アシュレーのパーフェクト首輪教室 ◆iDqvc5TpTI
フィガロ城。
トカの襲撃から始まった一連の戦いの舞台になったその城は今また喧騒に包まれていた。
剣と剣が鬩ぎあう音でもなく。
拳と拳がぶつかり合う音でもなく。
魔法と魔法が激突する音でもない。
生活観溢れる日常の音に包まれていた。
トンテンカン、トンテンカン。
リズミカルな音を響かせ、トンカチが振るわれている。
作業主の名は
トッシュ。
常日頃握っている剣を金槌に持ち替えて彼が行っている作業は天井の修復だ。
4人でこれからどうするかを相談した結果、彼らはフィガロ城に残ることを決定したのである。
それは主にゴゴの以下の主張が取り入れられたが故だった。
もしかすればどこかにテレポートしてしまったであろう
ビッキーが戻ってくるかもしれない。
真相を問いただしたいセッツァーの元へと赴くにはフィガロ城の地下潜行機能を使うのが一番時間の短縮になる。
トカはともかくアシュレーやトッシュに少女を見捨てるなどという選択肢は無い。
セッツァーに関しては4人中3人が当事者だ。
トッシュには
無法松との約束もあったが、どの道今からでは間に合わない。
できるだけタイムロスを減らして行くにしろ、やはり城の潜行能力に頼るのが最良手だ。
調べたところによるとフィガロ城はA-6村にある壽商会というところの地下階層へと乗りつけることも可能らしい。
アシュレーがセッツァーと出会ったD-7にもわりかし近い位置取りで文句はなかった。
故に誰もゴゴの意見に反対することなく会議は滞りなく終了。
第三回放送までビッキー達を待った後、何事もなければフィガロ城でA-6村へと向かい、
座礁船まで歩いて行き松達と合流してセッツァーや仲間を探すことに決まった。
そこからは支給品の整理や交換の後、各自フィガロ城においてできることをなし始めた。
トッシュの場合は潜行の妨げになりかねない天井の大穴の修理だ。
この男、剣以外はからっきしダメかと思われがちだが、何気に手際がいい。
指名手配されていた為に拠点としていた大型飛行船を自らの手で修理しないといけなかった経験が役に立っているのである。
城の構造を熟知していたゴゴと、こんな時に備えてか蓄えられていた多くの資材があったのも穴を塞ぐ大きな助けとなっていた。
「ふう。とりあえずはこんなもんかあ?」
いささか見栄えは悪いがとりあえず地下に潜るくらいには問題ないまでに修復された天井を見上げ、トッシュは満足げに息を吐く。
そのタイミングを見計らってか横合いから飲み物の入った竹筒が差し出された。
「大したものだな」
隣でまじまじと天井を見つめるのは、もはや見慣れてしまったへんてこりんな姿をした物真似師、ゴゴ。
よせやい、と少し照れくさそうに笑いながらトッシュは水筒へと口をつける。
「酒じゃねえのかよ」
「安心しろ、そういうかと思って酒の方も調達しておいた」
どこか喜色を含んだ声でゴゴが左手に抱えていた幾多もの酒瓶を掲げる。
分かってるじゃねえかとトッシュも合わせて笑みを浮べた。
「んで、まさか酒集めばかりしていたわけじゃねえだろ。そっちの方の調子はどうなんでい?」
「順調「よくぞ聞いてくれたトカ! 皆さんお待ちかね、今、禁断の静寂を破って魔導アーマーが蘇るッ!」
「いや、俺はあんま待ってねえから。っつうかおい、おまけよりも先に報告しねえとならねえ大事なこと頼んでいただろ!?」
「はてなんのことやら。カルシウムが圧倒的に足りない赤毛男はほっといてさあさみなさんご一緒にッ!
