瓦礫の死闘-VS魔神・ゴゴ、『黒の夢』に……- ◆wqJoVoH16Y
石の崩れる音を聞きながら
ちょこは目を覚ました。
自分でも等身が変わって、覚醒を解いてしまったことが分かる。
いったい何があったのか。それを思いだそうとして、下腹部がぎゅぅんと悲鳴を上げようとした。
「大丈夫だ。ちょこ」
だが、それをあやすようにちょこの手が握られる。
大きくもなく、小さくもない。でも優しく暖かい手のひらだった。ちょこは、その暖かさを覚えている。
「ゴゴ、おじさん……」
見上げた先には、フードをかぶった誰よりも優しい人がいた。
砂煙の舞い上がった薄暗い空でも、この人のいる場所ならば明るいと思えた。
「ごめん、なさい……ちょこ、ちょこたち……止められなかった……」
その優しさに、ちょこのまなじりが緩み、ポロポロと涙が浮かんでくる。
これまでに膨れ上がった恐怖が、涙となってこぼれ落ちた。
あの人をゴゴに会わせてはならない。あの怪物は、もう自分たちの生きる世界にいない。
攻撃は必ず当たり、こっちの攻撃は必ず失敗する。
いろんなものがめちゃめちゃに出てきて何もかもに法則性がない。そして声が届かない。
そんな世界観の違う怪物を相手には何も通じない。ゴゴが望む結末は、絶対に訪れないのだ。
「ああ、分かってる。大丈夫だ。大丈夫だよ、ちょこ。
アキラも眠っている。お前は何も失っていない。失っちゃいない」
だから、そういってあやしてくれるゴゴの優しさが、余計に辛くてちょこは涙を流す。
私のことはいいから、自分のことを考えて欲しいのだ。
「休んでてくれ。後は、俺に任せろ」
「…………だめ……いっちゃ、だめだよ……」
そういってゴゴは、ゆっくりとちょこを横にして、背中を向けて去っていく。
その背中に手を伸ばそうとしたが、泣きはらした子供の精神は弛緩しきって、ちょこの瞼を強制的に閉じた。
ここから先は見ない方がいいと、忠告するように。
砂煙をかき分けて、ゴゴは前進する。
運が良かった、と思う。あと何分か判断が遅れていたら、分断されてここにくることも出来なかった。
ストレイボウやアナスタシアのことも気になるが、自分をここに送り出した彼らの気持ちを無駄にすることは出来ない。
ちょこには大丈夫だと言ったが、それは事実の半分でしかない。
アキラは後頭部から出血しており、止血して何度か回復呪文をかけたが目を覚まさない。
ちょこに関しても……ゴゴが駆けつけたのはちょこが踏みつけられる瞬間だった。
近くに落ちていたデスイリュージョンを投げて瓶を破壊し、ぎりぎり破壊こそ守れたものの、
実際のところどうなのかははっきり言って分からない。
仮に身体は無事だったとしても……植え付けられた恐怖は、ひょっとしたら永遠に拭えないかもしれない。
彼ら2人に手を差し伸べるには、余りにゴゴは無力だった。
ちょこの涙を思い出して、得も言われぬ感情が浮かぶ。
あの優しい子は、一言も苦しいと言わず、ただゴゴの未来を案じていたのだ。
だからこそせめて、そのけじめをつけるべく、ゴゴは砂嵐の向こう側にたった。
「待たせたな。ここに来るまで、随分遠回りをした」
その煙の晴れた荒野に、黒いコートの背中があった。
ゴゴから背を向け、手でころころと白黒のダイスを回している。
「遠くからも、お前とちょこ達の戦いは見えていたよ。ちょこ達には手品に見えただろうな」
世間話をするような調子で、ゴゴは垣間見えたセッツァーの戦いを評した。
だが、そこに彼らのように疑問がる調子はカケラもなかった。
ゴゴには、最初からセッツァーが何をしたのか分かっていた。
「今日は随分と役の揃いがいいんだな――――そのスロット」
セッツァーのダイスを転がす手が止まる。
マッシュに必殺技があるように、
シャドウに投擲の技があるように、
ゴゴに物真似があるように、誰しも譲れぬ技がある。
セッツァーのセッツァーたる大技――――スロット。
下はミシディアうさぎ、上はバハムート召喚まで、
様々な役を内包した自身の内側にある乱数装置に身を委ねて奇跡を起こすギャンブラーの神髄。
ゴゴのものまね同様、世界法則を半分逸脱している能力だ。
ゴゴもよく知る技だから、ゴゴはそこまでは直ぐに看破できた。
だが、それだけでは彼ら2人が惨敗する理由にならない。
アキラが受けていた銃撃や、ちょこの羽をもがれた傷はスロットではないし、
スロットで圧勝するということは不可能なのだ。
そもスロットと名の付くとおり、この技は運に支配されている。
召喚獣召喚の役もランダムで、その役で出てくる召喚獣もランダムと来ている。
