第557話:闘犬、狂犬、警察犬 作:◆CDh8kojB1Q
「をーっほほほほほほ! 挽肉におなりっ!」
号砲のような雄たけびとともに進撃するのは小早川奈津子。
大上段に大剣を構え、威風をまとって向かってくるその偉容は
鬼武者のごとき威圧感を相手に与える。
その顔は憤怒で染まり、猛久しい象のような吐息を吹き出していた。
緊張に沈む街路。しかし、
「野放図な行動原理だな。怪物と聞いたが、実際はただの馬鹿か」
マンホールの投擲を避けて身を屈めていた屍刑四郎が、上体を立て直して立ちふさがる。
赤旗目掛けて突っ込んでくる闘牛、
それに立ち向かう闘牛士さながらの堂々とした態度だ。
濡れて顔にかかっていたドレッド・ヘアを掻き揚げると、
「刑事に対する殺人未遂――よくやってくれた」
一部の新宿区民は、この言葉をどれほど恐れているだろう。
それほどまでに、魔界刑事は『犯罪者』に対して徹底的で容赦が無い。
文字どおりに虫けらとしか相手を見なさないからだ。
だが、その宣告も小早川奈津子にとっては脅威にはならない。
特に先刻の侮辱の影響で、彼女は屍の放った馬鹿という単語に過剰に反応した。
「国家の犬風情が、あたくしに意見しようなど万年早くってよ!」
ひときわ凄烈な轟声をあげ、その加速をいっそう速める。
屍との距離はすでに十メートルを切っていた。
あと数歩で小早川奈津子のリーチ内だ。
女傑が満身の一撃を放とうとしたその瞬間。屍は強張った面で彼女に向き合い、
「おまえはその犬にかみ殺されるのさ」
つ、と地面を滑るかのように音も無く後退した。
ただ下がるだけではない。相手のリーチを完全に読みきり、
攻撃を避けた瞬間に踏み込んでのカウンターを入れることが可能な体勢だった。
屍の経験・技量は女傑のそれを圧倒的に上回っていた。
気づいた小早川奈津子が慌てて剣を止めようとするが、すでに慣性は働いている。
全ては屍の思惑どおりだ。
号砲のような雄たけびとともに進撃するのは小早川奈津子。
大上段に大剣を構え、威風をまとって向かってくるその偉容は
鬼武者のごとき威圧感を相手に与える。
その顔は憤怒で染まり、猛久しい象のような吐息を吹き出していた。
緊張に沈む街路。しかし、
「野放図な行動原理だな。怪物と聞いたが、実際はただの馬鹿か」
マンホールの投擲を避けて身を屈めていた屍刑四郎が、上体を立て直して立ちふさがる。
赤旗目掛けて突っ込んでくる闘牛、
それに立ち向かう闘牛士さながらの堂々とした態度だ。
濡れて顔にかかっていたドレッド・ヘアを掻き揚げると、
「刑事に対する殺人未遂――よくやってくれた」
一部の新宿区民は、この言葉をどれほど恐れているだろう。
それほどまでに、魔界刑事は『犯罪者』に対して徹底的で容赦が無い。
文字どおりに虫けらとしか相手を見なさないからだ。
だが、その宣告も小早川奈津子にとっては脅威にはならない。
特に先刻の侮辱の影響で、彼女は屍の放った馬鹿という単語に過剰に反応した。
「国家の犬風情が、あたくしに意見しようなど万年早くってよ!」
ひときわ凄烈な轟声をあげ、その加速をいっそう速める。
屍との距離はすでに十メートルを切っていた。
あと数歩で小早川奈津子のリーチ内だ。
女傑が満身の一撃を放とうとしたその瞬間。屍は強張った面で彼女に向き合い、
「おまえはその犬にかみ殺されるのさ」
つ、と地面を滑るかのように音も無く後退した。
ただ下がるだけではない。相手のリーチを完全に読みきり、
攻撃を避けた瞬間に踏み込んでのカウンターを入れることが可能な体勢だった。
屍の経験・技量は女傑のそれを圧倒的に上回っていた。
気づいた小早川奈津子が慌てて剣を止めようとするが、すでに慣性は働いている。
全ては屍の思惑どおりだ。
が、その予定を狂わす第三者は意外な場面で行動してきた。
「てンめぇ……! そいつは俺の獲物なんだよ!」
小早川奈津子を激怒させた張本人、甲斐氷太だ。
屍は、甲斐が漁夫の利狙いで自分を襲うものだろうと考え、
鮫による奇襲にも警戒を怠ってはいなかった。
しかし、甲斐氷太は気の赴くままに敵意を放ち、その警戒の斜め上を行く。
あろうことか、屍向かって突進してくる小早川奈津子の両足に、
甲斐は黒鮫の尾で痛烈な一撃をお見舞いしたのだ。
タイミングに乗った一発は、常人の足を打ち砕く威力を誇っていた。
だが、ドラゴン・バスターを自称する女傑に対しては、
ただの脚払い程度の攻撃に過ぎなかったのだ。
「あっー!」
驚嘆の声とともに、宙に浮きつつ前方へと体を流す小早川奈津子。
屍にとってその転倒は最悪の結果をもたらした。
巨人の剣は振り下ろされる途中であり、それが前のめりになった巨体と、