せーの、まーどーうーアーマーッ!!」
「まーどーうーアーマーッ!!」
「って、ゴゴ、なにちゃっかり乗せられてんだ、てめ!」
「俺はゴゴ、物真似師だ」
「選べよ、物真似の対象くれえ! ああ、なんだかアシュレーの野郎の苦労が分かってきた気がすっぜ……」
頭を抱えるトッシュをよそに延々とテンションを上げ続けるトカとゴゴ。
果たして世界はこのままトカ空間に飲み込まれてしまうのか!?
否、断じて否!
混沌とした世界に颯爽と現れる救世主、その名も
アシュレー・ウィンチェスター!
「出し渋ったままでいても出番なく終ってしまうんじゃないかな。ほら、無視される可能性も大いにあるブルコギドン的に」
「「はううっ!?」」
痛いところを突かれて蹲るトカともう一人。
そんな彼らを華麗にスルーしてアシュレーはトッシュと互いに憂いに満ちた瞳を交わし合った。
『その、なんだ。さっきは誤解して悪かった。大変なんだな、あんたも』
『あっはっは……。慣れてるから。うん、慣れたくなんかなかったけれどさ……』
一瞬で伝わるシンパシー。
がくりと肩を落とした二人とは逆に早くも立ち直ったトカとゴゴが共同作業の成果を前面へと押し出す。
それはトッシュも痛い目に合わされた魔導アーマーに違いなかったが、外見は恐竜じみた姿から翼竜じみた姿へと改装されていた。
そしてその感想は間違ってはいない。
飛ぶのだ、新しい魔導アーマーは!
改良点は主に次の三つ。
まずはトカに適正がないバイオブラスター、デジョネーター、コンフューザー、魔導ミサイルの4つは思い切ってオミット。
排除することで得たスペースに蒸気エンジンを参考に作られた新型エンジンを装着。
おじゃんにされた下半身は分解・再構築され脚部としてでなくバランサーとして作り直し、完成!
「「見よ、これぞ我輩と魔導アーマーの人と機械の垣根を越えた友情が産み出した奇跡の超兵器ッ!
我輩の設計した飛翔エンジン『やみくも』を搭載した生まれ変わりし魔導アーマーッ!
名を『スカイアーマー』ッ!」」
「と、飛ぶのかそれが? っつうかエンジン名がとてつもなく不安なのは俺の気のせいか?」
「すごい! さっそく実験を兼ねて本番に臨もうッ!」
「いやアシュレー、どっかへ飛んでいってもらいたいのは山々だが首輪の解体が先だろ!?」
そう、それこそがこの城に残るにあたってトッシュ達が最もやっておくべき作業。
元の世界から持ってこられたままの状態だからか、はたまた地下潜行中に故障が起きた時へのオディオからの配慮のつもりか。
専門的な工具や数多の資材が放置されていたのだ。
これを首輪の解析に活かさない手はない。
幸いというには御幣があるが、トッシュ達の手元には三つの主を失った首輪があった。
一つは言うまでもなく
リルカ・エレニアックの形見。
残る二つはリオウとアティに嵌められていたもの。
二人の遺体を埋葬するにあたってトッシュが首輪を外すことを進言したのだ。
そんなくだらねえものを嵌められたままじゃおちおちあの世にもいけねえだろ、と。
これにはアシュレー達も深く頷き、埋葬前に首輪を外すこととなった。
もちろん死者の首を切断してなどという方法ではなく、首輪のほうをばらばらにして、だ。
