瓦礫の死闘-VS??・Hyper Evolve X-fire sequence- ◆wqJoVoH16Y



「かくて戦場の様相は三局に分かれ……三神に挑む北斗七星って所かしらねえ」
花畑の中に寝ころびながら酒をあおり、メイメイはとろんとした瞳を浮かべている。
その視線の先には、魔力を湛えた水晶玉があり、メイメイはそこからこの地底の遥か遠くにある戦場を見つめていた。
「……まさか、こうなるとは思ってなかったけどね。ピサロはともかく、あっちは完全に読み外しだわ」
その視線が見つめるのは、セッツァーとピサロ。いずれもメイメイが少しばかり示唆を行った者たちだ。
「省みた方がいいと忠告はしたけど……勝者<じぶん>を省みるとは流石に思わなかったわ」
確かに彼らに後ろを見るようにと忠告はした。だが、彼らは省みながらも己を揺るがせることはなかった。
自分たちがどれだけの敗者の上にいるのかではなく、ただ自分がどれほどの高みにあるのかだけを認識している。
その圧倒的な自分への想いが、貴種守護獣さえも屈服させて、力へと変えているのだ。
亡霊、残留情報に過ぎないはずのゴーストロードがここまでの力を発揮することも含め、
まさに彼らは天地を揺るがす鬼神・魔神・女神――――三闘神と呼ぶにふさわしいだろう。

「……しかし、行き過ぎではあるが間違ってはいない。
 自分を省みない者が、他人を省みるなど出来ないのだから」

ならばこの戦いもまた傍観すべきだろう。
人と人の意志のぶつかり合いに、傍観者は立ち入るべきではない。

(見つけて、熟成させなさいな、若人たち。自分自身の酒の味を。
 最高の一杯がなければ、オル様との酒宴に交わることもできないわよ)

勇者が見つけた至高の一杯を思い浮かべながら、傍観者はつうと酒を飲み干した。
そして、自分が今傍観すべき存在へと目を向ける。
「貴方は、それを理解していたのかしらね。若王様」
そこには、感応石の傍で眠りにつくジョウイの姿があった。
そして、その枕として、マリアベルの遺した手記があった。

「ごめんなさいね、真紅なる貴人。私ではここまで持ってくるので精一杯。
 後は、あれを読んだ彼に委ねましょう」

ただ酒を呑んでいるように見えるが、メイメイの動向はオディオの掌握下にある。
オディオの命令に反すれば、誓約の呪いで耐えがたい激痛に脅かされる。
ジョウイの下で傍観しなければならない以上、彼女がこの手記を運ぶ手段がないのだ。
だがなによりも、ジョウイの答えを聞いたメイメイは、この魔王がどこまで行けるのかに興味を持ったのだった。

「夢を見せてよ。私も、オル様も、誰も飲んだことのない一杯を。
 誰かを憎むなんてのも馬鹿らしくなるくらい、最高の一杯を」

今だ見えぬ運命に期待を寄せるようにして、メイメイは酒を注ぎ直した。


深い夢の中に、憎悪の怨嗟が渦を巻く。
物真似に過ぎない憎悪は、ディエルゴと合わさったことで、更に強く、恨み、憎み、呪い続けている。
こんなものが内的宇宙の中にあれば、もはや一睡もできないだろう。

――――私の声が、聞こえていますか?

だが、その中でジョウイは静かに目を瞑り、心を落ち着けていた。
憎悪の声に耳を傾けることをしばし休め、自分の中で響く彼女の声に耳を傾ける。

――私の名は、ロザリー。魔王オディオによって、殺し合いをさせられている者の一人です。

優しい音だった。母の腕に抱かれて安らかに眠っていた、古い記憶を思い出すほどに、甘い音だった。
一時だけとはいえ、憎悪の声を忘れてしまえるほどに、その歌は聖なるものだった。

――何より辛かったのは、私の死をきっかけに、私の大切な方が、悲しみと憎しみに囚われてしまったことです。

彼女の歌の一部が、死ぬ寸前の誰かの下に聞こえたのだろう。
その為に彼女の歌もまた、その誰かの死ごと、死喰いに呑まれようとしたのだ。
だが、それでも彼女の歌は途絶えなかった。こうして、この胸の中で響いている。

――どうか、その大切な人のことを思い出してください。その人が、貴方のそんな姿を望んでいるはずがありません。

胸の傷に染み入り、痛みが走るほど、その歌は真摯だった。
ジョウイにはその痛みさえも嬉しかった。まだ自分は狂っていない。
決してその痛みは忘れてはならない。その正しさを、決して忘れてはならないのだ。

