Trust or Distrust ◆6XQgLQ9rNg


「邪魔を、邪魔をするなぁァ――ッ!」
 木々が薙ぎ倒され吹き飛ばされた山裾に、絶叫が迸る。
 たった一人の人間が抱えきるには、余りにも巨大すぎる激情が溢れ出したかのような咆哮だった。
 大気と大地が震えているような感覚を肌で感じ、リンディスは身震いを隠せない。
 それでもリンは、絶叫する伐剣者から目を逸らさず、鞘に納められたマーニ・カティを握り締めている。
 臨戦態勢を取るのは、真っ白な感情を撒き散らす女性――アティを、碧の魔剣から救うためだ。傷つけ命を奪うのは本意ではない。

 だが、しかし。
 手加減できるような相手では、ない。
 破壊の鉄球を片手で軽々と振り回し、アティが突っ込んでくる。
 低い唸り声を上げる鉄球の直撃を受ければ、アーマーナイトやジェネラルでさえ無事では済まないだろう。
 ただし鉄球の一撃は、その絶大な破壊力故に、速度と精度を欠いている。
 中空から振り下ろされ落下軌道に入った鉄球を一瞥すると、リンは、躊躇せずに地を蹴った。
 跳ぶ先は、アティの懐だ。
 鉄球が地面に叩きつけられるよりも早く間合いを詰めると、即座に抜刀する。
 細身の刀身が、陽光の元で閃いた。鉄球とは対照的な速度で空を斬る刃が狙うのは、碧の賢帝。

 アティを救おうと、精霊の加護を受けた剣が魔剣へと飛んだ。
 二振りの剣が音を立てて衝突し、交差する。
 強烈な負荷が刃を駆け抜け、リンの手を痺れさせる。
 大切な剣を離ないよう、碧の魔剣に押されないよう、掌を柄に食い込ませるように握り締めた。
 それでもじりじりと、精霊剣は押し込まれる。
 リンは悔しげに顔を歪め、剣を両手で握り込む。それでようやく拮抗できた。
 相手は片手持ちだというのに、それでやっとだった。
 重なり合う剣の先、碧の瞳が目に入る。明確な殺意が宿った瞳が、リンの眼に映り込む。
 きっとついさっきまで、リンも、そんな目をしていたのだろう。
 だからこそ余計に、救いたいと思った。
 できるならば、斬りたくないと思った。

 ――本当はきっと、彼女自身の意志が、あるはずだから。

 だから。

「返事はしなくていい! ただ私の声を聞いてッ!」
 声を張り上げる。
 彼女の心に届かせるために。呪いに打ち勝つ力を呼び起こすために。
 呼びかけただけで解けるなどと、思ってはいない。
 だとしても、無駄だとは思わない。無意味だとは考えない。
「気をしっかり持って! 強く強く、自分の意志を持つの!」
 声を振り払うように、碧の賢帝が、マーニ・カティを薙ぎ払う。
 その衝撃を受け流しきれず、リンの小柄な体躯が宙に投げ出された。
 器用に空中で身を捻り、慣れた動作で受身を取る。
 膝を曲げて着地したリンの視界が、翳った。
 暴力的な外見をした鉄球が、日差しを遮って、落下してきていた。

 だが、遅い。
 曲げた膝を伸ばし地を蹴って、再疾走を開始する。
 後ろで響く激突音と跳ね上げられた土砂を置き去りにして、リンは再び間合いを詰める。
 風と一体化するような感覚に包まれながら、リンは行く。
「あなた自身の声に、耳を傾けて! あなた自身が望むものを、よく見て!」
 振るわれた魔剣に、もう一度精霊剣を叩き付ける。
 リンは一撃の破壊力よりも、技量と速度に秀でているため、単純な力比べは得意ではない。
 だからつばぜり合いを避け、コンパクトな動作で剣を振るい続ける。
 刀身がぶつかり合う甲高い音が、連続する。
 その音に、リンの声が重なっていく。
「魔剣に惑わされないで! あなた自身を見失わないで!」
 碧の賢帝は折れそうにない。
 されどリンは手を止めない。
 白の殺意は溢れ続けている。
 それでもリンは声を止めない。

