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『今いるここからは、落ちてくだけのゲーム』


(キャラ) ゼオン・ベル





石仮面による吸血鬼化の恩恵。
まず、頭部を串刺しにされても戦闘を可能とするタフネスが真っ先に挙げられるだろう。
次いであげるとすれば、ロードローラを軽々と持ち上げ、
近距離パワータイプ最高峰のスタンドと競り合って呼吸一つ乱れない無尽蔵の体力だろう。
そしてその特性は、この命の授業においても遺憾なく発揮されていた。
だが、特級の問題が一つ。それは───


────チ、もうじき夜明けか。


これまでのゼオンでは考えもしなかった、吸血鬼としての致命打。
日光の問題が、彼に重くのしかかっていた。
時刻はそろそろ早朝。もうじき日が昇る時刻だ。このままでは命に関わる。
よって西部に位置する日光が差す心配のない施設に身を寄せる事を彼は優先せざるを得なかった。


「…ここでいい」


ゼオンが選んだ施設、それは映画館だった。
分厚い壁に囲まれ、戦闘さえ起きなければ日光が差す心配はない。
今のゼオンの現状には、非常に適した施設と言えた。
扉を蹴破り中へと入ろうとするが、それは不味いと思い留まる。
今はまだ、自身の身に科せられた制約を解決する支給品、その実験ができていない。
それ以前に、この施設には人がいると悟られるわけには行かない。それ故の判断だった。


「…………中には誰もいない、か」


自身の五感を鋭く尖らせ、中に誰か潜んではいないか確認を行う。
首尾よく一先ず誰もいないと見て良い結果に落ち着いた所で、ようやく慎重に中へと踏み入った。
こつこつと、タイル式の床を叩きながらより日光が差し込みにくい奥へと進む。
チケットを買うホールを抜け、スクリーンのある部屋へと。
途中上映している映画の宣伝のポスターのような物が次々目に入る。
『暗黒武術会決勝・戸愚呂チーム対浦飯チーム』
『学園都市暗部抗争』『幻影旅団ヨークシンシティ抗争』
『1998年ラクーンシティ洋館・生物災害発生報告映像』『283プロダクションW.I.N.G挑戦記録』etc…
様々なポスターが視界の端に映ったものの、どれも無視し通路の状態に気を配る。


(天井が高いな。ここなら戦闘になったとしても俺の弱点を知らぬ相手なら問題ない)


ホールや、ホールを抜けた先の通路も含め、中はわざわざ地図に記されるだけはある広さだった。
特にゼオンにとってありがたかったのは天井の高さだ。
映画館としては珍しい建築だったが、もし戦闘になったとしても相手が故意に天井を崩さぬ限り日光が差す可能性は低いだろう。
そしてスクリーン数もかなりの数があり、その数は15を数えていた。まぁこちらはゼオンにとってどうでもよいのだが。
取り敢えず、奥に位置するものの完全に袋小路と言う訳でも無い位置…8番シアターの扉を開き中へと踏み込む。
すると、何某かの音が聞こえた。思わずいつでも呪文を紡げるように身構えるが、やはり人の気配は無い。
怪訝に思い薄暗い場内を進むと、スクリーンに光がともされ何かの映像が上映されている様子だった。


(フン、ただの映画か……)


ここまで無人だったため、てっきり何も上映されていないと考えていたが。
どうやら、どんな仕掛けかは知らないが自動的に映画が上映されるようになっているらしい。
とは言え、そんな事は今のゼオンにとってどうでもよかった。
彼の今の関心はより重要な課題の解決に向けられていたのだから。
デイパックからごそごそと一振りの刀剣を取り出し、そして叫ぶ。


「グランシャリオ!」


掛け声と共に、ゼオンの小柄な肉体を漆黒の全身鎧が包んでいく。
それは修羅化身「グランシャリオ」と言う銘を受けた帝具であり、彼の支給品だった。
全身が装甲に包まれると共に、掌を何度か開くのと握り締めるのを繰り返し感触を確かめる。
吸血鬼の肉体に、更に力が満ちるのを感じた。更に全身くまなく装甲に包まれているため、日光も遮断できる。
だが、まだ確かめる必要のある事がある。持久力のテストだ。


