atwiki-logo
  • 新規作成
    • 新規ページ作成
    • 新規ページ作成(その他)
      • このページをコピーして新規ページ作成
      • このウィキ内の別ページをコピーして新規ページ作成
      • このページの子ページを作成
    • 新規ウィキ作成
  • 編集
    • ページ編集
    • ページ編集(簡易版)
    • ページ名変更
    • メニュー非表示でページ編集
    • ページの閲覧/編集権限変更
    • ページの編集モード変更
    • このページにファイルをアップロード
    • メニューを編集
    • 右メニューを編集
  • バージョン管理
    • 最新版変更点(差分)
    • 編集履歴(バックアップ)
    • アップロードファイル履歴
    • このページの操作履歴
    • このウィキのページ操作履歴
  • ページ一覧
    • ページ一覧
    • このウィキのタグ一覧
    • このウィキのタグ(更新順)
    • このページの全コメント一覧
    • このウィキの全コメント一覧
    • おまかせページ移動
  • RSS
    • このウィキの更新情報RSS
    • このウィキ新着ページRSS
  • ヘルプ
    • ご利用ガイド
    • Wiki初心者向けガイド(基本操作)
    • このウィキの管理者に連絡
    • 運営会社に連絡(不具合、障害など)
ページ検索 メニュー
ラノベ・ロワイアル @ wiki
  • 広告なしオファー
  • ウィキ募集バナー
  • 目安箱バナー
  • 操作ガイド
  • 新規作成
  • 編集する
  • 全ページ一覧
  • 登録/ログイン
広告非表示(β版)
ページ一覧
ラノベ・ロワイアル @ wiki
  • 広告なしオファー
  • ウィキ募集バナー
  • 目安箱バナー
  • 操作ガイド
  • 新規作成
  • 編集する
  • 全ページ一覧
  • 登録/ログイン
ページ一覧
ラノベ・ロワイアル @ wiki
広告非表示 広告非表示(β)版 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー
  • 新規作成
  • 編集する
  • 登録/ログイン
  • 管理メニュー
管理メニュー
  • 新規作成
    • 新規ページ作成
    • 新規ページ作成(その他)
      • このページをコピーして新規ページ作成
      • このウィキ内の別ページをコピーして新規ページ作成
      • このページの子ページを作成
    • 新規ウィキ作成
  • 編集
    • ページ編集
    • ページ編集(簡易版)
    • ページ名変更
    • メニュー非表示でページ編集
    • ページの閲覧/編集権限変更
    • ページの編集モード変更
    • このページにファイルをアップロード
    • メニューを編集
    • 右メニューを編集
  • バージョン管理
    • 最新版変更点(差分)
    • 編集履歴(バックアップ)
    • アップロードファイル履歴
    • このページの操作履歴
    • このウィキのページ操作履歴
  • ページ一覧
    • このウィキの全ページ一覧
    • このウィキのタグ一覧
    • このウィキのタグ一覧(更新順)
    • このページの全コメント一覧
    • このウィキの全コメント一覧
    • おまかせページ移動
  • RSS
    • このwikiの更新情報RSS
    • このwikiの新着ページRSS
  • ヘルプ
    • ご利用ガイド
    • Wiki初心者向けガイド(基本操作)
    • このウィキの管理者に連絡
    • 運営会社に連絡する(不具合、障害など)
  • atwiki
  • ラノベ・ロワイアル @ wiki
  • 天使衝動(後編)

ラノベ・ロワイアル @ wiki

天使衝動(後編)