 取り返しのつかない事態を、アティが招いてしまわないように。

「――大切なものを、捨ててしまわないでッ!」

 そうやって手を差し伸べるリンの全てを、真っ向から拒絶するように。
 あるいは、苦しみを吐き出そうとするかのように。

「あああああああああああああアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ――ッッ!!」

 伐剣者は絶叫し魔剣を振るう。
 大振りな斬撃をサイドステップで回避しながら、リンは思う。

 ――これは、骨が折れそう。

 だとしても。

 ――諦めてなんて、やるもんか。

 振り抜かれた碧の賢帝に、握り締めたマーニ・カティを、叩き込んだ。

 ◆◆

 緩やかに湾曲した刀が、飛び退ったミネアの眼前を通り過ぎた。
 その一撃を回避したところで、安堵などできるはずもない。
 ミネアは急ぎ、呪文を詠唱する。
 ロザリーが死亡していると思い込んでいるらしいピサロが相手では加減はできない。
 生半可な呪文など容易く突破され、憎しみのままに命を奪いに来るだろう。
 だから、全力だ。
 一言ごとに風が戦慄き大気が震えだす。
 空気が刃となるまで、時間はかからない。
 震える風は笛のような鳴き声を撒き散らし土砂を巻き上げ、旋回を始める。
「バギクロスっ!」
 やり過ぎとは思わない。
 荒っぽい手段だが、戦闘力を奪わない限り、ピサロを止められるとは思えなかった。
 荒れ狂う風が魔界の王を切り刻むため、竜巻を形作る。
 形を得た大気を、ピサロは、回避も防御も取ろうとせず、髪を靡かせていた。
 ミネアが整った眉を顰めてピサロを注意深く観察したとき。
 彼の口が動いていることに、気付く。

「イオナズン」

 次の瞬間、竜巻の中心で、大爆発が生じた。
 炸裂音は竜巻の鳴き声をかき消し、拡散する爆風は竜巻の形を強引に消し飛ばす。
 鼓膜が震え、耳鳴りが響く。
 竜巻の残滓と爆発の余波が、土煙を立ち昇らせる。
 もうもうと舞い上がる土煙の中、一つの影が突っ走ってくる。
 ミネアは大きくバックステップを踏みつつ、手の中にあるデスイリュージョンを三枚、投擲した。
 薄いカードのうち二枚はピサロが握る短剣に叩き落され、一枚は見当違いの方向に飛んでいく。
 一瞬で距離を詰めてきた魔族の王は、鋭い刀を突き出してくる。
 必死で横に跳ぶミネアの左腕を、その刀身が貫いた。
 肉が抉られ鮮血が溢れ出す。鈍い痛みに顔を顰めるが、致命傷ではない。
 ピサロが地を蹴って宙に躍り上がる。
 その見覚えがある動作から、ムーンサルトが来ると判断したミネアは回避に意識を注ぐ。
 髪を翻し繰り出された攻撃は、ミネアの予測と寸分違わない技だった。
 たとえ精密な攻撃でも、その技や使い手の癖を知っていれば、対処は不可能ではない。
 だから回避は、成功する。
 ピサロと共に旅をし戦った経験が、ミネアに最善手を取らせていた。

 だが同時に、ミネアは奇妙な違和感を抱いていた。

 ピサロが刀を、大きく振りかぶる。
 それは、魔人の如く重い一撃を放つための予備動作。
 当たれば大ダメージは免れないが読みやすい太刀筋の一撃――魔人斬りが繰り出された。
 それをミネアは、見切る。
 魔人斬りはその高い攻撃力ゆえに、外した際の隙も大きい。
 その隙を突くように、ミネアは再度デスイリュージョンを投げつけた。
 ピサロは刀を振り切った体勢のまま舌打ちをすると、後ろに跳んだ。
 不自然な体勢からのバックステップでは、距離を稼げない。
 ピサロは、左手を振り翳した。
 すると再び風が鳴き始め、真空の刃が波となる。
 生まれた真空波は、ピサロの眼前でデスイリュージョンを絡め取り斬り刻む。
 その程度で波は収まらず、ミネアへと押し寄せる。
 それすらも、ミネアには、読めている。
「バギマ!」
 ミネアも同様に、風に鋭さと指向性を与える。
 先ほどの逆巻く竜巻に比すれば、小さく弱々しい印象の風は、真空波に向けて飛ぶ。
 ミネアの風はピサロの波に、あっさりと飲み込まれ消えてしまう。
 だが、ミネアは顔色を変えない。
 もとより相殺など考えてはいないのだ。ミネアの狙いは、波の軌道を逸らすことだけ。
 その思惑通り、真空波の軌道は捻じ曲がり、あらぬ方向へと飛び退った。
 リンたちの方へ飛んでいないことに胸を撫で下ろしつつ、距離を置いたピサロの様子を窺う。
 ピサロの顔に浮かんでいたのは、忌々しさと驚愕だった。
 ほぼ確実に攻撃を見切られ、回避され、届いていないことに、驚きを禁じえないようだった。

 ――やっぱり、おかしい。

 ミネアは胸中で独りごちた。
 ここまでピサロの攻撃を見切れるのは、ミネアが全ての攻撃を予知しているからではない。
 仲間として彼と共に戦ってきたからだ。
 ミネアの知るピサロは、常に冷静さを保つ男だった。
 事実、今対峙しているピサロはその通りで、驚愕を抱きながらも、冷静さを失してはいない。
 冷静さを保っているピサロだからこそ、ミネアのよく知るピサロだからこそ、なんとか彼の攻撃に対処できている。

