ユーリル、『雷』に沈黙する ◆Rd1trDrhhU


「まだ、クロノは……来てない……か」
飛び込んできた、聖母を象った鮮やかな光。
教会の扉を開いた勇者を、巨大なステンドグラスが出迎えた。
海を臨むこの建物には、風に乗って潮の香りが絶え間なく届けられる。
鼻をつくソレはなんとも心地よく、悲しみに押しつぶされそうな彼の心を少しだけ軽くしてくれた。

「……アリーナ
適当な椅子に座って、放送で呼ばれた名前を思い出す。
呟いたその4文字は、名残惜しそうに何度も反響してユーリルの耳を振るわせ続ける。
思わず溢れそうになる涙をこらえる為に見上げた天井は、随分と高い。
あぁ……声が随分と響き渡るのは、この高さのせいか。
そんな事を考えながら、ユーリルは必死に悲しみから逃避する。
勇者は泣いちゃいけない。
本当に泣いてはいけないのかはさて置き、少なくても彼はそう思っているのだ。

アリーナは強い。格闘術なら世界最強と言えるほどに。
あのおてんば姫に屠られた魔物は数知れず。彼女よりも遥かに大きな獣だっていた。
その拳に倒れた魔物を列挙した本を綴れば、人を撲殺できるくらいの厚さにはなるだろう。
そんな彼女が、死んだ。誰かに殺されたのだ。

とは言え、彼女だって人間だ。決して無敵の存在というわけではない。
おそらくは、魔法。
高位の魔法を放つものなら、彼女を殺すことも可能かもしれない。
彼女は、冒険の日々の中で何度も魔法に倒れていたのだから。

冒険……。彼が魔王を倒す為に繰り広げていた旅のこと。
そこで、彼は導かれし者たちと出会い、絆を深めていったのだ。
何度も死にそうな目にあった。
それでも、仲間たちがいたから、苦難の道のりも何とか乗り越えられた。
だが、その導かれし者たちも、既に3人死亡。この殺し合いの会場には、ユーリルを含めてあと2人しか残っていない。
随分と、減ってしまったものだ。

「なんで……こんな……」
天井にも見飽きたのか、ユーリルは下を向いて頭を抱えた。
体勢を変えたせいで、座っている椅子が軋む。
涙を堪える勇者の変わりに、泣いてくれているかのようだった。
溜め息とともに搾り出された彼の嘆きの後半部は、声にもならない。
言いたかった言葉は、『なんで、こんなつらい事ばかり起きるんだ』。
彼が言う『つらい事』とは仲間たちの死。

……そして彼自身の激動の半生のことだ。
ただ、幸せな日々を過ごしていた。
変わり映えのない毎日。規則正しく、平穏を引き連れて現れては去っていく太陽。
それだけで良かった。
シンシアや、村のみんながいればそれでよかった。
鳥の囀りに木々が葉音でコーラスを添えるのを、彼らと共に聞いていられれば充分だった。

だが、その平穏が完全に破壊される。
思えば、それが全ての始まりにして、最初の悲劇だった。
ピサロ率いる魔王軍。
みんな殺された。特に、勇者のフリをしていたシンシアは、目も当てられないほど酷く痛めつけられていた。
村のみんなには一切の罪はない。もちろん切り刻まれた少女にも。
ただ、勇者がいたから悲劇は起こった。
勇者ユーリルを殺すために、全ての悲劇は用意されていたのだ。
その結果、生き残ったのは皮肉にも火種となった弱き勇者のみ。

まったく、笑えない冗談だ。

「……ごめん、遅くなった」
その声に、考え事の最中にいたユーリルの首が跳ね上がる。
まるで、狼を前にしたリスのような動きだった。
教会の扉が、ギィィィ……と竜の欠伸に似た音を立てて開かれる。
現れたのは、ユーリルがこの殺し合いで初めて出会った人物。
彼は無口だが、とても熱い心を持つ。逆立った赤い髪はその象徴か。
無口なのはユーリルも同じなので、彼らの意思疎通に過度な会話は必要としない。
それでもお互いに剣を得意とするなどの共通点が多いことが、その信頼関係の構築を手助けしていた。
似ているようでどこか異なる2人の少年は、まるで2色のツギハギのようなコントラストを生み出している。