脚払いで宙に浮いた慣性とが組み合わさり、予想以上の斬撃範囲を発揮したからだ。
「をーっほほほほ! これぞ怪我の功名、一刀の下に斬り捨ててあげましょう」
してやったり、と言った風情の嬌声に後押しされながら、
ブルートザオガーが花柄模様の男に迫る。
その威力・硬度・切れ味は、ともに人一人を真っ二つにするには十分すぎる。
大剣が隻眼の顔に達する直前、魔界刑事は賭けに出た。
そのたくましい両腕が閃いたかと思った瞬間、大剣を左右から挟みこんだのだ。
真剣白刃取り。
絶体絶命の状況下でそれを成しえたのは、
屍の卓越した身体能力と古代武術『ジルガ』の技法に他ならない。
短距離において音速を突破できる屍は、その能力が制限されていても
技の冴えを衰えさせていなかったのだ。
しかし、魔界刑事の身体能力と古代武術をもってしても、
小早川奈津子の斬撃を止めることはできなかった。
巨人のパワーは怒り補正を受けて、一気に剣を押し込もうと猛威を振るう。
白刃取りによって勢いを殺したものの、添えられた屍の手ごと剣が迫る。
鼻頭に大剣が到達する直前、屍は頭を傾けて直撃を避けた。
それでも、依然として剣が振り下ろされていることには変わりが無い。
命中箇所が頭から肩へとずれただけだ。
大剣が花柄模様を切り裂く。
直後、硬い音がした。
だがそれは肉を断ち切り、骨を砕く音ではなかった。
間違いなく剣は命中した。しかし、一滴たりとも流血が見られない。
屍は憮然として告げた。
「古代武術ジルガのうち――鉄皮。上着を台無しにしやがって、このクズが」
刑事の背後から吹き出した殺気に危機を感じた小早川奈津子は
慌てて飛びのこうとする。
しかし、それは叶わなかった。
今度は逆に、鋼のような屍の腕が万力のごとく大剣を固定していたからだ。
次の瞬間、鞭のような蹴撃が小早川奈津子の巨大な左大腿を打った。
二発、三発、並みのヤクザやチンピラは、この時点で粉砕骨折しているだろう。
四発、五発、小早川奈津子の顔がついに苦痛に歪む。
そして六発目が大腿の皮膚を打ち破り、鮮血を散らすと同時に
その巨体がゆるりと傾き、受身のために女傑は路地へと手を着いた。
「これでようやく急所を殴れるな」
「仰ぎ見るべきこのあたくしを同じ視線で眺め回すとは何たる無礼!」
「この期に及んで何を言ってやがるこの唐変木。あばよ」
言うと同時に、屍の右腕が後ろに引かれる。
この構えの果てにあるのは、ジルガの技法『停止心掌』。
小早川奈津子のような怪物を一撃で仕留めるにはこれしかないと、
屍が先ほどから狙っていた技だ。
強力無比な掌撃が、万全を期して女傑の胸へ迫る。
「てンめぇ……! そいつは俺の獲物なんだよ!」
小早川奈津子を激怒させた張本人、甲斐氷太だ。
屍は、甲斐が漁夫の利狙いで自分を襲うものだろうと考え、
鮫による奇襲にも警戒を怠ってはいなかった。
しかし、甲斐氷太は気の赴くままに敵意を放ち、その警戒の斜め上を行く。
あろうことか、屍向かって突進してくる小早川奈津子の両足に、
甲斐は黒鮫の尾で痛烈な一撃をお見舞いしたのだ。
タイミングに乗った一発は、常人の足を打ち砕く威力を誇っていた。
だが、ドラゴン・バスターを自称する女傑に対しては、
ただの脚払い程度の攻撃に過ぎなかったのだ。
「あっー!」
驚嘆の声とともに、宙に浮きつつ前方へと体を流す小早川奈津子。
屍にとってその転倒は最悪の結果をもたらした。
巨人の剣は振り下ろされる途中であり、それが前のめりになった巨体と、
脚払いで宙に浮いた慣性とが組み合わさり、予想以上の斬撃範囲を発揮したからだ。
「をーっほほほほ! これぞ怪我の功名、一刀の下に斬り捨ててあげましょう」
してやったり、と言った風情の嬌声に後押しされながら、
ブルートザオガーが花柄模様の男に迫る。
その威力・硬度・切れ味は、ともに人一人を真っ二つにするには十分すぎる。
大剣が隻眼の顔に達する直前、魔界刑事は賭けに出た。
そのたくましい両腕が閃いたかと思った瞬間、大剣を左右から挟みこんだのだ。
真剣白刃取り。
絶体絶命の状況下でそれを成しえたのは、
屍の卓越した身体能力と古代武術『ジルガ』の技法に他ならない。
短距離において音速を突破できる屍は、その能力が制限されていても
技の冴えを衰えさせていなかったのだ。
しかし、魔界刑事の身体能力と古代武術をもってしても、
小早川奈津子の斬撃を止めることはできなかった。
巨人のパワーは怒り補正を受けて、一気に剣を押し込もうと猛威を振るう。
白刃取りによって勢いを殺したものの、添えられた屍の手ごと剣が迫る。
鼻頭に大剣が到達する直前、屍は頭を傾けて直撃を避けた。