死体にとはいえ装着されたままの首輪を解体すれば爆発してしまうのではという懸念もあったが、杞憂に終った。
主の死と共に機能が停止していたのかすんなりと外すことに成功したのである。
最も、解体作業を行ったトカが『ん、どこか間違えたトカか?』『はら~~~~~ッ!?』などと常にあたふたしていたため、
トッシュ達は心休まる時がなかったのであるが。
それはそれとして今回の解析作業に使われたのはその後者の方、リオウとアティの首輪だった。
焼け焦げた後さえあるものの、殆ど原型を留めている絶好のサンプルであるリルカの首輪を消費するのは時期早々だと判断したからだ。
「そのことなんだがこれを見てくれないか?」
目の前になんだか変てこなものがごちゃごちゃしたものがいっぱい置かれる。
学のないトッシュも流石にそれらが首輪を解体しきったものだということくらいは理解したがそれ以上には分からない。
「覚えのあるものがあれば教えて欲しい」
そう言われても無理なものは無理だ。
ただでさえ悪い目つきをより悪くしてまでガン見するが知っている部品なんてこれっぽっちもない。
お手上げだった。
「わりい。力になれそうにねえ」
「これだから浅学な赤髪はダメなんだトカ」
「そういうならお前はさぞ役に立ったんだろなあ!」
「「……」」
「って、おい、ゴゴ、アシュレー、なんだその目は? ま、まさか」
「「残念ながら首輪の解体とその先で一番役に立ったのはそこの何かだ」」
「なっにいいい!?」
トッシュが驚くのも無理はないがトカはこれでもIQ1300の超天才なのだ。
性格にはとんでもなく問題はあるが彼を仲間にしようとしたリオウの判断は間違ってはいなかった。
それが今こうして実を結び首輪を外すことへの大きな一歩を刻みだしたのだから。
「これを見よッ!」
ぱんぱかぱ~んという効果音が似合う動作でトカが七色に光る石をガラクタ群から拾い上げトッシュへと渡してくる。
見ろと言われてもただの綺麗な石ころだな程度の感想しか持てない彼に対して、後を継ぎアシュレーが説明を始めた。
「これは感応石っていう僕達の世界で使われていた通信用の道具なんだ。
人の思念を増幅し、固有のパルスに変換する性質を持っていて遠くまで音声や映像を飛ばすことができるんだ」
「ああ、思い起こすはかの魔法のテロリストオデッサの決起の日。
壇上に立ったヴィンちゃんが世界中に宣戦布告した時のこと。
呼ばれてなかったからただの捏造ではありますが」
「……つくづく利用されるだけだったんだな」
ぼそりとアシュレーの物真似をしてトカに突っ込みを入れるゴゴ。
その言葉にショックを受けてよよよと泣き崩れるトカをスルーしつつトッシュは問いかける。
「通信機? んなもんがどうして首輪ん中に入ってんだ?」
「考えられるのは殺し合いを観賞するためと監視する為だ。
感応石が自動的に僕達の声や映像をオディオへと送っているんだと思う。一種の生放送だ」
それはオディオにとっても最優先事項だろう。
開幕を告げた時の口ぶりや放送の内容からしてもオディオは殺し合いの結果だけでなく過程をも気にかけている。
またオディオに抗おうとしている人間を監視する意味合いもあるはずだ。
実際首輪を外そうとしている人間もここにいる。
「なるほどな。っておいおい、それじゃあまずいんじゃねえか!?
