遺志を継ぐもの ◆O4VWua9pzs
「どうして、こんな酷い事を……」
山の中を歩く少女はポツリと悲壮に満ちたため息を漏らす。
少女の中で思い浮かぶのは先ほどの光景。
オディオと名乗る主催者相手に勇敢に立ち向かった少年の死、そして無残な姿へと変貌した少年に駆け寄る神官の死。
二人の死に
リーザの心境は複雑に交差する。
もしかしていたら、自分も彼らのようになっていたかもしれないのだ。
少年が死んだとき、リーザは彼らの死を呆然と眺めていた。
リーザは突然の事に呆気に捕らわれていたけど、思考が戻るとすぐに神官と同じように少年に駆け寄ろうとした。
シュウの「行くな」という言葉が耳朶を打つが、無我夢中に駆け寄ろうとしていた。
無理だと分かっていながらも、今ならまだ間に合うかもしれない。
そんな矛盾めいた願いの下、リーザは足を速めた。
でも、それは叶う事はなかった。
後、十数歩という目の前で、神官姿の男性の首が弾け飛んだのだ。
目に焼き付かれる陰惨な光景にリーザはわなわなと唇を震わせ、その場に崩れ落ちる。
「クリ、フト……。クリフトォ――ッ!!」と、彼の知人なのか、女性の叫び声が聞こえる。
とても親しい間柄だったのだろう、その声は悔しさと悲しさが入り混じった、とても聞くに堪えない悲しいものだった。
「そんな、どうして……」
リーザは放心状態のまま、ポツリと涙を混じらせ、言葉を漏らす。
そして、気づいたときには漆黒の広がる林の中にいた。
その光景を思い出すたび、リーザは思う。
クリフトと呼ばれる青年はただ少年の安否を気遣っただけなのだ。
私と同じように無理だと分かっていながらも、
少年のために傷を施しに行っただけなのに…無残にも殺されたのだ。
彼はたった一人だった。少年の一方的な惨殺の前に皆が恐れおののく状況の最中、
たった一人の救済者だったのだ。
勇敢で心優しい行為の目の前で、どうしてオディオはこんな酷い仕打ちを与えるだろうか。
多くの者は彼を命知らずの愚か者と感じるだろう。
でも、リーザは違った。彼の行いは勇敢で心優しいものだった。
この行為によって少年の魂は救われたに違いない。
だからこそリーザは決意する。
絶対に魔王オディオを許さないと。
そして、少年を慈しんだ彼のように―――皆を救いたい。
クリフトのように勇敢に立ち向かえるようになる。
一番最初に怪我人に駆け寄る強さを受け取りたい。
そう、リーザは心に誓ったのだった。
リーザはそんな決意を胸に詰め込み、また足を進める。
今、彼女が向かっているのはこの地点から最も近い砂漠の塔であった。
エルクやシュウ、
トッシュ、
ちょこを含む、
この殺し合いに乗らない人たちに会い、オディオに対抗する方法を考えなければなかった。
リーザは人が集まりそうなところへと茂みを掻き分け押し進んだ。
前方に広がるのは漆黒の闇。
不吉な予感を想像させる黒い空間にランプの明かりを照らし、道を切り開き、ただひたすら西に向かった。
その途中、不意に全身にへばりつく邪悪な気配がリーザを襲う。
誰に見られている。圧倒的な殺意を巡らし、今にも私に襲い掛からんとしている。
「誰!! 近くにいるのは!!」
リーザはまだ見ぬ監視者に対して声を大きくは張り上げる。
叫び声が森閑とした周囲に響き渡る。
そのとき、リーザの目の前に突然大男が姿を現す。
その男の姿は背丈二メートル以上ありそうなほど巨躯であり、
上半身は裸に髪型はスキンヘッド、そして、恐持ての顔つき。
外見上どう見ても友好的には見えない上に、常に付き纏う異質のオーラにリーザは一歩距離を引いた。
「よく気づいたな。女とはいえなかなか勘が鋭いな」
「あなたは何者ですか?」
異質なオーラを放つ男にリーザは問いかける。
それは名前を問う質問ではない。
この男自身の存在を問う質問。
「あなたから放たれる異質な力……人とは思えないその力……何者です?」
「ほう、そこまで分かるのか? 私が“人”ではないことが」
リーザの目の前にいるのは最強を目指すがうえに人を捨て、
己を魔人へと変貌させた
オディ・オブライトであった。
