第566話:名も無きヶ原の食鬼少女 作:◆MXjjRBLcoQ
思い至ったのは城門から結構過ぎたあたりだった。
「そうね」
死体を振り返り、ふむとカーラは顎をなでる。
「調べるにはやはり試料がいるわ」
その場でくるりとターン、遺体のもと、城門の方へと戻る。体が軽いと風まで心地いい。
城門をくぐり、再び中へ。
ひどく無駄なことをしている気がするが、まぁ、必要なことなので目を瞑る。
身体を持ってみると、いかに時間の感覚をなくしていたかが良くわかる。
無造作に、ドアを開けた。咽返る血の匂いに辟易しながらもベッドへと向かう。
しかし、そばに立ってみると存外に損壊が酷い。
体中に穴が開いたそれは使われた得物がわからない。傷の位置関係を見ると矢傷に近いが、
「背中側のほうが酷いわね、未知の射撃武器といったところかしら。ああ、これが銃器の傷というものね」
終や祐巳の記憶を呼びおこす。なんにせよ、この体、この反応速度ならたいした問題にはなるまい。
むしろ血が流れきっているのは僥倖だ。保存も効き、なにより‘作業’がしやすい。
さて、と彼女はおもむろに遺体の前に膝をつき、その腕を検める。
穴の開いた袖を引きちぎった。白い肌と、刻印が露出する。
「死後も残るようね、さて、どこまですれば運べるかしら」
少し冒険になるがアナライズエンチャントメントをかける。
調べるのは刻印がどこに根付いているかという点。
詳細を調べることもできるが、やらない。
この手の呪文は核心に近づくほど抵抗が強くなり失敗の可能性も出てくる。
何よりそれを理由に発動されては目も当てられない。
呪文を紡ぐ声がかすかに震える。
『彼』や十叶詠子の口ぶりからするに大丈夫だとは思うが、それでも十分危険な行為だ。
「魂? いや肉体も含まれてる?」
判明した全体のイメージとしては肉体から魂のあるべき場所まで貫通する枷の針といったところ。
これならば例えば死や“幽体離脱”などで魂が肉体が離れていてようとも、霊的に地続きな刻印はしっかり機能を維持する。
『彼』が指を弾けば、その刻印は問題なく発動する。
悔しいが良くできている。
少女の顔に似合わぬ笑みがのぞいた。
しかし、だからこそ、持ち運ぶごときでは壊れない。
「失礼するわね」
呟いて、死斑の浮かぶ皮膚に指を沿わせ、わずかに力をこめた。
――チキ、チキチキキ
引き伸ばされた爪を寝かせて、剥ぎこそぐ。
生きた肉とは異なる感触が、腕にしみるようで気持ちが悪い。
刻印はあいも変わらずそこにあった。
「腕ごと千切れば持ち運べるかしら」
腕を持ち直し、今度は二の腕の半ば当たりに、もう一度爪を立てた。
まだら模様の皮膚を破り、硬くなった肉を毟る。
あらわになった骨を、
「ん」
捻る。
わずかな手ごたえを残して、もげた。
果たして刻印は彼女の手の中、もぎ取った腕の上に浮かんでいる。
うまくいった。
うなずいて、紙で傷口を包みディパックにしまたが、裸のままで持ち歩くのはいささか気が引ける。
清潔な布も出来ればいいので探しておこう。
血漿と肉片を払う、服も出来れば変えたほうがいいかもしれない。
そんなに時間をかけたつもりはなかったが、城門をぬけて見上げれば空にはすっかり雲が立ち込めていた
時折思い出したかのように、月影が草原に浮かび、そして消えていく。
いつまでも惚けてはいられない。
「ほかにも埋葬されてない死体があるといっていたし、もう2,3本用意出来るといいけど」
埋葬されたものは避けたい、傷に土がついた死体は腐敗が早い。
つぶやいて、先ほどのダークエルフとの会話を思い返す。
城の周りには死体しかない。
つまりは探せばあるということだ。
「そうね」
死体を振り返り、ふむとカーラは顎をなでる。
