第一回定時放送 ◆xFiaj.i0ME
閉ざされた世界に声が降り注ぐ。
山に、森に、砂漠に、町に、城に、洞に、
重く、暗く、厳かな、不安を掻き立てる声が。
何処からともなく、それこそ太陽や雨が空から降り注ぐかのごとく、
刻まれた時を告げる声が、島に閉じ込められた者達に、等しく降り注ぐ。
「さて、時間だ……始めよう。
まず禁止エリアを告げる。
死者の名に気をとられて、気付かずに死なれては興ざめだからな。
7時からD-8とB-5
9時からF-4とH-5
11時からC-2とG-9
そして、死者の名だが……
以上11名がその命を落としている。
少し多いが、死者が出た事で私の声を聞いている者の命は、今日一日は保証されたのだ、喜ぶと良い。
ああ、だがそんな言葉を言っても、お前たちは争いを止めはしないだろうな。
親しきものの名を呼ばれたものよ、喜べ、仇は必ずこの島の中に居る。 だが、急がねばその者は他の者に殺されてしまうかもしれないぞ?
己が手を血に染めた者は奮起せよ、最期まで残れなくてはそれも全て無意味だ。 時間が経てば経つほど、お前たちは不利になる。
復讐の為に、己が欲望の為に殺しあうが良い、他者を憎み、生を奪い合うが良い。
そして何より、お前たちをそのような境遇に追いやった、私を憎むがいい。
己が内に存在する憎悪を込めて叫べ、
この『オディオ』の名を!」
◇
ふと、今は無き親友の姿を思い出す。
友の名誉と己の武勇を重んじ、主君への忠義と神の正義に生きる。
彼も、今彼と共に在る者も、こうしてその道に殉じている。
今の彼の姿もまた、彼本来のものに違いは無い。
だが、
“あの世でオレに詫び続けろオルステッドーーーーー!!”
あの時の叫び、あれもまた、彼の本質なのだ。
かつての自分は愚かだったのでは無い。
今の彼らも愚かではない。
ただ、無知なだけなのだ。
名誉とは復讐を導き
武勇とは暴力の別名で
忠義は何時しか重荷となり
正義は憎むべきものに成り果てる
その事実を、知らないだけなのだ。
上辺の美しさのみを求め、その奥に秘められた醜さに気付くことも無い。
いや、見えない、あるいは見ようとしないだけで、その存在を拒絶している。
だが、この殺し合いの中で、いずれ気付くだろう。
己が秘める、消えること無き感情に。
他でも無い、ここにその『実例』があるのだから。
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最終更新:2010年06月29日 21:45