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ローゼンメイデン百合スレまとめ@ウィキ
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ローゼンメイデン百合スレまとめ@ウィキ

夢のように幸せな世界

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 草木も眠る丑三つ時、そんな時間に蒼星石は目を覚ました。
 とは言え、現実の蒼星石の体はまだ眠りに付いている。
 ここは蒼星石と翠星石しか知らない夢の世界だ。
 日中は真紅や雛苺達の目があって十分にイチャつくことも出来ない為、夜はこうして二人の時間を過ごす事になっていた。

 目が覚めた場所は洋風の広い庭園で、現実世界は寒い夜だというのに温かい陽光が心地良い。
 しかし、翠星石が来る気配はまだ無い。
「…今何時だろう…」
 懐中時計を取り出して見ると、いつも翠星石が来る時間まで余裕がある。
 少し早く来すぎてしまったようだ。
 懐に懐中時計を仕舞い、少し失敗したなと思いつつ頭をかいた。
 まだ時間が余っているし、ジッとこの場で待つのもなんだから散歩でもして時間を潰そうと歩き始めた。
 もしかしたら意外なデートスポットが見つかるかも知れないと思いつつ。

 それから十数分、当ても無く庭園をブラついていると何か声が聞こえて来た。
 声がした方を見ると、そこには小さいながらも立派な洋館が建っていた。
 声はその中から聞こえてくるようだ。
「…この声…翠星石?」
 聞こえて来たのは聞き間違えるはずも無い翠星石の声。
 それ以外にももう一人、女性の声も混じっている。この声の主もすぐ分かった。
「…レンピカもいるのか…?」
 その声はレンピカの声だ。
 現実世界では人工精霊として発光体の姿をしているが、夢の世界では蒼星石達と同じドールの姿で会うことも出来る。
 今までもスィドリームも交えて翠星石と遊んだりすることだって何回もあった。
 すでに翠星石も夢の世界に来ていたのかと、その開いている洋館の窓を覗き込む。

「なっ…!?」
 中の光景を見た瞬間、蒼星石は愕然として言葉を失ってしまった。
 窓の向こうに居たのは、茶色いショートカットで蒼い目をした女の子のドール…間違いなく人間型のレンピカだ。
 そのレンピカがソファに座って、あの翠星石を抱きしめ髪を愛しそうに撫でているではないか。
 撫でられている翠星石も幸せそうな笑顔で、ピンク色のオーラがソファの周りを包んでいるように見える。
 受け入れ難い光景に目を疑い、蒼星石は冷や水を浴びせられた気分だ。
 そんな蒼星石に気付く由も無く、中に居るレンピカは尚も髪を撫で続けている。
「翠星石様、あなたの髪を撫でていると本当に落ち着きますよ…」
 レンピカは翠星石の髪を手にとって鼻に近付けて、うっとりした笑みを浮かべる。
 手馴れた動作といつも自分が翠星石に言っているような甘ったるい台詞が蒼星石の神経を逆撫でし、握り拳に力が篭る。
(どういうことだレンピカ…! それに翠星石も…!)
 何で自分の僕であるレンピカがあんな事をしているのか。
 怒りと憎悪が蒼星石の中で渦巻いていく。
「ありがとうですぅ。私も、レンピカに撫でられるのは大好きですよ」
(翠星石、君まで…!?)
 次に聞こえて来たのは、同じく幸せそうな翠星石の声。
 自分といる時にしか出さないと思われていた声色がレンピカに掛けられている…信じられないし信じたくも無い。
 裏切られたような気がして、酷い眩暈と吐き気が蒼星石を襲う。
 それでもなお二人は甘ったるい空気を拡大させていき、蒼星石を精神的に追い詰めていく。