「調べるにはやはり試料がいるわ」
その場でくるりとターン、遺体のもと、城門の方へと戻る。体が軽いと風まで心地いい。
城門をくぐり、再び中へ。
ひどく無駄なことをしている気がするが、まぁ、必要なことなので目を瞑る。
身体を持ってみると、いかに時間の感覚をなくしていたかが良くわかる。
無造作に、ドアを開けた。咽返る血の匂いに辟易しながらもベッドへと向かう。
しかし、そばに立ってみると存外に損壊が酷い。
体中に穴が開いたそれは使われた得物がわからない。傷の位置関係を見ると矢傷に近いが、
「背中側のほうが酷いわね、未知の射撃武器といったところかしら。ああ、これが銃器の傷というものね」
終や祐巳の記憶を呼びおこす。なんにせよ、この体、この反応速度ならたいした問題にはなるまい。
むしろ血が流れきっているのは僥倖だ。保存も効き、なにより‘作業’がしやすい。
さて、と彼女はおもむろに遺体の前に膝をつき、その腕を検める。
穴の開いた袖を引きちぎった。白い肌と、刻印が露出する。
「死後も残るようね、さて、どこまですれば運べるかしら」
少し冒険になるがアナライズエンチャントメントをかける。
調べるのは刻印がどこに根付いているかという点。
詳細を調べることもできるが、やらない。
この手の呪文は核心に近づくほど抵抗が強くなり失敗の可能性も出てくる。
何よりそれを理由に発動されては目も当てられない。
呪文を紡ぐ声がかすかに震える。
『彼』や十叶詠子の口ぶりからするに大丈夫だとは思うが、それでも十分危険な行為だ。
「魂? いや肉体も含まれてる?」
判明した全体のイメージとしては肉体から魂のあるべき場所まで貫通する枷の針といったところ。
これならば例えば死や“幽体離脱”などで魂が肉体が離れていてようとも、霊的に地続きな刻印はしっかり機能を維持する。
『彼』が指を弾けば、その刻印は問題なく発動する。
悔しいが良くできている。
少女の顔に似合わぬ笑みがのぞいた。
しかし、だからこそ、持ち運ぶごときでは壊れない。
「失礼するわね」
呟いて、死斑の浮かぶ皮膚に指を沿わせ、わずかに力をこめた。
――チキ、チキチキキ
引き伸ばされた爪を寝かせて、剥ぎこそぐ。
生きた肉とは異なる感触が、腕にしみるようで気持ちが悪い。
刻印はあいも変わらずそこにあった。
「腕ごと千切れば持ち運べるかしら」
腕を持ち直し、今度は二の腕の半ば当たりに、もう一度爪を立てた。
まだら模様の皮膚を破り、硬くなった肉を毟る。
あらわになった骨を、
「ん」
捻る。
わずかな手ごたえを残して、もげた。
果たして刻印は彼女の手の中、もぎ取った腕の上に浮かんでいる。
うまくいった。
うなずいて、紙で傷口を包みディパックにしまたが、裸のままで持ち歩くのはいささか気が引ける。
清潔な布も出来ればいいので探しておこう。
血漿と肉片を払う、服も出来れば変えたほうがいいかもしれない。
そんなに時間をかけたつもりはなかったが、城門をぬけて見上げれば空にはすっかり雲が立ち込めていた
時折思い出したかのように、月影が草原に浮かび、そして消えていく。
いつまでも惚けてはいられない。
「ほかにも埋葬されてない死体があるといっていたし、もう2,3本用意出来るといいけど」
埋葬されたものは避けたい、傷に土がついた死体は腐敗が早い。
つぶやいて、先ほどのダークエルフとの会話を思い返す。
城の周りには死体しかない。
つまりは探せばあるということだ。
☆★☆
さて、彼女の目標のひとつに火乃香の殺害がある。すべてはロードスの安定のため。
神の恵みである身体を捨て、信仰という名の心を捨てても守りたかったもの。
カーラはわずかに遠くに立つ影をじっと眺めた。
城から出てから結構経つ。