オブライトは自分の正体を見破った少女に感心しながら、
リーザの全身を嘗め回すような目つきで見据え、呟く。
「勘がいいようだが、俺を満たすには少々物足りないな」
蛇を想わせる狡猾な視線に身震いを覚えながらも、リーザは言葉の意図を尋ねる。
「どう言う意味ですか?」
ニタニタと笑みを浮かべ、オブライトはか弱い少女を見下ろす。
「ふ、教えてやろうかぁ? お前の身体に興味があるのだ」
オブライトのおぞましい答えに吐き気と供にリーザはヒッと一瞬声を漏らした。
貞操の危機にナイフを構え、警戒心を高める。
「はっはっはっは、何を怯えているのだ? 勘違いするなよ…俺はただお前の戦闘能力に興味があるだけだ。
ひょろひょろのガキ相手では俺の心は満たせない。
『最強』を目指すためにも……己の『最強』を誇示すためにもなッ!!」
オブライトはリーザに見下したような高笑いをあげる。
「つまり、あなたは殺し合いに乗っていると?」
リーザは自分の不運を嘆きながらも問いかける。
「無論だ……だが、雑魚には興味がない。
ただ俺が求めるのは『強者』のみだ。
まあ、俺に歯向かうなら相手をしてやってもいいぞ…女」
そう、言葉を終わらせるとオブライトはこの殺し合いの最中、無防備に背を向け歩き出す。
完全に彼女から興味を失ったのだ。無防備にも背を向けたのはリーザに対する戦力外通告であった。
幸な事かリーザは魔人オディ・オブライトの魔の手から逃れたのであった。
リーザは漆黒の林の中へと消えていくオブライトの後ろ姿を黙って見つめていた。
現状況で戦闘すれば、敗北は必死であった。
リーザ自身戦闘能力はあるが、回復や魔法といった後方支援に適しているのだ。
ここで戦闘をするのは愚の骨頂ともいえる。
「止まりなさい」
だが、リーザは高らかに声を上げオブライトを引き止める。
オブライトは声に反応し、後ろを振り向く。
「殺し合いに乗るというなら私はあなたを止めます。
仲間を傷つけさせないためにも私は全力で立ち向かいます」
そこにはナイフを前に構えるリーザがいた。
リーザは決意したのだ。
もうあんな悲しみを生まないためにも。
後悔しないためにも。
勇敢に立ち向かった人々の意思を無碍にしないためにも。
死の覚悟を決め立ち向かった。
リーザは宣戦布告と同時に魔法を詠唱の構えをとる。
唯一の攻撃呪文『アースクエイク』を唱える。
相手の距離は離した、この距離なら先手はこちらにある、そうリーザは考えていた。
「がががぁあああ!!」
と、言葉と同時にリーザの身体が宙を舞った。
一瞬の出来事であった。
気づいたら一気に間合いを詰められていた。
気づいたら胸部に男の豪腕が突きつけられていた。
「…うがぁ」
胸に重い衝撃が伝わる。
リーザはあまりの激痛にその場に蹲る。
その衝撃は呼吸器官を弾圧し、リーザの呼吸を見る見るうちに奪っていく。
リーザは見誤ったのだ。圧倒的な戦力差に開きあるという事に。
その巨躯に似合わぬ俊敏さで詰め寄ってくる速さを持っている事に。
そして、最大の敗因――――
「ふ、愚か者め、お前如きにこの俺が倒せると思ったのかッ?」
地面にひれ伏すリーザの腹を蹴り上げる。口元から吐血がにじみ出る。
「この状況下わざわざ宣戦布告する馬鹿がどこいるのだッ!!」
オブライトは言う。
『最強』とはどんな状況下の中でも常に戦闘状態に構えるようにしなければならない。
食事の最中であろうが、酒を飲もうが、睡眠中であろうが、常にアンテナを張り巡らせ、戦いに備える。
日常的に闘気を張り巡らせるのだ。
いかに強かろうが、隙を付かれ、殺されれば意味が無い。
死=敗北なのだ。
オブライトにとって油断は一切無い。
「覚悟が足りん……この雑魚がッ!!」
喉元を片手で掴み上げ、空中で首を締め上げる。
「あの世で後悔するがいいッ!! このオディ・オブライトに歯向かったことをッ!!」
首を締め上げられ、酸欠になりながらリーザは思った。
覚悟が足りない事を後悔していた。
オディオに殺された少年とクリフトを見て、決意していたはずなのに。
だが、魔人はその決意を暴力的に打破する。
私の決心はそんなものだったの?