「ふッ」


短く息を吐いて、それなりに広い劇場内を駆けまわる。
一周二周、三周……一周当たりの距離は大したことはないがそれが五十を超えればまとまった距離となり。
結果、一分足らずで53周もの周回を行ったゼオンは、そこでようやく止まり自身の状態を確かめた。
やはり息一つ切れてはいない。


───今の俺の状態であれば、使い物ではあるか。


グランシャリオは正真正銘ゼオンの支給品であったが、
戦闘で使う見込みが出てきたのは今この瞬間が初めてだ。何故なら、彼はこの帝具の適性が低かったためである。
身にまとう事は出来たものの、これを着て戦闘を行うというのは体力的な消耗が大きい。
加えて自分には防具など無くとも王家から与えられたマントがあるし、鎧を着ている間はマントが使えない。
それ故に彼は東方仗助、円堂らとの戦いでも、両面宿儺やヴォルデモート卿との戦いでもこの帝具を使用しなかった。
だが、今後はそうもいかない。マントでは日光から全身をカバーする事は難しいのだから。
それに加えて、低適正から来る体力の過剰消耗も吸血鬼となった肉体であればほぼ自己補完の範疇。
破壊さえされなければ、その気になれば日没まで纏い続けて行動できるだろう。


「……よし」


その事を想定し、グランシャリオは纏ったままでいる事とする。
そう決めたその時、ふと横手のスクリーンに意識が向く。
今まで上映していた筈なのに、視界に入ると共にゼオンの意識に合わせた様に映像はタイトルコールを流す。
それは、『ある兄弟の記録』と銘打たれていた。
文字列を読んだ瞬間不快な顔を思い出し舌打ちが漏れるが、それ故に意識は更に映像へと吸い寄せられる。
映像は実写で、淡々ととある人間の兄弟の生育記録を流していた。


浮浪者の女より生まれ出でて。
母親である女の生存に必要な栄養を奪い取って、その赤子は産声を上げた。
鼠にかじり取られ増水した川の水に攫われる時まで、赤子は自分が搾取し殺した死体から母乳を貪った。
本当に人間なのか疑わしく、反吐が出るほど悍ましい。王族であるゼオンはそう思い眉をひそめた。
映像が続く。赤子はずっと不遜だった。不遜で在り続けた。
対する赤子の弟は兄とは比べ物にならぬほど虚弱だったが、兄は弟を所有物と考えているらしく手放そうとしなかった。
どっかりと座席に腰掛け、肘をついてゼオンは腰を据えて映像を眺める。
何のことはない、日が昇るまでの暇つぶしだ。このまま外に出て弱者を狩る事を続けても良いが……
もし万が一日光に対してグランシャリオが意味を成さなければそのまま消滅の憂き目、それを避けるための待機。


───僕に黙って、何を読んでる?

───まだ文字の勉強中で難しい本は読めないんだけど…凄いよこのコミックって本、描いた人の願いが絵で伝わって来る……
───ヒーロー……僕もいつかこんな風になりたいな。


映される場面が転換し、次に映った兄弟はゼオンよりも年かさの少年二人へと成長していた。
奪い続ける兄と、何もできない愚鈍な弟。
どうしようもなく意識を引き寄せられるが、同時に言い知れぬ苛立ちが湧き上がってくるのをゼオンは感じていた。
贔屓の球団が絶不調で無様な試合を晒している状況もかくやの言い知れぬ苛立ちだった。
何故、猿山の大将を気取る程度の能力はある兄は、愚鈍なだけの弟を捨てない?
何故生かしておいても何ももたらさないゴミを後生大事にし続ける?
研鑽を積み続ける自分と違い間抜けに遊び惚けているらしい愚弟の存在を思い出し、どうしようもなく心が粟立つ。


───例の発光する赤子さぁ…あいつのシンパがとうとう百万人を超えたんだってさ。
───おかしいよな、だってあれは戸籍登録が一番早かったってだけで、インド何かじゃその二週間前には50人は異能が生れてたって話だぜ?