ゴーレムで作ったと思しき家の解析や地下遺跡の調査で不本意に時間を食ったが、この出会いのためと思えば納得できる。
焦りはない。
ただ体のポテンシャルが高いからか、この少女がもともとそういう気質なのか、目標を前にしてはやる心があった。
敵は3人。見た目では火乃香と赤い髪の男が前衛。
お下げの少年が後衛といったところだろう、ワンドや弓の類は持たないので、おそらくはプリーストか精霊使い。
「いえ、ここではその区別は捨てたほうがいいわね」
つぶやき、じっと観察する。まずは見極めることからだ。
彼らは街路樹に何かをくくりつけていた。お下げの少年と赤い髪の男があーでもないこーでもないと騒いでいる。
冷静に、油断を排して、精神力を消費しても“隠身”を張っておく。
と、張ると同時に彼女達が動いた。道をはずれ、倉庫のほうへと向かっていく。
なるべく気配を殺して、街路樹に駆け寄る。
白い、透明な袋がつるされていた。
ご丁寧にも懐中灯が入っていて、非常に目立つ。
“魔力感知”で調べるが特に呪いの類は見当たらない。
罠の気配は、無い。それでも慎重に、封を切る。
それはメモの束だった。全部で10枚ほど。
彼女たちの背中を眺め、ため息一つ。
ご苦労なことだと思う。これだけ書き写すのにもだいぶ時間をかけたのだろう。
「さて、それだけ価値のあるものなのかしら」
メモは5枚の連番が2セットといったものだった。めくれば1から5のナンバーが繰り返す。
改めて、内容に目を向けて、カーラは思わず顔をしかめた。
まずもって書いてることが理解できない。
やたらに記号が並んでいる、形態としてはラーダ信者の学術書に似たものがあったが意味がわからなければ同じこと。
眉をしかめて次のページへ。
今度はさまざまな図形。論理回路やら構成やらと書かれているが、カーラが持つ知識の近くで言えば魔法陣の解析図のようなものだろう。
もうコレが何なのかは想像がつく。刻印の解呪法だ。
天秤は圧倒的に傾き始めた。
潜り込むなら、今だ。刻印の解除を成し、『彼』との対決の場を用意し、相打ちにさせ、もしくは生き残ったところを仕留める。
残りも流すようにめくっていき、ふと既視感をおぼえておもむろに一枚を手に取った。
『“鍵開け”のようで……“解呪”かしら?』
ここらへんに知識が無いのだろう。記述に無駄が多い、精霊魔法を上位古代語で行っているようなものだ。
あるいは、そういう形態の魔法なのかもしれない。たしかに無駄が多いが、その無駄は隙間なく、緻密で、体系が建っている。
が、完全に無関係なところがあるのはいかがなものか。
“分解消去”に近い術式はわかる、おそらくこれが‘首輪’だ。しかし、
『どうみても“読解”と“言語理解”ね』
解除式になぜこれらが要るかがわからない。
書き込み具合からしてむしろ手をもてあましてる感すらある、となると。
『これは刻印の機能……』
考えてみれば当たり前な話だ。異世界の人間で話が通じ文字が読めるほうがどうかしている。
『わかっているのかしらね、この事』
刻印はただ解除すればいいものでもないようだ。管理者も馬鹿ではないということだろう。
他にもゲーム進行のための、参加者に不可欠な機能が無いとも限らない。
もう一度彼女たちのほうを見た、倉庫のわきを抜け、C-4へと入っている。
おそらくこれから向かうのだ。演説につられてのこのこと。まったくもって賢いのか馬鹿なのか。
しかし、困ったことだ。
「同行や追跡は、危険ね」
ダナティアのいる集団には近づきたくない。まだ集団に対する情報も対策も十分でない。
演説の内容自体には不都合はなかった。むしろ結束し主催者を倒してくれるなら御の字だ。
自分は火乃香という少女を消すことに終始すればいい。