意識を遠のくにつれ、後悔の念が更に湧き上がる。
私はまだ何も始まっていなかった。殺し合いをまだ意識していなかった。
次はそうならないようにする。だが、もう遅かった。
リーザは最後に思う。
ごめんなさい。皆私はもう…。
その言葉を心の中で言うとリーザは意識を失った。
+++
漆黒の森を駆け抜ける一つの足音。
静寂広がるこの森で騒ぎの声を聞きつけ、疾風のごとく駆けつける。
叫び声を聞きつけるといなや、足を奮い立たせ、全速力で声の方向へと進んだ。
暗闇慣れた目は次第に騒ぎの現状を目に焼き付けられる。
そこに見えるのは刺青の背中に大柄の男。
片手で何か持ち上げている?
その姿は空に蒼く光る月に照らされ、神に祈りを捧げているように見えた。
駆ける男は祈り手の先を見る。それは神に祈りを捧げているようなものではなかった。
それは、邪教の儀式のようだった。その手には……。
ヘクトルはそれを認識すると剣を引き抜き、一気に踏み込み、背を向ける男に縦に振りかぶる。
「このクソ野郎が!!」
ヘクトルの完全に男の脳天を捕らえる。
アーマーナイトの鎧さえ貫ける剛の一撃が放たれる。
だが、その一撃は防がれる。
「何!!」
ヘクトルはあまりの突飛な出来事に驚愕する。
得意の武器である斧でないにしろ、ヘクトルの攻撃は豪腕の一撃。
その威力は相手を一刀両断できる凄まじいものだ。
だが、それを両腕に着けられた小手だけで防がれたのだ。
普段ならこの腕ごと叩き割る自信があるのだが。
目の前の出来事は驚愕としか言えない。
それもそのはず、男は装備する小手は名工――源氏の小手。
柔な武器では傷一つ付ける事が出来ない代物であった。
「ほう、気配の消し方といい、その踏み込みといい。
この俺を楽しませてくれそうではないかッ!!」
すかさず、魔人オブライトは反撃の一撃を加える。
ヘクトルはそれを体の捌きで避け、間合いを離すため後ろに大きくステップする。
「つるっぱげ…てめぇ、女を殺したのか!?」
ヘクトルはオブライトを睨め付け、剣を構えながらじりじりと横に移動し、お互いに間合いを維持する。
「いい目をしている。多くの死線を潜った鋭い目つきだ」
「質問に答えろ、なぜ殺したんだ?」
「ああ、殺したどうかは分からんが、瀕死に違いないだろう。だが、勘違いしては困るな。
これは正統防衛だ。あちらから俺に立ち向かってきたのだよ」
「信じられると思うか」
激昂の限り睨み付けるヘクトルの気迫を無視し、言葉を続ける。
「信じるかどうかはお前しだいだ。それにしてもあまりで脆弱で反吐が出そうだった。
つまらん女だった。……だが、お前は大いに楽しませてくれそうだ」
オブライトは地面を蹴って、ヘクトルへと踏み込み、鳩尾に掌打を打つ。
その踏み込みの速さは砲弾を連想させる。
突然の攻撃にヘクトルは咄嗟に剣を側面にして、その攻撃を防ぎ切るが、
その勢いを殺しきれず、ガードを崩す。
その瞬間、オブライトの掌打が連続して放たれる。
その威力は鎧に守られているにもかかわらず、大地がゆっくりと砕けるような衝撃が胸に伝わる。
オブライトにとって鎧など紙切れに過ぎないのだ。
長年修行した気の力によって、波紋の如く衝撃を浸透させる。
鎧通しと呼ばれる日本古来から伝わる技法。
ヘクトルの巨躯が軽々しく吹き飛ばされてしまう。
オブライトは追撃に入るべく、大きく跳ねとび、顔面目掛け拳を振り上げる。
地面を転がるヘクトルは体勢を立て直すと、同時に足と体を捌かせ、オブライトの打突ポイントをずらす。
オブライトの拳は目測の地点とは大きくずれ、地面に叩きつけられる。
拳の重圧によって、地面の枯葉が高く舞い上がる。
その一瞬の隙を狙い、ヘクトルの刃が首元を狙う。
普通ならここで決着が付くのだが、オブライトは両手を交差させ、小手で受けきる。
それはあまりに暴力じみた反射神経。人間の所蔵と思えない、人間の範疇を超えたものであった。