「……クロノか。いや、僕も今来たところ…………」
「お! お前がユーリルか。クロノから聞いてるぜ!」
クロノの謝罪に、無理をして必死に作った笑顔で応じようとしたユーリル。
しかし、その言葉は最後まで紡がれることはなく、荒々しい声によって遮られることとなった。
赤髪の少年の後ろから現れたのは、金髪の大男。
その腕は非常に太く、ユーリルの足くらいあるのではないだろうか。
頭部を凝視し、角が生えていないかどうか確認するも、どうやら牛の魔物ではないらしい。

「俺はマッシュ。マッシュ・レネ・フィガロだ」
突き立てた親指で自分の顔を指したマッシュ。
白い歯がステンドグラスの光を反射して、七色に瞬く。
裏表がなさそう、というか嘘が下手そうな人物だ。……というのがユーリルが彼に抱いた第一印象
ガハハと豪快に笑う男に、まるでアリーナを汗臭くした印象を抱いた。

「……よろしく、マッシュ」
「おう! よろしくな」
マッシュの握力は強く、ガッシリと握られた掌に軽い痛みが走る。
そんな事気付きもしない大男は、更に強い力で勇者の手をキリキリと締め上げた。
そこで嫌な顔1つ見せない優しさが、ユーリルが仲間たちから慕われている所以だろう。

「んで、こいつは高原」
マッシュの大きな身体に遮られて見えなかったが、彼の後ろにもう1人の大男が立っていた。
高原と呼ばれたその男は、マーニャの舞台を見に来た客のようにユーリルをジッと見定める。
数秒ほど眺めた後、感心したように「ほぅ……」と一言だけ呟いた。
どういう意味だと気になりはしたが、それ以上問いただせない勇者であった。

高原日勝だ。最強の格闘家を目指してる。高原でいいぜ」
「……よろしく」
一転して笑顔を見せた高原と固く交わした握手は、やはり痛みを伴う。
挨拶というのは、こんな苦行だっただろうか。

単純で豪快。
この高原という男にユーリルが抱いた印象も、大体はマッシュに対するものと同じだ。
あえて違いを挙げるとすれば、少しだけ彼の方が知力が低そうに感じた。……明確な根拠はないのだけれど。

「……何かあったのか?」
ユーリルの様子がおかしいことに気がついたクロノが、心配そうな声で尋ねた。
アリーナの死に動揺しているのかと思ったが、どうもトルネコのときとは様子が異なる。
数時間前の彼は、仲間の死体を前にしても嘆き悲しむことはなく、未来に向かってしっかりと進んでいたのだ。
それなのに、今の彼の目からは、仲間の首をねじ切ったときのような意志の強さが見られない。

「いや……ちょっとね……」
再び俯いて、床のシミを数え始める勇者。
『なんでもない、大丈夫だ』と言えなかったのは、彼が本気で滅入ってしまっている証拠。
自分と別れてから何があったのか、本気で不安になったクロノが問いただそうとする。
だが、投げかけられようとした少年の質問が、ユーリルに届くことはなかった。

「そういう時はなぁ! 戦って忘れちまうのが一番だ!」
無神経にも、ズイとクロノの前に割り込んできた高原。
落ち込むユーリルの手首を掴んで、無理やり外へ連れ出そうとする。

精神をすり減らした相手を心配するどころか、高原の眼は彼の強さへの期待に満ち溢れているではないか。
どう見たって、自分がユーリルと戦いたいだけのようにしか思えない。
ユーリルの気持ちも考えろと、クロノが慌てて追いかけようとする。

「高原……! そんな無理やり…………」
「まぁ、いいんじゃねぇの」
しかし、その言葉もまた、別の格闘家によって阻まれることとなった。
クロノの肩を掴んで静止したのはマッシュだ。
彼は告げる。これが高原なりの励まし方なのだ、と。
同じ拳に生きるものとして、マッシュはそれをなんとなく理解していた。
その言葉に驚いてユーリルを見る。
勇者の顔にうっすらとだが笑みを確認して、クロノはさらに驚いた。

