Throwing into the banquet ◆SERENA/7ps



ジャファル! 放して! あたしを放してよ!」

荷物を背負ったジャファルは、いつもの俊敏さが見られない。
しかも、背負った荷物は暴れるものだから尚更だ。
安全だと思われる距離まで離れて、ジャファルはニノを下ろした。
ジャファルが自分の言うことを聞いてくれたのかと安心したニノは、元の場所に戻ろうとする。
しかし、ジャファルはニノの腹に当身を喰らわせて意識を奪い取った。
不意の一撃に、ニノは予測も反応もできないまま気絶した。
そのまま倒れそうになるニノを、ジャファルはまた担ぐ。
これでいい。
ニノには悪いが、これで運びやすくなった。
ニノには、安全なところで目を覚ましてもらうことにする。
その際、ニノからどんな文句や弾劾の言葉が出ようと、ジャファルは甘んじて受け入れよう。

そう思ったとき、ジャファルは何者かの体当たりを受けていた。
重量のある一撃を受けて吹き飛ばされるが、ジャファルは空中で綺麗に体を一回転させると、足から地に着地する。
懐からダガーを抜き出す。
そこにいたのは、かつてわずかな時間だけを過ごした人物――ヘクトル

「オスティア候弟……」
「もう候弟じゃねえ。 オスティア候だ」

鋭い瞳で睨み付けるヘクトル。
再会して懐かしさのあまり談笑、とはいかない。
お互い、完全に相手を敵と認識している。
さらに、先刻ジャファルが仕留めそこなったリンが気絶したニノの体を起こしていた。

「おいジャファル。 お前、リンを襲ったか?」
「……」

肯定も否定もしない。
無表情で、ジャファルはいつヘクトルに攻撃するか探る。
ヘクトルは、それを肯定と受け取った。
ゼブラアックスを構えたヘクトルは、隙を見せないように畳み掛けた。

「ニノのためだな? こんなことやってんのは……」
「……そうだ」

これだ。
黙して語らずを地で行く男が、唯一饒舌になるのがニノ関連の時だった。
ヘクトルはゼブラアックスを思い切り地面に叩きつけ、怒りを露わにする。
あまりの勢いに、地面が少し揺れたのをリンは感じた。

「ニノは……こんなことして喜ぶ奴じゃねえだろうがっ!!」
「……」

ヘクトルの怒りを、無表情で受け流すジャファル。
そんなこと、ジャファルは百も承知だ。
ニノがそんなことを嫌っているのは、誰よりもジャファルが知っている。
だが、それがどうしたというのだ。

「覚えてるかジャファル……? エリウッドの信頼を裏切るなって言ったこと」

かつて、ネルガルの殺人道具に過ぎなかった時からニノを守るという使命を得たとき。
ジャファルはヘクトルから釘を差された。
レイラを初めとした、ヘクトルの多くの仲間をジャファルは殺している。
それが許されたのは、当時のジャファルはネルガルの意のままに動く道具でしかなかったこと。
ニノのために、改心すると誓ったからだ。
だから、エリウッドはジャファルを許せと、ヘクトルに言った。
ヘクトルも、ジャファルにレイラを殺された恨みがあるのに、とりあえず許した。
そう、ジャファルを許したのは、ジャファルがニノのために改心すると誓ったからだ。

「てめえは……てめえを許したエリウッドと、レイラを殺された俺とマシューの、そして……何よりニノの信頼を裏切った!!」

叩きつけられる言葉に、ジャファルの表情が少し揺らいだ。

「あの女の人……ジャファルの仲間じゃなかったの!?」
「必要なくなったから殺した。 それだけだ」

リンはシンシアが襲われる瞬間を目撃したわけではない。
ただ、仲間だったはずの血まみれの女を見捨てたことに対して、リンは怒った。
ジャファルは、それに対してもまるで興味がないように言い捨てた。
これ以上の問答は無用だと判断したジャファルは、影縫いも取り出し二つの短刀を構え、ヘクトルにあることを言う。

