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  • ラノベ・ロワイアル @ wiki
  • 絶望咆哮

ラノベ・ロワイアル @ wiki

絶望咆哮

最終更新:2008年04月12日 00:56

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だれでも歓迎! 編集

第551話:絶望咆哮 作:◆CC0Zm79P5c



 人は本当の恐怖と相対した時、どんな反応を示すのだろう?
 震えるか? 立ち竦むか? 命乞いか? はてまた崇めるか?
(違う)
 ウルペンは首を振った。
 それは単純なものではない。そんなひと言で表せるようなものではない。
 体が震えている。もとより体は五体満足よりほど遠い。だが、彼を苛んでいるのは体の欠損などではない。
 眩暈がする。吐き気がする。脳が裏返り、地面を足が掴んでいられない。
 生きたまま内臓を全て引き抜かれるような激痛と虚脱。体がくの字に折れ、自然と視界が下を向く。
 足下には仮面を被った死体がある。エドワース・シーズワークス・マークウィッスル。その骨と皮。
 念糸は強力な武器だ。そして訓練された念糸使いが用いれば、不可避の武器にすらなる。
 速度、距離、隔てる物質――すべて無効化し、念糸は相手に届く。
 もとよりそれは思念の通路。耳を塞いでいたって言葉は届く。だから念糸は如何なる手段であっても防げない。
 ――本当に?
 本当に、死んだのか?
『未来永劫、お前は何も信じられまい』
 EDの視線と言葉は極めて鋭く、それはまるですり抜けるようにウルペンの心臓を突き刺した。
 動揺と激しい動悸に、ウルペンは知らず呼吸を乱す。
 空気が足りない。血液が足りない。光が足りない。全て不足している。
 世界の全てが信用できない。
 呼吸しているのは毒素ではないか? 体を巡っているのは熱湯ではないか? 眼前の世界は虚像ではないか?
 妄想だ。そう一蹴できた。できたはずだ。
 信じることが出来れば。
「はっ――あ」
 喘ぐ。だが取り入れたいのは生存のための酸素ではなく、存在のための真実。
 地面の存在を信じることが出来なければ、人は外を歩くことも出来ない。
 空の不動を信じることが出来なければ、人は空が堕ちてくることを恐れる。
 ウルペンは転がっている骸の脇で膝を折り、その仮面に手をかけた。
(俺の、俺の絶望。それすらも確かなものでは無いというのか?)
 仮面を剥がす為に力を込める。込めたつもりだった。
 動かない。仮面はぴくりともしない。
 だがその理由さえ分からない。仮面がキツイだけか? それとも無自覚の拒絶か?
(これで証明されるのならば――)
 眼球が零れるほど目を見開き、ウルペンはもう一度力を込めた。
 今度は、あっさりと仮面をむしり取ることに成功する。
「……あ」
 そして、直視した。直視してしまった。
「……ああ」
 EDの仮面の下。念糸の効果でミイラ化し、人相さえ分からないはずのその表情。
 だがその眼球は――いまもなお鮮明に、ウルペンを睨んでいる。
 萎んでいるはずの双眸が永劫に彼を糾弾し続けている。
 まるで水晶眼だ。死体は腐敗してもこの視線は不滅だろう。永久にその弾劾を閉じこめたままだろう。
「ひっ――!」
 悲鳴を上げた。弾けたバネ仕掛けのように死体から飛び退く。
 死体から遠ざかり、それでもウルペンは二、三歩よろめくように後退した。
 足りない。どれだけ逃げても逃げられない。
 この死体は死んでいない。
 怪物だ。怪物領域があった。その仮面の下に隠していた!
「あ、あああ」
 右手を見る。引き剥がした仮面を落としていなかったのは、単純に筋肉が硬直していた所為だろう。
 仮面という単語は、すぐに黒衣を連想させた。逆しまの聖人。その中は空洞だと思わせることで、怪物に皮一枚だけ近づいた者達。
 かつて、ウルペンもその格好をしていた。黒衣の内側。そこは帝都だった。確約された安息の場所。
 震える手で、仮面を自分の顔に押しつける。だが。
「違う!」
 そのまま顔の上半分を覆う仮面を肉に食い込ませるように押しつけ、絶叫する。
「俺が求めていたのは……こんな、ものではっ!」
 かつての安寧はない。あるのはただの寒々しい行為とその感触のみ。
 よろめき、尻餅をつくように座り込むと、ウルペンはそのまま片手で顔を覆った。
 泣くのではない。その撫でるような感触すら信じられないのだから。
(分かっていたはずだった。俺はかつて死んだ。だがここにいる)
 いずれ果たされるべき約束は破られた。契約は信用できない。
 死んだはずの自分が生きている。死してすら確たる物が手に入らない――
『未来永劫、お前は――』
「やめろ……やめろっ……」
 耳朶にいつまでも残響する呪いの言葉を振り払うように、ウルペンはかぶりを振った。じりじりと死体から遠ざかる。
 ED。戦地調停士。己の舌先と謀略のみで問題を解決する者。
 故に、彼の言葉はこの世の如何なる刃よりも鋭い。
 そして、鋭すぎた。振るうのを加減する者が居なければ、それはどこまでも切り裂いてしまう。
 彼の最後の言葉は、放たれた。放たれただけだった。振るう本人が死んでしまったのだから、誰もフォローは出来ない。
 あるいはEDが生存していたのなら、抉られた心を利用することもできただろう。
 それでも現実には誰もいない。EDの残した呪いに縛られているウルペン以外には。
『――何も信じられまい』
「――ぁぁああああああアアア!」
 叫び、駆け出す――EDから受け取った地図を粉々に引き裂き、今しがた侵入してきた地上との出入り口へと。
 怖かった。ただひたすらに怖かった。あの男の言葉が現実になるのが恐ろしかった。
 あの男の地図が真実ならば、あの男の口走った予定は予言になる。そんな気がしてならなかった。
 地上に出る。清涼な夜気を口にしても動悸は収まらない。ウルペンは走り続けた。
 気が付くと声が響いていた。強い声。どこかミズー・ビアンカを髣髴とさせる。そんな声。
 島全土に響いているのだろう。ウルペンは絶望を叫びながらそれを聞いた――