最終更新:2008年06月30日 19:57

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集

第571話:天使衝動(後編) 作:◆CC0Zm79P5c



 クリーオウという名の少女は、クエロの亡骸の傍に座り込んでいた。
 死体を見て項垂れているその姿は、まるで懺悔をしているようにも見える。
(クエロと協力関係にあったと見るのが妥当か)
 あの女ならば、レメディウス事件の時のようにいくらでも取り入ることはできただろう。
 クリーオウはそれを知らないのか、あるいは、知っていても割り切れない性格なのか。
 ギギナは頭をふった。考えても仕方ない。思考は自分の役割では――
(いや――そうだな。これからはそうも言っていられぬのか)
 あの相棒はもういないのだ。面倒くさいことを押し付けてきた相棒は。押し付けることのできた相棒は。
 それでも、いまはそれがとてつもなく億劫だ。
「終わったぞ」
 故に、事務的な言葉をかけるにとどめる。
 幸いこちらの言葉が聞こえなくなるほど茫然自失としていたわけではないらしい。
 振り向かず、だが彼女の注意が確かにこちらに向くことを感じる。
「この――この人はね、クエロって」
「知っている」
「え?」
「……クエロ・ラディーンとは、ここに来る前から浅からぬ縁があった」
「そう、なんだ……」
 クリーオウは僅かに沈黙をはさみ、おずおずといった風に尋ねた。
「クエロって、どんな人だったの……?」
「それは――」
 一言では言い表せない。
 狡猾のみで構成された人間というわけではなかっただろう。
 では正義の咒式士かといえば、無論違う。
 死体を見つめたままの小さな背中を見つめながら、ギギナは思ったままの言葉だけを託した。
「自分の見たものがすべてだ。貴様にとってのクエロを私は知らぬ。
 貴様は、私にとってのクエロを知りたいのか?」
「……ううん、いらない。
 クエロは最期に私に逃げろっていってくれた。……私にとっては、それだけで十分だから」
 前に進む分には、足りる。
「立ち上がれるか」
 ギギナの問いにクリーオウは頷き、すぐにひざを地面から離した。
 なるほど。ここまで生き抜いてきただけはあって、それなりに気丈ではあるらしい。
 嫌いではない――こういった小娘ならば、それほどまでには悪くない。
「ギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフだ」
「……それ、名前?」
「ギギナでいい」
「じゃあ、ギギナさん。オーフェンは――」
 どこに。そう彼女は続けようとしたのだろう。振り向いた彼女の口元は、そう動いたように見えた。
 だが同時に、クリーオウはどうしようもなくその表情を引き攣らせてもいた。
 血まみれの屠竜刀が問題というわけではないらしい。彼女の眼球は別のものを映している。
 その頃には、ギギナも背後の剣呑な気配に気づいていた。
 振り向き、咄嗟に武器を突き出したのは、攻性咒式士としての反射的な行動だろう。
 次いで襲い掛かる衝撃。『先ほど』とは比べ物にならない程の威力。
 足が地面にめり込むのを確かに感じながら、ギギナはそこにいる襲撃者の姿に思わず目を疑う。
 背後にいたのは、確かに致命傷を負わせたはずの少女だった。
 負わせたはず、というのは、その痕跡が一切認められないからである。
 傷はもちろんとして血痕、血臭、その他諸々。まるで切られたという事実を無しにしてしまったかのごとく。
(竜のような超再生咒式!?)
 答えを見つける隙など与えず、二撃目が振るわれる。
 その襲い掛かる凶器――確かに両断された愚神礼賛も、繋ぎ目すら確認できないレベルで修復されていた。
 だが、そんなことは問題ではない。
 その一撃は屠竜刀を撥ね退け、さらにギギナの体勢を大きく崩させるほど強化されていたが、それは問題ではない。
 なにより変わっていたのは少女の纏う雰囲気だった。
 さきほどまでのふざけた雰囲気は微塵も見つけることもできず、あるのはただ明確な攻撃衝動のみ。
 故に、凶器の殴打は二回で止まらなかった。
 D4の入り口付近は、ギギナが屠竜刀を自在に振るえる程度には広さがある。
 剣術が制限されないのなら、ギギナは咒式を使わずともこの少女に勝てる――その筈であった。