「俺は……フロリーナを殺した」

実際は違うが、事実とそう変わりはない。
シンシアがフロリーナを殺す瞬間を眉ひとつ動かさずに見ていた。
ニノの友達であり、リンの親友であり、ヘクトルの恋人であるを死を告げる。
リンの襲撃に加えて、フロリーナの殺害を認められたことに対して、ヘクトルは烈火のごとく怒った。
リンも、信じられないと絶句した。
それでいい。
言葉は無用だ。
これから先、かわすのは刃だけでいい。

「来い、オスティア候。 俺はお前を殺す理由がある。 お前は俺を殺す理由がある。 必要なのはそれだけだ」

平和。
自由。
正しさ。
そんなもの、ジャファルはいらなかった。
ニノだけが、ジャファルの望む全てだった。
あの真っ直ぐで純真なニノの眼差しが閉じられることだけは、なんとしても避けたかった。
ジャファルに幸せというものが与えられるのなら、ニノにすべてを与えよう。
ニノの隣でニノに幸せを与える存在、それはジャファルでなくてもいい。
ニノを大切にしてくれるのなら、それは誰でもいいのだ。

ジャファルは、光を掴んだはずだった。
だが、その光を、ジャファルは手放した。
ジャファルはもう一度闇になり、ニノという光を守る。
ヘクトルが走り出すのと、ジャファルが姿を消して闇に紛れたのは、同時のことだった。




雨が。
四人の髪を濡らしていた。





【C-7西側の橋より少し西 一日目 夕方】
リン(リンディス)@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:左目失明、心臓付近に背後からの刺し傷、全身に裂傷、疲労(大)
[装備]:マーニ・カティ@ファイアーエムブレム 烈火の剣、拡声器(現実)
[道具]:毒蛾のナイフ@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち、フレイムトライデント@アーク・ザ・ラッドⅡ、
     デスイリュージョン@アークザラッドⅡ、天使ロティエル@サモンナイト3
[思考]
基本:打倒オディオ
1:ニノを起こす。
2:殺人を止める、静止できない場合は斬る事も辞さない。
3:白い女性(アティ)が気になる。もう一度会い、話をしたい。
[備考]
※終章後参戦
※ワレス(ロワ未参加) 支援A



【ニノ@ファイアーエムブレム 烈火の剣
[状態]:疲労(中)、気絶
[装備]:クレストグラフ(ロザリーと合わせて5枚)@WA2、導きの指輪@FE烈火の剣、
[道具]:フォルブレイズ@FE烈火、基本支給品一式
[思考]
基本:全員で生き残る。
1:気絶。
2:仲間との合流。
3:サンダウン、ロザリー、シュウ、マリアベルの仲間を捜す。
4:フォルブレイズの理を読み進めたい。
5:ジャファルを止めたい。
6:マリアベルたちのところに戻りたい。
[備考]:
※支援レベル フロリーナC、ジャファルA 、エルクC
※終章後より参戦
※メラを習得しています。
※クレストグラフの魔法はヴォルテック、クイック、ゼーバーは確定しています。他は不明ですが、ヒール、ハイヒールはありません。



【ヘクトル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:全身打撲(小程度)、疲労(中)、アルテマ、ミッシングによるダメージ
[装備]:ゼブラアックス@アークザラッドⅡ
[道具]:聖なるナイフ@ドラゴンクエストIV、ビー玉@サモンナイト3
     基本支給品一式×2(リーザ、ヘクトル)
[思考]
基本:オディオを絶対ぶっ倒す!
1:ジャファルを倒す。
2:リン達やブラッドの仲間、セッツァーの仲間をはじめとして、仲間を集める。
3:つるっぱげを倒す。ケフカに再度遭遇したら話を聞きたい。
4:セッツァーを信用したいが……。
5:アナスタシアとちょこ(名前は知らない)、シャドウ、マッシュ、セッツァーを警戒。
[備考]:
※フロリーナとは恋仲です。
※鋼の剣@ドラゴンクエストIV(刃折れ)はF-5の砂漠のリーザが埋葬された場所に墓標代わりに突き刺さっています。