『忌まわしき未知の問い掛けに弄ばれる者達よ』

『あたくしは進撃します』

『あたくしは怒りに身を任せない』

『あたくしは諦めに心を委ねない』

『あたくしを動かすのは……』

『……決意だけよ!!』

「――なにを根拠に信じればいい!」
 立ち止まる。それは息が続かなくなっていたためでもあったが、放送の主に癇癪をぶつける為でもあった。
 何故、そんな言葉が言える。何故、そんな確信を込められる。言葉などというあやふやな物に。
「――いつだって求めてきた! 八年もだ! それなのに見つからなかった!」
 アストラは彼の物にならなかった。
 彼女を愛していた。それだけは確かな物だと信じたかった。
 だが、それを唯一肯定してくれた義妹は、死んだ。
「おまえの言葉は確かな物か!? アマワに約束でもされたか!? ならばそれは果たされない!」
 帝都は滅び去った。ベスポルトは死んだ。ウルペンは死んだ。約束は果たされなかった。
 地面に膝を突き、狂ったように頭を掻きむしる――髪が引きちぎられる痛みも、今は心地良い。
「おまえの決意とやらは確たる物か!? それが精霊に弄ばれているのだとしてもか!」
 駄々を捏ねる子供のように、ウルペンは吼える。赤く裂けた空に、慟哭を投げかける。
 ――まるで血の色だ。未来を暗示させる。
 これは開幕の宣言となり得ないだろう。ウルペンは胸中でそう断じた。
 これは絶望で塗りたくられる予兆だ。かつて彼の帝都を焼き尽くした二匹の獣。彼女たちと同じ炎の色。
 業火の力――すべてを虚無に飲み込む。
「……殺すまでもない。貴様は散々アマワに弄ばれ、それを決意と勘違いしたまま死ぬがいい」
 鬱憤をすべて吐き出した後、最後にぽつりと付け加える。
 声が小さくなったのは、自身の台詞に覚えがあったからだ。
(精霊に弄ばれ死ぬ、か)
 ――まるで、生前の自分だ。
 熱い吐息と共に、胸中で吐き捨てる。
 だが漏れる吐息に混ざらず、胸の奥にこびりついて離れない物もあった。
 それは本当に経過したのか信用できない、過去の一点。彼の終着。
 ――死だ。死の感触。生きているはずなのに、それが彼を満たしてやまない。
 まるで返しの付いた銛先の刺さるが如き、消えない棘の痛み。
 それは小さな棘だが、ピタリと急所をその殺傷範囲に収めている……
(俺は……何なのだ? 生きているのか、死んでいるのか……そんな安息すら世界は俺に与えてくれないというのか?)
 あるかどうか分からない。そこにあっても信用できない。故にそれらに意味はない。
 ウルペンはそういった存在を知っていたはずだった。
 だが解に辿り着く前に、視界が揺れる。まるで足場が消失でもしたかのように、ガクンと陥る無重力状態。
 それも長くは続かない。地面に膝をつくのみならず、ウルペンは五体投地するかのように土に突っ伏した。
 冷たい腐葉土の温度を感じる暇もなく、五感は異常を高らかに叫んでいる。
 熱病に冒された時のように熱っぽく脈動する全身。痙攣する指先。回る世界。
 心臓の鼓動は跳ねるように肥大し、肺を圧迫する。断続的に吐くだけの息は、いずれ尽きるだろうことを予測させた。
 限界が来たのだ。引き攣る横隔膜を宥めようとする無駄な努力の傍ら、それを悟る。
 腕を焼き落とされる重傷を負い、休憩も少し眠った程度で満足に取らず、ひたすらに動き続けた。その代償。
 しかし、何故いまになって?
 体の欠損には慣れているはずだった。かつて目を奪われ崖から投げ落とされた時も、彼は独力で帝都に帰還した。
 叫びながら走るのをそれほど負荷だとも思わなかった。彼はいつだって叫んでいた。
 そも、この島で腕を焼き切られてからすら、彼はひたすらに奪い続けていた。
 だが――と、既に得ていた解答が後を継ぐ。
 だが、それらはどうして成し得たのであったか?
 死ぬべき所で死なず、あの決闘まで生き延びたのは何故だ?
 ――契約の有効性を信じていたから。
 これは確たるモノであると、ずっと叫び続けていたのは何故だ?
 ――手に入るはずだと信じたかったから。
 いまの今まで動き続けられたのは何故だ?
 ――他人を自分と同じ絶望に引きずり込めると信じていたから。
 そう。彼は信じていた。ただそれだけ。