 技術と、単純な身体能力としての性能。どちらに重点を置いたほうが勝るか、あるいは有能か?
 その問いの答えは様々だろうが、この場でひとつだけいえることがある。
 すなわち――あまりにも差があれば、人並みはずれた身体能力は技術を上回るということである。
 一合、また一合と打ち合うたび、天使の膂力はそのリミッターを外し、より強大になっていく。
 すでにそれは、強化された生体咒式士の目ですら追いきれない領域に入り始めていた。
「ぐっ――!」
 弾く、弾く、弾く。だが、もはやそれは直感に頼ったその場凌ぎという意味でしかない。
 あまりにも隙のない連撃。腕を痺れさせる威力。そこに技術が介入する余地などない。
 すでにたっている土台が違う。いまのギギナは高所から一方的に狙撃されているようなものだ。
 手の届かない神域。確かに、目の前の少女はそこにいた。
 意識せずに、ギギナの口元が歪む。獰猛な笑みの形に。
(――くだらないと言ったのは訂正しよう。
 我等が闘争への介入を許すわけではないが、それでも貴様は――)
 腹部を狙って横薙ぎに放たれた愚神礼賛を、下から振り上げるようにしたネレトーで弾く。
 それは先の戦いの焼き直し。
 ギギナの屠竜刀は頭上に掲げられ、天使のバットは腰だめに構えられる。
「我が闘争の相手として、相応しい!」
 回転弾層がトリガーと連動し、落ちた撃鉄が咒弾を砕く。
 途端、脳が焼けそうなほどの痛みが走った。
 通常時ならば問題はない。だが力の制限のためか、短時間で連発した第五階位が相当の負担となっている。
 ――故に、この交差で勝負をつけねばならない。
 発動した咒式は幾多の敵を葬ってきた鋼剛鬼力膂法(バー・エルク)。だが、すでにそれが必殺足り得ないことは分かっている。
 すでに身体能力が違いすぎた。相手の力はすでに数百歳級の竜と遜色ない。
 ギギナが行ったのは、相手に届かなかった自分の土台を刃先が一ミリ届く程度に持ち上げたくらいの意味しかない。
 だが、僅かにでも届くのならば――
「ォ――ォォオオオオオオオ!」
「――!」
 もはや打ち合いとは思えぬほどの衝撃音が、島の地底を揺るがした。
 屠竜刀が愚神礼賛を捉え、愚神礼賛が屠竜刀を打ち据える。
 身体能力ではかなわない。故に、ギギナの目論見は武器破壊。
 物質が衝突する時に発生するエネルギー量は速度の二乗に比例する。
 そして目の前の少女が振るう武器の速度は、先ほどの二倍や三倍ではきかない。
 だからこそ、愚神礼賛の運命も変わらない。
 ――愚神礼賛が、先ほどと同じ状態ならば。
「……っ!?」
 愚神礼賛は彼女が修復した。奇妙な魔法で、不完全な力で。
 故に起こった突然変異。それは鉛の塊に過ぎなかった愚神礼賛を、ダイヤ以上の硬度を持つ刃と打ち合えるほどに強化した。
 そして天使の膂力は、すでにギギナを凌駕している。
 ならば、そこから弾き出される運命とは――
「……かっ、は」
 ギギナの敗北に他ならない。
 ネレトーでの一撃を弾かれ、そのまま多少勢いを削がれたものの愚神礼賛は直進。ギギナの胸部を捉えていた。
 相殺してなお、その一撃には筋肉の壁を貫通し、肋骨をへし折る威力がある。
 装甲車並の体重があるにもかかわらず、ギギナは確かに数メートル宙を舞い、そして地面にたたきつけられた。
「ギギナぁっ!」
 朦朧とする意識に、悲痛な叫び。
 クリーオウだった。首だけを動かしてなんとか視界に納める。
(何故――馬鹿なことを)
 ――見れば、彼女は立ち塞がっていた。
 天使の視界には未だギギナが写っている。止めを刺すつもりなのだろう。
 ゆらりとした足取りで、ギギナに向かおうとした。
 その進路を遮るように、クリーオウ・エバーラスティンは立ち塞がっていた。
 肋骨の痛みを無視して、ギギナは声を振り絞る。
「娘、退け!」
 だが、クリーオウは動かない。
 体中が恐怖に引きつってはいたが、それでもそこには否定の意がはっきりと表れている。
 マジク・リン、空目恭一、サラ・バーリン、秋せつら、クエロ・ラディーン。共に、奪われた者達。
 死への恐怖を差し引いても、これ以上の喪失を彼女は認められなかった。
「マジクは私のいないところで死んじゃった! 恭一も私をかばって死んじゃった!