「あなたの全てが愛しいです。私がドールだったら誰にも触らせなかったでしょう」
(止めろ…!)
「私も時々思うですよ。レンピカがドールだったらどんなに楽しい生活だっただろうって」
(止めてくれ…!)
「ふふ…さぞかし幸せな毎日だと思いますよ」
(止めないか…! 翠星石は僕の…僕の…!!)
 気が狂いそうになりながらも、目の前で行われている悪夢のラブロマンスが早く終わる事を必死に願う。
 それが通じたのか、部屋の中の扉が開かれて茶色いツインテールのドール…スィドリームが現れた。
 二人はそれに気付き、その方を向いて少し体を離した。
「翠星石様、そろそろ蒼星石様と…」
「…もうそんな時間ですか」
 少し名残惜しそうな表情をして翠星石は立ち上がり、レンピカも同じような表情で翠星石を見上げる。
「…今日はもうこれでお別れ…寂しいですね」
「そんな表情するなですぅ。明日になったらまた来るつもりですから」
 翠星石はシュンとしたレンピカの髪を撫で、軽く髪を整える。
 レンピカも立ち上がり、寂しい笑みを浮かべて翠星石の頬に手を添えた。
 その仕草に、蒼星石は激しく嫌な予感がして全身から嫌な汗が噴出す。
(嘘だろ…!? 止めろ、止めてくれレンピカ…!!)
 このまま乗り込んでいってやって全てをぶち壊しにする事だって出来るはず。
 だが足が言う事をちっとも聞いてくれず、全身の震えが収まらない。
 そのまま何も出来ず、二人の顔が近付いて行く。

(っ…!!)
 固まっている蒼星石の目の前で二人がキスを交わし、頭に鈍くて重い衝撃が走った。
 二人はたっぷり十秒近く経ってから口を離し、はにかんだ笑みを浮かべる。
「マスターに負けないくらい、あなたを愛してます」
「…ありがとう、レンピカ」
 もう限界だった。その場に居ることが耐え切れなくなり、蒼星石はその場から駆け出した。
 なぜこんな事になっているのか。なぜ自分が裏切られたのか。なぜ翠星石はレンピカと…。
 幾多もの疑問や怒り、憎しみなど負の感情が蒼星石の中に渦巻いていく。
 あんなのを見せ付けられた後ではとてもデートなんて出来ない。
 感情に任せて何をするか分からず、残った理性で書置きを残して夢の世界から一人出て行った。

―※―※―※―※―

 あの日から数日間、蒼星石は鞄の中に篭りっきりだった。
 何度も翠星石や真紅達が起こしに来たがそれも全て無視。
 起きれば翠星石と必然的に会うことになるし、何より今は誰も信用出来ない。
 あの件で人間不信になってしまったようだ。
(…翠星石…翠星石は僕の姉で…恋人のはずなのに…)
 普通なら憎んでも憎み足りなくてもおかしくないのに、それでもまだどこか愛していると言う気持ちが残っている。
(翠星石は僕の恋人…恋人なんだ…僕の物なんだ…!)
 一人考えていると危険な方向に思考が向かって行き、理性がそれにストップを掛けようとする。
 しかし深く傷つけられた事と数日間引き篭もっていた事で性格が歪んでしまったのか、その理性さえも弾き飛ばしてしまった。
(そうだ…翠星石は僕の物…誰にも渡さない…渡すものか…!!)

―※―※―※―※―

 その夜、夢の世界の庭園。久々に蒼星石はそこへ来ていた。
 そこでしばらく待っていると、後から翠星石の声が聞こえて来た。
「蒼星石、もう大丈夫なんですか? ずっと出てこないから心配で…!」
「…ああ。少し考え事してたけど、もう解決出来そうだよ」
 翠星石に背を向けたまま答え、そのままさらに続ける。
「質問して良い? 君は僕の事を愛してる?」
「へっ? あったりまえですぅ。だって蒼星石は大切な妹で恋人なんですから」
「恋人…か。じゃあ、レンピカとはどういう関係?」
 振り向き様にそう尋ねると、翠星石の顔は一瞬にして青くなり、目が大きく見開かれた。
 その様子にフッと笑い、蒼星石は軽く手を振る。
「…いや、この質問はどうでも良いや。君が僕の事を愛している、それが分かっただけで十分だった」
「そ、蒼星石…?」
「僕も君の事を愛しているよ。だから…今こそ一つになろう」
 どこか壊れた笑みを浮かべて背中から庭師の鋏を抜き、翠星石に構える。
 それを見て翠星石は体中が震えだし、嫌な汗がドッと噴出していった。
「な、何をするつもりですか…!」
「…君のローザミスティカを手に入れれば、まさしく君は僕のものとなる。僕と一つになることで、永遠の愛を証明しよう!!」
 壊れた高笑いを浮かべて鋏を振り上げ、翠星石は完全に腰が抜けてその場から動けなくなってしまった。
 涙を流し、恐怖に顔を歪めるが蒼星石には全く効果が無い。
「れ、レンピカの事は謝るですぅ!! だから、だから止めてくれですぅ!!」
「レンピカの事はどうでもいいって言っただろう? さあ、君のローザミスティカを僕におくれ…」
 歪んだ笑みを浮かべていざ鋏を振り下ろさんと、蒼星石の手に力が篭っていく。