 念じれば働く念糸のように、彼はひたすらに信じていた。
 どれだけ歪んでいたとしても、それがどんどん磨り減っていっても、彼は信じていた。
 信念は死体すらゾンビに変える。それが妄執だというのなら、ウルペンもまた妄執の産物だ。死してなおここにいる。
 だが、今は?
 怪物領域の住人に打ちのめされ、綱渡りだった信念を完全に打ち砕かれた今は?
 ――無論、信じることなど出来ないに決まっている。
(……終わりか。それもいい)
 ぼんやりと幕の到来を予感し、独りごちる。
 頬に触れた湿った腐葉土の匂い。木々の枝間から注ぐ静かな月光。
 悪くはない。彼は断じた。それほどまでには――いやむしろ分不相応なほど。決して悪くはない。
 ここで、こんな終焉を迎えられるというのなら。
(――ならば、何故動く?)
 他人事のように、ウルペンは未練たらしく地面を引っ掻く己の隻腕を見つめていた。
 かりかりと地面を掻き続ける指。その指すら五指には足りない。あまりにも弱々しい。
 無駄だとウルペンは呟いた。どこか震えを含んだ声で、呟いた。
 だがその呟きも、指先が地面を抉り、捉えたともなれば絶叫に変じた。
「やめろ……! 俺を、俺を終わらせてくれぇっ!」
 それでも止まらない。信じることの出来なくなった彼には、体を支配することは出来ない。
 ――『それ』は、そこにあったとしても信用できない。
 いまのウルペンには信じることも、だが完全に否定しきることも出来ない。
 無様に絶望を叫びながら、しかしその裏では希望を期待している
 故に、彼を動かすのは生存本能と自殺願望。流転する二律背反。
 生存本能は彼を存続させようと体を動かす。自殺願望は彼の唇から怨嗟を垂れ流す。
 ――やがて軍配は、生存本能に上がる。
 舞台から降りようとした彼を引き戻すかのように、地を捉えた腕が支点となってウルペンの体を持ち上げた。
 絶叫は懇願へすら変じた。それでも動きは終わらない。ついに腕はウルペンの上半身を起こし、手近な大木へと寄りかからせた。
 動悸は収まらない。全身は弛緩し、脱力しきっている。
 それでも、確かに彼が予期した確実な『終わり』が去っていく足音をウルペンは聞いた。
 嗚呼、と泣くように呻く。今度こそ訪れてくれる筈だった終幕という確たるモノは、またも零れ落ちていった。
「どうしてだ……何故俺を連続させる。俺はもう終わった。終わっていい筈だ。どうして」
 ぐるぐると回る疑問肯定否定。パラノイアじみた妄想が彼を脅迫する。
 その果てに浮かぶのは、あの忌々しい不定の形姿。
「アマワ……お前か? これは戯れか? まさかな。お前がそんな酔狂をする筈がない」
 ひたすらに心の証明を求めていた奴のことだ。これもその一環に違いない。
 ならば、それを証明してやればアマワは確たるモノをくれるだろうか?
(クッ――まさか。それこそ否だ)
 己の思考を嗤い、否定する。
 アマワは奪っていくだけだ。何も残しはしない。
 ――だが、それさえも信じることが出来ないのならば。
「俺は……どうすればいい。何を信じればいい?」
 彼のあずかり知らぬ所でだが、かつてミズー・ビアンカは彼のことをこう評した。
 死を恐れない子供、と。
 彼がまだ契約の有効性を信じていた時だ。だから彼は死を恐れず、剣の達人たるミズーと互角以上に打ち合えた。
 それでも信じるべき拠り所が無くなれば、彼はただの子供だ。ひとりで歩くことさえできない。
 ――そして彼の泣き言に答えたのは、手を引いて歩いてくれるような存在ではなかった。
「……さあ? とりあえず死ねば?」
 自問に帰ってきた返答に、だが驚くほどの気力もなく、ウルペンはゆっくりと視界を上げた。
 いつの間にか、金属製の筒のような物を構えた男がほとんど目の前に立っている。
 赤銅色の髪。常にやる気のなさそうだった顔は、あの時のまま無表情という絶望に凍り付いていた。
 感情を含まない視線を向けながら、ウルペンはぼんやりとその顔を思い出していた。
(……契約者)
 自分の意志は信じられると断言した黒髪の少女。その連れだ。名前は――ハーベイ、とか言ったか。
「……あれからずっとあんたを探してた。叫んでるなんて思わなかった」