 クエロももういない! もう嫌だよ! どうしてみんないなくなっちゃうの――!」
 ……ああ、まったく。
 ギギナはため息を吐いた。多少は気丈かと思ったが、やはりどこにでもいる小娘に過ぎない。
 ならば――
「その背に隠れていることなどできぬ、な」
 血反吐を撒き散らしながら、立ち上がった。
 戦場で咒式士の死体を見つけたら、ドラッケン族かどうか判別する簡単な方法がある。
 前向きに、独りで倒れているのがドラッケンだ。
 そうだ――他人に庇われながら死ぬのは、断じてドラッケンではない。
「るぅうううううううううおおおおおおおおおおお!」
 矜持? 誇り? そんなもの、ドラッケンとして刃を振るえば後からついてくる。
 だから、走れ。激痛に顔をゆがめ、血みどろの姿で、後先考えず雄叫びを上げて!
 クリーオウを回り込むようにして、ギギナは自分を吹き飛ばした怪物を確認する。
 天使の少女もそれは同じ、ギギナを視界から外すような下手はしない。
 幸いなことに、バー・エルクによる強化はまだ続いていた。故に、疾風と化したギギナの駆ける道はどこまでも直線を描く。
 接敵した後のことなど考えていない。だからこそ最短距離を走り抜ける。
 対して、天使の少女はその場から動かなかった。
 動く必要がなかったからだ。だが、それは余裕という意味ではない。
 愚神礼賛が振り上げられる――光の粒子を纏いながら。
「ぴぴるぴるぴる――」
 無感情な声音で零されていく魔法の擬音。
 たとえばそれは、振り下ろされる聖剣の如く。
 荘厳なまでに凝縮する、神の使いの光。
 彼女の能力で作り変えられた愚神礼賛は、いまやほとんど魔法の杖だ。
 死者蘇生という点でエスカリボルグには及ばないかもしれないが――それでも、害をなすだけならば。
「――ぴぴるぴ~」
 放たれた。
 七色の奔流。決して触れてはいけない天使の魔法。触れればその存在は陵辱され変質する。
 直線的に突っ込むギギナに、これを避ける術はない。
 ――避けるべき状況でもない!
「こんな――もので、ドラッケンを止められると思うな!」
 突き出される屠竜刀。
 意思に呼応して、ネレトーに組み込まれた鬼才ジュゼオ・ゾア・フレグン製作の法珠が唸りを上げる。
 咒式干渉結界が自動展開。残っているギギナの咒力が余さず注ぎ込まれ、機関部が悲鳴を上げる。
 そして閃く銀と、虹色の魔法が激突した。
 虹は刃を土くれに変えんとさらにその光を強め、幾多の竜を狩った巨剣はそれすら滅殺しようと咆哮する。
(耐えてみせろ、私の半身。唯一私が認めた屠竜の刃!)
 刃と光の拮抗は、そう長くは続かなかった。
 その結果に対する原因は、なにか。
 ギギナの矜持が勝ったのか、それとも愚神礼賛の本質が魔法の武器でなかったことによるものか。
 いずれにせよ、ギギナとネレトー――彼らは、向かい来る爆光を切り裂いた。
 天使の少女に生じた、刹那の隙。切り掛かるには足りず、されど確かに存在する。そんな隙。
 迷わず、ギギナはクリーオウと天使の間に滑り込んだ。
 屠竜刀を構える。が。
「……」
 無言のまま振るわれた愚神礼賛に、ただの一合でネレトーは手を離れ、遠くに落ちた。
 魂砕きは地下通路を走るのに邪魔だったため、地下の入り口に突き刺してきたままだ。
 取りに行く余裕などあろうはずもない。
 そして、逃げるという選択肢もないのなら――
「零時にE5の小屋だ! 行け!」
 せめて、約束は果たそう。背後のクリーオウに声をかけながら、覚悟する。
 同時に、敵の凶器が振り上げられた。こちらは無手。ならば挑むのは零距離での密着戦闘。
 剣舞士の膂力は、大木の幹ですら小指一本で爆砕させる。
 その抜き手を、全力で相手の武器を握っている手首に叩きつけようとして――
 一瞬で、その手を握り締められた。
「ぐ――、ぅ」
 手を握りつぶされそうな痛みが襲ってくる。だというのに、それを行っている少女の表情はどこまでも冷徹。
 そのまま天使はギギナの体を軽々と持ち上げ、地面に叩き落した。
 受身すら取らせてもらえず、意識が朦朧とする中、ギギナが見たのは今まさに振り下ろされんとする凶器の影――
「――だめっ!」
 そして、再び彼を庇おうとしている金髪の感触。
(愚か――者、が)
 ――乾いた音が、辺りに響いた。

