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  • 真実は闇の中に

ラノベ・ロワイアル @ wiki

真実は闇の中に

最終更新:2008年04月12日 00:53

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だれでも歓迎! 編集

第575話:真実は闇の中に 作:◆5KqBC89beU



 人の身で可能なことは限られている。
 風の騎士と謳われるヒースロゥ・クリストフだろうが、例外ではない。
 人は何度でも決断を迫られる。後戻りできない岐路は幾度も現れ、人を惑わす。
 島のどこかを見て回るなら、その間、そこ以外の地域は探せない。
 どこかに行くということは、それ以外の場所に行かないということだ。
 目の前ではないどこかで“罪なき者”が死ぬと判っていても、彼は遍在できない。
 そして、同行していた仲間すらヒースロゥは守りきれずに見失った。
 懐中電灯で足元を照らし、森の中を移動しながら、風の騎士は自問する。
(どうすればいい? どうすれば、この状況を打開できる?)
 ヒースロゥ・クリストフは諦めが悪い。
 きっと守りきれないと理屈では判っていても、すべての“罪なき者”たちの生命を
最後まで惜しむ。二人を生かすために一人を死なせる、そんな選択を躊躇う。
 海洋遊園地で危険人物らしき参加者を放置したのは、これから襲われるかもしれない
誰かよりも朱巳の方が大切だったからではなく、両方とも守れるかもしれない可能性に
賭けたからだ。ヒースロゥ・クリストフは、そういう意味で欲が深い。
 守りたいという意志はある。ある程度の力と技も持っている。けれど、足りない。
勝利を掴むための策が足りない。助言をくれる仲間が、今は隣にいない。
(……考えても答えが出ないなら、答えが見つかるまで全力で探し続けるだけだ)
 ヒースロゥは前に進む。今の彼にできることは他にない。
 朱巳は行方不明であり、どこへ行けば助けられるのかさえ判らなくなってしまった。
 符術使いに対しても、このままでは打つ手がない。メモに符術使いの特徴を書いて
目立つ場所に残し、他の参加者に力を貸してもらう、という作戦は選べない。敵の敵が
味方だとは限らない。符術使いが朱巳を人質にしていようが気にすることなく攻撃し、
符術使いも朱巳も殺そうとするような連中にまで、情報を与えるわけにはいかない。
 火乃香・ヘイズ・コミクロンの三人組が残していくと言っていたメモは結局一枚も
発見できず、故に様々な憶測が脳裏をよぎるが、確かめる術は彼にない。
(三人組は移動中に襲撃され、行動不能になっているのか?)
 相当の実力者たちが揃っており、それぞれの相性も良さそうに思えたので考えにくい
事態ではあるが、だからといって絶対にありえないとは言い切れない。
(あるいは……最初から、こちらを利用するための虚言だったのか?)
 刻印を解除しようとする者を管理者が殺さないかどうか確かめるため、ヒースロゥや
朱巳を騙して危ない橋を渡らせ、安全だと判るまでは傍観しているつもりだった――
そんな解釈もできる。三人組には結束力があった。仲間を守るためになら仲間以外を
切り捨てる選択ができそうだ、という見方が可能なくらいには団結していた。
 三人組の中では、どうやら火乃香が男二人よりもやや上位の立場らしかった。仮に、
三人組の最優先する行動方針が『火乃香を生き残らせること』だとするなら、今後も
利害が一致したままだとは限らない。敵対勢力として見るなら、あの三人組は厄介だ。
 わざわざ言うまでもないことなので朱巳に伝えてはいないが、ヒースロゥが三人組を
警戒している最大の理由は『刻印を解析できると自称しているから』に他ならない。
 刻印に干渉できるということは、刻印を発動させられるかもしれないということだ。
敵に回したとき、これ以上に嫌な能力の持ち主など、そうそう存在するまい。
(!)
 堂々巡りする思考を打ち切り、ヒースロゥは周囲を確認する。
 大きな木々が陽光を遮るため若木や草が育ちにくいのか、森の中でありながら武器を
振るいつつ動き回れそうだった。大昔からある古木の森、といった風情の場所だ。
 少し離れた大木の陰に何者かがいる、とヒースロゥの感覚が告げている。
 相手はヒースロゥに気づいておらず、単独行動中で、殺意も戦意もないようだ。
(何だ? この違和感は……?)
 存在感が独特で微妙に薄い、不可解な参加者が姿を現す。
 凶悪な形状の鈍器を手に、虚ろな視線を巡らせながら、その参加者は歩いていた。