 ――もしも彼自身の言動が事実なら、こんなに落ち着いていられるはずがないのに。

 ミネアは知っている。
 ピサロという男が、一人の女性を誰よりも大切に愛おしく想っていることを。
 ミネアは知っている。
 ピサロという男が、激情に衝き動かされ人間を完全に根絶やしにしようとした原因を。

 仮に、だ。
 リンと剣を交えているあの女性が――あるいは他の誰かが、放送後に、ロザリーを殺害したのなら。
 その死を、ピサロが知ってしまったのなら。
 彼が、ここまで冷静でいられるとはとても思えないのだ。
 かつて。
 かつて、ロザリーの死を知ったピサロは、彼女を殺した人間を皆殺しにしようとした。
 ピサロは愚かな男ではない。
 もしもあのとき、ロザリーの死を、冷静に見つめられていたのなら。
 ロザリー殺害の黒幕がいたと、気付けたに違いない。

 だがピサロは、冷静でなどいられなかった。
 愛しい人が殺された直後に、冷静でいられるはずがなかった。
 結果、彼は、深い憎しみに衝き動かされて、人類滅亡を揺るがぬ決意とした。
 進化の秘法を用い、美しい外見や高潔な自我も大切な想い出さえも捨て去ってでも、だ。

 なのに、今のピサロは。
 人間に対する激しい憎悪はそのままだが、研ぎ澄まされた冷静さは保てている。
 例えるならば、憎しみを凍らせて作り上げた刃のようだ。
 もしも今、ロザリーの二度目の死を、突きつけられていたのなら。
 憎悪を火種とした、あまねく人類を燃やし尽くす火炎のような感情を、爆発させていてもおかしくはないのに。

 まさか、とミネアは思う。
 そんな、とミネアは疑う。
 ピサロは今、放送後に、ロザリーの死を叩きつけられたのではなく。

 ――ロザリーさんが、ロザリーヒルで死んだままだと思い込んでいる……?

 確証はない。あまりにも不確かな推測にすぎない。
 それでも、その疑念を確かめることは、大きな意味があるように思えた。
 もしも、ピサロが思い違いをしているのなら。
 戦わずしても、止められるかもしれないのだ。
 そしてそれは、きっと、ロザリーの願いでもあるだろう。

「ピサロさん、一つ、教えてください――」

 だからミネアは深く息を吸い、真摯な瞳をピサロに向け、尋ねる。

「ロザリーさんは、いつ、亡くなられたのですか?」

 ◆◆

 ミネアの問いに、ピサロは不愉快そうに眉を顰めた。
 それが、腹が立つほどに下らない問いだったからだ。
 答えることに意味など感じられなかった。たとえ意味があったとしても、答えたくなどなかった。
 ロザリーの死を思い出すたび、悲しみに胸が詰まり喪失感に苛まれてしまう。
 それが余りにも辛く苦しく寂しいから、ピサロは、人間に対する憎悪を積み重ねて、悲しみを埋め立てていた。
「汚れた口でロザリーの名を呼ぶな」
 だから問いには答えず、憎しみだけを吐き捨てる。
 それでも、勇者の仲間である占い師は、必死に言葉を紡ぐ。
「大切なことなんです! もしかしたら私たちは今、大きなすれ違いをしているかもしれないんです!」
 そんなミネアを、ピサロは嘲笑する。
 魔族と人間の道が、交差するはずがない。そんなものを、ピサロは望んでなどいない。

「ふん、戯言を」
 話している時間すら惜しかった。 
 ピサロが再度、手を翳す。
 理由は不明だが、あの占い師は的確にこちらの攻撃を見切ってくる。
 ならば、見切られたところで避けきれないほどの広範囲に、攻撃をかけてやればいい。
 ピサロはちらりと、ミネアの向こう側に目を向ける。
 そこでは、白い女と緑の髪の少女が、剣戟を繰り広げていた。
 丁度よかった。
 ピサロにとっては、この場にいる全てが敵なのだ。
 加減してやる理由など、何処にもない。
 晴れた空に暗雲が立ち込める。その雲間から、稲光が垣間見えた。
 だが、まだ弱い。
 連戦による消耗のせいで、魔力の巡りが悪い。
 地獄の雷を呼ぼうとするピサロの耳に、懇願するような声が届いてくる。

「名簿を、思い出してくださいっ!」

 喚く占い師にピサロは耳を貸さず、魔力を練り上げる。
 爆ぜるような雷鳴が、断続的に聞こえてくる。
 その合間を縫うように、声が、飛んでくる。

「ロザリーさんの名前があったでしょう!?
 あなたはこの島で、ロザリーさんの死に直面したんですかっ!?
 もしそうでないなら、ロザリーさんはまだ、生きているんじゃないですか!」

