亡もせず、開き直ったかのように臨也は喋り続ける。
実際のところ、彼にこの状況を打開できる手段はなかった。
この場にある武器はすべて、保胤の近く――倒れ伏すリナとベルガーの付近にある。
彼が元から所持していたものは、既に雑貨を除いてすべて没収されている。
荒事には慣れているが、卓越した戦闘能力はないとセルティから聞いていた。ならば、こちらが符で動きを止める方が早い。
それでも念のため、警戒は一切緩めなかった。
「しかし、本当にこの集団はもったいなかったなぁ。興味深い人間がたくさんいた。脱出できる力も意志もあった。
こんなに運が悪くなければ、もっと色々楽しめただろうにねぇ。
ああ、本当に――」
だから、すぐに対応できた。
半分残っていた酒の、三分の二程度を飲ませた直後だった。
視界の端で、臨也の左手が動きを見せた。
その指が袖口に収まったかと思うと、何かが高速で投げ放たれた。小さな銀色の、直方体の箱。
咄嗟に片手を瓶から離し、手首で払いのけ、その直後初めて気づいた。
箱の裂け目、蓋のように開いた部分から、小さな火が漏れていることに。
「とても残念だ」
酒で濡れた床に落ちた瞬間、それは紅蓮の猛火に変化した。
「ぐああああああああああああっ!?」
ジッポライターの火が引火したスピリタスは、瞬く間に保胤の全身に燃え移った。
叫びながら彼は床を転がり続けるが、火の勢いは衰えない。
(本当にもったいないんだけど……まぁ、バレたら仕方がないよね?)
予想通りの状況を冷静に眺めながら、臨也は荷物を持って退避する。
あの程度の揺さぶりで、保胤をどうこうできるとは端から考えていなかった。
ただ自然な成り行きで、スピリタスをあちらに移動させられればよかった。割ってくれたのは嬉しい誤算だ。
スピリタスは、消毒剤としても利用できるほどの高アルコールを持つ。
そこに火をくべれば、当然面白いほど燃え上がる。
ほぼ瓶一本分がぶちまけられ、床だけではなく当人の服にも染みこんでいるのならなおさらだ。
(しかし、突然出てきたと思ったらまた消えて……どこに行ったんだろうね)
炎が床と保胤に燃え移った瞬間、その足下で横たわっていたベルガーの姿が消え失せた。
先程、シャナを追っていたはずの彼が突然現れたように、またどこか別の場所に転移したのかもしれない。
次の放送で呼ばれなかった場合、クエロ同様何か対策を考える必要があるだろう。そのためには新たな物資も必要になる。
スピリタスを出すついでに、テーブルの上にあった携帯電話と探知機は手に入れた。
マンションの外に隠しておいた、禁止エリア解除機も回収したいところだ。
移動の最中も思考は止めることなく、次の手を模索し続ける。
「……まさかとは思っていたけど、本当に“不死”の酒なのか」
そしていつでも逃げられる体勢になった後、改めて臨也は彼のなれの果てを見た。
炎に包まれ、直垂の大半が焼け落ちながらも、それでも保胤は生きていた。
焼け爛れた皮膚が時間が巻き戻るように蘇り、しかしすぐに炎に焼かれ、それでもふたたび再生され――という現象が、何度も繰り返されていた。
彼自身も途中でそれに気づいたらしく、火を無視してふらつきながらも片膝をつき、臨也を見据えていた。
全身を焼かれる激痛に顔を歪ませているが、鬼気と言うにふさわしい気迫と鋭い眼差しは、肌を粟立たせるには十分だった。
(それでも君は、絶対に俺を追いかけられない)
あの惨劇の際、保胤自身が不死の酒を飲んだことを示唆していたため、こうなる可能性は予測済だ。対策はあった。
そもそも、制限などで完全な不死にはなっていないだろう。殺しても死なない存在がいては、殺し合いにならない。
現に炎の勢いが、皮膚の回復よりも上回りつつある。
「俺を睨める気力があるくらいなら、周りをちゃんと見た方がいいよ?」
それだけを言い残して、臨也は窓から飛び降りた。
ジッポライターの火が引火したスピリタスは、瞬く間に保胤の全身に燃え移った。
叫びながら彼は床を転がり続けるが、火の勢いは衰えない。
(本当にもったいないんだけど……まぁ、バレたら仕方がないよね?)