◇◇◇ 

 彼女は、己が消えていくのを感じていた。
 自分の中にあった喪失感が、さらに自分自身を侵食しているのが分かった。
 最後に――は、なんと言ったのだったか。
 思い出せない。だけど、無性に誰かに会いたくさせられた。
「……いたい……ぁいたいよう……」
 今にも消えそうな、掠れた声。
 それは彼女が消えかかっているからか、それとも別の理由からか。
 激痛は幸運だったのかもしれない。
 それが切欠で、消える寸前の彼女は僅かな時間、取り戻すことができた。
「ねえ……どこにいるの……?」
 最後に『彼』の台詞を聞いたのはいつだったのか。
 すでにそれすら思い出せないほどに、『それ』は侵食している。
 彼女の幼さが残る無表情(死に顔)を彩るものは紅くて、
「桜、くん……!」
 鮮血と知れた。  

◇◇◇

 クリーオウ・エバーラスティンは多少剣術を齧っただけの少女である。
 たとえば撲殺した人間を再生することもできなければ、大怪我を負ったまま戦闘することもできない。
 何より、彼女に人を殺せるような覚悟などない。
 ――それらを踏まえたうえで、関係ないと断言できる。
 なぜなら、それはそういう武器だからだ。
 銃。殺傷のためだけに造られた兵器。引き金に触れるだけで、殺人を実行する。
 反動と人を撃ってしまった感触に震え、クリーオウは魔弾の射手を手からこぼした。
 ほとんど密着した状態。ここまで近ければ、銃口が真横を向かない限り外れない。
 放たれた銃弾はたった一発。だが確かに相手の腹部を打ち抜いていた。
その穿たれた生命を零していく穴から、腹圧で血と、その奥に蠢く肉の塊が――
「あ――わた、わたし、人を」
 それでもクリーオウ・エバーラスティンはただの少女だ。
 天使の少女は再び回復する。それでももはや、クリーオウに銃を拾い直す勇気などなかった。
 ――故に、後を継ぐのは凶戦士である。
 耳元で響いた銃声に、ギギナの朦朧とした意識は叩き起こされた。
 そして、発見する。地べたに伏している自分の目前にある見慣れた形状。
 僅かな思考。それは彼に似つかわしくない逡巡か、それとも祈りか。
 それでも、すぐに手を伸ばし、
「――借りるぞ、眼鏡っ!」
 贖罪者マグナス。彼の相棒が用いていた補助用の魔杖短剣が、いま――クエロの手から、引き継がれた。
 ――奇しくも、ここに決着する。
 ガユス・レヴィナ・ソレル。
 ギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフ。
 クエロ・ラディーン。
 ジオルグ・ダラハイド事務所の因縁にあった三名が、それを決着させる!
 その一突きは、およそ今までの中でもっとも力のない一撃だっただろう。
 速度も威力も練度もない、まるで児戯のような斬撃。
 それでも、この刃に乗っているのは――三人分の意思に他ならない。
 抵抗らしい抵抗はなかった。茫然自失としていた天使の少女の喉笛を、短剣が切り裂く。
 だがそこから血が噴出すよりも速く、雷速の動きでギギナのマグナスを握っていない方の手が彼女の首を掴んでいた。
 ――いかなる理由かは分からないが、致命傷を与えるだけではこの少女を殺せない。
 ――ならば、もっとも確実な殺害手段は。
「るぅぅぅううううあああああ!」
 いくら元の力を取り戻しても、天使の、小柄な少女としての質量は変わらない。
 ギギナは残る力をすべて振り絞って、彼女を――放り投げた。
 放物線を描き、彼女は十数メートルもの距離を飛行し、そしてギギナの目論見どおりの地点に落ちる。
 響く水音と、跳ねる飛沫。
 D-3の地下湖。そこは現在、禁止エリアとなっている。
 進入すればいかなるものであれ、魂ごと消滅するとされる、ある意味での最終兵器。
 そこに、天使の少女は沈んでいった。
 見届けて、今度こそギギナはその場に崩れ落ちる。
 体の欠損を前提にしているような前衛職のギギナだからこそ生きていられるような傷である。
 さすがに、これ以上は意識を保つことができそうになかった。
 昏倒する彼の胸中が、どのような思いで満ちていたか――
 少なくとも、今度は空虚ではなさそうだった。