 自分自身に確認するような口調で呟きながら、その男は銃を照準し、その凶器越しに冷ややかな視線を向けていた。
 どうやら叫び声を聞きつけてきたらしい。だが真に恐るべきはこの瞬間にウルペンの近くにいたという幸運よりも、その執念か。
 赤髪は表情をほとんど変えないまま、だが強く睨み付けてくる。そこには一分の隙もない。
 念糸の効果を知り、警戒しているのだろう。武器は例の自動的に動く腕が握っている。
 金属製の筒は、ウルペンも似たような物をこの島で何度か見ていた。
 ボウガンのような武器だろう――威力も速度も桁違いだが。
 何にせよ、すでに照準されているのなら、念糸では対抗できない。
 もっともいまのウルペンに念糸は紡げないだろう。思念の通り道たる念糸。ならば思念の無き者に使えぬは道理。
 念糸は、ありとあらゆる制限を踏破してその効果を発揮する。
 ただし諦観にまみれ、信じるものを打ちのめされていなければだ。磨耗しきり、心が冷えれば念糸は使えない。
(……それに、これ以上落ち延びて何になる?)
 決まっている。無様を晒し、苦痛を味わうだけだ。だからウルペンは終わりを望む。
 まるっきり精神を病んだ者の表情で、ウルペンは目の前の男を見た。それに救いを求めるように。
「……お前は、俺を終わらしてくれるのか?」
「ああ、殺す」
 躊躇いもなく放たれた死刑宣告。赤髪の揺れない双眸からも、それが冗談で無いことを窺わせる。
 故に、ウルペンは表情を変えた。万の絶望に一滴だけ混じった期待の表情を――失望のそれに。
「それでは駄目だ」
「……何が」
 胡乱な目つきでこちらを見ている不死人を、ウルペンは茫洋と見つめ返す。
 だがその目は焦点が定まっておらず、もはや像を結んでいないことは明白だった。
 ウルペンは半ば目の前の男の存在を無視するように、ぼそぼそと呟き続ける。
「死だと……? そんなものは終わりではない。
 呼吸が止まる? 心臓が停止する? そんなものが終わりか? ならば俺は何故ここにいる?
 殺されるなど、もはやなんでもない。それに伴う苦痛も無意味だ……」
「てめっ……!」
 ウルペンの吐き続ける言葉に、ハーヴェイは怒気を孕んだ言葉をぶつけた。
 銃を握る右腕の義手も猛るように甲高いモーター音を響かせる。
 悠久の時を不変の肉体で生き、感情を磨り減らした彼にとって、ここまで感情をむき出しにすることは珍しい。
 それほどまでに、ウルペンの言葉は許せないものだった。
「お前があいつを、キーリを殺しておいて――何でそんな言葉が言えるんだよ!」
「あの少女、キーリというのか。あれが……貴様にとっての確たるものか?」
「そう」
 間隙無く答えたハーヴェイに、ウルペンは場違いな笑みを浮かべた。
 殺される者と殺す者。その間には似つかわしくない――祝福するような微笑みを。
「即答できるか。それは……羨ましいな。愛しているということか?」
「ああ」
 と、これも即答するハーヴェイ。
 だが不死人はその答を返した直後、ふと何かに気付いたように瞬きを数度繰り返した。
 そして、ああ――と納得するように頷くと、まるで自分に語りかけるかのような口調で告白を紡ぐ。
「俺はアイツが好きだったんだ。
 面倒くさくて今まで考えないようにしてたけど、無くしてみて分かった。
 俺にもあったんだ。あんなナリでも、キーリは俺にとって大きな存在だった。
 不死人として惑星中を彷徨ったけど、俺は、あいつが、きっと一番くらいに大切だったんだ」
 普段はほとんど無口で、喋ったとしてもぶっきらぼうなこの不死人のかつて無い長口上。
 知らぬ内、ハーヴェイの左拳は握りしめられていた。いまだ触覚のある肉の腕。
 それほど手を繋いでいた記憶はない。だが、そこには少女の掌の感触が残留している気がした。
 ――そうだ。離さないように、しっかりと握っておくべきだった。
 あの頼りない、だけど自分を引っ張って行ってくれそうな、そんな感覚を伝えてくる少女の手を。
 ――何十年も惑星を歩いて、それ以上の年月を不死の兵士として過ごして。
 殺伐とした無味乾燥な日々。戦争中はレゾンデートルの為に何となく殺して、戦後はすることもなく何となく放浪した。
 そうして無駄に永遠の日々を過ごしていたある日、ちょっとした目的が出来た。