予想通りの状況を冷静に眺めながら、臨也は荷物を持って退避する。
あの程度の揺さぶりで、保胤をどうこうできるとは端から考えていなかった。
ただ自然な成り行きで、スピリタスをあちらに移動させられればよかった。割ってくれたのは嬉しい誤算だ。
スピリタスは、消毒剤としても利用できるほどの高アルコールを持つ。
そこに火をくべれば、当然面白いほど燃え上がる。
ほぼ瓶一本分がぶちまけられ、床だけではなく当人の服にも染みこんでいるのならなおさらだ。
(しかし、突然出てきたと思ったらまた消えて……どこに行ったんだろうね)
炎が床と保胤に燃え移った瞬間、その足下で横たわっていたベルガーの姿が消え失せた。
先程、シャナを追っていたはずの彼が突然現れたように、またどこか別の場所に転移したのかもしれない。
次の放送で呼ばれなかった場合、クエロ同様何か対策を考える必要があるだろう。そのためには新たな物資も必要になる。
スピリタスを出すついでに、テーブルの上にあった携帯電話と探知機は手に入れた。
マンションの外に隠しておいた、禁止エリア解除機も回収したいところだ。
移動の最中も思考は止めることなく、次の手を模索し続ける。
「……まさかとは思っていたけど、本当に“不死”の酒なのか」
そしていつでも逃げられる体勢になった後、改めて臨也は彼のなれの果てを見た。
炎に包まれ、直垂の大半が焼け落ちながらも、それでも保胤は生きていた。
焼け爛れた皮膚が時間が巻き戻るように蘇り、しかしすぐに炎に焼かれ、それでもふたたび再生され――という現象が、何度も繰り返されていた。
彼自身も途中でそれに気づいたらしく、火を無視してふらつきながらも片膝をつき、臨也を見据えていた。
全身を焼かれる激痛に顔を歪ませているが、鬼気と言うにふさわしい気迫と鋭い眼差しは、肌を粟立たせるには十分だった。
(それでも君は、絶対に俺を追いかけられない)
あの惨劇の際、保胤自身が不死の酒を飲んだことを示唆していたため、こうなる可能性は予測済だ。対策はあった。
そもそも、制限などで完全な不死にはなっていないだろう。殺しても死なない存在がいては、殺し合いにならない。
現に炎の勢いが、皮膚の回復よりも上回りつつある。
「俺を睨める気力があるくらいなら、周りをちゃんと見た方がいいよ?」
それだけを言い残して、臨也は窓から飛び降りた。
不死の酒は延々と身体を焼かれる苦痛と引き替えに、保胤にある程度の思考と行動の自由を与えていた。
本当に“不死”になっていることに気づき、灼熱の中身体を支えることができるまでに、それほどの時間はかからなかった。
網膜が焼け、すぐに修復される感覚におぞましさを感じながらも、窓から逃げゆく臨也を睨みつける。彼だけは、どうしても許せなかった。
懐にあった符は既に塵と化している。光の剣の柄を回収する暇もない。
ただ追おうと床を這い、窓のすぐそば――にある机の前を抜けようとして、踏みとどまる。
それは、“計画”の会議や各自の知識をまとめる際に使用した机だった。
その上には、保胤自身も執筆した刻印の研究を記した紙や、悠二が残したレポートが置いたままになっている。
木製の机や紙片そのものに引火すれば、刻印解除や脱出の鍵の一片が、一瞬にして失われる。
さらに振り返れば、もう一方の出口も塞がっていた。
廊下へと続く扉の手前、惨劇の際に茉衣子が短剣を落とした辺りに、未だに千絵が横たわっている。
このような事態にも何ら反応を返さない無惨な状態の少女は、それでもまだ生きている。巻き添えにできるわけがない。
(……これも、考慮していた?)