やるべきことは変わらない。刻印を解除させ、相打ちに持っていく。
だがカーラは彼女たちの輪には入れない。集団に接触すれば少なくともこの体は取り上げられるだろう。そうなれば彼女を殺せない。
つまり、もし接触するのを見逃す場合、彼女達との協力体制は諦めることになりかねない。
カーラは黙考する。
繰り返すが、それでも別にかまわないはずだ。
落としどころは必ずある。幸いこの3名に限って言えばまだ若い。
情報を集め対策を立てる、言いくるめる余地はある。
そして協力しなくとも相打たせるに不都合はない。参加しなくとも刻印の解呪に手をかす手立てもある。
相打ちが望めない場合でも彼女に刻印解除の知識はないのだ。
ほかに『神野陰之』打倒の目があるなら、消してしまっても刻印解除に影響はあるまい。
天秤は釣り合っている。ならば放置するべきだ。まだ決定的な状況には持ち込むべきでない。
手はいくらでもある。天秤を傾けるには早い。
こちらはもう一つの切り札、魂砕きや他の情報収集を優先しよう。
大切なことはロードスの安定。『神野陰之』と火乃香を始末すること。
「最上は集団が何者かの襲撃を受けて崩壊するか、乗っ取れるまでに弱体化し、しかる後に私が彼女達と接触すれば」
ありえない可能性の話だ。よほどの“偶然”がなければそうは行かないだろう。
魔法で印だけつけておき、残りのメモを街路樹に戻す、懐中灯の光から逃れるように離れる。
星明りに目を細めカーラは暗がりの中へと消えていった。
神の恵みである身体を捨て、信仰という名の心を捨てても守りたかったもの。
カーラはわずかに遠くに立つ影をじっと眺めた。
城から出てから結構経つ。
ゴーレムで作ったと思しき家の解析や地下遺跡の調査で不本意に時間を食ったが、この出会いのためと思えば納得できる。
焦りはない。
ただ体のポテンシャルが高いからか、この少女がもともとそういう気質なのか、目標を前にしてはやる心があった。
敵は3人。見た目では火乃香と赤い髪の男が前衛。
お下げの少年が後衛といったところだろう、ワンドや弓の類は持たないので、おそらくはプリーストか精霊使い。
「いえ、ここではその区別は捨てたほうがいいわね」
つぶやき、じっと観察する。まずは見極めることからだ。
彼らは街路樹に何かをくくりつけていた。お下げの少年と赤い髪の男があーでもないこーでもないと騒いでいる。
冷静に、油断を排して、精神力を消費しても“隠身”を張っておく。
と、張ると同時に彼女達が動いた。道をはずれ、倉庫のほうへと向かっていく。
なるべく気配を殺して、街路樹に駆け寄る。
白い、透明な袋がつるされていた。
ご丁寧にも懐中灯が入っていて、非常に目立つ。
“魔力感知”で調べるが特に呪いの類は見当たらない。
罠の気配は、無い。それでも慎重に、封を切る。
それはメモの束だった。全部で10枚ほど。
彼女たちの背中を眺め、ため息一つ。
ご苦労なことだと思う。これだけ書き写すのにもだいぶ時間をかけたのだろう。
「さて、それだけ価値のあるものなのかしら」
メモは5枚の連番が2セットといったものだった。めくれば1から5のナンバーが繰り返す。
改めて、内容に目を向けて、カーラは思わず顔をしかめた。
まずもって書いてることが理解できない。
やたらに記号が並んでいる、形態としてはラーダ信者の学術書に似たものがあったが意味がわからなければ同じこと。
眉をしかめて次のページへ。
今度はさまざまな図形。論理回路やら構成やらと書かれているが、カーラが持つ知識の近くで言えば魔法陣の解析図のようなものだろう。
もうコレが何なのかは想像がつく。刻印の解呪法だ。
天秤は圧倒的に傾き始めた。