「さぁ、俺たちも行こうぜ」
「……あぁ!」
マッシュに背中を叩かれて、前に進む。
高原の無理やりさが、今のユーリルには必要だったのだ。
なにも一緒になって悲しんでやるだけが仲間じゃない。こういう『やり方』もある。
クロノは反省しつつも、高鳴る胸を抱えて外へと飛び出した。
彼もまた、ユーリルと手合わせするのが楽しみだった。

余談ではあるが、この殺し合いで無事仲間と合流できたのなら、まず最初に情報交換をするべきである。
そんな事は、子供でも分かる基本中の基本。
じゃあ、何故彼らはそれをしなかったのか。
何故、いきなり外へ出て戦いをおっ始めるのか。
答えは単純。……アレが足りないからだ。

どうやら、馬鹿は伝染するらしい。
それも、結構なスピードで。


◆     ◆     ◆


「なかなかやるじゃねぇかユーリル。最初に見込んだ以上だったぜ!」
「いや……高原こそ、やっぱり凄いね」
戦いも終わり、北へ向けて草原を歩いている一行。
模擬戦とはいえ、激しい戦闘をしたにもかかわらず、1人として息を乱してはいなかった。
ユーリルの予想以上の腕っ節の強さに、興奮が隠せないのは高原。
彼の立ち回りと、腕力、そして体力を、大声で素直に評価した。

ちなみに、本当ならばユーリルには、徒手空拳で高原やマッシュたちと渡り合えるほどの腕力はない。
彼が実力以上の力を発揮していたのは、身に付けていた『最強バンテージ』のおかげ。
この装備品の効力によって、ユーリルの腕力と体力は本来の実力よりも遥かに高められていたのだ。
尤も、その立ち回りの巧みさは、勇者本来の実力であるが。
当の高原は、彼が『最強バンテージ』を装備している事にまだ気がついてはいない様子だ。
それが自分の愛用品であるのに、だ。

「……これで魔法まで使えるってんだからなぁ」
ちゃんと洗っているのか心配になる髪の毛を、高原がポリポリと掻き毟る。
幸いフケは落ちてこないようなので、ちゃんとそこら辺のケアはしているらしい。

「……見て、みるかい?」
笑顔で提案したのは勇者ユーリル。
先ほどまで心を押しつぶしていた重圧から、見事に解放されている様子だ。
彼の心は、大海を進む船上で風を感じたときのような、何とも言えない爽快感に包まれていた。

「いいのか?!」
「もちろん。じゃあ……イオラ!」
呪文と共に、広げた掌を前方にかざす。
魔法はすぐに具現化されて、広範囲の爆発を発生させた。
イオ系の中級魔法『イオラ』は、彼の使用する呪文の中でそれほど強いという物でもない。
だが、その派手な見た目と爆発音はデモンストレーションにはうってつけだ。
勇者の魔法に、高原だけでなく傍観していたクロノも思わず拍手とともに歓声を上げた。

「へっへっへ……」
「なんだマッシュ気持ち悪い」
そんな中で1人不適な笑みを浮かべるマッシュ。
高原から明らかな罵声を浴びせられたところで、その笑い顔は崩れる事はない。

「高原く~ん。実はな……お、れ、も、使えるんだよ!」
「……マッシュ、魔法、使えたのか?」
まさかの告白に、クロノが目を見開く。
別に隠していたというわけではない。
今まで魔法を使う機会もなかったし、これから使うつもりもなかったので、わざわざ言う必要がなかっただけだ。
だが、高原が魔法に目を輝かせていたのを見て、『これは驚かせてやるいいチャンスだ』と目論んだわけである。

「いくぜ……サンダラ!」
選択した魔法は、サンダー系の中位魔法。
中級魔法なので、理論上はユーリルの『イオラ』と同レベルの威力という事になる。
……あくまでも理論上は。