最後に臨也が残した言葉を思い出し、その周到な悪意に炎熱の中でさえ寒気を覚えた。
これ以上犠牲を出さないためには、大人しくこの場で死ななければならない。
吸精術を使えば、逃げた彼を文字通り灰燼に帰せるが、やはり千絵やレポートは失われる。
それどころかマンションの周辺にいる者達も、無差別に朽ち果てる。
術が一度発動すれば保胤自身には止められず、その命が失われるまで滅びは続く。
唯一止められる訃柚は、ここにはいない。
もはや打つ手はなかった。一度そう確信してしまうと、意識は急速に薄れていった。
肺に吸い込んだ煙が呼吸を阻害し、爛れる皮膚の回復は次第に追いつかなくなっていく。
走馬灯のように、二度と取り戻せない過去の情景が浮かび始める。
(……あ)
それに身を委ねようとした寸前、かすれゆく視界に映った何かに、保胤は目を見開く。
リナの死体のそばに、彼女が持っていた拡声器が落ちていた。
終の従姉とシズという青年が、そしてダナティアが、自らの意志を島中に告げるために使った道具。
何ら力を持たない、しかし使いようによってはどんな武器よりも強いものが、そこにあった。
(それなら、せめて――)
心地よい回想を振り払い、文字通り力を振り絞って、保胤はふたたび床を這う。
頭の中で聞き覚えのある声が響いていたが、その内容の把握に費やせる力はない。
ただそれが、時間帯から絶望を告げる主催者らの放送だと言うことは理解できた。
それを打ち砕くためにも、伝えるべきことがある。
臨也のことを言うべきかとも考えたが、すぐに打ち消した。
こんな状態で正確に人名を伝える自信はない。かつての自分と同じように、誰かに間違った疑念を持たせてしまうかもしれない。
だから告げるのは、意志だ。
確かにここにあった、十二の仲間の思いを。
慨然なきその遺志を、同じ思いを持つ者達が継げるように。
ダナティアが提示した光は、未だ消えていないことを知らせるために。
この最悪の遊戯に、最後の抵抗をするために。
やがて保胤は、それらを担う希望へと辿り着いた。
数秒でも熱に耐えてくれることを祈りながら、その取っ手にある突起を指で沈める。
そして最期になるであろう息を吸い、思いと共に吐いた。
本当に“不死”になっていることに気づき、灼熱の中身体を支えることができるまでに、それほどの時間はかからなかった。
網膜が焼け、すぐに修復される感覚におぞましさを感じながらも、窓から逃げゆく臨也を睨みつける。彼だけは、どうしても許せなかった。
懐にあった符は既に塵と化している。光の剣の柄を回収する暇もない。
ただ追おうと床を這い、窓のすぐそば――にある机の前を抜けようとして、踏みとどまる。
それは、“計画”の会議や各自の知識をまとめる際に使用した机だった。
その上には、保胤自身も執筆した刻印の研究を記した紙や、悠二が残したレポートが置いたままになっている。
木製の机や紙片そのものに引火すれば、刻印解除や脱出の鍵の一片が、一瞬にして失われる。
さらに振り返れば、もう一方の出口も塞がっていた。
廊下へと続く扉の手前、惨劇の際に茉衣子が短剣を落とした辺りに、未だに千絵が横たわっている。
このような事態にも何ら反応を返さない無惨な状態の少女は、それでもまだ生きている。巻き添えにできるわけがない。
(……これも、考慮していた?)
最後に臨也が残した言葉を思い出し、その周到な悪意に炎熱の中でさえ寒気を覚えた。
これ以上犠牲を出さないためには、大人しくこの場で死ななければならない。
吸精術を使えば、逃げた彼を文字通り灰燼に帰せるが、やはり千絵やレポートは失われる。
それどころかマンションの周辺にいる者達も、無差別に朽ち果てる。
術が一度発動すれば保胤自身には止められず、その命が失われるまで滅びは続く。
唯一止められる訃柚は、ここにはいない。
もはや打つ手はなかった。一度そう確信してしまうと、意識は急速に薄れていった。
肺に吸い込んだ煙が呼吸を阻害し、爛れる皮膚の回復は次第に追いつかなくなっていく。
走馬灯のように、二度と取り戻せない過去の情景が浮かび始める。
(……あ)
それに身を委ねようとした寸前、かすれゆく視界に映った何かに、保胤は目を見開く。
リナの死体のそばに、彼女が持っていた拡声器が落ちていた。
終の従姉とシズという青年が、そしてダナティアが、自らの意志を島中に告げるために使った道具。
何ら力を持たない、しかし使いようによってはどんな武器よりも強いものが、そこにあった。
(それなら、せめて――)
心地よい回想を振り払い、文字通り力を振り絞って、保胤はふたたび床を這う。
頭の中で聞き覚えのある声が響いていたが、その内容の把握に費やせる力はない。