 小柄な少女だ。年齢は十代前半くらいに見え、頭上には金色の輪が浮いている。
 どういう仕組みなのかは謎だが、金色の輪は、何故か彼女の頭上から離れない。
(あの輪は鋭利な刃物だな。支給品か? それとも魔法のようなものか?)
 少女が醸し出す雰囲気は、どことなく迷子の幼児を思わせる。
(……少なくとも、殺すことを楽しんでいる手合いではなさそうだ)
 表情や歩き方から、彼女が熱病を患っていると見抜き、ヒースロゥは声をかけようと
決めた。風の騎士は、病気で孤独な少女を放っておけるような性格をしていない。
 もしも熱病が伝染すれば困ったことになる、と理解していながら、彼女をどこかに
隔離して誰とも会わせないようにすることなど、ヒースロゥにはできそうにない。
「あ」
 木の根に足を取られ、少女が派手に転んだ。
「だ、大丈夫か?」
「うん、平気! だけど、涙が出ちゃう……女の子だもん……」
 思わず駆け寄ったヒースロゥに返事をして、少女は立つ。自己申告の通りに涙目で。
 彼女の膝には、擦り傷ができていた。
 怪我をすれば血が滲むし痛ければ涙が出る。血も涙もある存在なら、それは道理だ。
「ひとまず傷口を洗おう。今、水を――」
 ヒースロゥが自分の荷物を地面に置くが、少女は彼の話をまったく聞いていない。
「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー♪」
 金属製の凶器を片手で高速旋回させつつ、彼女は擬音を発する。 
 光の粒子が七色に輝きながら舞い踊り、少女の怪我が一瞬で治った。
「おぉ……お? おい!?」
 愕然としていたヒースロゥだったが、少女が急によろめいたので慌てて支える。
(怪我は治せるが病気は治せないのか)
 ヒースロゥの腕の中で、ようやく少女は彼のことをまともに認識したようだ。
「お兄さん、誰?」
 手近な木にもたれかからせるようにして少女を座らせ、風の騎士は名乗る。
「俺は、ヒースロゥ・クリストフだ」
「ビースト……? 男の人って、みんなウルフガイなの……?」
 どういうわけか少女が震え始め、木の幹に背を預けて立ち上がり、武器を構える。
 奇矯な言動は熱病の影響なのだろうと推測し、ヒースロゥは少女に同情した。
(どうやら怯えさせてしまったらしいな)
 相手を安心させるため、とりあえずヒースロゥはゆっくりと後退しながら言う。
「よく判らないが、違う。言いにくければヒースと呼んでくれ」
 しかし、混乱した少女は、彼の言葉を右耳から左耳に素通りさせた。
「お兄さんも僕に、いたいことするの……!?」
 彼女の悲痛な問いかけに、風の騎士は胸を痛める。
(そうだ、優れた回復力で体の傷は消えても、傷つけられたという過去は消せない)
 無邪気な少女を襲った者への苛立ちが、ヒースロゥを熱く昂らせる。
「落ち着いてくれ、俺は君の味方だ」
 彼は、自分の荷物を置いてある辺りまで既に戻っている。
「いやぁっ、いやだよ、僕に何するの!? その鉄パイプをどこに挿す気なの!?」
 少女の言葉が、ますます支離滅裂になっていく。本来の人格が別の人格に上書きされ
消えかけているとでもいうような、尋常ではない気配が濃度を増す。
「え? あれ? ボクは“ボク”だから“僕”じゃなくて、じゃあ、僕は?」
 あまりにも異様な錯乱に、ヒースロゥはふと疑念を感じた。
(本当に熱病のせいなのか? 仮にそうだったとしても、病気の原因は……)
 少女の頭上で、金色の輪が懐中電灯の光を反射する。
(この子を苛む異常の元凶は、あの輪なんじゃないのか?)
 怪しげな輪の材質は、風の騎士の知識をもってしても見当がつかない。
 真実を確かめるため、ヒースロゥは質問を投げかける。
「頭の上の、その輪は何だ?」
「な、何? どうしてそんなこと言うの? それ、どういう意味!?」
 少女の顔色が、真っ青を通り越して真っ白になった。
 鉄パイプを拾い上げながら、彼はつぶやく。
「やはり、そういうことか」
 ヒースロゥは確信した。少女から感じる違和感は金色の円環に由来するものだ、と。
(あの輪が、彼女を狂わせている。外されては都合が悪いからこそ刃を備えていて、
 印象迷彩のような仕組みで彼女に違和感を与えないようになっているというわけだ。
 おそらくは、他の参加者がこの子を利用しようとして、あんなものを……!)
 理不尽な悲劇への憤りを込めて、ヒースロゥは宣言する。
「事情は判った。……俺が、君をその輪から解き放つ!」
 力強く告げる声は、聞く者すべてに王者の威風を感じさせた。