ゴロゴロと音を立てて現れた、天空と大地を繋ぐ緑色の鎖。それは、紛れもない雷だった。
しかし、余りにもショボい。
確かに雷は雷でも、この程度の威力で殺すことが出来る参加者はいないと断言していいだろう。

「だっはっは! 勇者様のと比べて、随分とヘボいんじゃねぇのか?」
「う、うるせぇ! 1個も使えないやつに言われたかぁねぇよッ!」
ミミズでも召喚したんじゃねぇか、と高原が声をあげて笑う。
マッシュの、と言うよりもマッシュの世界の名誉の為に補足しておくが、この魔法がチンケなのはマッシュに魔法の才能が皆無だからである。
ティナやセリスなど、魔法に通じる者が使えばこの魔法だってかなりの威力になるのだ。

パンパンと腿を叩いて大笑いする高原に、マッシュが真っ赤になって抗議する。
魔力が乏しい事は本人も自覚しているし、さっきの爆発より遥かに脆弱なのにも反論の余地がない。
だが、ユーリル本人ならまだしも、なんで魔法を一切使えない高原に馬鹿にされなくちゃならないのか。

「マッシュも……サンダラ、使えるんだな」
そんな2人を見て、今度はクロノの肩眉がつり上がった。
まるで、面白い事を発見したルッカのような表情である。

「ん? どういう意味だ?」
「こういう意味さ……サンダラ!」
ニヤリと笑って、クロノがその手を天に掲げた直後……マッシュの生み出したものと同じ現象が空から降り注いだ。
彼も魔法を売りにしているわけではないが、先ほどのミミズと比べればその緑の龍は随分と強大。
少なくとも、実戦で活用できるレベルにはあるだろう。
そんな魔法を見て、彼以外の3人の顔が同時に驚愕で染まった。
だが、その驚愕の理由はそれぞれ異なるものである。

マッシュが驚いたのは、魔石も知らなかったはずのクロノが、なぜか自分と同じ魔法が使えた事実にだ。
そして高原は、魔法が使えないのが自分だけであるという、まさかのマイノリティ化に驚いていた。
流石の彼も、魔法はラーニング不可能だろう。

最後に、ユーリルが驚いていた理由は……。

「……………………は?」
マッシュとクロノが、『雷』を放ったと言う事がその原因。
呆然と、魔法が残した黒い煙を見つめて、ユーリルが擦れた声を上げた。
さっき高原たちと手合わせしたとき以上の汗が、次から次へと噴出しては垂れていく。

雷魔法。それは勇者のみが使える呪文だったはず。
雷撃を起こせるのは勇者の証で、彼だけに許された特権であったはずだ。

そう、勇者の証だ。

これを持っていたから、彼の住んでいた村は滅ぼされ、大切な幼馴染は嬲り殺され、人類を代表して魔王を倒す使命を与えられた。
この『特別』があったからこそ、そう信じていたからこそ、辛い日々をなんとか耐え抜く事が出来た。
『特別』な自分にしか、世界を救えなかったのだから。
なのに、彼らはこうも易々と……。

「へぇ……同じ魔法でも、クロノの方がマッシュのよりもデカいんだな~」
「ち、畜生ーッ! こんな誰でも使えるような魔法、どうせ役に立たねぇよ!」
魔法なんか2度と使わないぞと、両腕を左右に大きく広げて開き直った。
このサンダラだって、何も考えずに魔石を装備していたら覚えてしまっただけだ。
彼の世界ではサンダラはそれほど珍しい魔法ではない。
共にケフカを倒した仲間たちは、ほぼ全員がこの魔法を当たり前のように習得していたのだから。

「誰でも……だと……まさか、みんな、使えるのかッ?!」
その言葉に、異常な反応を示したのはユーリルだ。
普段の彼からは想像もつかないような早口で、質問を乱暴に放り投げた。
相手の肩を、両手でガッシリと掴んで前後に大きく揺する。
スプレー缶でもあるまいし、振ったところで質問の答えが早く得られるわけじゃないのに。
何を焦っているんだと、マッシュの顔に困惑の表情がへばりついた。