ただそれが、時間帯から絶望を告げる主催者らの放送だと言うことは理解できた。
それを打ち砕くためにも、伝えるべきことがある。
臨也のことを言うべきかとも考えたが、すぐに打ち消した。
こんな状態で正確に人名を伝える自信はない。かつての自分と同じように、誰かに間違った疑念を持たせてしまうかもしれない。
だから告げるのは、意志だ。
確かにここにあった、十二の仲間の思いを。
慨然なきその遺志を、同じ思いを持つ者達が継げるように。
ダナティアが提示した光は、未だ消えていないことを知らせるために。
この最悪の遊戯に、最後の抵抗をするために。
やがて保胤は、それらを担う希望へと辿り着いた。
数秒でも熱に耐えてくれることを祈りながら、その取っ手にある突起を指で沈める。
そして最期になるであろう息を吸い、思いと共に吐いた。
○
ゲーム開始から二十四時間が経過し、四回目の放送が生存者へと響き渡った。
放送は過去三回と同じように、死者の名と禁止エリアを告げ、最後に愚弄の言葉が吐かれて切れた。
しかしその直後に、異なる男の声が聞こえ出した。
無理矢理絞り出したような苦しげな、しかし力強い声だった。
告げられたのは、たった一言。
放送は過去三回と同じように、死者の名と禁止エリアを告げ、最後に愚弄の言葉が吐かれて切れた。
しかしその直後に、異なる男の声が聞こえ出した。
無理矢理絞り出したような苦しげな、しかし力強い声だった。
告げられたのは、たった一言。
「継がれる意志がある限り、僕らの道は絶たれない!」
【026 リナ・インバース 死亡】
【070 慶滋保胤 死亡】
【残り 42人】
【070 慶滋保胤 死亡】
【残り 42人】
【C-6/マンション外/2日目・00:00頃】
【折原臨也】
[状態]:平常
[装備]:なし
[道具]:デイパック(支給品一式・パン6食分・水2000ml)、探知機、携帯電話
救急箱、セルティとの静雄関連の筆談に使った紙
[思考]:ひとまずこの場から離れる。禁止エリア解除機を回収したい。
ベルガー、クエロに何らかの対処を。
ゲームからの脱出(利用出来るものは利用、邪魔なものは排除)。
残り人数が少なくなったら勝ち残りを目指す
【折原臨也】
[状態]:平常
[装備]:なし
[道具]:デイパック(支給品一式・パン6食分・水2000ml)、探知機、携帯電話
救急箱、セルティとの静雄関連の筆談に使った紙
[思考]:ひとまずこの場から離れる。禁止エリア解除機を回収したい。
ベルガー、クエロに何らかの対処を。
ゲームからの脱出(利用出来るものは利用、邪魔なものは排除)。
残り人数が少なくなったら勝ち残りを目指す
【C-6/マンション1・2F室内/2日目・00:00頃】
【海野千絵】
[状態]:物語に感染。錯乱し心神喪失状態。かなり精神不安定
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:不明
[備考]:吸血鬼だった時の記憶は全て鮮明に残っている。
【海野千絵】
[状態]:物語に感染。錯乱し心神喪失状態。かなり精神不安定
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:不明
[備考]:吸血鬼だった時の記憶は全て鮮明に残っている。
※メガホンと
強臓式武剣“運命” (単二式精燃槽 一つ装填・少量消費済)が床の上に落ちています。
光の剣(柄のみ)がリナの死体の上にあります。
強臓式武剣
光の剣(柄のみ)がリナの死体の上にあります。
【?-?/不明/2日目・00:00頃】
【ダウゲ・ベルガー】
[状態]:意識不明、両肺損傷(右肺の傷は塞いだが、どちらにせよ長く保たない)
不死の酒を瓶全体の1/3摂取したが、効果の有無は不明。
[装備]:PSG-1(残弾20)、鈍ら刀、コキュートス
[道具]:携帯電話、黒い卵、単二式精燃槽 三つ
[思考]:不明
※黒い卵の転移機能で、縁者のところへ転移しました。誰のところかは次の人におまかせ。
【ダウゲ・ベルガー】
[状態]:意識不明、両肺損傷(右肺の傷は塞いだが、どちらにせよ長く保たない)
不死の酒を瓶全体の1/3摂取したが、効果の有無は不明。
[装備]:PSG-1(残弾20)、鈍ら刀、コキュートス
[道具]:携帯電話、黒い卵、単二式
[思考]:不明
※黒い卵の転移機能で、縁者のところへ転移しました。誰のところかは次の人におまかせ。
※保胤が死亡したのは放送終了直後のため、第四回放送では呼ばれません。
- 2007/02/18 修正スレ294
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