この時代、もはやBC思想は衰退している。
ナチュラルとコーディネイター、かつては絶滅戦争すらおこなった二者が融和したことは、間違いなくラクス率いる統一連合の功績の一つである。
しかし、それでも古い考えを捨てきれず、かつての栄光を取り戻そうと固執する輩はいるものである。
大西洋連邦で活動中のこのレジスタンス組織もその一つ。地球圏至上、コーディネイター排斥の思想から抜け出せていない者たちの集まりである。
そしてそういった人間に限って、扇動めいた訓示を好むのもまた常であった。
ナチュラルとコーディネイター、かつては絶滅戦争すらおこなった二者が融和したことは、間違いなくラクス率いる統一連合の功績の一つである。
しかし、それでも古い考えを捨てきれず、かつての栄光を取り戻そうと固執する輩はいるものである。
大西洋連邦で活動中のこのレジスタンス組織もその一つ。地球圏至上、コーディネイター排斥の思想から抜け出せていない者たちの集まりである。
そしてそういった人間に限って、扇動めいた訓示を好むのもまた常であった。
「狂気と退廃に満ちた世界にあってなお、清廉潔白な思想を失わぬ同志諸君、私は君たちを誇りに思うぞ!」
居並ぶメンバーたちにより、喚起の雄叫びがこだまする。リーダーと思しき男は、地球連合の古めかしい軍服を着ている。
どうやら軍人上がりらしい。
どうやら軍人上がりらしい。
「ラクス・クラインなる、遺伝子操作された忌まわしき人間もどきが支配するこの世の中は、いつか終末の業火にさらされるであろう! 否! われわれこそがその終末の業火をもたらすのだ。
そして、炎の中から蘇る不死鳥のごとく、青き清浄なる世界が再び世に生まれ出ずるのだ!」
そして、炎の中から蘇る不死鳥のごとく、青き清浄なる世界が再び世に生まれ出ずるのだ!」
メンバーたちの熱狂的な拍手に続いて、誰ともなく歌いだした地球連合軍歌が響き渡る。
非情に醜悪な光景だった。
このレジスタンスは、BC思想に凝り固まっているせいで民衆の支持をほとんど得ていない、
テロリストに近い存在である。
しかし特筆すべきは、旧連合性のMSやMAを多数保持していることである。このように物資が潤沢のあたりは、BC思想を持つ元連合軍人らの援助があるのかもしれない。
単純に戦力として見た場合、決して無視できる組織ではなかった。
このレジスタンスは、BC思想に凝り固まっているせいで民衆の支持をほとんど得ていない、
テロリストに近い存在である。
しかし特筆すべきは、旧連合性のMSやMAを多数保持していることである。このように物資が潤沢のあたりは、BC思想を持つ元連合軍人らの援助があるのかもしれない。
単純に戦力として見た場合、決して無視できる組織ではなかった。
だから、治安警察が総力をあげてその所在を突き止めると、「彼ら」の派遣がすぐに決まったのだ。
軍歌の響きに酔い痴れている面々を、非常警報のサイレンが現実に引き戻した。
リーダーは不敵な笑みを浮かべる。
リーダーは不敵な笑みを浮かべる。
「ふん、統一連合め、ここをかぎつけたか。まあいい。返り討ちにしてくれる。
ウィンダム部隊、ザムザザー! 出撃だ。青き清浄なる世界のために、統一連合の亡者どもを生贄にささげろ!」
ウィンダム部隊、ザムザザー! 出撃だ。青き清浄なる世界のために、統一連合の亡者どもを生贄にささげろ!」
意気揚々とコクピットに向かうパイロットたちを誇らしげに見つつ、リーダーは司令室に向かう。
そして司令室のスタッフに声をかける。
そして司令室のスタッフに声をかける。
「さあ、我らが剣の錆になろうとする愚か者は誰だ? 敵の数と詳細を教えろ」
「…さ、三機です」
「何、たったの三機だと? 舐められたものだ。これではウィンダム部隊の練習相手にもならんわ」
「お…お言葉ですが、敵は、ほ、本気で我々を倒しにかかっているかと思われます」
「…さ、三機です」
「何、たったの三機だと? 舐められたものだ。これではウィンダム部隊の練習相手にもならんわ」
「お…お言葉ですが、敵は、ほ、本気で我々を倒しにかかっているかと思われます」
リーダーは怪訝そうな表情をした。部下が口答えをしたからではない。部下の言葉が震えているように聞こえたからである。