それでも、依然として剣が振り下ろされていることには変わりが無い。
命中箇所が頭から肩へとずれただけだ。
大剣が花柄模様を切り裂く。
直後、硬い音がした。
だがそれは肉を断ち切り、骨を砕く音ではなかった。
間違いなく剣は命中した。しかし、一滴たりとも流血が見られない。
屍は憮然として告げた。
「古代武術ジルガのうち――鉄皮。上着を台無しにしやがって、このクズが」
刑事の背後から吹き出した殺気に危機を感じた小早川奈津子は
慌てて飛びのこうとする。
しかし、それは叶わなかった。
今度は逆に、鋼のような屍の腕が万力のごとく大剣を固定していたからだ。
次の瞬間、鞭のような蹴撃が小早川奈津子の巨大な左大腿を打った。
二発、三発、並みのヤクザやチンピラは、この時点で粉砕骨折しているだろう。
四発、五発、小早川奈津子の顔がついに苦痛に歪む。
そして六発目が大腿の皮膚を打ち破り、鮮血を散らすと同時に
その巨体がゆるりと傾き、受身のために女傑は路地へと手を着いた。
「これでようやく急所を殴れるな」
「仰ぎ見るべきこのあたくしを同じ視線で眺め回すとは何たる無礼!」
「この期に及んで何を言ってやがるこの唐変木。あばよ」
言うと同時に、屍の右腕が後ろに引かれる。
この構えの果てにあるのは、ジルガの技法『停止心掌』。
小早川奈津子のような怪物を一撃で仕留めるにはこれしかないと、
屍が先ほどから狙っていた技だ。
強力無比な掌撃が、万全を期して女傑の胸へ迫る。
その一撃を打ち出した瞬間、屍は後頭部に殺気が当てられるのを感じた。
すでに屍は攻撃中だ。未来は二つ。
危機を回避するか、そのまま巨人に止めを刺すか。
逡巡する時間が無い中で屍は危機回避を優先した。
烈風とともに花柄模様が翻り、同時に黒鮫が口腔鮮やかに飛来する。
屍は甲斐の鮫と攻撃の察しをつけていたのだ。
だが停止心掌は完全に失敗し、小早川奈津子は隙をついて離脱してしまった。
「くそっ、よく避ける野郎だ」
言うが早いか、甲斐の瞳が燃えるような輝きを放つ。
屍はその輝きの中に渇望の意を見出した。
「餓えてやがるな、狂犬め」
言いながら屍は若干つま先に加重をかけ、重心を前に傾かせた。
対する甲斐は正面に屍を捉えながらも、四方にも感覚を向けて
周囲空間そのものを把握しているのだろう。
お互いの視線が交差し、しばしの間世界が止まった。
すでに屍は攻撃中だ。未来は二つ。
危機を回避するか、そのまま巨人に止めを刺すか。
逡巡する時間が無い中で屍は危機回避を優先した。
烈風とともに花柄模様が翻り、同時に黒鮫が口腔鮮やかに飛来する。
屍は甲斐の鮫と攻撃の察しをつけていたのだ。
だが停止心掌は完全に失敗し、小早川奈津子は隙をついて離脱してしまった。
「くそっ、よく避ける野郎だ」
言うが早いか、甲斐の瞳が燃えるような輝きを放つ。
屍はその輝きの中に渇望の意を見出した。
「餓えてやがるな、狂犬め」
言いながら屍は若干つま先に加重をかけ、重心を前に傾かせた。
対する甲斐は正面に屍を捉えながらも、四方にも感覚を向けて
周囲空間そのものを把握しているのだろう。
お互いの視線が交差し、しばしの間世界が止まった。
が、それもつかの間。
「クックック、クハハハッ」
突如として甲斐がを笑みをこぼした。
楽しくて、満足で仕方が無いといった表情で。
内奥からこみ上げてくる歓喜と情熱が甲斐氷太を奮わせたようだ。
「何が可笑しい」
「ククッ、笑わずにいられるかよ。おまえみてえな相手を前にして。
ついさっきもガンくれあったが、こんな鬼みてえな、
いや、悪魔みてえな視線を向ける野郎は初めてだぜ?」
見ろよ、と甲斐は屍に対して腕をまくって見せた。
「見事に鳥肌が立ってやがる。数秒睨まれただけでこんなになっちまった。
それだけじゃねえ、脊髄にツララをブッこまれたような感覚だぜ。
相対してるだけで、テメエの威圧とスゴ味に俺自身が飲み込まれちまいそうだ。
目の前の男がどれだけヤバいか、俺の本能はちゃんと分かってる」
対して屍は何も言わない。甲斐の出方を伺っている。
空中を旋回する二匹の鮫が、番兵のように屍の接近を防いでいるからだ。
「でもよお、いや、だからこそ、だな。
こうして俺が向き合ってる相手ならば、このクソッくだらねえ世界の中で
唯一手応えが感じられそうなヤツなんじゃねえかって思うんだ。
余計な虚飾や装飾を取っ払ったシンプルな、それでいて確実な手応えをよぉ」
カプセルにはまってから、いや、それ以前から甲斐には何もかもが
嘘くさく思えてしょうがなかった。
どれもこれもが些事であって、切り捨てられない、必要な何かと比べて