――オディオに屈さず、未来のために手を取り合える強さを、私は信じています

僕は貴女に許されないだろう。だが、それでいい。
みんなが手を取り合える未来を創れるのならば、この血塗れの手は誰も掴まなくていい。
貴女は正しくあってくれ。そこに生じる歪みは、僕が間違えるから。

――憎しみに流されず、悲しみ囚われず、互いに理解する心を。

まどろみの中でジョウイは恐るべき速さで情報を整理していく。
残る参加者のこと、能力のこと、彼らの思考、所持する支給品、調べきれなかった支給品。
死喰い、オディオ、彼ら彼女らの願い、出会えなかった参加者、禁止エリアとその攻略法。首輪解除の可能性。
ここまで、ジョウイは我慢に我慢を重ねて英雄たちの下へ姿を隠してきた。
その情けなさと引き換えにえた、数多くの情報によって、彼はマーダーとしては破格の情報量を得ている。
そして、今、天にあるオディオの輪郭と、地に潜む死喰いの理屈を知った。

天地人。戦いに臨むために必要な3つを手に入れたのだ。

――人間も、エルフも、魔族も、ノーブルレッドも。誰もが、抱いているのですから。

ならば、残るは1つ。己が背負ったもののために負けられないジョウイは、最後の1つに手を伸ばす。

「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず。
 僕が何をできるのか、この魔剣で何をなせるのか、この場所で何を起こせるのか。
 僕は、敗者<ぼく>を省みる。全てを始めるのはその時だ」

死喰いを目覚めさせるために、既に魔剣の力は送り始めている。
故に、今は眠りの中で答えを探す。勝つために、導くために、僕に一体何ができるのかを知ろう。

――願わくば、私の声が多くの方々に。

来るべき戦いに向け、夢の中で算段を立てるジョウイは、二度と聞くことないだろう歌に心を委ねる。
何も知らぬ歌姫よ。きっとあなたの歌が聖なるは、邪なものを何一つ知らないからだろう。
それを知らぬ貴女の歌は、全てを失った人には決して届きはしないだろう。 だから。

――ピサロ様に、届きますように。

貴方の歌も、連れて行く。そしてどうか、楽園で歌ってくれ。
誰も何も失わない場所でなら、きっとその歌は、みんなに届くから。


【ジョウイ=アトレイド@幻想水滸伝Ⅱ】
[状態]:クラス『伐剣王』 ダメージ(中)疲労(中)半睡眠、全身に打撲 首輪解除済み 腹部に傷跡
[装備]:キラーピアス@DQ4 絶望の棍(絶望の鎌の刃がなくなったもの) 天命牙双(左)
[道具]:賢者の石@DQ4 不明支給品×1@ちょこの所持していたもの
    基本支給品 マリアベルの手記 ハイランド士官服
[思考]
基本:優勝してオディオを継承し、オディオと核識の力で理想の楽園を創り、オディオを終わらせる。
1:情報を整理し、自分に何ができるのかを考える
2:とりあえず死喰いを誕生させる準備は進める
3:メイメイに関してはしばらく様子見
[参戦時期]:獣の紋章戦後、始まりの場所で2主人公を待っているとき
[備考]:ルッカ、リルカと参加している同作品メンバーの情報を得ました。WA2側のことは詳しく聞きました。
    セッツァー達に尋問されたことを話しました。    
※紋章無しの魔法等自分の常識外のことに警戒しています。
※紋章部位 頭:蒼き門の紋章 右:不滅なる始まりの紋章

 *ロザリーが見たのは、死喰いに喰われたルクレチア@LALでした。
 ルクレチア以外の場所(魔王山等)が死喰いの中にあるかは不明。
 *召喚獣を使い、遺跡ダンジョンの地下1階~地下70階までを把握しました。
 *メイメイが地下71階に待機し、オディオにも通じる状態でジョウイを観察しています




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144-9:瓦礫の死闘-VS魔神・ゴゴ、『黒の夢』に……- アナスタシア 147-1:Aquilegia -わたしの意地、私の意地-
ピサロ
ちょこ 146:一万メートルの景色
ゴゴ
アキラ
セッツァー
ジョウイ 148:オディオを継ぐもの
ストレイボウ 145-1:さよならファイアーエムブレム
イスラ
カエル



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最終更新:2013年02月28日 17:00