◇◇◇

 ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ~

◇◇◇

 さて、ここらでひとつ種を明かそうか。
 なんの種かって? それは聞けば分かるよ。
 現時刻からほんの二十分ほど前に亡くなったバベル議長は、すべての刻印にちょっとした小細工を加えた。
 それはつまり、三塚井ドクロの刻印に施した小細工を誤魔化すためのカムフラージュだ。
 つまり、本命は三塚井ドクロだけってわけだね。
 だからこそ、彼女の刻印は一番その性能を歪められていた。
 ところで、管理者の力は強大だ。
 仮に三塚井ドクロの刻印が解除されても、まあ――色んな意味で甚大な被害を与えるとは思うけど、それでも敵うはずはないね。
 だから、一番賢い――ていうか、ずっこい刻印になるようにバベル議長は仕組んだのさ。
 まず、力の制限を外した。これはいいね。
 次に、刻印の反応自体は消さなかった。これもいいね。管理者にばれないようにしたって訳だ。
 さて、三番目。これが重要なわけだけど、バベル議長は当然、ドクロちゃんの人となりを知っていた。
 それは――まあ――つまり――お世辞にも知的とはいえないところとかさ。
 だからこそ、三番目の細工を組み込んだんだ。
 ある意味彼女の刻印こそが、脱出派が求める完成形だと思うよ。
 ――え? 話がメタで長い上に、なんの種明かしか分からないって?
 いまから話そうとしてたじゃないか。まあいいや。さきに言っちまおう。
 ――呆然としてたクリーオウ・エバーラスティンが、
 対岸に、確かに禁止エリアだった湖から這い出てきた、無傷の三塚井ドクロを見て悲鳴を上げたことについての種明かしさ!

◇◇◇

「どこにいるの……どこに……」
 まるでそれこそが魔法の呪文だとでも言うように、天使の少女は繰り返し呟きます。
 湖から這い出て、彼女は後ろを振り向きませんでした。
 だって、そこには――■くんは居ないから。
 だから彼女は歩き続けます。まだ見ぬ方角に。まだ■くんがいるかもしれない方角に。
 ぽたり、ぽたり。
 彼女の体から滴る水滴に混る、もっと粘着質な音。
 曇硝子のような彼女の瞳がぎょろりと動き、首筋から零れる紅い雫を捉えます。
「……ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ~」
 謎の擬音によって修復されるのは、直りきっていなかった首筋の傷。
 ――天使とは非常識な存在です。
 棘バットを振れば真空が発生し、そこから生まれたカマイタチは人体をサイコロ状に切断してしまいます。
 霧状になるまで粉砕した肉体を、ただの一声で元通りに生き返らせます。
 己の感情ひとつでブリザードを引き起こし、残像が長らく残る速度で移動することもやってのけます。
 だから、これは異常なことなのです。
 彼女が自分の傷すら治しきれないというのは、とても異常なことなのです。
 それは持っているのがエスカリボルグではないからなのか、それとも他の原因があるのか。
 彼女のなかで膨らむのは自己に対しての違和感。そして■■■に対する渇望。
 ――少し前まで、彼女の刻印は不完全ながらもその機能を存続させていました。
 ですが、天使としての力を使えば使うほど、その刻印は機能を狂わせて。
 そして現在、彼女の刻印はとうとうその効力を失いました。
 彼女は再び天使としての、本来の力を取り戻したのです。
 そう、刻印が消え去った、その一瞬だけ。
 刻印に備えられていた力は三つ。
 情報の送信。参加者の能力の制限。そして禁止エリア、あるいは管理側の意思による強制殺害。
 ですが、『本来搭載されていた能力』がこれだけだと、どうして言い切ることができるでしょう。
 すでに、夜闇の魔王が作成した刻印には人の手が入っているのです。
 魔術師ケンプファー。そして今は亡きルルティエ議長バベル。両名の手によって。
 故に、歪みは相乗効果を発揮し、本来あった機能を削ります。
 備えられていたはずの、第四の機能――それは、参加者の『違和感』を取り除くこと。
 盤上にはいくつもの異世界から参加者が集められ、同じ世界の出身でも呼び出された時間が違う場合もあります。
 そんな、滅茶苦茶な舞台に整合性をつけるための手段。
 ゲームの進行を円滑にするために。殺し合いをスムーズに行わせるために。
 ですがその効力はほぼ失われました。
 残りかすとして僅かに発揮されたとしても、それは例えば召喚された時期を混乱させる程度になってしまいました。
 だけど、三塚井ドクロの場合は違います。
 バベルが仕組んだのか、それともただの偶然か。彼女の刻印は、奇跡的にその機能を発揮していたのです。
 故に、彼女はちっとも変に思いませんでした。
 まるで、すぐ傍に彼がいるかのような、そんな態度をとり続けました。
 己の力の減退にも、エスカリボルグがないという以外では、まったく頓着しませんでした。
 ですが、刻印が解除された今、その機能は失われました。
 そして彼女の場合、それは致命的なことだったのです。
 刻印がなくなった後も、彼女は力を使い続けます。
 刻印は、すでに彼女から違和感を取り除きません。
 ならば、彼女は発症します。天使の憂鬱。個性を、天使にとっては血肉にも等しい己のパーツが希薄になっていく病。
 力を使えば使うほど、彼女は全盛期の力を失い、さらに消滅の時は早くなっていきます。
 すでに彼女は致命傷を二度、癒しました。剣舞士を遥かに凌駕する力を振るいました。
 こうして疲労も感じずに歩いていく。それだけで、彼女は己の力を失います。
 だけど、『天使の少女』は探すのです。
 消えかけた自分で、自分の個性を。
 自分の大切な物を、この島では絶対に出合うことのできない彼を。