無価値な石ころに過ぎないと感じていた。
そんな日常に宙ぶらりんになって生きる甲斐にとって、
悪魔戦に溺れることはまさに快感だった。
いや、思考や感情の奥にある「存在」する何かが弾ける感覚だ。
余計な幻想を片っ端か打ち壊してくれる。
屍との闘争によって、甲斐は失われない確実なものを得られると確信した。
だからこそ、屍を追ってここまで来たのだ。
「さぁ、存分に殺しあおうぜ。過去も未来も要らねえ、必要なのは今だけだ。
満ち足りるまで、クラッシュするまで溺れようじゃねえか」
弾けそうな興奮と期待そして心情をぶつける甲斐。
しかし、
「粋がるなよ糞虫」
返ってきたのは痛罵と屍のデイパックだった。
悦に入ったように語る甲斐に対して、屍は全力でデイパックを叩きつけると
疾風のごとく間を詰める。
「おまえの自己満足に付き合う理由も義理も無い、警察をナメるな。
ゴミは掃除する、治安は守る、それだけだ」
白鮫がデイパックをブロックする隙をついた低姿勢で一気に距離を詰めると、
そのまま黒鮫の胴に向かって上段蹴りを叩き込む。
身もだえしながら後退する黒鮫。
その背後で、甲斐が目を剥きながら歯を食いしばる姿を屍は捉えた。
「カラクリが読めてきたぜ――その妖物、おまえと同調してやがるな」
「っはぁ……容赦無えな。けどよぉ、そーやって煽られると
俺はますます燃えるんだっ!」
痛みを堪えつつ、しかし陶酔したかのように甲斐はカプセルを口に含む。
次の瞬間、眼前に掲げた拳を振り下ろし、
「ノッてきたぜ――食い千切れ!」
蹂躙の意を轟かせた。
「クックック、クハハハッ」
突如として甲斐がを笑みをこぼした。
楽しくて、満足で仕方が無いといった表情で。
内奥からこみ上げてくる歓喜と情熱が甲斐氷太を奮わせたようだ。
「何が可笑しい」
「ククッ、笑わずにいられるかよ。おまえみてえな相手を前にして。
ついさっきもガンくれあったが、こんな鬼みてえな、
いや、悪魔みてえな視線を向ける野郎は初めてだぜ?」
見ろよ、と甲斐は屍に対して腕をまくって見せた。
「見事に鳥肌が立ってやがる。数秒睨まれただけでこんなになっちまった。
それだけじゃねえ、脊髄にツララをブッこまれたような感覚だぜ。
相対してるだけで、テメエの威圧とスゴ味に俺自身が飲み込まれちまいそうだ。
目の前の男がどれだけヤバいか、俺の本能はちゃんと分かってる」
対して屍は何も言わない。甲斐の出方を伺っている。
空中を旋回する二匹の鮫が、番兵のように屍の接近を防いでいるからだ。
「でもよお、いや、だからこそ、だな。
こうして俺が向き合ってる相手ならば、このクソッくだらねえ世界の中で
唯一手応えが感じられそうなヤツなんじゃねえかって思うんだ。
余計な虚飾や装飾を取っ払ったシンプルな、それでいて確実な手応えをよぉ」
カプセルにはまってから、いや、それ以前から甲斐には何もかもが
嘘くさく思えてしょうがなかった。
どれもこれもが些事であって、切り捨てられない、必要な何かと比べて
無価値な石ころに過ぎないと感じていた。
そんな日常に宙ぶらりんになって生きる甲斐にとって、
悪魔戦に溺れることはまさに快感だった。
いや、思考や感情の奥にある「存在」する何かが弾ける感覚だ。
余計な幻想を片っ端か打ち壊してくれる。
屍との闘争によって、甲斐は失われない確実なものを得られると確信した。
だからこそ、屍を追ってここまで来たのだ。
「さぁ、存分に殺しあおうぜ。過去も未来も要らねえ、必要なのは今だけだ。
満ち足りるまで、クラッシュするまで溺れようじゃねえか」
弾けそうな興奮と期待そして心情をぶつける甲斐。
しかし、
「粋がるなよ糞虫」
返ってきたのは痛罵と屍のデイパックだった。
悦に入ったように語る甲斐に対して、屍は全力でデイパックを叩きつけると
疾風のごとく間を詰める。
「おまえの自己満足に付き合う理由も義理も無い、警察をナメるな。
ゴミは掃除する、治安は守る、それだけだ」
白鮫がデイパックをブロックする隙をついた低姿勢で一気に距離を詰めると、
そのまま黒鮫の胴に向かって上段蹴りを叩き込む。
身もだえしながら後退する黒鮫。
その背後で、甲斐が目を剥きながら歯を食いしばる姿を屍は捉えた。
「カラクリが読めてきたぜ――その妖物、おまえと同調してやがるな」
「っはぁ……容赦無えな。けどよぉ、そーやって煽られると
俺はますます燃えるんだっ!」
痛みを堪えつつ、しかし陶酔したかのように甲斐はカプセルを口に含む。
次の瞬間、眼前に掲げた拳を振り下ろし、
「ノッてきたぜ――食い千切れ!」
蹂躙の意を轟かせた。
同時に、二匹の悪魔が屍目掛けて雷光のように飛んでいく。