「やれるものなら…!」
 だがそれは第三者の声で邪魔され、その方を見た。その瞬間。
「やってみなさい!!」
「がっ…!」 
 駆けつけて来たレンピカの飛び蹴りが顔面に直撃し、蒼星石はそのまま後へと吹き飛ばされてしまった。
 レンピカはすぐさま翠星石へと駆け寄り、抱き上げて顔を覗きこむ。
「翠星石様、大丈夫ですか!?」
「レンピカ…レンピカぁ!!」
 堪えていた物が一気に溢れ出し、翠星石はレンピカの胸で泣きじゃくりだした。
 その翠星石を安心させようと、レンピカはギュッと抱きしめる。
「私が来たからにはもう大丈夫です。怖かったですね…」
 二人が抱き合っている間に蒼星石は立ち上がり、顔の泥を拭いながら憎々しげにレンピカを睨みつける。
 その視線に気付き、レンピカも険しい目で睨み返して来た。
「主の顔を蹴り飛ばすなんてね…さすがだよ」
「見損ないましたよ、マスター。スィドリームが慌てて呼びに来たから来てみれば、こんな真似を…」
「それはこっちの台詞さ。僕の物である翠星石をたぶらかして…飼い犬に手を噛まれるとはこの事か」
「物? 翠星石様は翠星石様です。誰の物でもありません!」
「チッ…とことん反抗的な僕だね。躾の仕方を間違ったかな…」
「ともかくあんな真似した以上、マスターとは言え許せそうにありませんから」
 主を見る目ではない、敵意の満ちた視線を投げかけるレンピカを睨みつける。
 しばらくすると蒼星石はフッと不敵な笑みを浮かべて、庭師の鋏を再び手に取った。
「そっか…別に翠星石のローザミスティカを奪わなくたって、君を消せばよかったんだ」

 キン、と軽い金属音を響かせて庭師の鋏を二つに分離させると、一本の刀と化した片方のパーツをレンピカに投げ付けた。
 それは放物線を描いてレンピカの足元に突き刺さり、レンピカは蒼星石の言わんとしている事を理解しその刀を手に取った。
「本来なら一方的に切り刻んでやりたいところだけど、仮にも僕の人工精霊…最期の情けさ」
「いいでしょう。翠星石様、下がってください。必ずあなたを助け出してみせますから」
「え、た、助け出すって…」
「待ってて翠星石。君をたぶらかした不躾な僕に鉄槌を食らわすから」
「そ、蒼星石まで…そんな…」
 突然の展開に翠星石はどうする事も出来ず、二人が刀を構えるのをただただ見るしか出来なかった。
 そうしている間にも二人の殺気は高まっていき、もはや誰にも止める事は不可能だ。
「言っておくけど、アリスゲームも停戦して随分経ってるからね…手加減の仕方なんて忘れちゃったよ」
「それは好都合ですね。手を抜いたあなたに勝っても、意味がありませんから」
「減らず口を…じゃあ思う存分暴れさせてもらうよ!」
「こちらこそ!」
 二人同時に刀を振るい光の刃を飛ばすと、それがぶつかり合って激しい衝撃波が起こり土埃が舞う。
 それを合図に二人とも駆け出し、翠星石を掛けた戦いが幕を開けた。

―※―※―※―※―

「あ、ああ…何で、何で二人がこんな事になるんですか…」
 そんな事は自分がよく分かっている。二股を掛けたからこんな事になってしまったのだ。
 全ての責任は自分にある。それなのに自分を責めずに戦い続ける二人が見ていて辛い。
 目の前で行われている激しい戦闘に、翠星石は何も出来ずオドオドと眺めるしか出来なかった。
 蒼星石の強さは言わずもがな、レンピカの腕も負けてはいない。完全な互角だ。
 主とか僕とかそう言った物は関係無い、一切手加減の無い本気と本気のぶつかり合い。
 二人が刀を振るう度に激しい火花が散り、刀傷が出来ていく。
 二人が傷付いていくのを黙って見ているしかない、そんな自分が歯がゆくてしょうがない。