潜り込むなら、今だ。刻印の解除を成し、『彼』との対決の場を用意し、相打ちにさせ、もしくは生き残ったところを仕留める。
残りも流すようにめくっていき、ふと既視感をおぼえておもむろに一枚を手に取った。
『“鍵開け”のようで……“解呪”かしら?』
ここらへんに知識が無いのだろう。記述に無駄が多い、精霊魔法を上位古代語で行っているようなものだ。
あるいは、そういう形態の魔法なのかもしれない。たしかに無駄が多いが、その無駄は隙間なく、緻密で、体系が建っている。
が、完全に無関係なところがあるのはいかがなものか。
“分解消去”に近い術式はわかる、おそらくこれが‘首輪’だ。しかし、
『どうみても“読解”と“言語理解”ね』
解除式になぜこれらが要るかがわからない。
書き込み具合からしてむしろ手をもてあましてる感すらある、となると。
『これは刻印の機能……』
考えてみれば当たり前な話だ。異世界の人間で話が通じ文字が読めるほうがどうかしている。
『わかっているのかしらね、この事』
刻印はただ解除すればいいものでもないようだ。管理者も馬鹿ではないということだろう。
他にもゲーム進行のための、参加者に不可欠な機能が無いとも限らない。
もう一度彼女たちのほうを見た、倉庫のわきを抜け、C-4へと入っている。
おそらくこれから向かうのだ。演説につられてのこのこと。まったくもって賢いのか馬鹿なのか。
しかし、困ったことだ。
「同行や追跡は、危険ね」
ダナティアのいる集団には近づきたくない。まだ集団に対する情報も対策も十分でない。
演説の内容自体には不都合はなかった。むしろ結束し主催者を倒してくれるなら御の字だ。
自分は火乃香という少女を消すことに終始すればいい。
やるべきことは変わらない。刻印を解除させ、相打ちに持っていく。
だがカーラは彼女たちの輪には入れない。集団に接触すれば少なくともこの体は取り上げられるだろう。そうなれば彼女を殺せない。
つまり、もし接触するのを見逃す場合、彼女達との協力体制は諦めることになりかねない。
カーラは黙考する。
繰り返すが、それでも別にかまわないはずだ。
落としどころは必ずある。幸いこの3名に限って言えばまだ若い。
情報を集め対策を立てる、言いくるめる余地はある。
そして協力しなくとも相打たせるに不都合はない。参加しなくとも刻印の解呪に手をかす手立てもある。
相打ちが望めない場合でも彼女に刻印解除の知識はないのだ。
ほかに『神野陰之』打倒の目があるなら、消してしまっても刻印解除に影響はあるまい。
天秤は釣り合っている。ならば放置するべきだ。まだ決定的な状況には持ち込むべきでない。
手はいくらでもある。天秤を傾けるには早い。
こちらはもう一つの切り札、魂砕きや他の情報収集を優先しよう。
大切なことはロードスの安定。『神野陰之』と火乃香を始末すること。
「最上は集団が何者かの襲撃を受けて崩壊するか、乗っ取れるまでに弱体化し、しかる後に私が彼女達と接触すれば」
ありえない可能性の話だ。よほどの“偶然”がなければそうは行かないだろう。
魔法で印だけつけておき、残りのメモを街路樹に戻す、懐中灯の光から逃れるように離れる。
星明りに目を細めカーラは暗がりの中へと消えていった。
☆★☆
(情報制御反応、ロスト)
I-ブレインが相手の離脱を告げる。
後ろを振り返る、街路樹のそばには相変わらず影も見えない。
「行った、みたいだな」
「だね」
少女が、額を仄かに輝かせてヘイズに同意した。
「アレぐらいわかりやすかったらいいんだがな」
コミクロンもお下げをもてあそびながら背後を確認する。
ヘイズは苦笑した、ヘイズもコミクロンもどちらかといえばあからさまな情報制御の使い手だ。
世界には物質としての側面と情報としての側面がある。