甲斐には冷静さが欠けるが、悪魔のスペックがそれをカバーする。
背びれ、胸びれ、尾、ノコギリ歯。
電光石火で繰り出されるコンビネーションが屍を包む。
前後左右上下から襲い来る破壊力。
「ベルを鳴らせ、ショーの始まりだっ!」
酔ったように叫ぶ甲斐、シャンパンの泡のように敵意が弾ける。
対する屍は、悪魔の攻撃を持ち前の直観力で巧みに捌き、時には避ける。
足首を狙った黒鮫の尾の一撃を片足を浮かしてやりすごし、
同時に右腕部をミンチにせんと迫る白鮫の歯を防ぐため、
顎に掌打を打ち込んで、鮫が突っ込んでくるベクトルを変える。
「ハハッ! 踊れ、踊れぇ!」
カプセルを嚥下し、叫ぶ顔はもはや狂喜の域に突入していた。
目は剥き出しになったように開かれ、しかも真っ赤に燃えている。
その笑みはまさに悪魔持ちと呼ぶに相応しい。
物部景がこの光景を見たらいったい何を思うだろうか。
狂犬の王が操る悪魔に対して、生身の人間が素手で渡り合っているのだから。
荒れ狂うハリケーンの直下のように戦塵が舞い、風が千切れる。
魔人と悪魔の饗宴は壮絶な様相を示していた。
甲斐には冷静さが欠けるが、悪魔のスペックがそれをカバーする。
背びれ、胸びれ、尾、ノコギリ歯。
電光石火で繰り出されるコンビネーションが屍を包む。
前後左右上下から襲い来る破壊力。
「ベルを鳴らせ、ショーの始まりだっ!」
酔ったように叫ぶ甲斐、シャンパンの泡のように敵意が弾ける。
対する屍は、悪魔の攻撃を持ち前の直観力で巧みに捌き、時には避ける。
足首を狙った黒鮫の尾の一撃を片足を浮かしてやりすごし、
同時に右腕部をミンチにせんと迫る白鮫の歯を防ぐため、
顎に掌打を打ち込んで、鮫が突っ込んでくるベクトルを変える。
「ハハッ! 踊れ、踊れぇ!」
カプセルを嚥下し、叫ぶ顔はもはや狂喜の域に突入していた。
目は剥き出しになったように開かれ、しかも真っ赤に燃えている。
その笑みはまさに悪魔持ちと呼ぶに相応しい。
物部景がこの光景を見たらいったい何を思うだろうか。
狂犬の王が操る悪魔に対して、生身の人間が素手で渡り合っているのだから。
荒れ狂うハリケーンの直下のように戦塵が舞い、風が千切れる。
魔人と悪魔の饗宴は壮絶な様相を示していた。
その戦場に巨人が乱入してきた時、均衡は崩れた。
屍により手痛い反撃を受けた小早川奈津子が、大剣片手に威勢をあげる。
「をーっほほほほ! 面妖な鮫ともども、あたくしが討ち取ってあげましょう!」
「上等っ! デカ殺るついでにハムにしてやるよ!」
「どいつもこいつもよく喋る――」
風が唸った。
ブルートザオガーの軌道上から身をくねって退避した白鮫に
屍の変則フックが直撃し、フィードバックで甲斐がうめく。
その反撃とばかりに屍目掛けて突進する黒鮫の尾を
小早川奈津子が掴んで豪快に振りかぶる。
それはまるで大魚を吊り上げた漁師のような風情であった。
そのまま哄笑とともに鮫を屍に叩きつけようとするが、
鮫の抵抗にあい巨大な頬に鮫肌の痕がつく。
「ざっまあみやがれ、バァーカ!」
甘美な手応えに笑う狂犬。もはや完全にカプセルがキマってぶっ飛んでいる。
よろめく女傑。
隙を逃さぬよう屍の両腕が瞬動し、巨人の手首を砕き折ろうとするが、
「乙女の柔肌を汚した重罪、打ち首獄門市中引き回しの刑で償うがよくってよ!」
憤激した女傑の振り回す大剣がそれを許さない。
型もへったくれも無い、力任せで常識外れな剣戟だ。
接近した魔界刑事の首筋を剣の切っ先が擦過する。
「来た来た来たぁ! 待ってたんだっ、脳天ブチ抜くこの感覚をよおっ!」
その斬撃で飛び散った鮮血を舐め取るかのような軌道で、白鮫が屍を強襲。
防御の隙間を縫って屍の肩を尾で打ち据えた。
隻眼の顔に苛立ちが浮かぶ。
一瞬ごとに別個のコンビネーションで攻め立ててくる甲斐氷太。
意外性とタフさによって屍の予測の外を行く小早川奈津子。
二人を上回る技量と経験を持ち合わせる屍だが、
思惑どおりに流れを組み立てることは難しい。
屍の手元に愛銃があれば、一秒とかからず二人は射殺されていただろう。
だが、屍の支給品は武器ではなく椅子だったのだ。
珍しく、魔界刑事の額を汗が伝った。
屍により手痛い反撃を受けた小早川奈津子が、大剣片手に威勢をあげる。
「をーっほほほほ! 面妖な鮫ともども、あたくしが討ち取ってあげましょう!」
「上等っ! デカ殺るついでにハムにしてやるよ!」
「どいつもこいつもよく喋る――」
風が唸った。
ブルートザオガーの軌道上から身をくねって退避した白鮫に
屍の変則フックが直撃し、フィードバックで甲斐がうめく。
その反撃とばかりに屍目掛けて突進する黒鮫の尾を
