『ある風邪をひいた日の事』
「大丈夫?」
「うぅ……」
心配そうに、双子の姉の顔を覗き込む蒼星石。翠星石からは、苦しそうなうめき声が漏れていた。
いつも元気な翠星石が、珍しく風邪をひいてしまった。幸い休日の為、学校を休む事は無かったが。密かに舌打ちしていた翠星石だが、見なかった事にしておこう。
「とりあえず、食欲ある?」
「…分からんですぅ…」
「…一応作ってくるね」
そう言うと立ち上がり、部屋を出ていった。
暫く経ち、湯気が上る皿を持った蒼星石が部屋に戻ってきた。
「はい。…食べられる?」
「…ん~…」
蒼星石に助けられながら、ゆっくり上半身を起こす。その表情は、とても一人で食べられる状態には見えなった。
「うーん……あ、」
悩んだそぶりをした後、スプーンでお粥を掬い、少し冷ますと翠星石の口元へ運んだ。
「はい、」
「……………」
差し出されたスプーンを暫し見つめた後、口を開けてそれを食べた。先程より顔が赤いのは気のせいだろうか。
「…んまいです」
「良かった…。残り食べられそう?」
「んー…食えるだけ食うです」
先程のやりとりを何回か繰り返し、半分のお粥は翠星石の胃に消えた。
「ご馳走さまでした、です」
「お粗末さまでした。はい、薬」
「うっ……」
薬を差し出された瞬間、翠星石の顔が青くなった。
「い…嫌ですぅ…」
「またそんな事言って……飲まなきゃ治らないよ?」
「お、美味しいごはん食べたし、後は寝て治すです!」
「駄目!」
この様な言い合いが暫く続いた後、翠星石は布団の中に引き込もってしまった。
「寝てれば治るです!治るっていったら治るんです!」
「翠星石!」
力はこちらの方があるので、無理矢理引き剥がす事も出来るが、そんな事をしたら翠星石の機嫌は斜めどころか逆さまになってしまう。
「……強攻手段に出るか……」
そう呟くと、何故か風邪薬を自分の口に含み、引き込もる翠星石の上に馬乗りになった。
「なっ…何す…!?」
驚いて布団から顔を出した翠星石の顔に近付き、唇を重ねた。暫く小さな格闘した後、翠星石の喉がコクリと鳴った。
「は…!……に、苦っ…」
「こうでもしないと飲まないでしょ?」
「こ…このばかぁぁぁ!!」
数日後。
風邪が移ってしまった蒼星石が、同じ目にあったのは別のお話である。
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