「落ち着けって……。あの程度なら、段階さえ踏めば誰でもな」
「な…………ッ!」
まさか、サンダラを習得したいのか。
マッシュはそう思ってユーリルに回答したが、彼はその答えを聞いて言葉を詰まらせてしまう。
それは、トルネコの死体を発見したとき以上の狼狽っぷり。
クロノも心配そうに彼を見つめていた。

「どうしたんだよ……」
「そうか……いや、悪かった……」
スルリと、崩れるようにマッシュの肩から手を離す。
ユーリルが謝罪するも、その顔は青ざめたままだ。
誰が見たって何かあるのは明白。
だが、尋ねられるような雰囲気ではない。

「……そろそろ、出発するか」
さすがの高原だって、その重苦しい空気は感じていた。
先ほどのように、彼を無理やり励まそうとはしない。

ユーリルはそれから、何も話さなかった。
誰かが大丈夫かと尋ねても、首を横に振るだけだった。







僕以外の3人……高原とマッシュ、クロノが今後の事を相談している。
しばらく歩いても誰にも合えなかった為、今後はチームを2つに分割した方がいいのかなどを話し合っていた。
優しい彼らは、たまに僕にも会話を振ってくれる。
だけど僕は、それに反応を示すことすら出来なかった。
彼の言葉が耳に入っても、頭に入ってこないのだ。
僕を支配しているのは、さっきの『雷』のイメージと、『彼女』の言葉。

     『勇者』って、何?

アナスタシアの言葉が、何度も僕の脳みその重要な回路に立ちはだかっては消えていく。
剣の聖女の伝説が、僕の冒険を根底から否定していく。

      どういう存在なの?

それに対する答えを探そうとしても、僕のポンコツの脳みそはいつも誤答しか算出しない。
根拠なんかないけど、絶対にその答えは間違いなんだよ。
だってその答えは、とてもとても酷いものだから。
ソレをこの脳みそが弾き出したとは、僕は信じたくはなかった。
でも…………確かに…………。

      もう一度訊くわね。

「……………………うるさい」
僕の呟きはとても小さなものだったけど、クロノの耳には届いてしまったらしい。
驚いたように、見開いた瞳で僕を見る。
でも、優しい彼はすぐに聞かないフリをしてくれた。
そんな彼に『ありがとう』すら言えない自分はなんなんだろう。
本当に、嫌になる。




勇者。
その資格を持つものは、世界で僕のみ。そのはずだ。
そう信じていたから、悲劇も苦しい戦いも耐えられたんだ。だって『自分にしか出来ない』んだから。

勇者。
雷魔法を放てる存在。これは僕以外では誰も扱う事はできない。クリフトもマーニャも……あのピサロですらも。
誰もが憧れる。けど、なりたくてもなれない。なれるものなら喜んで。そういうものじゃないのか?

勇者。
だけど、他の世界では雷魔法なんか誰にでも使えて、お手玉でも覚えた方がまだ自慢になる。
また他の世界では、天空人の血なんか引いてもない一般人が世界を救っている。救いたい奴が勝手に救っているんだ。

勇者。
僕たちが血を流している間、人々は自分の家で温かい紅茶をすすりながら焼きたてのパンを頬張っている。
人々は平穏な日常の中で、『勇者』が魔王を倒すのをただ待っている。雨が止むのを待つかのように。

勇者。
誰も僕の悲劇なんか知らない。シンシアが殺されたことも。魔物と戦わなくちゃいけなくなったことも。
と言うか、勇者の名前すら知らないんだ。誰もそんな事興味ない。

勇者。
もしも僕が『勇者』じゃなかったら、この殺し合いにも呼ばれなかったんじゃないかな?
そしたら、クリフトだってトルネコだってアリーナだって死ななくて済んだんだよ。

勇者。
大体、アリーナたちだって天空人じゃないじゃないか。
普通の人間なのに僕に協力してくれて、戦いでは僕なんかよりもずっと頼りになったんだよ。

勇者。
そうだよ。あの人の言う通り、世界が立ち上がればよかったんだ。
みんなで魔物に立ち向かえば、僕たちが死ぬような思いをしなくても済んだじゃないか。

勇者。
自分や、その周りの人間に起こった全ての災いが、この称号のせいで降りかかったならさ……。
ただ、人々が辛い事や苦しい事を『生贄』に押し付けていただけだとしたらさ……。