○

 とある世界の天使は皆、頭上の輪がないと下痢になる。
 徐々に三塚井ドクロではなくなりつつある彼女だろうが、例外ではない。
「事情は判った。……俺が、君をその輪から解き放つ!」
 などと宣告され、天使の少女は全身に鳥肌を立てて頬を引きつらせた。
 当然だ。
 輪がないと便意を我慢しきれないと承知した上で輪を奪う、と言われたのだから。
 初対面の女の子に排便を強制したがっている超弩級変態が、眼前にいるのだから。
 女の子の裸を見たいだとか、女の子に触れたいだとか、その程度の欲望なら彼女にも
把握はできる。恥ずかしくても、照れくさくても、不自然だとは思わない。
 けれど、幸か不幸か、彼女にとって排泄行為の強要は想定外だった。
 どうしてそんなとんでもないことを望むのか、まるで共感できない。
 どこがどう面白くて気持ちいいのか、推測はできても納得できない。
 鉄パイプを構えて輪を睨む男が、未知の領域に住まう怪物に見える。
 敵の思考回路は異質にして奇怪だ。もはや助平なのかどうかさえよく判らない。
 何よりも「俺には恥ずべき部分など一つもない」と言わんばかりに堂々としている
勇姿がおぞましい。凛々しい外見と悪逆非道な主張の落差が不気味すぎる。
 気迫を漲らせたその威容は、まさしく王者――変態王と呼ぶに相応しい。
 死の不可逆性を理解していない彼女にとって、変態王の野望は死よりも恐ろしい。
 敵は、「人前で糞便を漏らさない」という彼女の個性を全否定しようとしている。
 とある世界の天使にとって、個性の喪失は存在の消滅と同義だ。
 三塚井ドクロである部分と、三塚井ドクロではない部分が、悪寒を等しく共有する。
 歪んで不安定になっていた彼女の精神が、最低の脅威を前にして一時的に安定した。
「! ? !? !! ゃ、ぁ……っ!?」
 悲鳴をあげるという行為は、意外に大変な重労働だ。
 彼女には、もう悲鳴をあげる余裕すらない。
 狂乱しつつ愚神礼賛を手に襲いかかる彼女は、変態王を倒すことしか考えていない。
 だから――どこからか聞こえ始めた演説を、彼女は少しも気にしない。

