431 :ウズメ@中の人:2005/11/24(木) 15:05:36 ID:NvaPDdWU
その少女には、物心ついたときにはすでに親は居なかった
母親は彼女を生んですぐ、父親は嵐の日に漁から帰って来なかったそうだ
彼女は村のシャーマンである、おおばば様に引き取られて育てられていた
他にも似たような境遇の子供達が数人居た
彼女はどんな辛い事が合っても、いつも笑顔を絶やさなかった
いつも笑顔ならば、幸せがやってくると信じていたから
回りの子供達も嬉しい気分になると言ってくれていたから
天の父母には楽しい土産話をいっぱい持って行こうと心に決めていたから
子供達の中から何人か才能の有る子供が選ばれて、シャーマンとなる
その他の子供は、補佐や護衛等の特訓を受ける
女子の能力は男と比べて不安定で、妊娠出産等の身体の変化で消えてしまう場合が多いので
原則結婚は出来ないと聞かされた
少女は巫女になる事を決めた・・・その才能は有った
巫女は人々を導く水先案内人であり、海の上では優秀な按針なのだ
按針とは、航海士(ナビゲーター)のことである
そのために必要な修行も積んだ
風を読み天候を知り、月を見て潮の状態を知り、昼は太陽を夜は星を読み、方角を知る
そして、シャーマン最大の超能力、天耳通・・・ネ申の声を聞く力・・・
何も目印の無い海の上で、現代の最新のGPSにも匹敵する精度の航海術を体得するのだ
やがて少女は成長し、船団を率いて航海へ出発する
少女は名前を与えられた・・・「オオテクナナシノウズメヒメ」
名前が長いのは、遠く異国の地で同胞に会った場合、何処其処の島の誰々の子供という
のが分かるようになっているからだそうだ
「あたいが按針になれば、みんな安心(あんじん)だなや~」
最終更新:2005年11月25日 16:43