………兄さん……その姿は…………

───おかしな話だよ。そんなので人を集められるなんてさ。だから殺して「奪って」やった。

……な……なんで………?

───だって、あのコミックに描かれていただろ。
───ONザッ…ザザ・…FOR…ザザッ……NEザッ……いい言葉だよな。
───ヒーローは正体を隠して孤独に戦っていたけれど、悪の魔王は皆が恐怖して全てを差し出すんだ。
───お前がそうであるように…皆が僕の為に存在する世界、僕にも夢ができた!


声を震わせながら何故と尋ねる弟の問いかけに輝かんばかりの笑顔で答える兄。
途中ノイズが走り、いくつか聞き取れない単語は出たが。
そんな事が些事に思える程、嗤う少年の相貌はゼオンをしてただ物ではないと確信できる威圧感に満ちており。
禍々しい月光の様な、そんな笑みを彼は湛えていた。


「……フン、盗んだ装飾品を着飾って偉くなったつもりか、ゴミめ」


笑う白き少年に対して、ゼオンが抱いたのは嫌悪だった。
だって、少年を特別たらしめていたのは生まれついて持っていた「奪う力」だ。
原理だとか奪う条件などは映像からはうかがい知れなかったが、自分の様に鍛え上げ研ぎ澄ました力ではない。
それなのに他人から態々力を奪った事を弟に誇示する姿は、ゼオンにとって盗人が盗品を身に着け自慢げにしている様な滑稽な印象を抱かせた。
力とは断じてそんなものではない。奪う力さえなければ貴様は単なるガキだろう。
ただ生まれだけで鍛錬も積まず強大な力を得るなんて馬鹿げた話は、自分が継ぐはずだった力を掠め取ったどこかの馬鹿だけで沢山だ。
相も変わらず不出来な弟を傍に置いていることも含めて、苛立つ。苛立つ。苛立つ。
彼が苛立っている間にまた映像が変わる。そして変わった後の映像は、これまでとは毛色が違っていた。


───待て、何故行ってしまうんだ。"力"を与えてやったじゃないか。
───なんだ、お前は!離れろ!それは僕のだ!僕を見ていろ!!


映像の初期ではゼオンよりも幼い赤子だった子供は、あっという間にゼオンよりも大きな青年へと姿を変えていた。
顔は暗がりでよく見えないが、薄膜が張った様に艶がない瞳から漏れる眼光が嫌に目につく。
だがそれも一瞬の話、映像が映される角度が変わり、直ぐにゼオンが見られるようになったのは青年の後ろ姿だけだ。
汲んでも汲み尽くせない征服欲と所有欲、そして怒りと殺意に彩られた背中だけ。
目は口ほどに物を言うという言葉があるが、背中でも如実に語る事ができる感情が存在する。
幼いゼオンは、その事を目の前で上映される映像で初めて知った。
青年は追っているのだ。ゼオンからしても哀れな程みすぼらしく苛立つほど愚鈍な弟を求めて。強烈な怒りと殺意を孕むほどに。
説明されるでもなく理解する。


「どうしてそんな出来損ないにこだわる!?」


苛立ちがピークに達し、完全に温まった腕を振り上げ座っていた座席の肘置きを粉砕する。
そんな見ていて腹の立つゴミはさっさと掃除すればいいだろう。
何もできない、力もない存在を何故傍に置き続ける。理解不能だ。
苛立ちながらもスクリーンの前から去る事のできない自分自身の不可解さにも、きっとその苛立ちは向けられていた。
鮫の様な歯を軋ませ眉間に皺を寄せるゼオンだったが、そんな彼についに決定的な映像が映される。


───僕のものにならないなら……もう、


その瞬間だけはゼオンも抱いていた苛立ちも忘れて、目を見開く。
まるで花を摘むようにあっさりと、あっけない所作で。
青年……否、男はこれまで二人ぼっちの世界を生きてきた弟の命を奪った。
生きている余地など欠片も無い。右手首から先を残して完膚なきまでに。
あっけなく、一つの、名も知らぬ兄弟が終わりを迎えた。