【ジャファル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(小)、傷跡の痛み。
[装備]:影縫い@FFVI、アサシンダガー@FFVI、黒装束@アークザラッドⅡ、かくれみの@LIVEALIVE
[道具]:不明支給品0~1、アルマーズ@FE烈火の剣 基本支給品一式*2
[思考]
基本:殺し合いに乗り、ニノを優勝させる。
1:ヘクトルを殺してニノを確保する。
2:参加者を見つけ次第殺す。深追いをするつもりはない。
3:知り合いに対して躊躇しない。
[備考]
※ニノ支援A時点から参戦




◆     ◆     ◆



雨が。
その場にいる者の熱を冷ましていく。
だが、ユーリルの心だけは、どれだけ雨にぬれても冷えることはない。

家族…………?
何だよそれ……。

家族……?
シンシアと僕は家族じゃなかったのか?

家族。
なのに、最期にかわした会話が、あんなもの……?

家族。
それは絆。

家族。
決して裏切らない。

家族
血が繋がっていなくてもなれる。

家族。
そうだったはずじゃないか。

家族。
でも……。

家族……!
家族って何だよ。

家族!!!!!
家族なら、もっと他にかわす言葉があったはずなのに!!

今こそユーリルは悟った。
僕たちは家族でも何でもなかった。
僕が大人に成長するまでの間育てるから、見返りとして世界を救えと。
そういう契約関係でしかなかったのだ。
僕一人が騙されて、勝手に幸せになっていただけ。
もうそうとしか考えられなかった。
ちょこの言葉を思い出す。
いいね君は……大切な家族がいて。
でも僕には……家族すらいなかったんだ!
家族の仮面を被った、滑稽な喜劇だったんだ!!

役者はたくさん。
村のみんなたち。

観客はひとり。
僕ひとり。

そんな茶番を茶番だと気付かずに、ユーリルはずっと過ごしてきた。
知らなければ、どれほど幸せだっただろう。
仮初めとはいえ、ユーリルは確かに幸せを感じていたのだから。
知らないでいれば、勇者の誇りを胸に抱いて生きていけたのに。
勇者でいられれば、シンシアの二度目の死でも耐えられた。
その言葉を受け継いで、立派な勇者として魔王オディオを倒そうと誓えた。

勇者でいられれば、今頃友達を死なせることもなかった。
あの憎悪にまみれた男に、クロノたちと揃って四人仲良く討ち死にしたかもしれない。
それでもよかった。
勇者しての責務を果たそうとして、途中で死んだ方が今の何万倍もマシだった。
でも、勇者の本質を生贄だと教えられた今、ユーリルには何もなかった。
あるのは勇者になる前の、ささやかな思い出だけ。
そう思っていた。
しかし、それさえ偽りに満ちたものであった。
勇者であることを知らずに無意識に生きてきただけで、ユーリルは生まれてからずっと勇者だったのだ。
それを捨ててしまった今、ここにいる空っぽの人間を形容するのに、ゴミという言葉以外に当てはまるものはない。
勇者になんかなりたくなかった。
平和に、ずっと平和に生きていたかった。
それなのに、シンシアの最期の言葉は、勇者であれという無意識の強制だった。

「あ、あ、あああああぁぁぁぁぁ……」

再び獣のような声がユーリルから漏れ始める。
もうユーリルの目には、シンシアが幼なじみの顔には見えなかった。
勇者であれ、勇者になれという呪詛にも似た言葉を繰り返す魔物に見えてきた。
楽しかった思い出を守るために、ユーリルはこのシンシアを否定する。

拳を叩きつけられた衝撃で頭蓋骨は割れ、眼球がスポンと飛び出る。
飛び出た眼球は、視神経という糸と繋がったまま、地面に落ちる。
それを見て、ユーリル以外の全員が後ずさった。

「ひッ!」」

特に、眼球と目が合ってしまったアナスタシアは吐き気を催す。
ボキリと、ユーリルはシンシアの首を捻じ切る。
陥没したシンシアの顔の、口があったと思われる場所から赤い泡がゴポリと漏れた。
そのまま胴体と別たれたシンシアの首を、ユーリルは思い切り近くに投げる。
時速200kmを超えたスピードで木にぶつかったそれは、トマトのようにパーンと弾けた。
脳漿や色々な液体が潰れたトマトから流れる。
それが元は人の首だったと言われて、誰が信じられようか。
誰もが、動けなかった。
シンシアをシンシア『だったモノ』に、ユーリルはしていく。
ここにいたのがシンシアであることを否定するかのように。