 ――これは彼女が紡ぐ、薄い、薄い、消えかけのオハナシ。


【D-4/地下/1日目・19:40】
【ギギナ】
[状態]:肋骨全骨折。打撲。昏倒。疲労。
[装備]:屠竜刀ネレトー。贖罪者マグナス。
[道具]:デイパック(ヒルルカ、咒弾(生体強化系2発分、生体変化系4発分))
[思考]:クリーオウをオーフェンのもとまで保護。
    ガユスの情報収集(無造作に)。ガユスを弔って仇を討つ?
    0時にE-5小屋に移動する。強き者と戦うのを少し控える(望まれればする)。

【クリーオウ・エバーラスティン】
[状態]:右腕に火傷。疲労。精神的ダメージ。錯乱。
[装備]:強臓式拳銃 “魔弾の射手”(フライシュッツェ)
[道具]:デイパック1(支給品一式・パン4食分・水1000ml)
    デイパック2(懐中電灯以外の支給品一式・地下ルートが書かれた地図・パン4食分・水1000ml)
    缶詰の食料(IAI製8個・中身不明)。議事録
[思考]:???
[備考]:アマワと神野の存在を知る。オーフェンとの合流場所を知りました。

※ギギナとドクロちゃんとの戦闘で激しい音が発生しました。
 地下にいた人物、D-4地上にいた人物なら気づく可能性があります。
※E-4地下通路に懐中電灯が落ちています。


【B-3/地下通路/一日目・19:40】
【ドクロちゃん】
[状態]:『天使の憂鬱』発症。
[装備]: 愚神礼賛(シームレスバイアス)
[道具]:無し
[思考]:桜君を探す。攻撃衝動が増加。
[備考]:刻印が解除されました。最長で二十四時間後、彼女は消滅します。
    力を行使すればするほど、消滅までの時間は縮まります。


←BACK 目次へ(詳細版) NEXT→
第571話 第571話 第572話
第571話 時系列順 第520話
第571話 ギギナ -
第571話 ドクロちゃん 第575話
第571話 クリーオウ -
第571話 ヒルルカ -



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
タグの更新に失敗しました
エラーが発生しました。ページを更新してください。
ページを更新
「天使衝動(後編)」をウィキ内検索
LINE
シェア
Tweet
ラノベ・ロワイアル @ wiki
記事メニュー
今日 - 昨日 - 総合 -


  • トップページ
  • メニュー
  • 編集練習用ページ
  • 編集Tips
  • wikiテンプレート
  • サイトデザインについて


読み手向け

ゲームルール
簡易目次
時系列順目次
追跡表
参加者名簿
非参加者名簿
非参加者名簿(支給品)
地図


書き手向け

詳細目次
区域別SS表
投稿について

資料

SSタイトル元ネタ
原作紹介
刻印情報
支給品解説
死亡者リスト
出典時期一覧
進行表
最終登場時刻
生存者認知表
物資リスト


その他

テンプレート
過去ログ
書き手紹介
小ネタ
死亡者追悼


外部リンク

投下本スレ 11
避難所(したらば)
旧まとめサイト

2chパロロワ事典@Wiki

最近の更新(15件)

取得中です。
記事メニュー2

更新履歴

取得中です。
人気記事ランキング
  1. 追跡表
  2. 凶人3人
  3. されど罪人は竜と踊る
  4. 千鳥かなめ
  5. 姦客責(カンキャクセキ)
  6. 追跡表2
  7. No Mercy 2:King's Howling(後編)
  8. 海辺の対話
  9. ◆wkPb3VBx02
  10. 終わった事と……
もっと見る
最近更新されたページ
  • 557日前

