登録日:2025/09/27 (土曜日) 19:50:00
更新日:2025/09/27 Sat 21:30:59NEW!
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「君なら水道を止める時はどうする?」
「蛇口を締めます」
「よろしい。我々も蛇口を締めようではないか」
パナマ運河とは、中米パナマにある大西洋と太平洋を結ぶ巨大運河である。
【概要】
中東の
スエズ運河と並び、一般常識上で知らない人はいないと言っていい世界的な知名度を持つ。
建造したのはアメリカだが、所有者のパナマ政府との間でいまだに政争・紛争が絶えないところでもある。
それだけ、世界的に重要なところなのだ。
まず、前提知識として太平洋と大西洋の間には南北アメリカ大陸がある。
大西洋から太平洋へ抜けるためには南米最南端のホーン岬を通る必要があり、世界地図を見ればわかる通りこれはとてつもない距離を進まねばならない。
しかし、中米の陸地の細い場所に運河を作り、カリブ海とメキシコ沖を繋げば大幅な距離の短縮になる。
それだけ?と思われるかもしれないが、燃料消費量や荒れるホーン岬の海を通過する危険度や消耗を考えたら段違いの差になるのだ。
この構想が生まれた頃にはすでにスエズ運河が完成しており、パナマもいこうと誰もが夢想した。
しかし、スエズと決定的に違っていたことは、中米は幅は狭くとも盛り上がった丘になっていたのだ。
アニヲタ的に説明すれば、ワンピースのレッドラインを思い浮かべていただければいい。
このため、最初はスエズ運河を作ったレセップスが着工したが、スエズと同じ平行式の運河を建設しようとして挫折している。
後を継いだアメリカは、スエズと同じ方法では不可能として、別の方法を考案した。
これが有名な「閘門式運河」である。
しくみを解説すると、運河をいくつかの部屋に分けて鋼鉄製の閘門で区切る。この部屋は階段状になっていて、少しずつ山を登るようになっている。
部屋の中に船が入ると注水され、水位が上がって船が上昇する。
船は前進して次の部屋に入り、後ろの閘門を閉めて同じことを繰り返す。
こうするとあら不思議、船が山を登ったというわけである。
もちろんこの方式には莫大な水が必要とされるが、パナマ地方に降る大量の雨がそれを可能にした。
パナマ運河の山頂に巨大な人工湖を設け、そこに雨水を貯める。その湖水を利用して運河を運営するというわけである。
しかし、いかなアメリカといえどもこの工事は楽なものではなかった。
莫大な人夫を揃えられても、パナマ地方は温暖湿潤の地。ざっくり言えばジャングルである。
そして、旧日本軍が南洋の自然を軽視してガダルカナルなどで地獄を見たように、熱帯の自然は楽園ではなく地獄そのものだった。
切り開いてもあっという間に再生してしまう草木。
なによりも、熱帯に巣食う病害虫が人々を苦しめた。次々に人夫が倒れるようでは工事もままならない。
そこでアメリカは新開発の殺虫剤を大量に散布して害虫の撲滅に乗り出した。
これについては、日本人である諸兄らも戦後の写真や映像でアメリカ軍が子供の頭から白い粉をぶっかけているのを見たことがあるだろう。あのDDTと呼ばれる殺虫剤と同じものである。
現在では発がん性で使用されていないが、当時はまさに効果てきめん。蚊などの伝染病を媒介する害虫を減少させることに成功した。
こうして、パナマ運河は無事に開通した。
ただし、パナマ運河の存在は別の意味でアメリカ軍に制約をかけることになる。
パナマ運河の幅は制限があり、およそ33メートルの幅の船しか通行できない。
これはアメリカ海軍の艦艇、特に戦艦に大きな制約を加えることになった。
戦艦の主砲を大きくしようとすれば、当然船体は大型化する。しかしパナマ運河の幅の制約の中では、どうしても搭載できる砲は16インチまでが限界となる。