思念を増幅するってえことは俺たちの考えがオディオに筒抜けってことじゃねえか!」
「それについては大丈夫だと思う。
感応石にある心と心を繋げる力。
それは文字通り心を繋げる――つまりは双方向通信なんだ。
今僕達はオディオの心を感じられない。ということはオディオの方も僕たちの心の中までは読めていない」
「おお、そいつは朗報だぜ!」
「けどその心を繋げたり意思を増幅したりする機能は監視以外にも利用されているみたいなんだ」
しかも三つも。
そう重く告げてアシュレーはまず右人差し指を立てた。
「一つ目。多分だけど言語の翻訳にも感応石が一躍買っている」
「言語だあ?」
「僕とトッシュ、ゴゴはそれぞれ別世界の人間だ。にも関わらず何の不都合もなくこうして言葉を交わせている。
ドラゴン次元の住人だったロンバルディアとも会話が可能だった前例はあるけれど、
彼の場合は僕達の世界でかなりの時間を過ごしていた。
その間に言葉を覚えていても不思議じゃない。
でも、僕達は違う。今日始めて会ったばかりなんだ」
「なるほどな。それなのに言葉が通じてるっるうことは……」
「感応石の意思を伝える力のおかげだと思う」
言葉そのものでなくその言葉を発しているアシュレー達の意思を互いの首輪の感応石が送受信しているからだとすれば説明がつく。
このことに指摘したのは感応石を知っていたアシュレーでもトカでもなくゴゴだった。
物真似師として常に相手の一挙一動すら見逃すことなく観察していた彼は、
相手の口の動きと聞こえてくる言葉の間に不適合があることにかなり早くから気付けていたのだ。
「口の動きか。言われてみれば確かに違和感があるな。よく分かった。続けてくれ」
トッシュの反応に頷き、アシュレーは右中指を立てて話を続ける。
「二つ目。これは推測だけどオディオが死者を把握できているのも感応石のおかげかもしれない」
「人の思念が完全に途切れるのは死んだ時だけっつうことか?」
「そういうことさ。感応石が思念を増幅している時に出すパルスは石と持ち主それぞれで波長が少し違うんだ。
その反応を機械化何かでモニターしていてそれがキャッチできなくなった時、
オディオはその石の持ち主に死亡判定を出しているんだと思う」
音声だけなら、映像だけなら。
なんらかの手段で死を偽装できるかもしれない。
だが思念に関しては話は別だ。
おいそれとごまかせるものではないし、それこそ死にでもしない限り途絶えるものでもない。
オディオもそこに目をつけて生死の確認をしているのでは?
死した後に意志のある亡霊達に身体を乗っとられたアティという例もあったが、感応石は死者の念は受け付けない。
もしもそんな力があるのなら、今頃感応石が全国的に普及しているファルガイアは死者たちの声に溢れかえっていることだろう。
しかしながら現実にはそんな話、噂でさえ聞いたことがなかった。
感応石が生者と死者の念を取り間違えることがない証拠である。
「オディオにとっては好都合この上ないってことさ」
そこで一度アシュレーは言葉を切り、右薬指を立てて再び口を開く。
「僕達にとっては最も重要である三つ目に移ろう」
「爆弾のことだな」
「「「……」」」
「何だよ、また押し黙りやがって」
「トッシュ、一つ思い出して欲しい。さっき見せたばらばらにした首輪のことだ」
「言ったと思うが知っているものなんざ一つもねえぜ」
「そう、無いんだ。あるべきはずのものが。僕達誰もが知っていて、かつ、首輪の中に無ければならないものがッ!」
「めんどくせえ言い回しは無しだぜ。分かりやすく言ってくれ」
「爆弾が、無いんだ」
「……は?」
何を言っているんだ、こいつは?
爆弾が、無い?
トッシュを混乱が襲うも思い返してみれば言われた通りだ。
先ほどトッシュが見たパーツの中にはそれらしきものは一つもなかった。
剣にのみ生きてきたトッシュだが相棒であった
シュウが爆発物のエキスパートであったこともありそれなりに馴染みはある。
攻撃が届かない敵に向かって腹立ち紛れに究極の爆弾を投げつけたことだってあった位だ。
だからこそそれらしきものを目にしたのなら、種類までは分からなくとも爆発物だと見抜くくらいはできたはずだ。
だというのに解体された首輪の部品の中にはトッシュに覚えのあるものは一つも無かった。
爆弾さえなかった。
「どういう、ことだ?」
唖然とした表情でトッシュが呟く。
まさか首輪の中に爆弾があるというのはオディオのはったりだったのか?