 耳を貸すつもりなど欠片もなかった。
 聞く価値など粒ほどもないはずだった。
 それでも、愛しい人の名は、真っ直ぐにピサロへと飛んでくる。
 たとえそれが、忌まわしい人間の口から放たれたものであったとしても、だ。
 ピサロの両目が、見開かれた。
 この女は、勇者の仲間は、ロザリーがこの島で生きていると言いたいらしい。
 ピサロの胸に、熱く黒い激情が駆け上がる。
 たった一人の人間は、魔族の王であるピサロを、惑わそうとしているとしか思えなかった。
 しかも、よりにもよって。

 ――よりにもよって、ロザリーの名を出そうとは……!

 憎悪をくべられたどす黒い炎が、胸中で燃え上がり理性を焦がしていく。
 ピサロは唾を吐き捨てるように、言い放つ。

「白々しい嘘で私を謀ろうとは、勇者の仲間も愚劣な人間に変わりはないようだなッ!」

 名簿に目を通さず消し飛ばしてしまったピサロに、ミネアの声は聞こえない。
 世界樹の花で甦ったロザリーのことを知らないピサロに、ミネアの言葉は届かない。
 だが、それでも。
 焦土と化した森の中心で、ミネアは真摯にピサロを見つめ、ひたむきに声を投げかけていた。

「嘘なんかじゃありません!
 今でもきっと、ロザリーさんはこの島のどこかで、あなたを待っています!」

 ばちばちと、雷が鳴いている。
 あまねく命を喰らいたいと、その牙を研ぎ澄ませている。
 天空の光を思わせる、勇者の雷とは対極に位置する地獄の雷は、獲物を求めていた。
 それでも。
 ミネアは、武器も構えず呪文も唱えず逃げようともせずに。
 口を、開く。

「あなたの顔を見たいと、声を聴きたいと、肌に触れたいと、そう望んでいるに違いありませんっ!
 ですから、一緒に、捜しましょうッ!」

 ピサロの胸で、黒い感情がざわめいた。
 奥歯を食い縛りミネアを睨みつける彼に、苛立ちが広がっていく。
 許せなかった。
 愚かしく矮小なくせに、知ったような口を叩く、目の前の人間に怒りを覚えた。
 騙そうとしているくせに、何処までも真っ直ぐで一片の曇りすら見られないその態度が、腹立たしかった。

 ピサロの奥歯が、ぎりっと音を立てた。
 雷は、爆ぜ続けている。
 だがまだ、この場にいる三人を皆殺しにするには、足りない。

「……言ったはずだぞ」

 足りないと、分かっていた。
 それでも強くなる苛立ちは、ピサロから集中力を奪い、判断力を焼き、冷静さを呑み込んでいく。
 もう、我慢がならなかった。

「汚い口で、ロザリーの名を、呼ぶなと……!
 そして、貴様如きが――」

 ピサロは、翳した手を、振り下ろす。
 猛獣使いが、獣に指示を与えるように。
 その、直後。

「ロザリーを、語るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――ッ!」

 絶叫と共に、轟音が大気を震わせた。
 予定よりも弱々しいが、それでも、黒い雷光は地獄の使者を連想させる。
 雷が迸る先で、ミネアが遂にピサロから目を離し、無念そうな表情をして、緑の少女に向けて何かを叫んでいた。

 そんな様子を見ても、ピサロの苛立ちは、消えなかった。

 ◆◆

 何度剣を打ち交わしたか分からない。
 どれだけの声を投げかけたか分からない。
 少なくとも、息が荒くなり喉に不愉快さを覚えるくらい、リンは碧の賢帝と切り結び、アティに説得の言葉を投げかけていた。
 対し、アティは息切れ一つしていない。
 異常な重量を誇る鉄球を片手で振り回し、リンの速度に追随する程度の動きをしているのに、だ。
 そんな両者の間には、ダメージは見られなかった。
 アティにダメージがないのは、リンが意図的に剣へと攻撃を集中させているからだ。
 だが、体力をかなり消耗をしているリンが無傷なのは、アティの攻撃のキレが、少しずつ落ちてきていたからだ。
 その原因を、リンは、自身の声が届いている証だと解釈する。

 ――大丈夫、いける!