それを全部が全部リールを揃え、さらに自分に都合のいい召喚獣を
引き当て続けるともなれば、その確率は天文学的数字になる。
セッツァーがこれまでスロットを使ってこなかったのは、そのリスクの大きさ故だ。
僅かな失敗も許されないこの戦いで、スロットは死に技でしかない。
もし、それを本気で行えるとすれば、それはつまり。
「お前は、幸運を支配しているんだな」
バカツキ。
コロセウムの賭で百戦百勝。
ポーカーをやれば4枚と最初のカードでファイブカード。
ルーレットは全部一発特賞で店主禁断症状。
チンチロリンでお前の城の財政がヤバイ。
スロットを回したと思ったらゴスペルリングが手に入ってた。
そんな、あり得ぬほどの幸運が全ての条理をねじ曲げているのだ。
ふつうに考えれば、あり得ない。だが、その背中から迸る人間とは思えないほどの力を見れば、そうともいえなかった。
2つのダイスのうち、白きダイスからセッツァーの感情を変換するように、膨大なエネルギーが送られ続けている。
カスタムコマンド・フォースチャージ。
希望のミーディアムが持つ加護が、セッツァーの欲望と希望――夢をフォースに変えて満たし続けている今、
セッツァーは常に絶好調<コンディショングリーン>の上限を突破し続けている。
故に、ご都合主義が乱れ飛ぶ。
セッツァーが最速で飛び続けるために、空が彼のために道をあける。
セッツァーに関わる全てが、セッツァーに幸い<BEST>し、関わった全ての不幸<WORST>になる。
セッツァーの夢を叶えるために運命がひざまずく。
彼1人で、幸運のガーディアン・チャパパンガを誕生させかねぬ幸運――それこそがこの『絶対幸運圏』の真相だ。
(だが……それだけでここまでの領域に行くのか?)
だが、ゴゴにはまだ僅かに引っかかるものがあった。
フォースの力で絶好調なのは分かる。だが、この幸運は人間の持つ領域ではない。
まだ何か“幸運を底上げする何か”が潜んでいる気がした。
「……なるほどな。つまり、お前は俺を知っていると」
セッツァーはそこで初めてゴゴに声をかけた。
ここまでゴゴがスロットのことを話したのも、ひとえに彼がセッツァーの技を知っていることを持って、
自分がセッツァーを知っていることの証としたのだ。
「で、次はどんな与太を聞かせてくれる?
お前との出会いか? お前と旅をしたことか? ファルコン号の乗り心地か?
いいぜ、今の俺は気分がいい。妄想捏造贋作駄作フィクション、好きに歌えよ。
どうせ捨てる屑紙、中に何が書いてあったのか見るのも悪くはない」
だが、それさえももう今のセッツァーにはどうでも良かった。
ゴゴという知りもしない酒の味も、ゴゴが知るというセッツァーの味も、もう関係ないのだから。
「ああ、本当に気分がいいよ。この島に来てからチラチラチラチラ俺の空に変なものが混じってた。
見えねえし聞こえもしねえ、だけどそいつが“いる”ことだけははっきりしてやがる。
俺が気持ちよく飛んでいるのに、そいつはじっと俺の後方に張り付いて飛んでいるときた」
セッツァーのかつての酒を知る誰もがいう。
ゴゴという酒があった。お前と並んでそこに揃っていたと。
いないはずなのにいる。その時点ですでに不愉快。
そしていざ実物を見てみれば、当然知るはずもなく、しかもその酒には“ラベル”がない。中身もない。
ただ他人の酒をチャンポンにしてこれが俺だと謳う合成酒。呑むにすら値しない。
だが、何故か気になり続けた。あの黄金の憎悪を見たという以上に、思考の何処かで引っかかっていた。
「やっと、叩き壊せる。俺の空にいるんじゃねえよ。
重いんだよ。空気が乱れるんだよ。俺の翼を風除けにするなよ。
――――――ここには、俺の夢だけがあればいいんだよ」
やっとその理由が分かった気がする。
頂点を競い続ける
ピサロやジョウイと違い、こいつはただセッツァーを追っている。
目指すのは果ての夢ではなく、ただこの背中のみ。
“つまり邪魔だ”。
アキラやちょこはもはや問題にもならない。眼中にも記憶にもない。だがこいつは別だ。
存在自体がセッツァーの速度を殺している、この空に残った最後の汚点だ。
「だから、消えろ。お前がどっかで俺と会っていようがいまいが、今はもう要らない」
だから、セッツァーははっきりとそう言った。
心を折るなどと言う戦略はない。どのみち瓶ごと砕くのだから。
その迷い無き夢に、皮肉にも西風が吹き、セッツァーのコートをめくる。
その内側には、ゴゴ達が作った花の栞の全てがあった。
そして、そのどれもが分け隔て無くくすみ、ほとんど枯れ朽ちつつあった。