「ウああああああああァァァああああAああaああ!!」

雨が。
激しさを増してきた。

腹部を素手で引き裂くと、みっしり詰まった臓器が飛び出る。
胃を鷲掴みにして握りつぶすと、中から酸味のある刺激臭がする。
長い大腸を引きずり出し、細かくちぎっては投げ、細かくちぎっては投げた。
拳を叩きつけるたびにぐちゃり、ぐちゃりと、音に水っぽさが増した。

拳を。
振り上げては下ろす、振り上げては下ろす。
ただ、その繰り返し。
拳を叩きつけ、こねて、臓器を掻き出す。

雨が、シンシアの体内にも降り注ぐ。
ユーリルの顔と衣服は、もはや返り血でビチャビチャだった。
だが、そんなものを気にする余裕さえないほど、今のユーリルは狂気に染まっていた。
雨がユーリルの血を流しても流しても、新たな血液が付着した。

肝臓。
心臓、肺。
膵臓、腎臓、小腸。
胆嚢副腎脾臓頚椎鎖骨肩甲骨。
胸骨肋骨大腿骨指骨尺骨脛骨。

全てを粉々に砕く。
全てを握りつぶす。

シンシアの全てをユーリルは否定する。
それでも飽き足らないのか、立ち上がってシンシア『だったモノ』を踏みつける。

「うわああああああああああああああああ!!」

ぶちゅり、ぶちゅり。
人間らしい原型がもうどこにもない。
それでも、ユーリルは足りない。
シンシアの肉片が平らになって踏む場所がなくなっても、足りない。

「ウッ……」

口元を押さえ、ロザリーは思う。
こんなの、人の死に方じゃない。
人の尊厳を完全に無視してる。
それに、何よりあの心優しい勇者ユーリルがこんなことをするとは信じられなかった。
しかも、末期の会話を聞く限り、知り合いのようだった。
何故そんなことが知り合いに対してできるのか、不思議でならない。
最期に、シンシアというミネアの姿を取っていた女性が言っていたことを思い出す。
勇者たれ、と。
その言葉を聞いた時、ユーリルの拳が彼女の顔面を破壊した。

もしかして、ロザリーはとんでもない思い違いをしていたのではないだろうか。
マリアベルの先刻語った英雄に関する話を嫌でも思い出す。
アナスタシアは、『英雄』になどなりたくなかったのだ、と。
勇者ユーリルは仲間と楽しい想い出を作っていたように見える。
けれど、それは導かれし者たちにとっては楽しい思い出であっても、ユーリル本人は楽しくないと感じていたら?
彼もまた時代と世界に選ばれてしまった勇者で、本当は勇者になりたくのかったのだとしたら?
本当のことはユーリルしか分からない。
それはロザリーの勝手な想像。
でも、これ以上死者を冒涜するのは見捨てておけなかった。

「お、お止めください勇者様! あなたはこんな方が出来る方では――」

肩を掴んで、ユーリルの凶行を止めようとする。
しかし、ユーリルはロザリーの体を突き飛ばし、吹き飛んだロザリーは後頭部を強かに木に打ち、意識を失った。
倒れたロザリーの体を抱き起こし、意識がないことを確認すると、マリアベルは事情を知っていそうなブラッドに詰問口調で聞いた。

「……どういうことじゃブラッド?」
「俺にも分からない。 ただ、貴女なら知っているのではないか?」

ブラッドもユーリルに出会ってから経った時間は、マリアベルと数秒ほどしか時間が違わない。
名前さえ知らない。
だから、ユーリルと一緒にいたであろう人に聞く。
ブラッドは、その人物の方向に振り返る。