「何だと、なぜそのようなことがわかる?」
部下はゆっくりとモニターを指差した。そこには、砂塵を巻き上げて今まさにこの基地に向かわんとしている三機のMSが映し出されていた。
漆黒の機体、十字の紋章が刻まれたシールド、巨大なバズーカ砲、そして真紅に光り輝く攻性防御フィールド。
漆黒の機体、十字の紋章が刻まれたシールド、巨大なバズーカ砲、そして真紅に光り輝く攻性防御フィールド。
「あ、あれは地上軍第三特務隊、ば、馬鹿な、なぜ奴らが!」
「そうです、あれはドムクルセイダー! ドムクルセイダーが派遣されたんです!」
「そうです、あれはドムクルセイダー! ドムクルセイダーが派遣されたんです!」
疾駆するドムクルセイダーのモノアイが、怪しく光る。
それが、戦闘とはとても言えない、虐殺の始まりの合図だった。
それが、戦闘とはとても言えない、虐殺の始まりの合図だった。
正確な時間は分からないが、せいぜい十五分くらいだろうか。
ドムクルセイダーはその圧倒的な力をもってして、ウィンダム十二機をすべて叩き落し、ザムザザーの腹に風穴を開け、そして基地施設を完全に破壊してしまった。
ドムクルセイダーはその圧倒的な力をもってして、ウィンダム十二機をすべて叩き落し、ザムザザーの腹に風穴を開け、そして基地施設を完全に破壊してしまった。
「退屈しのぎにもなりゃしないな」
「手ごたえがなさ過ぎて、つまらん」
「手ごたえがなさ過ぎて、つまらん」
欠伸まで出しそうなマーズとヘルベルトの会話に、ヒルダは入らない。彼女の隻眼に写るのは、主翼を破壊されて飛びたてなくなったジェット機である。
ドムクルセイダーの姿に戦意を失ったリーダーが、尻尾を巻いて戦闘開始直後に逃げ出そうとしたのだ。
しかし、それを見つけたヒルダがジェット機の翼をドリルランスで刺し貫いてしまったのである。
地面に縫い付けられたジェット機の中で、彼は十五分前までは無敵と信じていた己の戦力が壊滅していくのをただ眺めるだけだった。
しかし、それを見つけたヒルダがジェット機の翼をドリルランスで刺し貫いてしまったのである。
地面に縫い付けられたジェット機の中で、彼は十五分前までは無敵と信じていた己の戦力が壊滅していくのをただ眺めるだけだった。
そして今、ドムクルセイダーが一歩ずつ、ゆっくりとジェット機に近づいてくる。
リーダーは、恐怖に震えながら、必死にヒルダに通信で呼びかける。
リーダーは、恐怖に震えながら、必死にヒルダに通信で呼びかける。
「こ、降伏する。抵抗はしない。だから、条約にのっとり、捕虜としての待遇を求める…聞いているのか、おい、降伏すると言っているんだ!」
ヒルダは嘲笑を浮かべながら、言い放った。
「一つ教えてやろう、お前らの基地での会話は、ウチの治安警察が全て盗聴していたのさ」
そう言いながら、ヒルダはバズーカの銃先をジェット機に向けた。
「だから、全部アタシたちは聞いていたんだよ。お前がその汚い口で、ラクス様を侮辱する言葉を大声で叫んでいたところもね」
ヒルダの口調は淡々としていた。それだけに、彼女の怒りが凄まじいものだとリーダーにもわかった。
「お前がラクス様のためにできることはただ一つ…地獄でその罪を詫びることさ!」
リーダーは、自分の死を理解した。バズーカの爆風で吹き飛ばされるとき、苦痛は一瞬だけだったのがせめてもの幸いだった。
基地はもはや完全に抵抗の力を失っている。
しかし、ヒルダは容赦しない。
基地はもはや完全に抵抗の力を失っている。
しかし、ヒルダは容赦しない。
「ラクス様に逆らうとはね。馬鹿な連中だよ。マーズ、ヘルベルト、念のために周囲を焼き払え! 不届き者を一人も逃がさないようにね!」
ドムクルセイダー。その名の通り、ラクスの正義を世界にしらしめるために、CE世界に蘇った十字軍の騎士。
しかし忘れてはならないのは、イスラム世界にとっての十字軍は、まさしく残虐な狂信の徒であった事実である。
狂信が次に目標と定めるのは、東ユーラシア。
狂信が次に目標と定めるのは、東ユーラシア。
その事実を、まだリヴァイブは知らない。
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過去スレ32掲載SS『ドム来襲』より