 確信を支えにして疲れを振り解き、リンが続けて口を開こうとした、瞬間。
 不意にアティが、飛び退った。
 突然の行動に眉を顰めたリンの耳が、

「リンさんっ! 逃げてっ!」

 ミネアの悲鳴めいた絶叫と、聴覚が壊れてしまいそうな轟音を、ほぼ同時に拾う。
 思わず、振り返る。
 漆黒の雷が、荒地の上で暴れ回っていた。
 のたうつ大蛇のような雷光は、暴虐的な破壊力を誇示している。
 背筋を冷や汗が垂れ落ちた。これはまずいと、直感が伝えてくる。
 へばっている暇はない。リンは、急いで足を動かした。
 必死で地を蹴り膝を曲げ、力を振り絞って疾走する。額に汗が浮かぶが構っていられない。
 雷にはどうやら、明確な指向性は与えられていないらしい。
 闇雲に暴れ回るだけなら、なんとか当たらずに済むとリンは判断する。
 迫り来る二条の雷を後ろに跳んでで回避し、真横から飛んできた一撃を転がって避ける。
 それを最後に、黒の雷は姿を消した。
 荒野に一時の静けさと、眩い日の光が戻ってくる。
 幸いにして被弾は避けられた。だが、リンはすぐに安堵せず、立ち上がる間も惜しんでミネアを探す。
 すぐに、見つかった。
 息を呑まずに、いられなかった。
 しゃがみこむ彼女の美しい肩には、細い腕には、緩やかな首筋には、痛々しい火傷が刻まれていた。
 脂汗を浮かべるミネアの、痛みを食い縛るような表情が、ゆっくりとリンへと向く。
 そして。

「危ないっ!!」

 再び、ミネアが叫んだ。
 直後、影が、リンに覆いかぶさった。
 振り仰ぐ。
 心臓が、跳ね上がった。

 荒野に未だ座り込んだままのリンに、傷一つ受けていないアティが、魔剣を振り下ろそうとしていたのだ。
 リンの目が、いっぱいに見開かれる。
 お構いなしに、剣は、リンへと落ちてくる。
 その動作が、やけにゆっくりに見えた。

「逃げてっ! 早くっ!!」

 ミネアがずっと、叫んでいる。怪我を押して、駆け寄ってくる。
 それが、やけに遠いように、思えた。
 まだ、剣は届いていない。
 これならば避けられるような気がして、身体を動かそうとする。
 だが、自分の動きさえも、やけにゆっくりに感じられた。
 刃は真っ直ぐ近づいてくる。
 遮るものは何も、ない。
 時間が引き延ばされたかのように、あらゆるものが鈍かった。
 ミネアの声も。
 アティの剣も。
 リンの動作も。
 全てが、遅かった。

「うっ、く……ああ、うあああああああぁぁぁぁぁ……っ」

 異常に緩やかな世界で、唸り声が聞こえる。
 リンは刃越しに、声の主を見る。

 そこには、苦悶と辛苦と絶望と悲嘆と哀惜と悔恨をこね回し混ぜ合わせたような、見るだけで胸が痛む表情をした、たった一人の女性がいた。
 多すぎる感情を抱えすぎたせいで、その顔は、余りにも歪だった。
 彼女から感じられたのは、余りにも圧倒的な感情だった。
 そんなものを抱えた彼女に、何かを伝えたいと思った。
 だけど。
 さっきまで、あれほど説得していたにも関わらず。
 その感情を癒すような言葉は、すぐには見つからなくて。
 抱えた想いを肩代わりできるような魔法の言葉は、簡単に浮かんではくれなくて。

 ただ、微笑みを投げかけるしか、できはしなかった。
 すると、彼女の顔は、一層辛そうに、歪んだ。
 歪過ぎた表情は、それ故に、とても脆かったらしい。

 剣を振り下ろすアティの顔中に、泣き出す寸前の赤子のような表情が、一気に広がった。

 振り下ろされていた刃先が、リンの目の前までやってくる。
 それでもリンは、今にも泣き崩れそうなアティに、微笑みを向け続けていた。
 そして。
 碧の魔剣は。
 その鋭い切っ先を。

 リンの鼻先で、止めた。

 リンがその事実を認識し、把握するよりも早く、伐剣者の口が、小さく動く。
 その動きは、繰り返されていた咆哮とは、似ても似つかないほどに弱々しかった。

「――ごめん、なさい」

 ぼそりと。
 それだけを残して、アティは踵を返して駆け出した。
 その足は思いのほか速く、背中はどんどん遠ざかっていく。
 リンは必死で手を伸ばす。
 待って、と。
 叫んで、引きとめようとする。
 だけど掌は空を切り、言葉に拘束力なんてなくて、彼女の足を止めることは、叶わなかった。
 ようやく元に戻った時間の中、リンは急ぎ立ち上がる。
 アティを追いたい気持ちは、決して弱くない。
 あの泣き出しそうな表情は網膜に焼き付いていて、放っておきたくなんてなかった。
 しかしリンは彼女を追おうとしない。
 まず、ミネアのことが気がかりだったからだ。