イスラもマリアベルも、ブラッドもアキラも、アナスタシアの説明を求める目で見た。
だが、アナスタシアは目をそらし、責任逃れをした。

「わ、私は……知らないわ……」

いけないことだったのか。
そんなに『英雄』とは生贄だと言ったことが悪いのか。
責めるような目で見るみんなの視線が、アナスタシアは痛かった。
ちょこもいない今のアナスタシアは、素人に毛が生えた程度の力しかない。
そのことも、アナスタシアの答を鈍らせる原因となっていた。
今ユーリルと、その他の人と戦うことになったら?
死が、近づいてくるのをアナスタシアは感じ取る。
そこで、ユーリルの足がピタリと止まり、憤怒の形相でアナスタシアを睨み付けた。

知らないだと?
誰のせいでこうなった?
どうしてこうなったと思っているんだ?
全ての原因はシンシアではなく、お前にあるのではないか?
勇者は生贄だと知ったせいで、誰がこんなに苦しんだと思っている?

そうだ、倒すべきはシンシアだったモノではない。
この<剣の聖女>、アナスタシア・ルン・ヴァレリアではないか。
アナスタシア憎しの感情が、ユーリルの中で膨れ上がる。
そして、それが頂点に達したとき、ユーリルは天の怒りを呼んだ。

「アナスタシアあああああああああああああああああああああああ!!」

ユーリルの声に応えるように、大きな雷が落ちた。
しかし、それは正義の雷でも、覇者の雷でも、勇気の雷でも、勇者の雷でもなかった。


雷は、黒い燐光を帯びていた。


ユーリルの憎しみに染まったかのような黒い雷が、ところ構わず落ちて破壊を撒き散らす。

「殺して、殺してやる! アナスタシア・ルン・ヴァレリアああああああああああ!」

何故、何故なのだろうか。
マリアベルはアガートラームを見つけたとき、これを然るべき人物に渡すつもりだった。
しかし、今のアナスタシアにはその気があまりしない。
アナスタシアが今までに見せたことの無い表情をしていたから。
普通の少女として生きたいと願っていた少女に、暗いものを感じたから。
けれど、アナスタシアが守る対象なのは変わりない。
マリアベルがロザリーを誰かに任せるか、どこか安全なとこへ運ぼうとしたとき、さらなる事態が起こる。

「ロザリー!」

かの声は、魔族の若き王ピサロ
ロザリーがいると分かって一心不乱に探し、疲労の果てに倒れ、そして起きたのがつい先ほどだ。
そこから再び捜索をすると、多数の人が集まっているところを発見。
近寄ってみれば、そこには愛しきロザリーの姿もある。
しかし、何やらロザリーは目を閉じられている。
しかも、衣服には血の跡と人間の姿。
それだけで、ピサロは何が起きたかを理解した。

「下等な人間風情が……ロザリーに何をしたァーーー!」

疾風のごとく駆ける。
怒りのあまり、ピサロには気づかない。
ロザリーの衣服の血が乾ききっていることにも。
雨雲で曇り、薄暗くなった空間ではそれも判別しづらい。

新手の登場に、イスラは舌打ちをしてピサロの進行方向に立ちはだかる。
どうも<剣の聖女>といると、ロクな目にあわないらしい。
やはりイスラはアナスタシアになど会いたくはなかった。
イスラにとって、アナスタシアは疫病神のようだった。
さらに、新手が現れる。

カエル!?」
「魔王だと!?」

異形の騎士と、オディオとは違うもう一人の魔王も現れる。

「行けるか、カエル?」
「言われずとも、な……」

北に進路を取っていた彼らが、黒い雷に惹かれたかのように姿を見せた。

「一体何人来るんだよッ!?」

アキラが迎撃の態勢を取りながら叫ぶ。

<剣の聖女>、アナスタシア・ルン・ヴァレリア。
堕ちた勇者、ユーリル。
魔族の王、ピサロ。
ガルディアを守る騎士、カエル。
オディオとは違う、もう一人の魔王。
ノーブルレッド、マリアベル。
スレイハイム解放戦線の『英雄』ブラッド・エヴァンス
死にたがりの道化、イスラ。
怒りによって勇気を得し者、アキラ。
気絶したエルフ、ロザリー。

そして離れたところにオスティア候、ヘクトル。
キアラン候の孫娘にして、ロルカ族のリン。
黒い牙の暗殺者、ジャファル。
ロザリーと同じく、気絶した非力な少女、ニノ。