ファルガイアにおいて幸せの象徴であり、ある少女の祈りのこもった小さな花達さえも、
この悪夢・絶対幸運圏を維持する燃料でしかなかったのだ。
ファンタズムハートと小さな花十数枚分の幸運を吸い尽くしたセッツァーの夢。
唯一の『感情』にのみ満たされて稼働するそれは、規模こそ異なれど『オディオ』そのもの。
「それが全てだ、物真似師<プロフェッショナル>。鷹で飛ぶのは――――独りでいい」
三流だろうが一流だろうが、現在過去未来に通ずる全ての夢を終わらせる『黒の夢』だ。
「俺はゴゴ。物真似師で、ケフカを倒した後、ファルコン号の副船長をしていた」
だが、ゴゴはその夢から、現実から目を逸らさず、そう応えた。
先ずはありのままのセッツァーを受け入れ、自分の在り方を伝える。
何がどうであろうが、その始まりを済まさなければ次に進めない。
「お前の名前を聞かせて欲しい」
「……セッツァー。“世界最速”セッツァー=ギャッビアーニ」
ゴゴの問いに、セッツァーは少しだけ考えて応えた。
意図を理解しかねてか、或いは、自分という酒を確認するためか、素直に応えた。
「“世界最速”とは、何をする者だ?」
「全てを追い抜き、全てを置き去り、星を追う者」
それがセッツァーの夢。全てを捨てても叶えたい光。
「そうか、全てを追い抜き、全てを置き去り、星を追う者か」
ゴゴはそれをまず素直に受け止めた。とてもではないが物真似はできない。
これを物真似すれば、オディオ同様、ゴゴの世界を夢に喰い尽くされる。
だが、それでも、追いつきたいと思うから。
「では」
相手は絶対幸運圏の支配者。確率を無視して飛翔する魔神だ。
それこそオディオでもない限り、まともに戦えば絶対に負ける。
「“全てを追い抜き、全てを置き去り、星を追うこと”を止めるという物真似をしてみるとしよう」
それでも追う。
もしも本当に全ての幸運がセッツァーにあるなら、スロット最強の役で全員とっくに沈んでいるはずだ。
出せないのか、出さないのか――――なんにせよ、あの幸運圏には穴がある。
「誰でもない、キャプテンと旅をしてきた俺の物真似で」
声が届かないのならもっと近くへ、それでも足りないなら追い抜いてでも。
セッツァーのためなどとは言わない。他ならぬ、副船長であるゴゴの願いで飛翔しよう。
鳥が飛ぶ。白き翼をはためかせ、鳥が飛ぶ。
仲間を求めて、黒き夢へと飛んでいく。
黒の夢は、ついに空が浄化される瞬間が来たことを満面の笑みで迎え、ダイスを空に投げた。
「行くぞ、セッツァー。お前に追いついて、俺の声を届かせてみせるッ!!」
「そりゃ無理だ。誰も俺には追いつけない! 世界で一番近く、あの星空を見に行くんだからなッ!!」
自分こそが世界と歌う黒き鷹。世界こそが自分と歌う白い鳥。
八千八声、啼いて血を吐け、ホトトギス。その魂の詩が、きっと天地全てに響くから。
【ちょこ@
アークザラッドⅡ】
[状態]:ダメージ(極)、疲労(極) 気絶 生理的恐怖 片翼破壊
[装備]:ミラクルシューズ@FFⅥ いかりのリング@FFⅥ
[道具]:海水浴セット、基本支給品一式、ランダム支給品1個@魔王より譲渡されたもの 焼け焦げたリルカの首輪
[思考]
基本:みんなみんなおうちに帰れるのが一番なの
1:ゴゴおじさん、いっちゃだめ……
2:ゴゴおじさんやみんなをまもるの
3:ジョウイおとーさん……うそなの……
4:おとーさんになるおにーさんのこと、ゴゴおじさんから聞きたい
[備考]
※参戦時期は本編終了後
※殺し合いのルールを理解しました。トカから名簿、死者、禁止エリアを把握しました。
※アナスタシアに道具を入れ替えられました。生き残るのに適したもの以外です。
ただ、あくまでも、『一般に役立つもの』を取られたわけでは無いので、一概にハズレばかり掴まされたとは限りません。
※アシュレーのデイパックを回収しました。
※コマンド『かくせい』が使用可能になりました。ただし、ヴァニッシュ使用を含め覚醒時は常時魔力を消費します。
【ゴゴ@FFⅥ】
[状態]:疲労(極)瀕死 首輪解除 右腕損傷(大) 出血多量 物真似に対する矜持
[装備]:ブライオン@
LIVE A LIVE 、ジャンプシューズ@WA2
[道具]:基本支給品一式×2(ランタンはひとつ)
魔鍵ランドルフ(機能停止中)@
WILD ARMS 2nd IGNITION 、サラのお守り@
クロノ・トリガー
[思考]
基本:物真似師として、ただ物真似師として
1:セッツァー…俺の声を、届かせてみせる!