それはない。
オディオにそんなはったりをかます理由はなく、現に始まりの場で二人の人間が首輪の爆発で命を落としている。
何かがあるはずだ。
爆弾ではない。けれど爆弾と同様の何かが。
必死で頭を悩ませるトッシュにアシュレーも同意する。
「僕達も一度そこで行き詰った。爆弾から逃れようにもそれ自体が見つからないならどうしようもない。
必死で色々な可能性を追求した。かって僕が戦った爆弾型モンスターのようなパターンまで疑ったくらいだ。
けれどそのどれもこれもが納得のできる答えを導き出せなかった」
「そこで頼りになるのがこの頭脳。我輩は言いました。二度あることは三度あるどころか四度ある。
ここまで全部感応石に関係していたところを見るにもう全部感応石のせいにしてもよくね、科学的に? と」
「謝れ! てめえ科学に謝れ!」
思わずツッコミを入れてしまったトッシュの肩をゴゴが優しく叩く。
「トッシュ、それにアシュレーはこう返した」
「「すごいぞ、意外と間違っていないかもしれないッ!」」
「それでいいのか、科学!?」
「気持ちは分かるが落ち着いて今度はこれを見てくれ」
アシュレーが何かを握っていた左手を開いた瞬間、淡い光が漏れ出す。
その色は、碧。
トッシュの記憶にも新しいある亡霊が振るっていた刃の色。
「まさか、そいつは……」
「碧の賢帝(シャルトス)の破片だ。これがぎっしりと首輪の中に詰められていた」
「んな馬鹿な。あの魔剣はてめえが叩き斬ったんじゃなかったのか?」
「シャルトスを打ち直して創られたウィスタリアスがシャルトスと同時に存在していた以上、
一本しかないはずの剣が十本二十本ある可能性も否定できないんだ」
「まじかよ。つくづくでたらめだな、あの魔王は」
「それにありえないはずのものならもう一つある」
アシュレーの言葉に合わせゴゴがごちゃごちゃした物体をアピールせんと掲げ上げる。
一見すると動物の骨のように見えなくもないが、その割には機械的な箇所も見受けられた。
これまで同様トッシュにはその変てこなものを言い表す言葉がない。
「なんだこりゃ?」
「さっきからそのセリフばっかりであるな」
「うっせえ!」
トカの物真似で茶々を入れるゴゴに唾を撒き散らすトッシュ。
アシュレーはその様子に僅かに笑みを浮べるも、すぐに消してトッシュに答えを教えることにした。
「僕がかって塵も残さず吹き飛ばしたはずのあるドラゴンの化石なんだ」
「ドラゴン?」
「ドラゴンって言うのは……」
「待て待て待て! 俺の世界にもドラゴンはいる。それよりもどうしてここでドラゴンが出てくるんだ?
魔剣はともかくドラゴンは今までの流れと関係ねえんじゃねえか?」
「そうでもないんだ。僕達の世界ではドラゴンの化石はロストテクノロジーの産物で武器や機械の材料になるんだ。
それも使うものを選ばないとはいえ精神感応が必要な強力な物の材料にッ!
そして話を戻すけどあの魔剣はアティから譲り受けた知識からするに意思の強さでその力を増すらしいんだッ!」
「精神感応……? 意志で力を増す魔剣? そうか、それなら話が繋がる!」
トッシュの中でパズルのピースが噛みあう様に理解が浸透していく。
感応石、魔剣、そしてドラゴンの化石。
全てに共通するのがそれが人の意思に影響を受けるという特徴。
思念を増幅する石、心次第で力を増す剣、精神感応兵器。
それらを統合するにオディオが作ったこの首輪は首輪型の精神感応性兵器なのだ。
爆弾が仕込まれていたのではなく、首輪それ自体が強力無慈悲の爆発を生じさせるARMだったのだ。
部品に使われている魔剣の凄まじさならトッシュも体感したとおりだ。
天変地異さえも用意に起しかねない圧倒的な魔力のうねり。
あれが肌に密着した状態からぶつけられようものなら魔法が苦手なトッシュでなくとも一溜まりもない。
あまり想像したくない事態を思い浮かべてしまい、トッシュは苦い顔になる。
が、そこで一つの疑問に突き当たった。
「待てよ? 確かにあの剣の力は下手な精霊の力を上回るほどに凄かったが例えば同じ剣の力なら相殺できるんじゃねえか!」
アシュレーからナイトブレイザーに関して聞いた時、補足として語られた魔剣の話を思い出す。
シャルトスとウィスタリアスの他にもう一本キルスレスという魔剣があるらしい。
アシュレーも実際に見たというその剣の力があれば、或いは危険が伴う為軽々しくは使えないがアシュレーがアクセスしさえすれば。
首輪の爆発にも耐え切り、オディオの掌から逃れられるのでは?