実に14人もの人間が集まっている。
シンシアも含めれば15人。
残り人数の半分近い人間がここに集まっているのだ。

ユーリル、ピサロ、カエルと魔王。
三方向から襲い掛かる敵に対して、逃走はもはや不可能にも思えた。
どちらかに逃げようとすれば、背後をつかれる。
ならば、もう一つ残された方法をブラッドが提案する。

「アキラッ! テレポートはいけるか!?」
「分かんねぇ! いつでもいけるようにはするけどよ、ヘクトルたちが離れすぎてる! あいつら置いて行けねぇよッ!」

それもそうだ。
辛うじてここにいる人員をテレポートで離脱させても、ヘクトルたちがいる。
戻ってきたヘクトルたちが残された魔王たちの餌食にならないとは限らない。
ならば――

「戦うしかないということかッ!」

拳を、固く握り締める。
アナスタシアの護衛をしつつ、襲ってくる四人と戦う。
こちらもブラッドを含めてマリアベル、アキラ、イスラがいるが、戦闘力が互角かは分からない。
一人が倒れれば、残された人員もあっという間に死んでいくだろう。
マリアベルも戦闘の覚悟をした。

「正念場じゃぞッ!」

雨が。
本降りになって泥を跳ねさせる。

煙る雨の中、いくつもの戦いが、いくつもの想いを抱えて始まる。

「時間だ……」

その中で魔王オディオの声だけがよく響いた。
オディオの事前の予告どおり、激しい雨が戦場を濡らす。

降りだした雨は誰かの涙。
鳴りだした雷は誰かの怒り。

今。

残り半数以上を巻き込んだ戦いの幕は。

壮絶な雨模様の中、火蓋を切って落とされた。



【C-7橋の近く 一日目 夕方(放送直前)】
【アナスタシア・ルン・ヴァレリア@WILD ARMS 2nd IGNITION
[状態]:健康
[装備]:絶望の鎌@クロノ・トリガー、賢者の石@ドラゴンクエストⅣ
[道具]:不明支給品0~1個(負けない、生き残るのに適したもの)、基本支給品一式
[思考]
基本:生きたい。そのうち殺し合いに乗るつもり。ちょこを『力』として利用する。
1:あらゆる手段を使って今の状況から生き残る。
2:施設を見て回る。
3:ちょこにまた会って守ってもらいたい。
[備考]
※参戦時期はED後です。
※名簿を未確認なまま解読不能までに燃やしました。
※ちょこの支給品と自分の支給品から、『負けない、生き残るのに適したもの』を選別しました。
 例えば、防具、回復アイテム、逃走手段などです。
 尚、黄色いリボンについては水着セットが一緒に入っていたため、ただのリボンだと誤解していました。
※アシュレーも参加してるのではないかと疑っています。




【ユーリル(DQ4男勇者)@ドラゴンクエストIV】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、精神疲労(極)、アナスタシアへの強い憎悪、押し寄せる深い悲しみ
[装備]:最強バンテージ@LIVEALIVE、天使の羽@FFVI、天空の剣(開放)@DQⅣ、湿った鯛焼き@LIVEALIVE
[道具]:基本支給品一式×2(ランタンは一つ)
[思考]
基本:アナスタシアが憎い
1:アナスタシアを殺す。 邪魔する人も殺す。
[備考]:
※自分とクロノの仲間、要注意人物、世界を把握。
※参戦時期は六章終了後、エンディングでマーニャと別れ一人村に帰ろうとしていたところです。
※オディオは何らかの時を超える力を持っている。
 その力と世界樹の葉を組み合わせての死者蘇生が可能。
 以上二つを考えました。
※アナスタシアへの憎悪をきっかけにちょことの戦闘、会話で抑えていた感情や人間らしさが止めどなく溢れています。
 制御する術を忘れて久しい感情に飲み込まれ引っ張りまわされています。
※ルーラは一度行った施設へのみ跳ぶことができます。
 ただし制限で瞬間移動というわけでなくいくらか到着までに時間がかかります。