2:急ぎセッツァーと決着をつけ、他の仲間達の援護に向かう。
3:“救われぬ”者を“救う”物真似、やり通す”
[参戦時期]:本編クリア後
[備考]
※本編クリア後からしばらく、ファルコン号の副船長をしていました。
※基本的には『その場にいない人物』の真似はしません。
※セッツァーが自分と別の時間軸から来た可能性を知りました。
※内的宇宙のイミテーションオディオが紅の暴君に封印されたため、いなくなりました。
再度オディオを物真似しない限り、オディオは発生しません。
【アキラ@LIVE A LIVE】
[状態]:意識不明 精神力消費(極)疲労(極)肩口に傷 怨念に触れて精神ダメージ(中) 後頭部にダメージ@出血有
[装備]:パワーマフラー@クロノ・トリガー、激怒の腕輪@クロノ・トリガー、デーモンスピア@DQ4
[道具]:毒蛾のナイフ@DQ4 基本支給品×3
[思考]
基本:オディオを倒して元の世界に帰る。
1:セッツァー……お前が、松を……ッ!!
2:
レイ・クウゴ、アイシャ・ベルナデット(カノン)、
ミネアの仇を取る。
3:首輪解除の力になりたいが、俺にこれを読めるのか……?
4:ジョウイに対処する
[参戦時期]:最終編(心のダンジョン攻略済み、ストレイボウの顔を知っている。魔王山に挑む前、オディオとの面識無し)
[備考]:超能力の制限に気付きました。テレポートの使用も最後の手段として考えています。
※カノンの名をアイシャ・ベルナデット、リンの名をリンディスだと思っています。
※松のメッセージ未受信です。
※清酒・龍殺しの空き瓶@サモンナイト3はセッツァーに奪われ、破壊されました
【セッツァー=ギャッビアーニ@FFⅥ】
[状態]:クラス『黒き鷹の夢』 絶対幸運圏<LCK:BEST OVER> 魔力消費(中) ファルコンを穢されたことに対する怒り
[装備]:デスイリュージョン@アークザラッドⅡ 44マグナム&弾薬(残段数不明)@LIVE A LIVE
希望と欲望のダイス@RPGロワオリジナル バイオレットレーサー@アーク2
[道具]:基本支給品一式×2 拡声器(現実)ゴゴの首輪
天使ロティエル@サモンナイト3 にじ@クロノトリガー、
小さな花の栞@RPGロワ(徐々に枯渇中) 日記のようなもの@???
昭和ヒヨコッコ砲@LIVE A LIVE、アリシアのナイフ@LIVE A LIVE、
ルッカのカバン@クロノトリガー、
[思考]
基本:夢は取り戻した。あとは勝つだけだ
1:ゴゴを潰す
2:
ヘクトル(?)とピサロを利用し、参加者を殲滅する
3:ジョウイに関してはもうゲームからの脱落者として今のところ考慮しない
4:手段を問わず、参加者を減らしたい
※参戦時期は魔大陸崩壊後~セリス達と合流する前です
※ヘクトル、
トッシュ、アシュレー、
ジャファルと情報交換をしました。
※ジョウイからマリアベル達の現在の状況を知りました。その他の情報については不明です。
※ルッカのカバンには工具以外にルッカの技用の道具がいくらか入っています
※フレイムトライデント@アーク2、壊れた蛮勇の武具@サモンナイト3、ソウルセイバー@FFIVは破壊されました
[備考]
【希望と欲望のダイス@RPGロワ】
セッツァーの果てしない夢に呼応したアシュレーの心臓(=希望と欲望のミーディアム)が、
砕けたチンチロリンのダイスと融合して出来た白黒1対のサイコロ。
希望のミーディアムでもあるため、フォースチャージを使用可能。
【絶対幸運圏】
パーソナルスキル。フォースチャージによって極限まで高められ、
運の上位守護獣チャパパンガの領域にまで達した運気そのもの。
自身が行う&自身が対象となる全ての行動に対し強烈なLCK補正が働くスキル。
その幸運は『7』以外のスロットの出目を支配するほど。
ただし、自身の幸運だけでは足りないため、その維持には他の幸運も必要になる。
たとえば、少女が好きだった、道化師にすら手折られない、小さく真白い幸せさえも。
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最終更新:2012年08月26日 00:18