鬼の首を取ったかのように嬉々として語るトッシュだったが、当の本人であるアシュレーは首を横に振るばかりだった。
「ただのドラゴンの化石なら僕もその方法を試みたかもしれない。
けれどトカの分析によると120%の確率でこの化石は超兵器グラウスヴァインの物だったんだッ!」
「ヴィンちゃんに頼まれてグラウスヴァイン召喚魔法陣のデータを検分したことのある我輩ですぞ?
100%では足りないレベルで間違いないトカあるトカ!
はて、そういえばあれがヴィンちゃんからあった最後の指令だったような?」
「トカゲ、てめえが仲間外れにされてた過去なんざどうでもいい!
それでその核兵器ってのはそんなにやべえものなのか?」
「やばいなんてものじゃない。星一つ吹き飛ばしかねない威力の爆弾だッ!」
「けっ、首輪爆弾の材料にするにはこれ以上ない素材っつうことかよ」
オディオは魔力爆発に耐えられそうな一部参加者への対策に首輪の火薬代わりを二重に用意していたのだ。
トカの行ったシミュレートによると爆発のプロセスはこんなところだ。
初めに感応石を通じ参加者のルール違反を知ったオディオが自らの感応石で爆破の思念を送る。
その思念に共感した首輪側の感応石が瞬時に首輪主のありとあらゆる思念を凡百かまわず最大限まで増幅。
発生した膨大なそれでいて統率されていない意思エネルギーにより魔剣とARMが共に暴走起動を起こす。
そして魔剣とARMが自らの発するエネルギーを制御できなくなる臨界点を一気に突破して。
暴発
圧倒的なまでの魔力と核の洗礼を受け、哀れ魔王のルールを破った人間は死に至る。
耐えるなどおこがましい。
逃れることなどできはしない。
科学と魔法、その二つの頂点に位置する暴力に同時に晒されるのだから。
「そんなにすげえものならホールで二人の人間が殺された時に俺達を巻き込むくれえの爆発が起きたんじゃねえのか?」
「首輪にはいくつかブラックボックスがあったんだ。
その中にバイツァダストのように爆発の余波を次元転移させる機構があるんだと思う」
「どうせなら爆発を丸ごと転移させて欲しいもんだぜ」
忌々しげに毒づいた後トッシュは髪をわしわしとかきむしる。
首輪のほぼ全容が見えたのは大きな前進だったが、その内容は想像以上に凶悪なものだった。
監視・盗聴完備な上に強力無比、オディオは指先一つ動かさずに爆発できる。
その悪夢じみた完璧さにトッシュは舌を打つ。
「私の意思次第で自在に爆発する首輪だ、たあよく言ったもんだぜ。
どうすんだ? 俺達の行動は全て監視されてんだろ。
あいつが思った途端に爆発するんじゃ防ぎようがねえじゃねえか」
「あきらめなければ何とかなるトカーッ!」
「あったりめえよ! 誰が諦めてやるかってんだ!