───………ただ欲しいだけなのに。なのに、お前は思い通りにならない。
───追っても、追っても────すり抜けていく。
───だが……まだ、『在る』のか。


殆ど暗い影に覆われよく見えないが。
それでも一瞬映った青年の横顔はゼオンをしてゾクリと悪寒を感じる程冷淡で、悪意に満ちていた。
言葉を発さずとも、瞳だけでも、横顔だけでも……雄弁に不吉と感情を語る。そんな相貌だった。
そしてそれがホンの三秒にも満たぬ間映され、映像が終わる。


「……くだらん」


ぴょんと半壊した座席から飛び降り、ゼオンは場内の外へと向かう。
確かに見始めた頃は夜が明けるまでの暇つぶしだと考えてはいたが。
宿儺らに舐められぬよう一人か二人は殺しておきた時分に、最後まで映像に見入り無駄な時間を過ごした己に腹が立って来る。
夜明けと共に安全な映画館の館内でグランシャリオがちゃんと日光を遮断するかの実験を行うなら。
こんな映像などに無駄に時間を割かず映画館の外で弱者を間引き、日光が差すまでに戻って来なければならなかった。
映像を最後まで眺めていたせいで、リスクを承知で夜明けまで出るか。それともここに残るか……
その二択を迫られる事となった間抜けさに再び苛立ちながら、唯一映像で実入りのあった言葉を想起する。


「悪の魔王は皆が恐怖し全てを差し出すか……その言葉だけは認めてやる」


自らの最強を証明し、誰からも恐れられる王となる。
そうすれば手に入れられる筈だ。自分が奪われ続けてきた全てを。
自分が味わって来た苦痛も、捧げてきた時間も報われるはずだ。
ゼオン・ベルの中にあるのは、それだけだった。それを阻むこの会場に生きる命全てが彼の敵だった。
故に彼は敵に対する憎しみのままに殺戮に身をゆだねる。止まる事等ありはしない。
だって、何故なら。この会場には。


───……分かった、約束しよう。


憎しみを共有し、ゼオンが心の底から生きる事を望んだパートナーも、



───これで私と、ゼオン、一緒に…家族一緒に暮らせるのだ。



憎悪を憎悪から解き放つはずだった、血を分けた双子の片割れもこの島にはいないのだから。
……彼が辿り着く筈だった救いは今、途方もなく遠い。


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【C-5/早朝/1日目】
【ゼオン・ベル@金色のガッシュ!!】
[状態]:全身にダメージ(小)、右手首切断(回復中)、吸血鬼化
[装備]:石仮面@ジョジョの奇妙な冒険、修羅化身グランシャリオ@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(東方仗助)×1~2、ランダム支給品×0~2
[思考・状況] 基本方針:優勝する。
1:日が昇るギリギリまで鎧(グランシャリオ)の性能テスト兼弱者狩りを行うか、映画館で夜明けを待つか…
2:ヴォルデモート、宿儺と連帯し、会場の西で弱者を狩る。
3:次の日没時にD-3へ向かう。
4:映画の『兄』に嫌悪感。もしこの会場にいるなら殺す

※ファウードを乗っ取った直後からの参戦です。
※瞬間移動能力に制限が掛かっています。具体的にどのような制限かは後の書き手さんにお任せします。
※魔物が吸血鬼化した事による日光に対する脆弱性の程度については後続の書き手にお任せします。
※グランシャリオ使用時、ゼオンはマントを併用する事ができません。

【修羅化身グランシャリオ@アカメが斬る!】
ゼオンに支給。
全身鎧の帝具で、インクルシオの改良型。透明化機能はないが、安定した性能を発揮する。
通常時は大剣の形を取り、斬撃武器としても一級品。


※映画館では参戦作品に纏わる映像が流れていますが、基本的に名簿に載っている参加者は直接登場しないものか、
登場しても顔が影などでボカされており、直接繋がらない様になっています。
その為一方的に参戦している参加者の情報(能力・人となり)を得る事は極めて難しいです。






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最終更新:2026年10月20日 22:51