「クソが、人間とは思えねえぜ」
オブライトはすかさず無防備になった身体に前蹴りを食らわせる。
前蹴りのよって、宙に吹き飛ばされる最中、ヘクトルは焦っていた。
こんなところで、油を売っている場合ではないのだ。
すぐにでも、少女の安否を確認したいのだが、目の前の敵はあまりに規格外。
怪我人に構っていられるほど余裕はない。自分の死を覚悟せざるえないほど男は強い。
ヘクトルは苦戦を強いられていたのだ。
本来の得意の武器でない上に、付き纏う焦燥感。
その二つがじわじわとヘクトルを縛り付ける。
「どうしたあ? 動きが鈍くなってきたぞ?」
一方的な攻撃の前にヘクトルは防御のみに絞られる。
ヘクトルはこの不利な状況を打破する答えを搾り出す。
だが、その答えは―――
「はああああああああああッ!!」
拳と剣がぶつかり合う。
その瞬間、ヘクトルの唯一の武器鋼の剣が砕け散った。
―――金切り音と同時に闇の中へと消え去った。
ここからは一片の隙も与えない攻防であった。
いや、それは紛れも無く一方的な虐殺であった。
ヘクトルはなされるがまま、オブライトの攻撃を一身に受ける。
いくら抵抗しようが、ガードは崩され、全身のいたるところに拳を浴びせられる。
ヘクトルとはいえ、武器を失った時のために格闘術は一通り習っていた。だが、それを上回るオブライトの格闘術。
急所だけは何とか避わし、意識だけは失われないようにしていたが、そろそろ体力は限界に近づいて来ていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、まだ俺は倒れて…いやしねえぞ、つるっぱげが!!」
ヘクトルは立つのもやっとであった。
むしろ、生きているのすら不思議なほど満身創痍であった。
オブライトはにやりと頬を持ち上げ、止めの一撃を顔面に食らわせる。
顔面が陥没必至の一撃。
ヘクトルの死は確定的であった。
だが、それは確定することなく防がれる。
「なにぃッ!?」
足元から隆起した鋭い岩片がオブライトを襲う。
オブライト突然ことに足元の自由を奪われ、傷を負うが、
すぐに状況を理解するため周囲を見渡す。
そして、目に映るのは立つのもやっとの女がオブライトを見据える光景。
「女、よくも俺の邪魔を……」
オブライトはすぐにでも地を踏みしめ、リーザの元へと間合い詰めようとする。
だが、その一瞬の隙が。
「やらせはしないぜ!」
オブライトは振り向く。身体に何かが貼り付けられている。
それは、ハゲワシの羽に似た見た事もない代物。
『キメラの翼』が突きつけられていた。
その瞬間、翼が砕け散り、効果を及ぼす。
オブライトの巨躯が宙を舞う。
刹那、高速でどこか彼方に飛ばされたのだった。
ヘクトルは空高く舞い上がるオブライトを眺める。
奴の突然の驚きようは死に逝く自分にとって、手土産になるだろう。
エリウッド、リン、そして―――
フロリーナ…すまねえ…俺はここで退場だ。
そう、思いながら、ヘクトルはそのまま大の字に倒れる。
肉体が軋みを上げ、自分だけが分かるレクイエムを奏でる。
そこに、ふらふらと身体を引きずって、ヘクトルの元に少女が駆け寄ってくる。
その全身の怪我は見るに痛々しい。
まあ、俺ほどじゃないけどな……。
「大丈夫か、すまねえな。もうちょっと早く駆けつければ無傷であんただけでも逃がせられたのによう」
「ごめんなさい、私のせいで……私のせいで…」
「へっ…俺が勝手にしでかしただけだ…それに女に泣かれるのは…。
フロリーナだけで…じゅうぶんだ……かんべんしてくれ。
まあ…また……泣かしてしまうけどよ」
そう、言葉を紡ぐと、心の中でもう一度最愛の者に謝った。
涙を浮かべるリーザは息も絶え絶えのヘクトルを見渡す。
立派に飾られた鎧に拳の跡が至るところに刻み込まれ、酷いものとなると捻り潰されているものもある。
