ニャングオウ「ベル、これあげる」ベル「おー、ちゃんと用意したんですね」

「ベル、これあげる」

 できるだけ平静を装って突き出す。緊張を悟られないように。

「おー、ちゃんと用意したんですね。実はニャングオウさんからは返ってこないかもって思ってました」

 ベルは腹立たしいくらい平常運転で失礼だった。こういうことを平気で言ってくる。私がベルにお返ししないわけないじゃん。

「それくらい用意するよ、何だと思ってるのさ」
「ニャングオウさんって施しを受けて当然とか思ってそうで」
「はあー……、何かもうやるせなくなってくるよ」

 本当にやるせない、やっぱり分かってない。こっちは散々悩んで今日に臨んでるのにこれだもんなあ。全然意識してないじゃん、もっと期待してよ。

「そんな気に障りました? 冗談のつもりだったんですけど……」
「私をよく分かってないこともそうだけど、君に対してもそうだと思っていることが何より腹立つ」
「はあ……よく分からないですけど、すみませんでした」
「別にいいよ、私が勝手に期待してただけだから」

 本当にみっともない話だ。訳の分からない八つ当たりを受けたベルの困惑も当然だろう。

「やっぱりよく分からないですけど、お返しありがとうございます。あとで一緒に食べましょうね」
「食べ物じゃない、ここで開けて」

「そうなんですか……」

 露骨に残念そうな顔しないでほしい。いいから開けてくれないかな。

「どう?」
「えーと……その……」

 ベルが気まずそうに言い淀む。
 これまで私の想いに気づかなかった報いを受けてもらおう。

「返事を聞きたいな」
「あの、ですね……前にも話していたと思うんですけど、故郷に憧れの人がいるんです」

言いづらそうに切り出してきた。大丈夫、その話は知ってるし覚悟できている。

「あの、だからあなたの想いには応えられないというか……」
「でももう諦めるしかないんだよね?」
「まあそれはそうなんですけど……」
「じゃあいますぐ諦めて」

 目をそらされたから覗き込んで言ってやる。

「いや、そんな簡単に諦められませんよ。勝手なこと言わないでください」
「肯定以外の返事を受け取るつもりはないよ」

 強気だ、強気でいくしかない。

「ほら、手、貸して」
「…………」

 無言の抗議を無視して手を取る。抵抗はなかった。
 自分の指輪をつけて、ベルの指にも通していく。抵抗しない。
 最後に目を見つめて伝える。これもそのまま受け取ってもらいたいな。

「ベル、結婚しよう」




~ちょっと前~
「ベルフィエルさん! これ、お返しっす」
「あ、ありがとうございます。……随分、豪華ですね?」
「ふふん、まああなたにはできないっすよね? 自分はこれくらいなんてことないっすけどね!」
「えーっと、もしかしていま嫌味言われてます?」
「別にそんなつもりはないっすよ? ただ事実として自分のほうが優れているってことを見せつけてるだけっす」
「はあ、そうですか……。あの、それでこれはもらっていいんですか?」
「どうぞ、敗北の味をかみしめるといいっす」
「またその話ですか、別にそういうのじゃないと何度言えば……」
「相変わらずの余裕っすね! いつか追い抜かれるその時までそうしているといいっす!」




ベルニャンのその後を知る者はいない……。
まあベルだし押せば何とかなるだろ。
本当は本編終了後にやりたかった話。これからどんな顔して会えばいいんだ……。
最終更新:2022年03月14日 15:13