 かつて自分が殺した兵長の霊を、その墓地まで埋葬しに行くことになったのだ。
 兵長とはそれほど仲が良かったわけではない。当然だ。自分が殺してしまったのだから。
 あるのは罪悪感だけで、言ってしまえば腫物だった。
 過去の清算。埋葬を引き受けたのも、そんな思いがどこかにあったからかもしれない。
 埋葬した後は、いっそ自分もついでに『心臓』を引きずり出して、その場で自害しようとも思っていた。
 その途中だ。あの少女に会ったのは。
 第一印象は……やかましく、鬱陶しい。その程度だった。
 ひょんなことから(半ば強引に)その旅に付いてきて、いざ兵長と別れようとすると泣いてしまって。
 本当に鬱陶しく――それでいて放っても置けず。
 そして気付けば、兵長とキーリと三人で旅をしていた。
 ……謝罪の対象だったラジオの憑依霊と、やたら付きまとってくる少女に対する認識が変わってきたのは、いつの頃からだろうか。
 そして、いつからだったのだろう。キーリと兵長との三人旅から抜け出せなくなってしまったのは。
 幸せなんてぬるま湯と同じだ。浸かっている間は暖かくても、そこから出てしまえば風邪を引く。
 加えて、不死人はずっとそのぬるま湯に浸かってなんかいられない。
 暖かな液体は冷えていく。不死人だけを残して、環境は早足に過ぎ去っていく。
 残るのはパレードが終わった後ような紛らわしようのない寂寥感。不死の兵士に唯一有効な刃。
 絶対に、後のタメになんか、ならないのに――
 ……いつからだろう。それにずっと浸っていたいと思い始めてしまったのは。
 飢餓感すら麻痺した不死の彷徨者。
 ――その動く死体に最後まで残留していた感情は、彼を殺戮に駆り立てた。
 そして復讐者の告白を、被復讐者たるウルペンは聞いていた。
 目の前の男が放つ少女への信頼に満ちた言葉。心地よいはずのその宣言。
(……ならば、何故だ? 何故俺は――)
 上半身を寄りかからせている、手が回りきらないほどの巨木。
 それに全体重を預ける心地で、ウルペンはずりずりと、まるで幽鬼がするように立ち上がっていた。
 相変わらず体は壊れかけ、限界を迎えている。だが脱力していたはずの四肢に、僅かに熱が宿っていた。
 それはとても小さい炎だったが、苦痛を無視できるほどには熱い。
 確たる言葉に情熱を感じたか――?
 ――否。この熱はそんなに品の良いものではない。
 ウルペンが動くのと連動して、突きつけられる銃口も移動していた。
 死を吐き出す丸い淵。地獄の穴を思わせる漆黒の空間が、仮面越しにウルペンの目を捉えている。
 だが恐怖は覚えない。一瞬後には脳髄が吹き飛ばされているとしても、そんなものは怖くない。
 くっくっ、と心底愉快そうにウルペンは笑う。
 その気に障る笑みに、ハーヴェイはトリガーを引き――
「――奴の真似事だ。お前に問おう」
 ――そして寸前、それを遮るように、ウルペンの口から疑問が吐き出された。
「お前は何がしたいのだ?」
「何、って――」
 キーリを殺されたから。キーリがこの男に殺されたから。だからハーヴェイはここまで来た。
 それは誰にでも分かることだろう。酸素を呼吸することのように、それは当たり前であるはずだった。
 それはウルペンにも分かっていただろう。だが彼は問い続ける。
「お前は愛しているという。お前は信じているという。
 ならばそれは失われていないはずだ。確たるものは失われてはいけないはずだ。
 それなのにお前は俺に銃口を向ける。俺はその少女を奪えたのか? 結局お前は何がしたいのだ?」
「……言葉遊びは好きじゃない。
 キーリは死んだ。お前が殺した。それが事実だ」
「なるほど。つまりお前は彼女の復讐を成就させるため、俺を殺したいわけだな?」
「そうなるな」
 言葉が詰まることはない。
 この代償行為を他人に復讐と言われたところで気にもならない。
 余計なものはあの砂浜に置いてきた。だからハーヴェイに迷いは無い。
 だがその覚悟を嘲るように、ウルペンは嗤う。
「――ならば貴様の大切にしていた少女はいない」
「……何が?」
 疑問符を返してくるハーヴェイに、ウルペンはさらに嘲笑を強くする。
 それはとても衰弱した、弱々しい表情筋の収縮だったが――