それは明らかに相手の膂力の凄まじさを物語っていた。
「今すぐ、あなたを癒します。だから、心配しないで待っていてください」
「ああ……ありがてえ。いつでも待ってやらあ」
ヘクトルは悲しい嘘だと思っていた。ライブの杖もなしにすぐに傷を癒すことは不可能なのだ。
最後の最後まで俺を心配させまいとする心遣いだと。
だが、その認識は覆される。
リーザはその瀕死にヘクトルの姿を見ると詠唱の構えを取る。
優しい光がヘクトルの身体を包み込む。すると見る見るうちに傷が癒されていくのだ。
ヘクトルはライブの杖なしに魔法を使える事に驚愕し、リーザの顔を覗き込む。
その顔は汗だくで体調は優れていない。見る見るうちに生気が失っているようにすら見える。
「おい、お前!! 止めろ!! もしかしてお前……」
「ごめんなさい、いつもより…治癒力が…弱いの。
でも…ホルンの魔女リーザ・フローラ・メルノが……。
絶対に……あなたの傷を……治すわ…」
「止めろ!! 俺のことはいい!! あんたはあんたのこと心配するんだ!!」
ヘクトルは何度も声を張り上げ、治癒呪文を唱えるリーザを制する。
が、リーザは一心不乱に詠唱を続ける。
ヘクトルを『救う』ために。
あのときのように後悔はしないために。
クリフトのように勇敢になりたいために。
オブライトに打破された偽りの覚悟ではなく。
―――本物の覚悟を。
傷ついた身体を鞭打って唱え続けた。
これ以上魔力を使う事は死を意味していた。
だが、命を賭して、唱え続けた。
リーザの身体が大きく光ると、治癒力も大幅に増大し、
ヘクトルの満身創痍の身体は綺麗に治されていた。
「わ…たし…やり…ま……し………」
ヘクトルの元気な姿を確認すると、リーザは弱弱しい笑顔を見せ、その場に崩れ落ちた。
ヘクトルは崩れ落ちるリーザを咄嗟に抱える。金色の髪がさらさらと腕に流れ落ちる。
その身体はあまりに冷たく、軽かった。
紛れも無く死が訪れを意味していた。戦乱で何度も体験した人の死。
それが、今ここで訪れていた。
「おい!? どうしてなんだよ!! なぜあんたが死ぬ必要があるんだ。
本当は俺が死ぬはずだった。それなのにどうして俺じゃなくてあんたが死ぬ事になるんだ。
なぜだ……なぜなんだ!!」
ヘクトルは憤りと悲しみの入り混じった言葉を投げかける。
だが、腕の中の少女の耳には届かない。
少女は自分が救った者の腕の中で眠っている。
そのか細い死に顔は安らかのものだったのかは、彼女自身しか知らない。
【リーザ@アークザラッドⅡ 死亡】
【残り53名】
【F-5 森林 一日目 深夜】
【ヘクトル@
ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:全身打撲(小程度)
[装備]:なし
[道具]:リーザの不明支給品1、聖なるナイフ@DQ、基本支給品一式×2(リーザ、ヘクトル)
[思考]
基本:オディオをぶっ倒す。
1:仲間を集める。
2:オディ・オブライトを倒す。
[備考]:
※フロリーナとは恋仲です。
※キメラの翼@DQは砕け散りました。
※鋼の剣@DQは刃が砕け散りました。
【??? 一日目 深夜】
【オディ・オブライト@
LIVE A LIVE】
[状態]:両足に損傷(小程度)
[装備]:源氏の小手 @FF
[道具]:不明支給品1~2個(確認済み)、基本支給品一式
[思考]
基本:『最強』を目指すため最後まで生き残る。
1:強者と戦う、弱者には興味は無い
2:リーザを殺す
3:ヘクトルと再戦(生きていると思っていないが)
[備考]:
※魔法の存在を意識しました
※キメラの翼によって何処か遠くに飛ばされました(場所は次の書き手に任せます)
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最終更新:2010年06月19日 04:19