日本海軍はこの制約を利用し、アメリカ海軍が持てない18インチ主砲を持つ戦艦で対抗しようと考えた。それが大和型である。
そしてアメリカ海軍の建造した最後の戦艦のアイオワ級も、パナマ運河を通る必要上で異様に細長い戦艦となってしまった。
もっとも1939年から拡張工事に着手していて、モンタナ級はそれを見越して設計されていた。太平洋戦争の影響で実現に至らなかったが。
また、パナマ運河と言えば忘れてはならないのは旧日本海軍の潜水空母イ-400型潜水艦である。
パナマ運河がもし破壊されればアメリカ海軍は太平洋と大西洋の移動に莫大な手間をかけねばならない。
そしてアメリカ海軍の造船設備の多くは東海岸にあり、パナマ運河を破壊できればいくらアメリカが大量に艦船を建造させてもすぐには太平洋に持ってこれない。
この戦略の下でパナマ運河を破壊するため、専用の攻撃機晴嵐まで開発して計画は練られた。
結局イ-400型潜水艦の建造は間に合わず、パナマ運河の破壊はできなかったが、その設計思想などは戦後の戦略潜水艦に引き継がれたという。
後世の創作においての出番はあまり多くない。
というのも、確かに世界的に重要な場所だが観光地として人気があるわけではなく、特に有名なモニュメントなどがあるわけでもない。
平たく言えば地味な場所なのだ。
それにアメリカとパナマ政府の間でいざこざが続いて、常にキナ臭い場所であるのも人を遠ざけている。
残念ながら華やかな印象ではスエズ運河に大きく水を開けられていると言って仕方ないだろう。
ただし、架空戦記の世界においては別である。
上述の通り、ここを破壊出来たらアメリカの海運に甚大な被害を与えられるために、イ-400潜をはじめあの手この手でぶっ壊されている。
壊されなくても大和型の主砲の解説でパナマ運河の名前が出ることがほとんどである。
【創作において】
架空戦記界の不滅の金字塔。
後半の「パナマ侵攻」にて、日本軍と第三帝国軍が熾烈な戦いを繰り広げる……はずであった。
しかし続巻が出ずに作者が鬼籍に入ってしまい、解説されたヤークトパンテル2やメッテルニヒ級モニター艦の活躍は幻になってしまった。
タイムスリップ型架空戦記の金字塔。
上述のイ-400潜水艦の流れを組む潜水空母艦隊「紺碧艦隊」がハワイに続いて奇襲をかける。
見事ガトゥン閘門の破壊に成功。米軍の駆逐艦隊の追撃でピンチに陥るも、戦術G7の発動で撃退に成功して全機全艦無事に帰投した。
その後復旧されるが、今度は米本土複数箇所同時攻撃作戦「幻月作戦」で高杉艦隊の空襲を受けて破壊されてしまう。
ただしあくまでこれは幻月作戦の一環に過ぎず日本の真の目的はロスアラモスの原爆工場破壊にあった。
さすがにこれで頭に来たのか、その後はトンネル式のパナマ第二運河を建設している。
いくら日本軍がチートするからといっても米国面がすごすぎる。
「不沈戦艦紀伊」を書かれた子竜蛍氏の架空戦記。
開戦に合わせて慰問品と偽装して爆薬を積み込んだ輸送船を運河内で自爆させることで破壊した。
様々な架空戦記のオムニバス作品集。
一作に、もしイ-400潜が開戦時に完成していたらという内容で奇襲攻撃がおこなわれる。
コーエーの海戦ゲーム。
ガトゥン湖内で海戦するステージがシリーズ上でいくつかある。
また、運河を通過したらボス戦になることが多い。
追記・修正はDDTを頭からかぶってお願いします。
- パナマ運河と言うと元野球選手のズレータも -- 名無しさん (2025-09-27 20:18:13)
- 90年代後半のゴルゴ13の作品でパナマ運河を題材にしたものがあったなぁ。スエズ運河と並んで人類の発展に大貢献している -- 名無しさん (2025-09-27 20:23:10)
- 最近だとDr.STONE、3700年の時間経過で自然に埋まってたな。スエズの方は無事だった -- 名無しさん (2025-09-27 21:03:30)
最終更新:2025年09月27日 21:30