小早川奈津子が掴んで豪快に振りかぶる。
それはまるで大魚を吊り上げた漁師のような風情であった。
そのまま哄笑とともに鮫を屍に叩きつけようとするが、
鮫の抵抗にあい巨大な頬に鮫肌の痕がつく。
「ざっまあみやがれ、バァーカ!」
甘美な手応えに笑う狂犬。もはや完全にカプセルがキマってぶっ飛んでいる。
よろめく女傑。
隙を逃さぬよう屍の両腕が瞬動し、巨人の手首を砕き折ろうとするが、
「乙女の柔肌を汚した重罪、打ち首獄門市中引き回しの刑で償うがよくってよ!」
憤激した女傑の振り回す大剣がそれを許さない。
型もへったくれも無い、力任せで常識外れな剣戟だ。
接近した魔界刑事の首筋を剣の切っ先が擦過する。
「来た来た来たぁ! 待ってたんだっ、脳天ブチ抜くこの感覚をよおっ!」
その斬撃で飛び散った鮮血を舐め取るかのような軌道で、白鮫が屍を強襲。
防御の隙間を縫って屍の肩を尾で打ち据えた。
隻眼の顔に苛立ちが浮かぶ。
一瞬ごとに別個のコンビネーションで攻め立ててくる甲斐氷太。
意外性とタフさによって屍の予測の外を行く小早川奈津子。
二人を上回る技量と経験を持ち合わせる屍だが、
思惑どおりに流れを組み立てることは難しい。
屍の手元に愛銃があれば、一秒とかからず二人は射殺されていただろう。
だが、屍の支給品は武器ではなく椅子だったのだ。
珍しく、魔界刑事の額を汗が伝った。
泥沼の白兵戦になるかと思われたその時、
屍はついに死中の活を見出す。
甲斐が矢継ぎ早に繰り出してきた悪魔のコンビネーション攻撃。
その派生パターンを魔界刑事は直感的に理解した。
思考のトレースではなく、魔界都市で培ってきた本能的なものが
鮫の動きを先読みしたのだ。
屍は信頼に足るその感覚に従い地を蹴った。
悪魔持ちたる甲斐は戦闘開始直後からあまり移動していない。
そしてその三メートル先で白鮫が路壁に沿って飛ぶのが見える。
あの鮫の動きが予想したとおりならそこで決着だろう、と屍は思慮した。
左前方から迫り来るブルートザオガーを間一髪で切り抜け、
大剣の担い手たる小早川奈津子の巨体に接近する。
左肩を密着させて相手の重心をわずかにずらし、タイミング良くショートパンチ。
屍の右拳を腹部に受けた女傑の巨体が後ろに流れる。
「をーっほほほほ! この程度痛くも痒くもなくってよ!」
やかましい、と拳に手応えを感じながら、屍は白鮫の動きに注目した。
かくして、白鮫は路壁に向かって尾を振りかぶる。
それを確認した瞬間、屍はチェック・メイトに至る道筋を構築し、実行する。
流れていく小早川奈津子の体、それを全力で押して巨体を移動させる。
同じタイミングで白鮫はブロック状の路壁を尾で破壊し、
その破片を散弾銃のごとく屍へと浴びせかけた。
同時に黒鮫が上方から襲い来る。
これこそ、屍が直感的に予知した新手の攻撃バリエーションだ。
屍へ迫るブロックの破片をタイミング良く小早川奈津子の体が受け止める。
予想外のダメージで意識を乱した女傑の腕に向かって、
屍はアッパーカットを放つ。
結果、巨人の右腕は大剣を持ったまま直上へと跳ね上がり、
襲い掛かってきた黒鮫に激突。
全ての攻撃が阻まれ、同時に無防備な甲斐への道が開けた。
屍はついに死中の活を見出す。
甲斐が矢継ぎ早に繰り出してきた悪魔のコンビネーション攻撃。
その派生パターンを魔界刑事は直感的に理解した。
思考のトレースではなく、魔界都市で培ってきた本能的なものが
鮫の動きを先読みしたのだ。
屍は信頼に足るその感覚に従い地を蹴った。
悪魔持ちたる甲斐は戦闘開始直後からあまり移動していない。
そしてその三メートル先で白鮫が路壁に沿って飛ぶのが見える。
あの鮫の動きが予想したとおりならそこで決着だろう、と屍は思慮した。
左前方から迫り来るブルートザオガーを間一髪で切り抜け、
大剣の担い手たる小早川奈津子の巨体に接近する。
左肩を密着させて相手の重心をわずかにずらし、タイミング良くショートパンチ。
屍の右拳を腹部に受けた女傑の巨体が後ろに流れる。
「をーっほほほほ! この程度痛くも痒くもなくってよ!」
やかましい、と拳に手応えを感じながら、屍は白鮫の動きに注目した。
かくして、白鮫は路壁に向かって尾を振りかぶる。
それを確認した瞬間、屍はチェック・メイトに至る道筋を構築し、実行する。
流れていく小早川奈津子の体、それを全力で押して巨体を移動させる。
同じタイミングで白鮫はブロック状の路壁を尾で破壊し、
その破片を散弾銃のごとく屍へと浴びせかけた。
同時に黒鮫が上方から襲い来る。
これこそ、屍が直感的に予知した新手の攻撃バリエーションだ。