「はぁっ!」
 レンピカの大降りな一撃が蒼星石に振り下ろされる。
 だがそれを見切ってかわすと刀は地面へとめり込み、蒼星石はそれを踏みつけ刀の自由を奪った。
「しまった…!」
「吹き飛べっ!」
 その瞬間に蒼星石のストレートがみぞおちに炸裂し、さらに追撃の回し蹴りが顔面に決まりレンピカを吹き飛ばした。
 レンピカはそのまま木の幹に体を打ち付けられて、激痛で視界が一瞬霞む。
「ぐはっ…!」
「これで終わりだ!!」
 刀も離し完全に無手になったレンピカへトドメを刺さんと、刀を振り被って飛び掛った。
 レンピカはもはや逃げることも出来ず、目の前に迫り来る刀の切っ先を睨むしか出来ない。
「もう、もう止めるですぅーー!!」
 だがあと数センチで刀がレンピカに直撃する所で翠星石の悲痛な叫びが聞こえ、そこで手が止まってしまった。
 その体勢のまま二人とも翠星石の方を向くと、大粒の涙をいくつも流している翠星石が目に入った。
「…嫌です…二人がこれ以上傷付くのも、どっちかがジャンクになるのも絶対に嫌ですぅ!!」
「翠星石…」
「悪いのは私ですぅ…私は蒼星石もレンピカも、同じくらい愛してるんですぅ!」
 目を抑え、嗚咽を漏らしながらも翠星石は続けていく。
「こんな勝手が許されるはずが無いのは分かってるけど…どっちかが消えたら、私は…! …全部…優柔不断な私が悪いんですぅ!!」
「翠星石様…」
「お願いだから、もうこれ以上傷付け合わないで…! レンピカも、蒼星石も…大切なんですぅ…!」
 翠星石のその姿に二人とも既に戦意喪失し、蒼星石は二つに分かれていた鋏を元に戻すと仕舞いこんだ。
 二人は翠星石に近づいていくとその肩を抱き、優しく諭すように声を掛ける。

「…ごめん、翠星石の気持ちも知らないで…」
「申し訳ありません、翠星石様。一人で熱くなってしまって…」
「…もう、もう傷付け合わないで欲しいですぅ…」
「翠星石がそう望むなら、あんな真似はしないよ」
「本当ですか…?」
「はい。もうあんな真似はしません。約束します」
 さっきまでとは違う穏やかな表情の二人に、翠星石もやっと泣き止んだ。
「…二人は私の事を責めないんですか…? 私は二股を…」
「いいさ。その事は」
「ええ。良い案が浮かびましたから」
「案?」
「ああ。僕もきっとレンピカと同じ事を考えてる。ね、レンピカ?」
 レンピカの方を向いて少し微笑んでみると、考えが伝わったのか同じように笑って微笑んだ。
 翠星石はそれに首を傾げ、レンピカはその案を口にした。

―※―※―※―※―

 激戦から一週間後の、夢の世界の庭園…。
「ほら、翠星石。あーん」
「あーん」
 蒼星石が翠星石の口元にお菓子を持っていくと、翠星石は恥ずかしそうにしながらもそれを頬張った。
「美味しい?」
「うん、甘くて美味しいですぅ」
「翠星石様、こちらも…」
 今度はレンピカがお菓子を差し出し、同じように翠星石はそれを食べる。
 その様子をレンピカと蒼星石は、愛しそうに眺めていた。

 二人が提案したのは“蒼星石とレンピカの二人と付き合う”と言う事だった。
 激戦を経て二人の間に主と僕を越えた、一種の友情みたいな物が生まれたようだ。
 翠星石も最初は戸惑ったものの、幸せそうな二人を見てすぐに受け入れた。
 そして今では夢の世界で、二人とデートするのが夜の定番になっていた。
 傍から見れば普通じゃない恋愛かも知れない。でも、これで三人とも十分に幸せだった。
「翠星石、愛してるよ…」
「私だって負けないくらい翠星石様を愛してますから…」
「私も、二人の事が大好きですぅ!」
 平和で幸せな、まさしく夢のような世界がそこにあった。

終わり

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