いざとなりゃあオディオが思うよりも先に斬るまでよ!」
半ば本気で言ったことだったがそれに応える声が脳裏に響いた。
『そうだ、諦めるのは速い』
男のような女のような声。
老人のようでいて若者らしくも思えるおかしな響きな声。
相反する矛盾を内包したその奇妙な声の持ち主はトッシュの目の前にいた。
「ゴゴ、何か言ったか?」
「気のせいだ」『何もないように振舞え。俺は今お前の心に直接話しかけている』
ゴゴはちらりとトッシュの右手を見る。
釣られて己が右手に視線を落とせば握ったままだった感応石がうっすらと輝いていた。
『オディオの方も僕たちの心の中までは読めていない』
ついさっき聞いたアシュレーの言葉がゴゴの物真似によって再生される。
そこまで言われてトッシュもゴゴの思惑をようやく感じ取りにやりと笑った。
そうだ、感応石の本来の用法、心を繋ぐその力を以て心の声で会話すればオディオといえど盗聴することはできまい。
『『なら、それを利用しない手はねえよなあ!』』
監視自体はされたままな為、首輪解除自体はすぐにはできないが、オディオに聞かれたくない相談をするには十分だった。
『よく思いついたな、こんな方法』
『オディオが感応石を使っているのならこちらも感応石を利用すればいい。簡単なモノマネだ』
どこか誇らしげに言った後ゴゴはアシュレーへと感応石を投げ渡す。
完全に解体した首輪が二つしかない以上、取得することのできた感応石の数もまた二つだ。
意思伝達できるのは自然と一対一の二人に限られてくる。
『確実とは言えないけれど首輪を無効化できる方法がいくつかある』
既にゴゴとトカには伝えたであろうことをアシュレーはトッシュにも伝える。
『聞かせてくれ』
『まずはARMSと魔剣にそれぞれ対処する方法だ。
僕の元の世界の仲間であるマリアベルならARMの構造には詳しいから核の方は無効化することも不可能じゃない。
魔剣だってアティから譲り受けた知識やキルスレスの入手、持ち主だというイスラって人が助けてくれればトッシュの言ったように相殺できる』
『次に首輪の中核である感応石にアプローチする方法だ。
僕達の世界には念話を専門にした術者であるテレパスメイジという職業が合ったんだ。
もしもそれに類似する能力を持つ思念術に長けた誰かを仲間にできれば感応石による監視や首輪の起爆をどうにかできるかもしれない』
『これら二つはここにいる僕達にはできない方法だ。
特にテレパスメイジの方はいるかどうかも分からない希望的観測に過ぎない』
『松達が集めてくれている面子の中にいりゃあいいんだがな』
『だから本命はこれから言う三つ目だ』
アシュレーはデイパックから地図を取り出し、トッシュ達三人に見えるように広く広げる。
トッシュ達四人が見てきたエリアや施設の情報を事細かに記載した地図。
そのうちの追記されていないまだ見ぬ地や深く調べることの無かった海底や遺跡を順々に指差していく。
『どんなに純度のいい感応石でもこんな小さな物じゃ通信範囲はたかが知れているんだ。
心を結んだ者同士ならともかく単純な通信機器として使うならこの島一帯すらカバーできない。
その欠点を補う為にはあるはずなんだ。
オディオ側の感応石と首輪の感応石の中継点になる巨大な感応石を設置したテレパスタワーのような施設が。
或いはその代わりになる何かがこの島のどこかに、僕達が知らない場所にある』
ならばすべきことはただ一つ。
『僕たちは何としてでもその施設を見つけ出して破壊するッ!』
皆を守らんとするアシュレーの宣言に
『おうっ!』
トッシュは力強く頷いた。
【G-3 フィガロ城 一日目 夕方】
【ゴゴ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:疲労(小)
[装備]:花の首飾り、ティナの魔石、壊れた誓いの剣@サモンナイト3
[道具]:基本支給品一式 、点名牙双@幻想水滸伝Ⅱ、解体された首輪(感応石)、閃光の戦槍@サモンナイト3
ナナミのデイパック(スケベぼんデラックス@
WILD ARMS 2nd IGNITION、基本支給品一式)
[思考]
基本:数々の出会いと別れの中で、物真似をし尽くす。