魔術・魔法というものは、なべて情報側からのアプローチだ。
書き込むためのプログラムこそ持たないものの、ヘイズとてポート持ちの魔法士。
あれほど露骨な情報制御を行われては気付かずにはいられない。
「メモに興味持ってくれたようだし、その気があるなら向こうから接触するだろ」
そう締めくくって、先へと進む。
が、一人火乃香が立ち止まった。
「どうした、早速戻ってきたか?」
怪訝そうにたずねるコミクロンに、火乃香は首を振った。
「いやそうじゃなくてさ、覚えてないかな?」
いい難そうに笑いながら、頬をかく。
「昼間にね、登ってみたのよ、あの木さ。シャーネは登ってこなかったけど、楽しそうにしてた」
そういって、二人のほうへと向き直った。立ち止まる二人を追い抜てすすみ、
「んで、すぐにあんたら二人が襲ってきた」
振り返っていたずらっぽく笑う。
「ただの感傷だよ。行こう」
そして彼女は前へと歩きだした。
ヘイズもコミクロンも、苦笑してついていく。
「あ」
唐突に、再び火乃香が立ち止まる。
「なんだ、今度は?」
「いやさ、ふと思ったんだけどさ。あれ、見られちゃまずいんじゃないかな?」
誰にとは言わない、言ったらまずいし、確かにまずいかもしれない、見られたら殺されるかもしれない、管理者達に。
「……回収しとくか、ヴァーミリオン」
「だな」
誰も反対はしなかった。
I-ブレインが相手の離脱を告げる。
後ろを振り返る、街路樹のそばには相変わらず影も見えない。
「行った、みたいだな」
「だね」
少女が、額を仄かに輝かせてヘイズに同意した。
「アレぐらいわかりやすかったらいいんだがな」
コミクロンもお下げをもてあそびながら背後を確認する。
ヘイズは苦笑した、ヘイズもコミクロンもどちらかといえばあからさまな情報制御の使い手だ。
世界には物質としての側面と情報としての側面がある。
魔術・魔法というものは、なべて情報側からのアプローチだ。
書き込むためのプログラムこそ持たないものの、ヘイズとてポート持ちの魔法士。
あれほど露骨な情報制御を行われては気付かずにはいられない。
「メモに興味持ってくれたようだし、その気があるなら向こうから接触するだろ」
そう締めくくって、先へと進む。
が、一人火乃香が立ち止まった。
「どうした、早速戻ってきたか?」
怪訝そうにたずねるコミクロンに、火乃香は首を振った。
「いやそうじゃなくてさ、覚えてないかな?」
いい難そうに笑いながら、頬をかく。
「昼間にね、登ってみたのよ、あの木さ。シャーネは登ってこなかったけど、楽しそうにしてた」
そういって、二人のほうへと向き直った。立ち止まる二人を追い抜てすすみ、
「んで、すぐにあんたら二人が襲ってきた」
振り返っていたずらっぽく笑う。
「ただの感傷だよ。行こう」
そして彼女は前へと歩きだした。
ヘイズもコミクロンも、苦笑してついていく。
「あ」
唐突に、再び火乃香が立ち止まる。
「なんだ、今度は?」
「いやさ、ふと思ったんだけどさ。あれ、見られちゃまずいんじゃないかな?」
誰にとは言わない、言ったらまずいし、確かにまずいかもしれない、見られたら殺されるかもしれない、管理者達に。
「……回収しとくか、ヴァーミリオン」
「だな」
誰も反対はしなかった。
【F-5/街道/1日目・22:20頃】
【福沢祐巳(カーラ)】
[状態]:食鬼人化
[装備]:サークレット、貫頭衣姿、魔法のワンド
[道具]:ロザリオ、デイパック(支給品入り/食料減)
腕付の刻印×3(ウェーバー、鳳月、緑麗)
[思考]:フォーセリアに影響を及ぼしそうな者を一人残らず潰す計画を立て、
(現在の目標:火乃香、黒幕『神野陰之』)