【ピサロ@ドラゴンクエストIV 】
[状態]:全身に打傷。鳩尾に重いダメージ。激怒
    疲労(大)人間に対する憎悪、自身に対する苛立ち
[装備]:ヨシユキ@LIVE A LIVE、ヴァイオレイター@WILD ARMS 2nd IGNITION
[道具]:基本支給品一式、データタブレット@WILD ARMS 2nd IGNITION
[思考]
基本:優勝し、魔王オディオと接触する。
1:目の前にいる人間を殺す。
2:皆殺し(特に人間を優先的に)
[備考]:
※名簿を確認しました。ロザリーの存在を知りました。
※参戦時期は5章最終決戦直後
※ロザリーが死んだと思ってます。
※一度気絶して起きたので、多少は回復してます。



【アキラ@LIVE A LIVE】
[状態]:テレポートによる精神力消費。
[装備]:激怒の腕輪@クロノ・トリガー
[道具]:清酒・龍殺し@サモンナイト3の空き瓶、基本支給品一式×3
[思考]
基本:オディオを倒して殺し合いを止める。
1:とりあえず状況に対処。 テレポートの使用も考慮。
2:高原日勝無法松との合流。
3:レイ・クウゴ、アイシャ・ベルナデット(カノン)、ミネアの仇を取る。
4:どうにかして首輪を解除する。
[備考]
※参戦時期は最終編(心のダンジョン攻略済み、魔王山に挑む前、オディオとの面識は無し)からです
※テレポートの使用も最後の手段として考えています
※超能力の制限に気付きました。
ストレイボウの顔を見知っています
※カノンの名をアイシャ・ベルナデット、リンの名をリンディスだと思っています。
※名簿の内容に疑問を持っています。



【ロザリー@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち】
[状態]:疲労(中)衣服に穴と血の跡アリ、気分が悪い (若干持ち直した) 、気絶
[装備]:クレストグラフ(ニノと合わせて5枚)@WA2
[道具]:双眼鏡@現実、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いを止める。
0:気絶
1:ピサロ様を捜す。
2:ユーリル、ミネアたちとの合流
3:サンダウンさん、ニノ、シュウ、マリアベルの仲間を捜す。
4:あれは、一体……

[備考]
※参戦時期は6章終了時(エンディング後)です。
※一度死んでいる為、本来なら感じ取れない筈の『何処か』を感知しました。
※ロザリーの声がどの辺りまで響くのかは不明。
 また、イムル村のように特定の地点でないと聞こえない可能性もあります。
※ロザリーが何を伝えたかは後続の書き手氏に任せます


【マリアベル・アーミティッジ@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:疲労(小)
[装備]:マリアベルの着ぐるみ(ところどころに穴アリ)@WA2
[道具]:ゲートホルダー@クロノトリガー、基本支給品一式 、マタンゴ@LAL、アガートラーム@WA2
[思考]
基本:人間の可能性を信じ、魔王を倒す。
0:眼の前の状況に対処。
1:付近の探索を行い、情報を集める。
2:元ARMSメンバー、シュウ達の仲間達と合流。
3:この殺し合いについての情報を得る。
4:首輪の解除。
5:この機械を調べたい。
6:アカ&アオも探したい。
7:アキラは信頼できる。 ピサロ、カエルを警戒。
8:アガートラームが本物だった場合、然るべき人物に渡す。 アナスタシアに渡したいが……?
[備考]:
※参戦時期はクリア後。
※アナスタシアのことは未だ話していません。生き返ったのではと思い至りました。
※レッドパワーはすべて習得しています。
※ゲートの行き先の法則は不明です。 完全ランダムか、ループ型なのかも不明。
 原作の通り、四人以上の人間がゲートを通ろうとすると、歪みが発生します。
 時の最果ての変わりに、ロザリーの感じた何処かへ飛ばされるかもしれません。
 また、ゲートは何度か使いましたが、現状では問題はありません。
※『何処か』は心のダンジョンを想定しています。 現在までの死者の思念がその場所の存在しています。
(ルクレチアの民がどうなっているかは後続の書き手氏にお任せします)