屍へ迫るブロックの破片をタイミング良く小早川奈津子の体が受け止める。
予想外のダメージで意識を乱した女傑の腕に向かって、
屍はアッパーカットを放つ。
結果、巨人の右腕は大剣を持ったまま直上へと跳ね上がり、
襲い掛かってきた黒鮫に激突。
全ての攻撃が阻まれ、同時に無防備な甲斐への道が開けた。
「何っ!?」
驚嘆の叫びは甲斐のものだ。
今しがた思いついたばかりのコンビネーション攻撃を
タイミング良く完全に防がれたのだから、そのリアクションは当然といえよう。
攻撃の派生も内容もたった今誕生したばかりなのだが、
屍はそれを以前から知っていたかのごとく完璧に無効化してみせた。
攻撃を五感で感知する以前に、屍が対応策を練っていたとすれば、
「なんつー勘の良さだよテメエ……ククッ、最高じゃねえか」
甲斐氷太は今やっと、屍刑四郎の驚異的な危機回避能力の正体を知った。
鮫による最初の奇襲も、背後からの強襲もことごとく屍は回避した。
その理由が、直感による殺気察知に由来するものならば、
今まで二匹の悪魔の攻撃を凌ぎ続けてきた事実も納得できる。
そんな甲斐を尻目に、屍は順当に決着への手順を踏んでいく。
先ほど利用した小早川奈津子、その膝に右足を乗せて階段を上るように
重心移動を行う。
次の足場は巨人の胸、そこを左足で踏みつけて、反作用で跳躍。
三角跳びの要領で、女傑の右腕と激突している黒鮫と同等の高度に達する。
体操選手より鮮やかな動きだが、凍らせ屋にとっては朝飯前だ。
上昇の勢いを乗せて、黒鮫の鼻っ柱に一撃をお見舞いする。
黒鮫は絶叫するように口腔を見せつけながら、更に上方へと吹き飛ばされた。
屍は重力に引かれて落下しながら、甲斐がよろめく姿を視界端に捉えた。
残る白鮫もしばらくは動かせないほど、甲斐は衝撃を受けているのだろう。
鮫と甲斐が同調に近い関係にあることをすでに屍は見破っていたので、
先ほどの一撃には停止心掌には及ばないものの
霊的なパワーを込めておいたからだ。
それが悪魔を苦しめ、ダメージが甲斐にフィードバックしたのだ。
驚嘆の叫びは甲斐のものだ。
今しがた思いついたばかりのコンビネーション攻撃を
タイミング良く完全に防がれたのだから、そのリアクションは当然といえよう。
攻撃の派生も内容もたった今誕生したばかりなのだが、
屍はそれを以前から知っていたかのごとく完璧に無効化してみせた。
攻撃を五感で感知する以前に、屍が対応策を練っていたとすれば、
「なんつー勘の良さだよテメエ……ククッ、最高じゃねえか」
甲斐氷太は今やっと、屍刑四郎の驚異的な危機回避能力の正体を知った。
鮫による最初の奇襲も、背後からの強襲もことごとく屍は回避した。
その理由が、直感による殺気察知に由来するものならば、
今まで二匹の悪魔の攻撃を凌ぎ続けてきた事実も納得できる。
そんな甲斐を尻目に、屍は順当に決着への手順を踏んでいく。
先ほど利用した小早川奈津子、その膝に右足を乗せて階段を上るように
重心移動を行う。
次の足場は巨人の胸、そこを左足で踏みつけて、反作用で跳躍。
三角跳びの要領で、女傑の右腕と激突している黒鮫と同等の高度に達する。
体操選手より鮮やかな動きだが、凍らせ屋にとっては朝飯前だ。
上昇の勢いを乗せて、黒鮫の鼻っ柱に一撃をお見舞いする。
黒鮫は絶叫するように口腔を見せつけながら、更に上方へと吹き飛ばされた。
屍は重力に引かれて落下しながら、甲斐がよろめく姿を視界端に捉えた。
残る白鮫もしばらくは動かせないほど、甲斐は衝撃を受けているのだろう。
鮫と甲斐が同調に近い関係にあることをすでに屍は見破っていたので、
先ほどの一撃には停止心掌には及ばないものの
霊的なパワーを込めておいたからだ。
それが悪魔を苦しめ、ダメージが甲斐にフィードバックしたのだ。
着地した屍の足元には、足場にされ跳躍の反動で倒された小早川奈津子が
転がっていた。
「こ、このあたくしを踏み台に……! 何たる屈辱、何たる冒涜!」
「威勢がいいのは口だけだな」
「をーっほほほほほほ! ならば聖戦士たるあたくしの華麗なる一撃を
お見舞いしましょう! 昇天おしっ!」
起き上がるや否や、小早川奈津子は聖なる力を振り絞って
ブルートザオガーを一閃した。
するとどうだろう、先ほど眼前にいた屍刑四郎は影も形も無くなっている。
「おやまあ、なんと貧弱な。
あたくしの超絶・勇者剣を受けて跡形も無く滅却したのかえ?。
ともあれ正義は勝った、完 全 勝 利 でしてよっ! をっほほ――」
「黙れ馬鹿」
その声は、勝利の高笑いを響かせようとした、聖戦士・奈津子の背後から響いた。