1:放送まで城で待機。ビッキーを待つ。その後フィロ城でA-6村に行き、座礁船へ
2:テレパスタワーに類する施設の探索と破壊
3:セッツァーに会い、問い詰める
4:人や物を探索したい。
[備考]
※参戦時期は本編クリア後
※本編クリア後からしばらく、ファルコン号の副船長をしていました
※基本的には、『その場にいない人物』の真似はしません。
※セッツァーが自分と同じ時間軸から参戦していると思っています。
【トッシュ@
アークザラッドⅡ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ほそみの剣@
ファイアーエムブレム 烈火の剣
[道具]:不明支給品0~1個(確認済)、天罰の杖@DQ4、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いを止め、オディオを斬る。
1:放送まで城で待機。その後フィロ城でA-6村に行き、座礁船へ
2:テレパスタワーに類する施設の探索と破壊
3:セッツァーを探しルカを倒す
4:必ずしも一緒に行動する必要はないがちょことは一度会いたい。
5:基本的に女子供とは戦わない。
[備考]:
※参戦時期はパレンシアタワー最上階でのモンジとの一騎打ちの最中。
※紋次斬りは未完成です。
【アシュレー・ウィンチェスター@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:疲労(小)、右肩から左腰にかけての刀傷
[装備]:果てしなき蒼@サモンナイト3、ディフェンダー@アーク・ザ・ラッドⅡ 、解体された首輪(感応石)
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0~1個(確認済み)、
焼け焦げたリルカの首輪、レインボーパラソル@WA2、魔石『マディン』@ファイナルファンタジーⅥ
[思考]
基本:主催者の打倒。戦える力のある者とは共に戦い、無い者は守る。
1:放送まで城で待機。ビッキーを待つ。その後フィロ城でA-6村に行き、座礁船へ
2:テレパスタワーに類する施設の探索と破壊
3:ブラッドなど、仲間や他参加者の捜索
4:セッツァー、ケフカ、
シャドウ、
アリーナを殺した者(ケフカ)には警戒
5:アクセスは多用できない
※参戦時期は本編終了後です。
※蒼炎のナイトブレイザーに変身可能になりました。
白を基調に蒼で彩られたナイトブレイザーです。
アシュレーは適格者でない為、ウィスタリアス型のウィスタリアスセイバーが使用できること以外、能力に変化はありません。
ただし魔剣にロードブレイザーを分割封印したことと、魔剣内のアティの意思により、
現段階ではアシュレーの負担は減り、ロードブレイザーからの一方的な強制干渉も不可能になりました。
アティの意思は、徐々に磨り減っています。アクセスを行うとその消耗は加速します。
【トカ@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:疲労(小)
[装備]:エアガン@クロノトリガー 、スカイアーマー@ファイナルファンタジーⅥ
[道具]:クレストカプセル×5@WILD ARMS 2nd IGNITION(4つ空)
天命牙双(右)@幻想水滸伝Ⅱ、基本支給品一式×2
[思考]
基本:リザード星へ帰る。
1:野蛮な赤毛男(トッシュ)を含む参加者と協力し、故郷へ帰る手段を探す。
2:もしも参加者の力では故郷に帰れないなら皆殺しにし、魔王の手で故郷に帰してもらう。
[備考]:
※参戦時期はヘイムダル・ガッツォークリア後から、科学大迫力研究所クリア前です。
※クレストカプセルに入っている魔法については、後の書き手さんにお任せします。
※魔導アーマーはスカイアーマーに改修されました。が、トカ製な為妙なアレンジが施されていたり、いきなり調子が悪くなったりするかもしれません。
時系列順で読む
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最終更新:2010年06月19日 23:41