「真魔大戦」




太陽は東から、もう昇り切っていた。
明るくなってき、二日目の昼が迫ろうとしている。

エリアのある森の中で枝の折れる音がした。
一人目が枝を踏んだ。
その音は軽くて、小さい音だった。
二人目が枝を踏んだ。
その音は普通で、中ぐらいの音だった。
三人目が枝を踏んだ。
その音は重く、少し大きかい音だった。

五更瑠璃と巴マミトゥーサン・ネシンバラは森をかき分け歩いていた。
目的は展望台。一度エリア全体の様子を確認すべきだったからだ。

少女は口を開いた。
「ねぇ、少し疲れちゃったよ。休もうよ」
その言葉に対し女の子の口が開いた。
「もうちょっと頑張って。地図によればもう少しだから」
枝の折れる音、葉の揺れる音、土の軋む音は止まらなかった。
しかしその音もしばらくすると止まったのだ。

「待て、誰かいるぞ!」
沈黙の後、男は口を開いた。


◆◆


「なんなん、女の子をこんなとこに待たしちょって…」
オッドアイの修道服を着た少女は森に佇んでいた。
「おっちゃん、トイレやからって女の子をこんなとこに待たせんじゃないばい…」
少女は二つの鞄を持ち、その辺の太くて大きい根っこに腰をかけた。
羽瀬川小鳩は、ため息をついた。

その少女背後から見ていた三人。
「おっちゃんって言ったことを鑑みるにあの子ともう一人いるということだね!」
男は名簿を見ながら何故かメガネをくいっと上げながら言った。
「“おっちゃん”な年齢の参加者はどんな人がいたかしら?」
「ふっ、知りたいかい? 知りたいよね! いいさ、教えてあげよう!
 “おっちゃん”なのはミスターブシドー、シックスバーン、イエスキリストといったところだよ!
特にイエス・キリストは興味深いね。僕の世界でのキリストの襲名者はというとなんと!」
「じっくりと聞かせてもらいたいとろだけど、今は目の前の少女をどうするかが先よ、ネシンバラくん。
この様子だとどの“おっちゃん”でも強敵よ」
ミスターブシドーも、シックスも、バーンも、イエスキリストも名簿には異常な程の設定が書かれていた。
マミとネシンバラの話しに黒い少女が口を割った。
「あの少女は誰?」
「あれは、羽瀬川小鳩ね」
ネシンバラは名簿を捲った。
「彼女は『レイシス・ヴィ・フェリシティ・煌』という一万年の時を生きている夜の血族の信組だそうだよ。
といっても本物の食人鬼やサキュバスではなくて彼女は種族的には人間みたいだけれどね。
つまりは設定ということさ!」
「『レイシス・ヴィ・フェリシティ・煌』!?」

活き活きと説明しだしたネシンバラの声もなんのその。
その名称を聞いた時点で黒衣の少女――黒猫は目を輝かせた。
そのまま白い少女、羽瀬川小鳩の方へ歩み寄る。
怪訝に思った後ろの二人は止めようとしたが間に合わなかった。
黒猫は、叫んだ。

「真魔大戦よっ!!」


白い少女羽瀬川小鳩は、反応した。


◆◆


「風雷直豪!!」
右手が轟いた。その右手は黒い少女の頬に直撃した。
黒い少女は口を切ったようで、少し血がにじみ出ていた。
白い少女も脛をぶつけたようで、脛には傷があった。
「神速蹴散!!」
黒い少女はそう言いただのキックを繰り出した。
「空浮終焉城!!」
白い少女はそう言いながらジャンプをして避けた。
二人の力はほぼ互角であった。
傷も、体力も、技のセンスも均等であった。
「狼奔!」「虎跳!」
二人は複雑な言葉とシンプルな技を交互に繰り出していった。
無意味な、戦いだった。
二人の怪我は軽いものの、怪我の数が多かった。
これ以上怪我をするとすこし以後に支障をきたすかもしれなかった
巴マミとトゥーサン・ネシンバラはただ、見ているしかできなかった。