驚いた聖戦士が百八十度反転すると、そこには花柄模様の上着が――、
そこまで認識した瞬間、小早川奈津子の心臓に激震が走った。
転がっていた。
「こ、このあたくしを踏み台に……! 何たる屈辱、何たる冒涜!」
「威勢がいいのは口だけだな」
「をーっほほほほほほ! ならば聖戦士たるあたくしの華麗なる一撃を
お見舞いしましょう! 昇天おしっ!」
起き上がるや否や、小早川奈津子は聖なる力を振り絞って
ブルートザオガーを一閃した。
するとどうだろう、先ほど眼前にいた屍刑四郎は影も形も無くなっている。
「おやまあ、なんと貧弱な。
あたくしの超絶・勇者剣を受けて跡形も無く滅却したのかえ?。
ともあれ正義は勝った、完 全 勝 利 でしてよっ! をっほほ――」
「黙れ馬鹿」
その声は、勝利の高笑いを響かせようとした、聖戦士・奈津子の背後から響いた。
驚いた聖戦士が百八十度反転すると、そこには花柄模様の上着が――、
そこまで認識した瞬間、小早川奈津子の心臓に激震が走った。
古代武術、ジルガの技が冴えわたる。
停止心掌は巨人の急所に炸裂したのだ。
この技は防御を無視し、内部にダメージを与える。
小早川奈津子といえども、笑って耐えられる代物ではない。
「だ、だまし討ちとは……何たる……卑怯……」
これが屍刑四郎が聞いた、小早川奈津子の最後の言葉だった。
巨人堕つ。
停止心掌は巨人の急所に炸裂したのだ。
この技は防御を無視し、内部にダメージを与える。
小早川奈津子といえども、笑って耐えられる代物ではない。
「だ、だまし討ちとは……何たる……卑怯……」
これが屍刑四郎が聞いた、小早川奈津子の最後の言葉だった。
巨人堕つ。
【A-3/市街地/一日目/18:50】
【屍刑四郎】
[状態]健康、生物兵器感染
[装備]なし
[道具]デイパック(支給品一式、パン五食分、水1800ml)
[思考]できる限りボルカンを保護し、怪物と甲斐を打ちのめす
[備考]服は石油製品ではないので、影響なし
【屍刑四郎】
[状態]健康、生物兵器感染
[装備]なし
[道具]デイパック(支給品一式、パン五食分、水1800ml)
[思考]できる限りボルカンを保護し、怪物と甲斐を打ちのめす
[備考]服は石油製品ではないので、影響なし
【甲斐氷太】
[状態]肩の出血は止まった、あちこちに打撲、最高にハイ
[装備]カプセル(ポケットに十数錠)、煙草(湿気たが気づいていない)
[道具]デイパック(支給品一式、パン五食分、水1500ml)
煙草(残り十一本)、カプセル(大量)
[思考]屍や怪物と戦う
[備考]かなりの戦気高揚のために痛覚・冷静な判断力の低下
[状態]肩の出血は止まった、あちこちに打撲、最高にハイ
[装備]カプセル(ポケットに十数錠)、煙草(湿気たが気づいていない)
[道具]デイパック(支給品一式、パン五食分、水1500ml)
煙草(残り十一本)、カプセル(大量)
[思考]屍や怪物と戦う
[備考]かなりの戦気高揚のために痛覚・冷静な判断力の低下
【小早川奈津子】
[状態]気絶中、右腕損傷(完治まで一日半)、たんこぶ、生物兵器感染
胸骨骨折、肺欠損、胸部内出血、霊的パワーによる体の痺れ
[装備]吸血鬼 (灼眼のシャナ)
[道具]デイパック(支給品一式、パン三食分、水1500ml)
[思考]意識不明
[備考]服は石油製品ではないので、生物兵器の影響なし
約九時間後までなっちゃんに接触した人物の服が分解されます
九時間以内に再着用した服も、石油製品なら分解されます
感染者は肩こり・腰痛・疲労が回復します
停止心掌は致命傷には至っていませんが、胸部にかなりのダメージを
受けました
[状態]気絶中、右腕損傷(完治まで一日半)、たんこぶ、生物兵器感染
胸骨骨折、肺欠損、胸部内出血、霊的パワーによる体の痺れ
[装備]
[道具]デイパック(支給品一式、パン三食分、水1500ml)
[思考]意識不明
[備考]服は石油製品ではないので、生物兵器の影響なし
約九時間後までなっちゃんに接触した人物の服が分解されます
九時間以内に再着用した服も、石油製品なら分解されます
感染者は肩こり・腰痛・疲労が回復します
停止心掌は致命傷には至っていませんが、胸部にかなりのダメージを
受けました
- 2007/04/03 修正スレ296
| ←BACK | 目次へ(詳細版) | NEXT→ |
| 第556話 | 第557話 | 第558話 |
| 第539話 | 時系列順 | 第501話 |
| 第539話 | 甲斐氷太 | 第558話 |
| 第539話 | なっちゃん | 第570話 |
| 第539話 | 屍刑四郎 | 第558話 |