「リンさん! 大丈夫ですか!?」
 それはミネアも同じだったようで、彼女も、対峙していた相手を顧みずリンへと駆け寄ってくる。
 心配になって周囲を見渡すが、いつの間にか、彼女の知り合いらしい男の姿も消えていた。
「私は大丈夫。それよりも、あなたの方が……!」
 ミネアの美しい褐色の肌は、無残な火傷に荒らされていた。
 首筋から肩、上腕の皮膚が剥がれていて、筋繊維が見え隠れしている。
 その露になった筋繊維のところどころは黒ずんでいて、痛々しい。
 見ているだけで、皮膚の下が疼くような大怪我を、ミネアは負っていた。
 それなのに、彼女は、笑みを浮かべていた。
 血の気の引いた顔色で、脂汗を垂らしながら、ミネアは、笑っていた。
「よかった、怪我、なくて……」
 絶え絶えの息の合間で、優しい言葉を紡ぐと同時、ミネアの膝が崩れ落ちる。
「ミネア!」
 倒れるミネアを、慌てて受け止める。
 目を閉ざした彼女は、汗にまみれ、苦しげな呼吸を繰り返していた。
 腕の中で感じる体重は、予想以上に軽くて不安になる。
 衣服は、汗でぐっしょりと湿っていた。
「ちっともよくないじゃない……」
 呟いても、返事は返ってこない。猛烈な不安と嫌な予感が、リンの胸に去来する。
 ミネアの手を強く握り締めてみる。しかし、リンの手を握り返してはくれなかった。

 これほどの怪我なのだから、痛みも尋常ではないだろう。もっと早く気を失っていてもおかしくはないはずだ。
 それにもかかわらず、リンのことを気遣う一心で、意識を繋ぎとめていたのだろう。
 リンの胸が強く締め付けられる。
 ミネアには助けられっぱなしだ。
 皆殺しの剣を持っていった男にやられた傷を治してもらい、気絶していたところを看病してくれた。
 今だってそうだ。
 ミネアが警告してくれなければ、雷の直撃を受けていたか、魔剣に両断されていただろう。
 リンはミネアのように、回復術は使えない。薬を持っているわけでもない。
 だとしても、助けたかった。
 握るミネアの手には温もりが残っている。血が通っている。
 ミネアはまだ、確かに生きているのだ。
 絶対に死なせたくなんて、なかった。

 リンは急いでミネアを背負う。
 できることといえば薬か、回復術の使い手を捜すことくらいだ。
「必ず、助けるからね」
 事態は一刻を争う。立ち止まっている時間が惜しくて、リンは駆け出した。
 流れていく視界の端、胸を貫かれた少女の遺体が映る。
 まだ幼さの残る彼女をこのまま放置してしまうことに罪悪感を覚えるが、しかし、立ち止まれなかった。
 内心で謝罪をしつつ、リンはただ祈る。

 ミネアが助かるように。
 そして、白い女性も無事であるように、と。 

【C-7 一日目 午前】
【ミネア@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち】
[状態]:精神的疲労(大)。気絶中。上腕、肩から胸元にかけて火傷。
[装備]:デスイリュージョン@アークザラッドⅡ
[道具]:基本支給品一式(紙、名簿欠落)
[思考]
基本:自分とアリーゼルッカの仲間を探して合流する(ロザリー最優先)
1:ロザリーがどうなったのかが気になる
2:ピサロを説得し、行動を共にしたい。
3:ルッカを探したい。
4:飛びだしたカノンが気になる
[備考]
※参戦時期は6章ED後です。
※アリーゼ、カノン、ルッカの知り合いや、世界についての情報を得ました。
 ただし、アティや剣に関することは当たり障りのないものにされています。
 また時間跳躍の話も聞いていません。
※回復呪文の制限に気付きました。
※ブラストボイス@ファイナルファンタジーⅥは使用により機能を停止しました。
※ピサロがロザリーを死んだままであると認識していると思っています。
※アリーゼの遺体に気付いていません。

リン(リンディス)@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:腹に傷跡
[装備]:マーニ・カティ@ファイアーエムブレム 烈火の剣
[道具]:なし
[思考]
基本:打倒オディオ
1:ミネアを治療できる人、あるいは薬を急いで探す。
2:殺人を止める、静止できない場合は斬る事も辞さない。
3:白い女性(アティ)が気になる。もう一度会い、話をしたい。
4:少女(アリーゼ)の遺体を弔いたい。
[備考]:
※終章後参戦
※ワレス(ロワ未参加) 支援A

 ◆◆

 苛立ちが消えなかった。
 森を歩く魔族の王――ピサロの美しい顔には強い憤りが溢れかえっている。
 勇者の仲間である占い師の、確信めいた顔や澄んだ瞳が、脳裏に焼きついていた。
 彼女が必死に訴えかける声と叫びが、未だ鼓膜を震わせていた。