    メニュー
  • 1489日前

    501-600
  • 1489日前

    トップページ
  • 1492日前

    ウィザーズ・ブレイン
  • 2320日前

    屍刑四郎
  • 2774日前

    片翼たち
  • 3694日前

    時系列順目次
  • 4462日前

    追跡表
  • 5200日前

    彷徨傭兵(後編)
  • 5200日前

    彷徨傭兵(前編)
もっと見る
人気記事ランキング
  1. 追跡表
  2. 凶人3人
  3. されど罪人は竜と踊る
  4. 千鳥かなめ
  5. 姦客責(カンキャクセキ)
  6. 追跡表2
  7. No Mercy 2:King's Howling(後編)
  8. 海辺の対話
  9. ◆wkPb3VBx02
  10. 終わった事と……
もっと見る
最近更新されたページ
  • 557日前

    メニュー
  • 1489日前

    501-600
  • 1489日前

    トップページ
  • 1492日前

    ウィザーズ・ブレイン
  • 2320日前

    屍刑四郎
  • 2774日前

    片翼たち
  • 3694日前

    時系列順目次
  • 4462日前

    追跡表
  • 5200日前

    彷徨傭兵(後編)
  • 5200日前

    彷徨傭兵(前編)
もっと見る
ウィキ募集バナー
急上昇Wikiランキング

急上昇中のWikiランキングです。今注目を集めている話題をチェックしてみよう!

  1. とびだせ どうぶつの森@まとめwiki
  2. 一般声優18禁出演作品まとめ @ ウィキ
  3. 正田崇作品 @ ウィキ
  4. ディズニー データベース
  5. NIKKEぺでぃあ
  6. テレビ番組スポンサー表 @ wiki
  7. 東方同人CDの歌詞@Wiki
  8. トリコ総合データベース
  9. 戦隊・ライダー:怪人まとめ@ ウィキ
  10. MADTOWNGTAまとめwiki
もっと見る
人気Wikiランキング

atwikiでよく見られているWikiのランキングです。新しい情報を発見してみよう!

  1. アニヲタWiki(仮)
  2. ゲームカタログ@Wiki ~名作からクソゲーまで~
  3. 初音ミク Wiki
  4. MADTOWNGTAまとめwiki
  5. 機動戦士ガンダム バトルオペレーション2攻略Wiki 3rd Season
  6. ストグラ まとめ @ウィキ
  7. モンスター烈伝オレカバトル2@wiki
  8. 機動戦士ガンダム EXTREME VS.2 INFINITEBOOST wiki
  9. 検索してはいけない言葉 @ ウィキ
  10. Grand Theft Auto V(グランドセフトオート5)GTA5 & GTAオンライン 情報・攻略wiki
もっと見る
新規Wikiランキング

最近作成されたWikiのアクセスランキングです。見るだけでなく加筆してみよう!

  1. MADTOWNGTAまとめwiki
  2. MadTown GTA (Beta) まとめウィキ
  3. 首都圏駅メロwiki
  4. まどドラ攻略wiki
  5. Last Z: Survival Shooter @ ウィキ
  6. シュガードール情報まとめウィキ
  7. ちいぽけ攻略
  8. ステラソラwiki
  9. ソニックレーシング クロスワールド 攻略@ ウィキ
  10. 20XX @ ウィキ
もっと見る
全体ページランキング

最近アクセスの多かったページランキングです。話題のページを見に行こう!

  1. 【移転】Miss AV 見れない Missav.wsが見れない?!MissAV新URLはどこ?閉鎖・終了してない?missav.ai元気玉って何? - ホワイトハッカー研究所
  2. 参加者一覧 - MADTOWNGTAまとめwiki
  3. 魔獣トゲイラ - バトルロイヤルR+α ファンフィクション(二次創作など)総合wiki
  4. ブラック・マジシャン・ガール - アニヲタWiki(仮)
  5. XVI - MADTOWNGTAまとめwiki
  6. - 遊戯王DSNTナイトメアトラバドール攻略Wiki@わかな
  7. Pokémon LEGENDS Z-A - アニヲタWiki(仮)
  8. 真崎杏子 - 遊戯王DSNTナイトメアトラバドール攻略Wiki@わかな
  9. ハロウィン - とびだせ どうぶつの森@まとめwiki
  10. 埼玉県女児レイプ本物児童ポルノ - 全裸でいかおどり@VIPPER支部
もっと見る

  • このWikiのTOPへ
  • 全ページ一覧
  • アットウィキTOP
  • 利用規約
  • プライバシーポリシー

2019 AtWiki, Inc.