森には二人の戦いの音が響いていた。

否や。
枝を折る音がした。その音は大きい音だった。
足に体重をかけ、勢いよく走り踏み折る音であった。

「向こうから…誰か来るわっ!?」
マミはその音に気が付いた。
黒猫と小鳩を挟んだ奥の方から足音が聞こえてきたのだった。
頭をみせ、姿を遮っていた葉を退け、姿を露わにした。
そこには少女がいた。
左手にはカバンを、右手には鉄パイプを。
二人の前に着くと、彼女はポーズを決めて叫んだ。

「魔法少女、ワンダーツギハ参上!!」


「な、何者よ、あれは!?」
マミは言った。
「あれはワンダーツギハ…および与次郎次葉!!」
ネシンバラは語った。
「誰よ、あんた!?」
黒猫は吠えた。
「邪魔しないでくれる?」
小鳩は説いた。


「悪はこのツギハが許さない! いざ成敗しまーすっ!!」
彼女次葉は右手を握り、振りあげ、言った。
「ミラクル・ファイナル・パンチング!!」
黒猫と小鳩は同時に叫んだ。
「絶対城壁!!」「ファイナルウォール!!」
そう言われた、次葉は二、三歩退いた。


それを見ていたマミは言った。
「こ、この戦いは破界事変…!」
「どういうことだい、マミさん!?」
「私が今思いついたのよっ!!」
マミはぶっちゃけた。対し、ネシンバラは言った。
「破界事変…そういえば、以前こんな言葉を聞いたことがある!」
「それは、どういう言葉なの!?」
マミに訊かれた、ネシンバラは叫ぶ。


「 争 い は 同 じ レ ベ ル で し か 発 生 し な い !! 」


黒猫と小鳩と次葉は聞いておらず、依然戦闘を続けていた。
「もう、こんな無益な争いは止めなさい!」
次葉は二人に言う。しかし二人は聞く耳を持たず、殴り合っていた。
「こうなったら、最終手段よ!」
次葉は右手に握りしめた魔法のステッキという名の鉄パイプを振り回した。
「ツギハ☆ツギハ☆マジカルワンダーツギハ!黒き、濁りゆく悪よ、清やかに!」
鉄パイプは二人の頭に直撃した。

二人は、仲良く倒れた。


◆◆


「漫画で見たことがあるわ。友情というのは拳で通わせるものと。」
マミは黒猫と小鳩の治療をしながら言った。
「ごめんな、いきなりおそってくるから…」
「ううん、こちらこそどうかしていたわ。ごめんなさい。」
黒猫と小鳩は互いに謝っていた。
「悪は滅びた!」
「全く、誤解と言うのは恐ろしいものだ」
ネシンバラと次葉は語っていた。

「そういえば、小鳩ちゃん、次葉ちゃん。」
マミは治療をしながら話し始めた。
「私達はあの黒のカリスマという人物を倒そうと思っているの。そのためには人数が必要だから一緒に来てくれないかしら?」
マミの頼みの言葉に対して小鳩と次葉は言う。
「べつに、私達もそのつもりだったきに…」
「主催者は悪!貴方達に加わってあげるわ!」
「ありがとう」

すると、ネシンバラは小鳩に言った。
「ところで、さっきの独り言の“おっちゃん”ってのは、誰の事だい?
 ミスターブシドー、シックス、バーン、それとももしかしてもしかするとということもありえのかな!?」
「おっちゃんか?おっちゃんはな…」
小鳩がおっちゃんの名前を言おうとすると、森に異変が起きる。

「えっ!?」
「なっ!?」

皆は口をそろえて驚く。

「わっ!?」
「見えない!?」
「暗い…!?」

それもその通り、森が闇に包まれたのだ。

向こうから、枝の折れる音がせず、声が聞こえてきた。


「らららららららららら…」



「 み ぃ つ け た ♪ 」



闇の中、向こう側から女の声が聞こえた。
五人は誰なのか、どんな人なのか分からなかった。


刹那


枝の折れる音と、

なにかが、ちぎれる音がした。





195:猫の音 黒猫 200:破界事変
195:猫の音 巴マミ 200:破界事変
195:猫の音 トゥーサン・ネシンバラ 200:破界事変
188:Who are you? 与次郎次葉 200:破界事変
187:ただのおっちゃんですか?いえ、神の子です 羽瀬川小鳩 200:破界事変
187:ただのおっちゃんですか?いえ、神の子です イエス・キリスト 200:破界事変
190:飢餓 ルーミア 200:破界事変

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最終更新:2012年12月16日 10:05