 ミネアは言っていた。
 ロザリーが生きていると。
 生きてピサロを待っていると。

 その表情も声も、確信に満ちていた。
 真っ直ぐな瞳と必死の訴えからは、虚偽の色は見て取れなかった。
 だがそれでもピサロは、彼女を素直に認められないでいる。
 できるはずがない。
 勇者とその仲間はピサロにとって倒すべき敵であり、何よりも憎むべき人間に他ならないのだから。
 それにピサロは、知っている。
 冷たくなったロザリーの身体を。
 喋らなくなったロザリーの唇を。
 二度と笑みを浮かべないロザリーの顔を。
 ロザリーヒルで、人間の手によって、ロザリーが命を奪われたことを、ピサロは知ってしまっている。

 自身で確かめたことと、相容れない人間が口にしたこと。
 どちらの方が信憑性が高いかなど、問うまでもない。
 そのはずだ。
 そうに決まっている。

「下らぬ、妄言だ……」

 言い聞かせるように、呟く。
 胸中で、数え切れないほど、占い師の言葉を否定する。

 それなのに、ピサロは苛立ちとざわつきを押さえられなかった。
 どれだけ否定しようとしても、何度も違うと言い聞かせても。
 それでもピサロは、ミネアの声を完全に否定し切れなかった。
 何故ならば。
 心の片隅で願っていたのだ。
 小さく微かに、確かに望んで止まなかったのだ。

 ――ミネアの言葉が、真実であればよい、と。

 たとえ、血生臭い殺し合いの盤上であっても。
 今一度、温かくて、言葉を紡げて、微笑みかけてくれるロザリーと会いたいと、切望してしまっていた。
 もしも、ミネアの言葉が確かならば。
 また、ロザリーと同じ時間を共有し、同じ道を歩めるのなら。

 それは、どれほどまでに幸せなことだろうか。

 忌むべき人間の言葉から垣間見えた、不確かな事実でしかない。
 だがそれは、ピサロにとって、紛れもない希望だった。 
 その芽生えた希望を自ら摘み取ってしまいそうな気がして、ピサロは、ミネアの命を奪えなかった。
 だから、苛立ちを抱えながらも、止めを刺さず立ち去ったのだ。

 白い女――アティの存在は、それほど問題視していない。
 何故ならばピサロは、対峙していた少女一人殺せず、逃げるように走り去る、アティの後姿を見ていたからだ。
 その小さな後姿は、黎明に見た背中と重なっていた。
 結局のところ彼女は、下らない言葉しか吐けない、臆病で矮小な存在でしかないのだ。
 とはいえ無論、ミネアやその仲間、アティを始めとした参加者を――人間を、殺すつもりがなくなったわけでは決してない。
 優先順位が変わっただけのことだ。人間に心を許してなどいない。
 ただ、今のピサロを動かすのは、憎悪だけではなかった。
 それでも、苛々する。
 ひたすらに、苛々する。
 いつしか、ミネアに対する苛立ちだけではなくなっていた。
 ろくに名簿に目を通さず消し飛ばしたせいで、ロザリーの存在に気付けなかった自分自身を許せなかった。
 そして。
 憎むべき敵の言葉に希望を見出し、それに衝き動かされて走っている自分自身に、苛立っていた。
 余りにも愚かしいと、ピサロは自嘲する。

 結局、ミネアの言葉を信用してしまっている自分が、人間以上に愚かしく思えて、仕方がなかった。 

【B-7 森林 一日目 午前】
【ピサロ@ドラゴンクエストIV 】
[状態]:全身に打傷。鳩尾に重いダメージ。
     疲労(大)人間に対する憎悪。自身に対する苛立ち。
[装備]:ヨシユキ@LIVE A LIVE、ヴァイオレイター@WILD ARMS 2nd IGNITION
[道具]:不明支給品0~1個(確認済)、基本支給品一式
[思考]
基本:優勝し、魔王オディオと接触する。
1:ロザリーの捜索。
2:皆殺し(特に人間を優先的に)
[備考]:
※名簿は確認していません。ロザリーが生きている可能性を認識しました。
※参戦時期は5章最終決戦直後


 ◆◆

 呼吸がうまくできない。どんなに酸素を吸っても、胸が苦しくてたまらなかった。
 鼻の奥が詰まっている。瞳が濡れそぼっていてよく前が見えない。
 でも、苦しいのは、そのせいだけじゃない。
 荒い呼吸を繰り返し、それでもアティは走り続けていた。
 アティは逃げるように、絶え絶えの呼吸をしながら走っている。
 涙目になっていてまともに前が見えないが、走っている。
 それは、黎明の頃にレイを置き去りにしたときのアティと、酷似していた。
 そう、白い髪や碧の瞳は、いつしか元に戻っている。
 リンディスの諦めない説得が、剣に支配されたアティの意思を引っ張り上げていたのだ。
 アティの手に武器はない。
 元の姿に戻った際に、破壊の鉄球を手離していた。
 あんなものを持っていたら、走れなかったから。
 どこに向かっているのかなんて考えていない。
 そんなことを考えられるような余裕が、今のアティには欠片も存在しない。
 ただ。
 ただ、誰にも会いたくなくて、そして、逃げたかった。

 アリーゼが、死んだ。
 目の前で、命を落としてしまった。
 それも、アティを庇って、死んだのだ。

 ――私が、守らなきゃいけなかったのに……!