「そうだ! 貴様が信じていないというのなら、あの少女はもういない。
 俺に確かなものが何一つないというのなら、俺はあの少女を奪えていなかった!
 ならば少女はどこにいった――!」
 ――その体には、溢れんばかりの狂気と怒りがあった。
 信じるものを全て取り上げられた彼は、ただ狂うしかなかった。
 意味も分からず溢れ出てくる怒りは、死に体であるウルペンにほんの僅かの動作を許した。
 そしてハーヴェイはそれを察した。戦場での経験で知っている。こうなった人間は何より危険だ。
 トリガーを引こうとする。だが、それより僅かに速く、ウルペンはその言葉を突き出していた。
「――そう、あの少女を殺したのは貴様だ! 俺は八年も信じていたぞ! 例えそれが手に入らないと宣告されても!
 狂信もできない輩が、愛を語るなぁ!」
 どこまでも身勝手なその宣告を、だがハーヴェイは聞き流した。
 構わずにウルペンが動く。ともすればバラバラになりそうな関節を無視して、木の外周に沿うように右に踏み込む。
 引き金が引かれる。乾いた死刑宣告に従い、鉛の死神が音速を以て飛びかかる。
 ――初弾は外れた。
 心臓に照準されていた弾は、本来ならば移動差を含めても左肩に当たったのだろう。そして動きを止めていたはずだ。
 だが、すでにそこに肩はない。焼き落とされている。
 それでもハーヴェイは焦らなかった。
 一歩目で避けられても、二歩目を踏み出されるよりもう一度銃を撃つ方が速い。
 仮にあの乾かす糸で攻撃されても、金属製の義手に効果はない。そして不死人は核がある限り死なない。
 ハーヴェイは盤石の態勢でこの勝負に挑んでいる。故に計算違いは起こり得ない。
 ――そこに、不確定要素が入り込まない限りだが。
「なっ……!?」
 右腕が――義手が、動かない。完全に動かないわけではないが、それでもまるで反応が遅い。
 見れば、そこにはウルペンの念糸が巻き付いていた。
 ウルペンに信じられるものはない。それでも彼の狂気はその異能によって道を紡ぐ。
 金属に乾かす能力は通用しないし、思念の糸は普通の糸のように拘束等の働きは出来ない。
 だが念糸にはもう一つの特性があった。念糸で紡いだサークルは、一時的に精霊を捕らえられる。
 ウルペンは、まず相手の武器を持っている腕を落とそうとした。義手の付け根を壊死させようとしたのだ。
 狂気で念糸を紡げるとはいえ、体の消耗は大きい。
 駆け寄って格闘に持ち込めない今の彼にとって、その分の悪い賭けが唯一の可能性だった。
 本来ならば、そこでハーヴェイの勝利は確定していただろう。
 念を込めている間に、ハーヴェイの射撃はウルペンを殺すことが出来る。
 だが一つの意味に硝化し生まれた精霊と、主人に仕えるという単一思念で誕生した義手の霊は、その性質が酷く似通っていた。
 ウルペンは右手に念糸を繋いだ瞬間、精霊を相手にしたような反動を感じ取り――自動的に動く腕の秘密を知ることとなる。
「精霊の腕――それがカラクリか!」
 念糸を逆行してくる反動は、かつての破壊精霊ほどではない。一瞬で爆死して果てるような威力ではない。
 それでもボロボロの体はさらに破壊されていく。悲鳴をあげる壊れかけの体に鞭を入れ、ウルペンは逃走を開始した。
「っ、の――!」
 動かない右腕から左腕に銃を持ち替える。
 だが弾が放たれるよりも早く、ウルペンは木の後ろに逃げ込んでいた。
「逃がすか――!」
 それをハーヴェイが追う。いかに巨木とはいえ、回り込むのに一分や二分もかかるわけではない。
 一弾指の後、ハーヴェイは容易く仮面を被った黒衣の姿を捉えていた。
 ――こちらに向かって隻腕を突き出しているウルペンの姿を。
「――!」
 その姿に悪寒を感じ、即座に引き金を引く。
 だが、まともな照準がされていなかった銃弾は、今度はウルペンが装面していたEDの仮面を掠めるに終わった。
 さらにウルペンが後退し、木の陰に隠れながら念糸を放つ。
 体がどれほど欠損しようと、それこそ動けなくなるほどの大怪我であろうと、思念があれば念糸は働く。
 大木の幹を貫通し、念糸がハーヴェイを捉えた。
 ハーヴェイの左肘から先が消えた。骨と皮だけになった掌から、重い音を立てて銃が落ちる。