そのために必要な人員(十叶詠子 他)、物品(“魂砕き”)を捜索・確保する。
[備考]:黒幕の存在を知る。刻印に盗聴機能があるらしいことは知っているが特に調べてはいない。刻印の形状を調べました。
【福沢祐巳(カーラ)】
[状態]:食鬼人化
[装備]:サークレット、貫頭衣姿、魔法のワンド
[道具]:ロザリオ、デイパック(支給品入り/食料減)
腕付の刻印×3(ウェーバー、鳳月、緑麗)
[思考]:フォーセリアに影響を及ぼしそうな者を一人残らず潰す計画を立て、
(現在の目標:火乃香、黒幕『神野陰之』)
そのために必要な人員(十叶詠子 他)、物品(“魂砕き”)を捜索・確保する。
[備考]:黒幕の存在を知る。刻印に盗聴機能があるらしいことは知っているが特に調べてはいない。刻印の形状を調べました。
【E-4/倉庫脇/1日目・22:20頃】
【戦慄舞闘団】
【ヴァーミリオン・CD・ヘイズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:有機コード、デイパック(支給品一式・パン6食分・水1100ml)
船長室で見つけた積み荷の目録
[思考]:様子を見に行く。ただし慎重に。メモの回収
[備考]:刻印の性能に気付いています。ダナティアの放送を妄信していない。
【戦慄舞闘団】
【ヴァーミリオン・CD・ヘイズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:有機コード、デイパック(支給品一式・パン6食分・水1100ml)
船長室で見つけた積み荷の目録
[思考]:様子を見に行く。ただし慎重に。メモの回収
[備考]:刻印の性能に気付いています。ダナティアの放送を妄信していない。
【火乃香】
[状態]:健康
[装備]:騎士剣・陰
[道具]:デイパック(支給品一式・パン6食分・水1400ml)
[思考]:様子を見に行く。ただし慎重に。メモの回収
[状態]:健康
[装備]:騎士剣・陰
[道具]:デイパック(支給品一式・パン6食分・水1400ml)
[思考]:様子を見に行く。ただし慎重に。メモの回収
【コミクロン】
[状態]:右腕が動かない。
[装備]:エドゲイン君
[道具]:デイパック(支給品一式・パン6食分・水1000ml) 未完成の刻印解除構成式(頭の中)
刻印解除構成式のメモ数枚
[思考]:様子を見に行く。ただし慎重に。メモの回収
[備考]:かなりの血で染まった白衣を着ています。
[状態]:右腕が動かない。
[装備]:エドゲイン君
[道具]:デイパック(支給品一式・パン6食分・水1000ml) 未完成の刻印解除構成式(頭の中)
刻印解除構成式のメモ数枚
[思考]:様子を見に行く。ただし慎重に。メモの回収
[備考]:かなりの血で染まった白衣を着ています。
[チーム備考]:火乃香がアンテナになって『物語』を発症しました。
解除メモのうち数枚に魔力の目印がついています。“物品探知”等により位置バレの可能性があります。
[チーム行動予定]:EDとエンブリオを探している。刻印の情報を集める。
大集団の様子を見に行く。ただし慎重に。 このあと 541 大崩壊/ディストピア(憎いし苦痛)へと続きます。
解除メモのうち数枚に魔力の目印がついています。“物品探知”等により位置バレの可能性があります。
[チーム行動予定]:EDとエンブリオを探している。刻印の情報を集める。
大集団の様子を見に行く。ただし慎重に。 このあと 541 大崩壊/ディストピア(憎いし苦痛)へと続きます。
- 2007/05/22 修正スレ331
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