○

 力任せの重い一撃が、ヒースロゥの頭に振り下ろされる。
『聞きなさい。あたくしの名はダナティア・アリール・アンクルージュ』
 聞いている場合ではなかった。
 少女の凶器に鉄パイプを叩きつけて軌道をずらしつつ、風の騎士は回避に徹する。
『今よりあなた達に告げる者の名です』
 体調が悪いせいなのか、少女の挙動からは、実力の大部分を発揮できていないような
印象が感じ取れた。それでいて雑兵なら一瞬で屠れそうな力量は凄絶の一語に尽きる。
 ヒースロゥは、演説を意識の外に追いやり、戦闘のみに集中しようとした。
『あたくしはこのゲームに宣戦を布告します』
 だが、できない。力ある言葉が、聞き流すという選択肢を彼から奪う。
 ヒースロゥは、ダナティアの声を聞かなかったことにできないまま、得物を振るう。
 武器がぶつかり合い、金属音が連なり、止まらない。
 懐中電灯の光に切り取られた森の闇に、火花が幾度も散り落ちる。
 膂力と得物の破壊力では少女が勝り、技量と実戦経験ではヒースロゥが勝っている。
 しかし、少女には敵意がある。生存本能に直結した怯えと恐れが攻撃を苛烈にする。
 そして、ヒースロゥには殺意がない。哀れな女の子を殺せぬほどに風の騎士は甘い。
『手伝えとは言いません。逆らうなとは言いません。
 それはあなた達が決める事でしょう』
 ヒースロゥが自ら決めた勝利条件は、少女の無力化であって殺害ではなかった。
 劣勢なのは、ヒースロゥ・クリストフの方だ。
『あたくしはただ、二つのルールを定めるだけ。一つの事実を告げるだけ』
 眼前の少女を殺さない。眼前の少女から逃げない。だから、勝てなかったときには
眼前の少女の手が血で汚れる。彼自身が定めた二つの禁則が、一つの事実に帰結する。
『喪った者として告げましょう。奪うな、喪うな、そして過つなと』
 奪わせたくないなら、喪わせたくないなら、過たせたくないなら――それなら思考を
止めてはならない。
 防戦一方の状況下で、最適な戦法をヒースロゥは模索する。
『奪う事は憎しみを繋ぎ、喪う事は悲しみを繋ぎ、そして過ちは過ちを繋ぎます。
 あたくしはそれを許さない』
 無垢な少女を殺人鬼に仕立てあげるような悪意を、風の騎士は絶対に許さない。
 怒りが力に変換される。
 ヒースロゥの構えが流動的に変化し始め、多彩な動作が組み合わされつつあった。
『過ちを犯した者として告げましょう。悔い改めて進みなさい』
 剣を模してすらいない鉄パイプを、剣のように扱うのは間違っている。
 どの部分でも握れてどの部分でも殴れる――それが剣になく鉄パイプにある特性だ。
 鉄パイプを変幻自在に持ち替え、掌握し、風の騎士はより素早く加速していく。
 槍のように突き、薙刀のように払い、太刀のように打ち、彼は得物を使いこなす。
 千変万化する鉄パイプの連続攻撃は、剣術より杖術に近いものと化している。
 少女の乱打とヒースロゥの連打が拮抗し、膠着状態となった。
『喪われた者達の想いから目を逸らしてはいけません』
 両者は互角の戦いを繰り広げている。どちらが勝ってもおかしくはない。
『彼らはあなたや誰かを赦さないかもしれません』
 少女が体勢を崩され、打ち合いが一瞬だけ止まった。
『最早、何も考え想う事は無いかもしれません』
 鉄パイプを右肩に担ぐようにして、風の騎士が構える。
『それでも尚、道を見失う事は愚かです』
 ダナティアの言葉に応じるように、ヒースロゥの顔には笑みが浮かぶ。
 王者たりえる器の持ち主は、女帝たりえる者の格を認め、その意志を信じた。
『そして――』
 だからこそ、銃声が演説を遮った瞬間、風の騎士は激しく動揺する。
 隙が、生じた。
『ダナティア!!』
 ヒースロゥの気持ちを代弁するかのように、少年の焦りを含んだ叫びが響き渡る。
 逆転の機会を逃すことなく、少女の刺突がヒースロゥの腹部へ襲いかかる。
 とっさに彼は後方へ跳ぶ。
 彼女が一歩、さらに踏み込む。
 彼の回避は間に合わず、彼女の猛打が致命傷を与えた。
『そして、進む者として告げましょう』
 ――強い言葉が、ダナティアの存命を伝え、不屈の意志を告げ、絶望を打ち砕く。
「うおぉおおおおぉおおぉぉおおぉおぉおおおおおぉぉぉっ!!」
 致死の衝撃に臓腑を破壊されながら、風の騎士は鉄パイプを右から左へ薙ぎ払う。
 彼が放った一閃は、少女の頭上で無防備に浮いていた円環に命中し、弾き飛ばした。
 ヒースロゥの背が木に激突したのと少女が頭上の異変に気づいたのは、同時だった。
「う、ぁ……あぁっ……!?」
 目を丸くした少女の手から握力がなくなり、鈍器が地面に滑り落ちる。
 少女は戦意を失った。恐怖に歪んだ彼女の頬を、大粒の涙が濡らしていく。
 どうにか木の根元に背を預け、ヒースロゥは、霞み始めた視界にその様子を捉えた。
(俺は、もうすぐ、ここで、死ぬ……だが――)
 彼は少女に向かって微笑む。思いを伝えておくために。
「君のせい、じゃ、ない……君は、悪く、ない……」
 重傷を負ったヒースロゥの声は、今にも消えてしまいそうなほど小さい。
 未練は山のようにある。守りたい者たちを守りきれない無念は筆舌に尽くし難い。
肉体的な苦痛は無視できるようなものではない。だがしかし、それでもヒースロゥは
笑ってみせねばならない。少女の胸に罪悪感を植えつけて逝くことを、他の誰よりも
ヒースロゥ・クリストフ自身が許しはしない。
 しかし、その笑顔は完全に偽物だったのかといえば、そんなことは断じてない。
(これ、で、あの子は、輪の呪縛、から、解放、され、る)
 無辜の民の苦しみをほんの少しでも消し去れたなら、ただそれだけで彼は喜べる。
『あたくしを動かすのは……』
 途切れることなく続くダナティアの演説を聞きながら、風の騎士は血反吐を吐いた。
(抗って、いる、のは、俺だけじゃ、ない)
 耳朶を打つ声に励まされ、ヒースロゥは笑みを深くする。
『……決意だけよ!!』
 それは森の中からでも見えた。
 北の彼方から曇天の夜空へと赤い柱がそそり立っていた。
 煌々、轟々と迸る閃光は上空の雲を貫いていた。
 赤い光に照らされながら、ヒースロゥは目を伏せる。
 風の騎士は、大切な、たくさんの人々を想う。
「――――」
 彼が最期に発した声は、かすかで短いものだった。
『刻みなさい。あたくしの名はダナティア・アリール・アンクルージュ』
 故に、朗々たる言葉にかき消されたその一言は、誰の耳にも届かなかった。

