「アスランが?!」
カガリは、
ここが執務室であることも、自分が決して取り乱してはならない立場の人間であることも忘れて、震える声で叫んだ。
ここが執務室であることも、自分が決して取り乱してはならない立場の人間であることも忘れて、震える声で叫んだ。
彼女の想い人 ― アスラン・ザラ ― が命を落とした、と。
目の前の士官はそう告げた。
目の前の士官はそう告げた。
まさか、とカガリは思う。
彼女は信じていた…否、今でも信じているのだ。アスランが負けるはずの無いことを。
彼女は信じていた…否、今でも信じているのだ。アスランが負けるはずの無いことを。
報告をした士官はカガリの様子に一瞬面食らうが、なんとか持ち直し、続きを事務的に告げる。
先日行われた戦い。
始めは統一連合軍が押していて、結果は明らかだった。
だが、レジスタンス側が見たこともない新型のモビルスーツを投入し、状況は一変。
味方機が次々とやられ、形勢は逆転した。
すかさずアスランがトゥルージャスティスで出撃、新型モビルスーツを応戦した。
戦いはほぼ互角だったが、僅かな隙を見て、新型のビームサーベルがジャスティスのコックピットを薙いだ。
トゥルージャスティスは爆発の炎に包まれ、アスランの死亡は確実だったという。
始めは統一連合軍が押していて、結果は明らかだった。
だが、レジスタンス側が見たこともない新型のモビルスーツを投入し、状況は一変。
味方機が次々とやられ、形勢は逆転した。
すかさずアスランがトゥルージャスティスで出撃、新型モビルスーツを応戦した。
戦いはほぼ互角だったが、僅かな隙を見て、新型のビームサーベルがジャスティスのコックピットを薙いだ。
トゥルージャスティスは爆発の炎に包まれ、アスランの死亡は確実だったという。
次々と報告される情報に、カガリは黙って聞き入った。
やはり事実なのかと落胆する一方で、いやきっと違うのだと僅かな希望にすがりつく。
やはり事実なのかと落胆する一方で、いやきっと違うのだと僅かな希望にすがりつく。
カガリはあまりに動揺し、士官が執務室を退室したことにも気付かなかった。
――――
キラはカガリの執務室のドアをノックした。
……返事が無い。
仕方がないので、そのまま入る。
許可無く入ることは禁じられているが、おそらく彼女は許可できる状態ではないのだろう。
はたして、キラの思っていたとおりだった。
……返事が無い。
仕方がないので、そのまま入る。
許可無く入ることは禁じられているが、おそらく彼女は許可できる状態ではないのだろう。
はたして、キラの思っていたとおりだった。
カガリは、一人で机にいた。
キラが入ってきたことにも気付かず、ただ呆然としているようだった。
日は傾き、執務室は自分たち2人以外は無人。
彼女の目が赤く見えるのは、窓から差し込んだ夕陽のせいか、それとも……。
キラが入ってきたことにも気付かず、ただ呆然としているようだった。
日は傾き、執務室は自分たち2人以外は無人。
彼女の目が赤く見えるのは、窓から差し込んだ夕陽のせいか、それとも……。
キラはカガリの横に膝をつき、視線をカガリの目線に合わせた。
だが、カガリはだた一点を見つめたまま、時が止まってしまったかのように動かない。
そっと、肩に手を乗せた。
だが、カガリはだた一点を見つめたまま、時が止まってしまったかのように動かない。
そっと、肩に手を乗せた。
「カガリ。」
すぐそばから聞こえた聞きなれた声に、カガリはハッとした。
振り向けば、紫の瞳と目が合った。
振り向けば、紫の瞳と目が合った。
「……キラ?」
彼女は、この瞬間までキラに気付いていなかなかった。
それほどまでに、彼女はショックを受けている。キラは心が痛んだ。
それほどまでに、彼女はショックを受けている。キラは心が痛んだ。
「…キラ…っ……!」
キラの顔を見て、カガリは安堵したのか泣き出した。
「あ…アスランが……っ!」
「…わかってる。わかってるから。」
「…わかってる。わかってるから。」
無論、カガリに言われなくてもキラは知っている。
アスラン・ザラ ― カガリの想い人であり、キラの親友である青年が、つい先日に戦死したことを。
アスラン・ザラ ― カガリの想い人であり、キラの親友である青年が、つい先日に戦死したことを。
「帰ってくる、って……あいつ…そう言って…っ…!」
カガリはキラの首にしがみついて泣きじゃくった。キラの軍服の肩口が、カガリの涙で濡れる。
キラは黙ってカガリを抱きとめることしかできなかった。
キラは黙ってカガリを抱きとめることしかできなかった。
キラは、数日前に会ったばかりの親友を思い出す。
いつものように、微笑を浮かべながら「行ってくる」とだけ告げて、出発して行った。
……そして、そのまま彼は帰ってこなかった。
いつものように、微笑を浮かべながら「行ってくる」とだけ告げて、出発して行った。
……そして、そのまま彼は帰ってこなかった。
戦争に翻弄され、苦しんでいた彼。
大切な者を亡くし、落ち込んでいた彼。
……世界の平和を守るために戦い、散っていった彼。
大切な者を亡くし、落ち込んでいた彼。
……世界の平和を守るために戦い、散っていった彼。
風になびく濃紺の髪。
愁いを帯びた碧の瞳。
不器用で、呆れるほど真面目で、やさしくて……。
愁いを帯びた碧の瞳。
不器用で、呆れるほど真面目で、やさしくて……。
こんなにも、彼のことを覚えているのに。
今にも「ただいま」と帰ってきそうなのに。
……彼はもう、この世にいないのだと。その事実だけが、2人には痛い。
今にも「ただいま」と帰ってきそうなのに。
……彼はもう、この世にいないのだと。その事実だけが、2人には痛い。
幼い頃から兄弟のように育ったアスラン。
そんな彼の死は、キラには大きい衝撃だった。
そんな彼の死は、キラには大きい衝撃だった。
キラの頬を、暖かいものが伝い落ちる。
カガリの顔は、すでに涙でぐちゃぐちゃになっていた。
カガリの顔は、すでに涙でぐちゃぐちゃになっていた。
「帰ってくるって…言ってたのに―…っ!!」
キラとカガリは、救いを求めてすがるように抱き合いながら、声を放って泣いた。
――――
ちなみにラクスは、「今は泣いてるときではありませんわ」とか言って、あまり泣かなかった……。