人間って……なんて、身勝手な存在なんだろうか。







【D-2とE-2の境 一日目 午前】

【ユーリル(DQ4男勇者)@ドラゴンクエストIV】
[状態]:疲労(小)。『勇者』という拠り所を見失っており、精神的に追い詰められている。
[装備]:最強バンテージ@LIVEALIVE、天使の羽@ファイナルファンタジーVI
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本:打倒オディオ
1:…………。
2:打倒オディオのため仲間を探す。
3:ピサロに多少の警戒感。
4:ロザリーも保護する。
[備考]:
※自分とクロノの仲間、要注意人物、世界を把握。
※参戦時期は六章終了後、エンディングでマーニャと別れ一人村に帰ろうとしていたところです。
※オディオは何らかの時を超える力を持っている。
 その力と世界樹の葉を組み合わせての死者蘇生が可能。
 以上二つを考えましたが、当面黙っているつもりです。


【クロノ@クロノ・トリガー
[状態]:健康
[装備]:サンダーブレード@FFⅥ
鯛焼きセット(鯛焼き*1、バナナクレープ×1)@LIVEALIVE、
魔石ギルガメッシュ@ファイナルファンタジーVI
[道具]:モップ@クロノ・トリガー、基本支給品一式×2(名簿確認済み、ランタンのみ一つ) 、トルネコの首輪
[思考]
基本:打倒オディオ
1:ユーリルが心配。 ユーリルと情報交換がしたいのだが……。
2:打倒オディオのため仲間を探す(首輪の件でルッカ、エドガー優先、ロザリーは発見次第保護)。
3:魔王については保留 。
[備考]:
※自分とユーリル、高原、マッシュ、イスラの仲間、要注意人物、世界を把握。
※参戦時期はクリア後。
※オディオは何らかの時を超える力を持っている。その力と世界樹の花を組み合わせての死者蘇生が可能。
 以上二つを考えましたが、当面黙っているつもりです。
※少なくともマッシュとの連携でハヤブサ斬りが可能になりました。
 この話におけるぶつかり合いで日勝、マッシュと他の連携も開拓しているかもしれません。
 お任せします。 また、魔石ギルガメッシュによる魔法習得の可能性も?


【高原日勝@LIVE A LIVE
[状態]:全身にダメージ(小)、背中に裂傷(やや回復)
[装備]:なし
[道具]:死神のカード@FF6、基本支給品一式(名簿確認済み)
[思考]
基本:ゲームには乗らないが、真の「最強」になる。
1:どこへ行こうか……。チームを分割するのも手だな。
2:武術の心得がある者とは戦ってみたい
[備考]:
※マッシュ、クロノ、イスラ、ユーリルの仲間と要注意人物を把握済。
※ばくれつけん、オーラキャノン、レイの技(旋牙連山拳以外)を習得。
 夢幻闘舞をその身に受けましたが、今すぐ使えるかは不明。(お任せ)
※ユーリルの装備している最強バンテージには気付いていません。


【マッシュ・レネ・フィガロ@ファイナルファンタジーVI】
[状態]:全身にダメージ(小)
[装備]:なし
[道具]:スーパーファミコンのアダプタ@現実、ミラクルショット@クロノトリガー、表裏一体のコイン@FF6、基本支給品一式(名簿確認済み)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。
1:ユーリル、どうしたんだ?
2:首輪を何とかするため、機械に詳しそうなエドガー、ルッカを最優先に仲間を探す。
3:高原に技を習得させる。
4:ケフカを倒す。
[備考]:
※高原、クロノ、イスラ、ユーリルの仲間と要注意人物を把握済み。
※参戦時期はクリア後。

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048:『勇者』の意味、『英雄』の真実 ユーリル 082:勇者と野球しようぜ!
064:ボボンガ クロノ
日勝
マッシュ


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最終更新:2010年07月02日 10:25