 無力だった。無様だった。無念だった。
 情けなかった。哀しかった。悔しかった。辛かった。
 だから。
 もっと強さがあればと思った。力が欲しいと望んだ。
 そうすればきっと、こんな想いをしなくて済むと思ったから。
 強く強く強く、願った。
 レイを、アリーゼを殺した男を、許せなかったから。
 心底憎いと、思ってしまったから。

 そして、その願いは、叶えられた。

 いつの間にか、圧倒的で強大な力をアティは手にしていた。
 その力は本当に強く、あの男と互角に戦うことができた。
 超重量の鉄球さえ軽々振り回せるようにもなったし、強力な術も行使できるようになった。
 だが、その代わりに。
 力は、殺意と破壊衝動で、アティの理性を塗りつぶしていった。
 アティを呑みこもうとするような強力さに抗えるほど、追い詰められた彼女の精神は丈夫ではなかった。
 その結果が、あの暴走だ。
 自分の意思で自分の身体を制御できない感覚は、とてつもなく恐ろしかった。
 禁忌とも呼べる行為に走る自分の身体を止められないのは、気が狂いそうなほどに恐ろしかった。

 いや。
 既にもう、何かが狂い始めているような気がした。

 確かに力を欲した。強さを求めた。
 だけどそれは、大切な人たちを守るための強さだ。
 なのに。
 それなのに。
 力を手にしたアティが取った行動は、彼女が最も望まないものだった。
 いくらレイやアリーゼの命を奪った男が相手でも、本当は殺したくなんてなかった。
 ましてや、殺意と破壊衝動に塗りつぶされたアティを救おうとしてくれた少女を殺したいなど、思うはずがなかった。

 たとえここが、殺し合いを求められる場であっても、だ。
 だというのにアティは、魔剣に意識を支配され乗っ取られ侵食され、行動も衝動も抑えられなかった。
 もしも、ミネアとリンディスが割って入っていなかったら。
 もしも、リンディスが説得を諦めていたら。
 今頃、アティの手は血に塗れていたに違いない。

 自分自身がどうしようもなく狂っていくようで、震えが止まらない。
 自分が自分でなくなる感覚は、どうしようもないほどの、真っ黒な恐怖だった。
 まるで、足元から伸びる影が『アティ』になって、今の『アティ』が影になってしまうように思えた。
 アティ自身を、失ってしまうように感じられた。

 喪失の恐怖から逃れるように、アティは走る。
 怯えを、影を、自分の中にある『何か』を振り切るように、当てもなく走る。
 それでも、足元の影は、離れてくれるはずなどない。
 誰にも会いたくなかった。
 何かの拍子で、あの凶暴な自分が現れるか分からない。
 そうなったら、取り返しのつかないことを起こしてしまう可能性が高い。
 そうなったら、もう一度戻れるという保証は存在しない。
 もう二度と、自分を取り戻せなくなるのかもしれない。

 怖くて堪らなかった。
 恐怖は心にこびり付いていた。

「私は、どうなってしまうの……?」 

 震える問いに答えは返らない。
 だが、聞いている存在はアティの中にある。
 アティの中で、魔剣は、確かに声を聞いている――。

【C-6 森林 一日目 午前】
【アティ@サモンナイト3 】
[状態]:コートとパンツと靴以外の衣服は着用していない。
    強い悲しみと激しい自己嫌悪と狂おしいほどの後悔。コートとブーツは泥と血で汚れている。
    水の紋章が宿っている。疲労(大)ダメージ自体は目だってなし。
    自分が自分でなくなるような恐怖。
[装備]:白いコート
[道具]:基本支給品一式
    モグタン将軍のプロマイド@ファイナルファンタジーⅥ
[思考]
基本:誰にも会いたくない。
1:当てもなく、自分の中の『何か』から逃げる。
[備考]:
※参戦時期は一話で海に飛び込んだところから。
※首輪の存在にはまったく気付いておりません。
※地図は見ておりません。
※暴走召喚は媒体がないと使えません。

※アリーゼの遺体、天使ロティエル@サモンナイト3、アティの眼鏡がC-7荒地に落ちています。
※C-6とC-7の境界に破壊の鉄球が落ちています。

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061:Avengers リン 080:メイジーメガザル(前編)
ミネア
アティ 083:どこを向いても奴がいる
ピサロ 081:奔る紫電の行方、燃える炎の宿命(さだめ)


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最終更新:2010年07月01日 22:07