 拾い直している暇はない――ハーヴェイはそう判断するとウルペンとの距離を詰め、拘束の解かれた義手の拳を叩き込んだ。
「ぐっ……!」
 回避できずに腹部に一撃を貰い、さすがに苦しげな息を漏らすウルペン。いや、息だけではなく胃液も吐いていた。
 べちゃりとした液体が喉を遡り、彼の気道を塞ぐ。膝から力が抜け、その場に崩れ落ちる。
 だが、その瞳に宿る狂った意志は全く弱らない。
 臓物ごと吐き出す勢いで胃液を吐き捨て、絶え絶えに、それでもウルペンは絶叫する。
「貴様などに……殺されてやるものか!」
「やろっ……!」
 倒れ込んだウルペンの顔面に、ハーヴェイの蹴りが叩き込まれる。
 しかし、その打撃は本来の威力を失っていた。
 胴体と繋がっているので分かりにくいが、人の腕というのはかなり重い。
 左腕が壊死し、急激に変わった体重のバランスが、ハーヴェイの打撃を不完全なものとしていたのだ。
 それでもハーヴェイは不死人だ。体が損傷した状態での戦闘には慣れている。
 だがあの戦争の時には付けていなかった金属製の義手が、彼の知らないアンバランスを生んだ。
 本来ならば意識を刈り取っていたはずの蹴りは、ウルペンの頭蓋を揺らすに留まる。
 不死人の膂力にのけぞり、脳が揺れる感覚に吐き気を覚える。
 しかし吐くべき胃液もない。だから代わりに、ウルペンは血と呪いを吐いた。
「俺を殺すだけしかできない輩などに、俺は殺されてやるものか!
 確かなものがない世界ならば終わってしまえ! 否、こんな盤上は俺が壊してやる――!」
 もはや絶叫に使う呼気もなく、それは只の掠れ声に過ぎない。
 それでも彼は呪っていた。
 泣かずに逝けた男が、今は泣きながら世界を呪っていた。
 ――彼を突き動かした憤怒。いまならばその正体が分かる。
 ウルペンはどこまでも信じたかったのだ。
 我が物にはならずとも、せめてこの世界には確たるものがあると――それこそ誰にも奪えないものがあるのだと。
 だからウルペンはハーヴェイに賭けた。
 目の前の赤髪が愛していたと言った少女が確かなものだとすれば、この男は『喪失』でない別の理由で銃を向けているはずだ。
 ――だがその願いは、とても自分本位なものだ。それが他人に伝わるはずなど、ない。
 もとよりそんなものは、狂人の妄想なのだ。
 だが狂人だからこそ、ウルペンは止まらない。
 ハーヴェイが蹴り足を引き戻し、再度の打撃を準備するのに半秒。
 ウルペンは霞む視界にその蹴り足を認め、全力で念を注ぐ。
 視覚は歪み、脳は揺れ、声は出ない。
 それでも胸中はただ一色。燃え盛る業火の色に染まり尽している。
 その色彩が噴出した。銀の実体無き糸を通り、ハーヴェイの軸足を汚染する。
 倒れ込む不死人。そこにウルペンの念糸が殺到する。
 月下に連続して響く炸裂音。脳、肺、心臓、肝臓、脊髄。およそ知りうる限りの人体の急所を壊死させる。
 そうしてあらかた奪い尽すと、ウルペンは最後の念糸を紡いだ。
 巨木の根本を壊死させ、ハーヴェイを叩き潰すように倒れさせる。
 だが、その刹那。
「……リ」
 ウルペンは、声を聞いた。
 確かに聞いた。小さな囁きだが、確かにウルペンはそれを耳にした。
 ――男が発した、キーリ、という呟きを。
 復讐を果たせなかった謝罪では無く、助けを乞うような縋る言葉でもなく。
 それは、そういったものを超越した種類の、不可侵の言葉だった。
 不死人に霊体は、無い。彼らは動く死体。死ねば――否、『元』に戻れば消えるだけだ。
 エイフラムでないハーヴェイという存在は、消える。遺言すら葉擦れの音に吸われて残らず、消える。
 無論、ウルペンはそれを知らない。だが、男の希薄さは感じていた。
 ――だが、何故だろう。
 その男の言葉は、どこまでも残響し続けて消えることがない――
(……死を目前にして、か。もしや――)
 僅かな疑念が起こる。
 肺も声帯も脳も。すべて破壊された状態で紡がれた言葉は。
 それだけは、もしかしたら……
『未来永劫、お前は何も信じられまい』
 ――もっとも。
 その疑念の解が如何なる物であろうが大木の倒壊は止まらず、既に狂っている男を変えられるわけでもないだろうが――