 こうして、ヒースロゥ・クリストフは、微笑みを浮かべたまま力尽きた。

○

 まるで小動物のように恐れ慄きながら、天使の少女はつぶやく。
「ボクは、とんでもない勘違いをしていたんだよ……!!」
 即座に「な、なんだってー!?」と反応してくれる者は、ここにいない。
 彼女は、涙を拭いもせず、彼の死に顔を凝視していた。
 あのように笑える男が、変態王などであるはずはない。
 死してなお爽やかに笑っている男が、そんなものであるわけがない。
 戦わずに逃げておくべき相手だった。倒そうなどと思ってはいけない相手だった。
「は、早く逃げないと、『俺の煩悩は百八つまであるぞ』とか言いながら第二形態に
 なって復活してきちゃう……!!」
 変態王などという生易しい称号では、彼の比類なき妄執をろくに表現しきれまい。
 彼は、死にかけているというのに喜んでいた。肉体的にも精神的にも限界近くまで
追い詰められて泣いている彼女の姿を、本当に嬉しそうに眺めていた。もしかすると、
致命傷の激痛ですら彼にとっては快感だったのかもしれない。
 その生き様と死に様は、まさに王者の中の王者――変態大王と呼ぶに相応しい。
 死の不可逆性を理解していない彼女にとって、地獄の底から蘇ってくる変態大王の
想像図は、吐き気がするほどの現実感に満ち溢れている。
 片手を腹に添え、下半身を痙攣させつつ内股気味に、彼女は懐中電灯を拾う。
 あちこちの地面を照らし、彼女は天使の輪を懸命に探し始めた。
 ちなみに、天使の輪は木の幹に突き刺さっており、上を見ない限りは発見できない。


【093 ヒースロゥ・クリストフ 死亡】
【残り 37名】


【G-6/森の中/1日目・21:35頃】
【ドクロちゃん】
[状態]:『天使の憂鬱』発症/天使の輪がないせいで下痢になっている
[装備]:懐中電灯
[道具]:なし
[思考]:ボクのわっか、どこー?/早く逃げなきゃ……!
    /桜くんを捜す/攻撃衝動が増加
[備考]:刻印が解除されています。最長で二十時間後、彼女は消滅します。
    力を行使すればするほど、消滅までの時間は縮まります。

※懐中電灯以外の支給品一式(パン5食分・水1500ml)が放置されています。
※愚神礼賛(シームレスバイアス)が転がっています。
※鉄パイプ(鉄屑になる寸前)をヒースロゥの死体が握っています。
※天使の輪は木の幹に突き刺さっています。


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第574話 第575話 第576話
第572話 時系列順 第551話
第559話 ヒース -
第571話 ドクロちゃん -



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