【ブラッド・エヴァンス@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:全身に火傷(多少マシに)、疲労(中)、額と右腕から出血、アルテマ、ミッシングによるダメージ。
[装備]:ドラゴンクロー@ファイナルファンタジーVI
[道具]:リニアレールキャノン(BLT0/1)@WILD ARMS 2nd IGNITION
不明支給品0~1個、基本支給品一式、
[思考]
基本:オディオを倒すという目的のために人々がまとまるよう、『勇気』を引き出す為の導として戦い抜く。
1:眼の前の状況に対処する。
2:自分の仲間とヘクトルの仲間をはじめとして、仲間を集める。
3:セッツァーとマッシュの情報に疑問。以後セッツァーとマッシュは警戒。
4:再度遭遇したらケフカを倒す。魔王を倒す。ちょこ(名前は知らない)は警戒。
[備考]
※参戦時期はクリア後。
※いかりのリング@FFⅥ、パワーマフラー@クロノトリガー、アリシアのナイフ@LIVE A LIVE、44マグナム&弾薬(残段数不明)@LIVE A LIVE 
 以上のアイテムは回収され、ブラッドたちに分配されました。
 細かい配分はお任せします。



イスラ・レヴィノス@サモンナイト3 】
[状態]:アルテマ、ミッシングによるダメージ、疲労(中)
[装備]:魔界の剣@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち
[道具]:不明支給品0~1個(本人確認済み)、基本支給品一式(名簿確認済み)
    ドーリーショット@アークザラッドⅡ
    鯛焼きセット(鯛焼き*2、ミサワ焼き*2、ど根性焼き*1)@LIVEALIVE、ビジュの首輪、
[思考]
基本:感情が整理できない。自分と大きく異なる存在であるヘクトルと行動し、自分の感情の正体を探る。
1:眼の前の状況に対処。
2:ケフカと再度遭遇したら確実に仕留める。
3:次にセッツァーとマッシュに出会ったときは警戒。
[備考]:
※高原、クロノ、マッシュ、ユーリル、ヘクトル、ブラッドの仲間と要注意人物を把握済み。
※参戦時期は16話死亡直後。そのため、病魔の呪いから解かれています。



【カエル@クロノ・トリガー】
[状態]:左上腕脱臼&『覚悟の証』である刺傷。 ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:にじ@クロノトリガー
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本:ガルディア王国の消滅を回避するため、優勝を狙う。
1:眼の前の戦闘に参加。出来る限り殺す。
2:魔王と共に全参加者の殺害。特に仲間優先。最後に魔王と決着をつける
3:できればストレイボウには彼の友を救って欲しい。
[備考]:
※参戦時期はクロノ復活直後(グランドリオン未解放)。



【魔王@クロノ・トリガー】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:魔鍵ランドルフ@WILD ARMS 2nd IGNITION 、サラのお守り@クロノトリガー
[道具]:不明支給品0~1個、基本支給品一式
[思考]
基本:優勝して、姉に会う。
1:眼の前の戦闘に参加。出来る限り殺す
2:カエルと組んで全参加者の殺害。最後にカエルと決着をつける
[備考]
※参戦時期はクリア後です。ラヴォスに吸収された魔力をヘルガイザーやバリアチェンジが使える位には回復しています。
※ブラックホールがオディオに封じられていること、その理由の時のたまご理論を知りました。
※遺跡の下が危険だということに気付きました。






※ミラクルシューズ@FFIV、ソウルセイバー@FFIV、シンシアの持っていたデイパックがシンシアの死体付近に落ちてます。
※デイパックの中には基本支給品一式*3、ドッペル君@クロノトリガー、デーモンスピア@DQ4、昭和ヒヨコッコ砲@LIVEALIVEが入ってます。

時系列順で読む

BACK△098-2:Famille?▼099:戦友へ

投下順で読む

BACK△098-2:Famille?▼099:戦友へ

098-2:Famille? シンシア GAME OVER
アキラ 106-1:届け、いつか(前編)
アナスタシア
ブラッド
イスラ
カエル
魔王
ユーリル
マリアベル
ロザリー
ピサロ
ヘクトル 108-1:暴かれた世界
リン
ジャファル
ニノ
ちょこ 110:シャドウ、『夕陽』に立ち向かう


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年07月02日 22:55