目の前でストローを咥えている姿が可愛くて、何となく口から溢れてしまったのだ。
私、あなたのことが好きなのよねぇ、って。
私、あなたのことが好きなのよねぇ、って。
人から見たらそれは失言で、私は慌てて取り消すべきなのだろうけど、
現状維持に飽きていた私はまあ良いか、と再び繰り返してみた。
現状維持に飽きていた私はまあ良いか、と再び繰り返してみた。
「あなたのことが好きなのよ、翠星石」
カフェテーブルの対面に座る彼女の唇からストローがポロリと落ちた。
窓から入る陽光が暖かく、時間のゆっくり流れる長閑かな午後のことだった。
窓から入る陽光が暖かく、時間のゆっくり流れる長閑かな午後のことだった。
ちょっと付き合ってくれないかな、と連れて来られたのは校舎の屋上。
昨日一緒に寄り道した少女と殆んど顔の作りの同じ彼女が
ショートカットに切り揃えた髪を揺らす。
やだあ、こんな所に連れてきてまさか告白ぅ?なんてお茶目を言ってみたら、
案の定、無視された。
昨日一緒に寄り道した少女と殆んど顔の作りの同じ彼女が
ショートカットに切り揃えた髪を揺らす。
やだあ、こんな所に連れてきてまさか告白ぅ?なんてお茶目を言ってみたら、
案の定、無視された。
「姉をからかわないでくれないかな、水銀燈」
人の良い笑みを浮かべて彼女は言った。
あら、情報の伝わるのが早いこと。
翠星石ったら帰ってすぐに妹に相談したのねぇなんて考えたら、
家に帰りつく間ひとり悶々と悩む彼女の様子が目に受かぶようで、
無意識に口許が綻んでしまった。
目の前の少女が怪訝そうに眉を顰める。
翠星石ったら帰ってすぐに妹に相談したのねぇなんて考えたら、
家に帰りつく間ひとり悶々と悩む彼女の様子が目に受かぶようで、
無意識に口許が綻んでしまった。
目の前の少女が怪訝そうに眉を顰める。
「からかったつもりはないわよ。
それとも、あなたには単なる友人間の冗談である必要があるのかしら、蒼星石」
それとも、あなたには単なる友人間の冗談である必要があるのかしら、蒼星石」
笑顔崩壊。
幾分鋭くなった視線が分かっているくせに、と語っている。
幾分鋭くなった視線が分かっているくせに、と語っている。
そう、私は分かっている。
蒼星石が幼い時分から姉に恋心を抱いていたことも、
その妹を姉が単なる姉妹以上に慕っていることも。
・・・付かず離れずを維持してきた二人が、
漸くくっつきそうな段階だということも。
その妹を姉が単なる姉妹以上に慕っていることも。
・・・付かず離れずを維持してきた二人が、
漸くくっつきそうな段階だということも。
笑顔を引っ込めた蒼星石が不機嫌さを隠そうともしない様子で口を開く。
「水銀燈に好きだって言われたんです。あれは冗談だったんですかね、
それとも友達としてって意味でしょうか・・・って、本人が」
それとも友達としてって意味でしょうか・・・って、本人が」
「あらぁ・・・それならもう一度ちゃんと言ってあげないといけないわねぇ。
あの子そういうところ鈍いんだもの、苦労するわ」
あの子そういうところ鈍いんだもの、苦労するわ」
翠星石のことなら何でも知ってます、って言い方が癪に障ったようで、
蒼星石の不機嫌度が増すのが目に見えて分かった。
・・・まあ、故意にそうしたのだから当たり前だけれど。
蒼星石の不機嫌度が増すのが目に見えて分かった。
・・・まあ、故意にそうしたのだから当たり前だけれど。
「君に渡すつもりはないから」
私の言葉が本気かどうか確かめに来たのだろう、
答えを知った彼女はこれ以上用はないとばかりに素早く踵を反して歩み去っていく。
答えを知った彼女はこれ以上用はないとばかりに素早く踵を反して歩み去っていく。
その堂々とした背中を私は羨ましく思った。
彼女は気付いていないかもしれないが、あれは彼女の自信からくる堂々さだ。
翠星石は自分を選ぶだろうという、
本人さえ自覚していない自信が彼女を強気にさせている。
それは私にとって本心から羨ましいことだ。
彼女は気付いていないかもしれないが、あれは彼女の自信からくる堂々さだ。
翠星石は自分を選ぶだろうという、
本人さえ自覚していない自信が彼女を強気にさせている。
それは私にとって本心から羨ましいことだ。
私は既に引き金を引いてしまった。
正直、後はどうにでもなれという心境だ。
私に触発された蒼星石が想いを告げれば翠星石は迷わず受け入れるだろう。
そして私は言うのだ、「嫌だ、翠星石あなたこの間のこと本気にしていたの?」
すると私の気持ちなど最初から無かったことになって、
二人は幸せに暮らしましたとさ、とめでたく物語は幕切れ。
ハッピーエンドなど所詮主人公達の目線で見た結果なのだ。
私に触発された蒼星石が想いを告げれば翠星石は迷わず受け入れるだろう。
そして私は言うのだ、「嫌だ、翠星石あなたこの間のこと本気にしていたの?」
すると私の気持ちなど最初から無かったことになって、
二人は幸せに暮らしましたとさ、とめでたく物語は幕切れ。
ハッピーエンドなど所詮主人公達の目線で見た結果なのだ。
それでも、
「翠星石、ちゃんと素直に返事が出来るかしらねぇ」
そんな風にヒロインの幸せを願ってしまうのが脇役の悲しい性と言うか、なんと言うか。
万が一―――億が一にでも彼女が私を選んでくれたときのために
彼女を包む為の翼だけは用意しておいて、私はただただ願うのだ。
彼女を包む為の翼だけは用意しておいて、私はただただ願うのだ。
どうか、どうか彼女に幸せな結末を。
そして出来ることなら、私にこの恋を忘れるだけの勇気を。
そして出来ることなら、私にこの恋を忘れるだけの勇気を。
私の願いを受けとるように、屋上を柔らかい風が吹き抜けていった。
(vsize=5,nsize=15,size=50)