◇◇◇


 轟音と地響きが、一瞬だけその場を支配した。
 ハーヴェイは死んだ。核を砕かれて、不死の兵士は死体に戻った。
 だが、その義手はまだこの世界に在った。
 憑依している霊は仇を取ろうとした。だが焼かれる前の完全な状態だったのなら兎も角、今のように腕だけではどうしようもない。
 だから彼は銃を探した。幸い、それほど離れていないところにそれは落ちている。
 だが同時に、彼はもう一つ見つけてしまった。
 それは敵討ちの相手であるウルペンだった。かなり衰弱しているようで、それでも瞳の輝きだけは劣化していない。
 ウルペンは片手で這いずって、義手に近づいてくる。
 その動きは極めて緩慢だ。だが、その様子に義手は確かな狂気を覚えた。
 義手は急いでハーヴェイとの接続を断ち切ると、まるで指を虫の足のように動かして移動し始める。
 ――いや、移動し始めようと、した。
 パン、という乾いた音。それと同時に、義手が足場にしようとしていた土が、蟻地獄のようなさらさらの砂に変じる。
「……本来ならば、このコンディションで念糸は紡げないだろうな」
 体の不調は、そのまま思念に影響を及ぼす。
 だが、いまのウルペンの思考に曇りはない。五感は途切れ始めているが、それでも狂気が薄まることはない。
 砂の上で藻掻いている義手の横を追い越して、ウルペンは拳銃を手に取った。
 前に奪った炭化銃のお陰で、操作方法はだいたい分かる。
「精霊を殺せるのはより強い精霊だ。生憎、いま俺は精霊を持ち合わせていない。
 それでも、それほど強くない精霊ならば――」
 義手にほとんど銃口を押しつけるようにして、ウルペンは銃を撃った。
 さほど強くない精霊ならば、傷くらいは付けることが出来る。関節等の機構を破壊すればしばらくは動けまい。
 ウルペンはそう当たりを付けていたが、しかし彼が撃ったのは普通の銃ではなかった。
 吸血鬼狩りにも用いられていた呪化弾頭が、義手に取り憑いている霊そのものを破壊する。
 それに気付きもせず、ウルペンは残弾を全て叩き込んだ。ケーブルが断線し、フレームが歪む。
 最後に弱々しいモーター音をひとつだけあげて、義手は活動を停止した。
 ウルペンは軽くなった拳銃を捨てる。遠くに投げ捨てる力はすでになく、ほとんど取り落とすようなものだったが。
 体は限界を迎えていた。念糸で義手を捕らえた反動で、酷く衰弱している。
 だが、それでも自分は死ぬまい――いや、死ぬ前にやらなければならないことがある。
 先の銃撃で破損した仮面を外し、顔を外気にさらした。
 黒衣を気取る気はない。もはや自分は逆しまの聖域すら信じられない。
 聖域の外で、彼は宣言する。この世界に確たるものが何一つないのなら――
「アマワ……貴様の契約すら確たる物でないのなら、俺は貴様を殺しに行くぞ。
 俺に終わりが与えられないのなら、俺がこの世界をすべて殺してやる」
 自分が終わらないのなら、それが最終的な目標だ。
 だが、彼の言う終わりとは何か?
 死ではない。圧倒的な力に遭遇することでもない。
 ――ウルペン自身にすら分からない。それを探しながら、ウルペンは殺戮を続ける。
「この盤上遊技も、貴様の下らない問いかけなのだろう……アマワよ。
 ならば、それも俺が殺す。すべて殺す。
 嫌ならば出てこい。怪物領域から出てこい、アマワ……」
 最早そこに明確な論理はない。ただの狂人の奇言だ。
 信念を貫き通すために狂ったのでもなく、ただ矛盾と分裂に満ちた、本当の意味での狂人。
 だがひたすらに狂っても、絶望すら信じることが出来なくなっても、やるべきことは変わらない。
 アマワに答えを捧げよう。貴様の求める物は手に入らないのだと教えてやろう。
 そのために奴を引きずり出そう。この島の参加者を皆殺しにしてでも。
(俺は虚無だ。何もない男だ)
 何も信じることができない、あやふやな存在だ。
 だが、それでいい。
「さあ――殺されたくないのなら、俺に終わりをもたらせるか、な?」
 ――この島から、俺がすべて奪った時に残る物。
 それはとても不明瞭で、グシャグシャの、底抜けにグロテスクなものに違いない。
 その思考を最後に、ウルペンの意識は闇に落ちた。
 ……だというのに、その場には哄笑が残った。
 ウルペンは確かに昏睡している。それでも彼の嗤いは確かにある。
 それはまるで精霊のように、どこまでも狂気に純化した、そしてあるのかどうかも分からない哄笑だった。


【017 ハーヴェイ 死亡】
【残り 44人】

【B-6/森/1日目・21:40頃】
【ウルペン】
[状態]:左腕が肩から焼け落ちている/極度の衰弱/昏睡/狂気/腹部に打撲/
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考]:参加者を皆殺しにし、アマワも殺す。終わりを探す。
[備考]:第二回放送を冒頭しか聞いていません。黒幕はアマワだと認識しています。
    第三回放送を聞いていたかどうかは不明です。
    チサトの姓がカザミだと知り、チサトの容姿についての情報を得ました。
    これからは終わりを探しながら、参加者を皆殺しにするつもりです。

※【B-6/森】に破損したEDの仮面、壊れたハーヴェイの義手、Eマグ(弾数0)が落ちています。


  • 2007/04/13 修正スレ297

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