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「16-884「確約」」(2009/11/18 (水) 09:44:18) の最新版変更点
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『確約』
塾に入れられた。
まぁそろそろかと思っていたがおふくろの堪忍袋の緒が切れたのだ。
はっきり言って勘弁してもらいたかった。
しかし俺の家庭内ヒエラルキーは罠カード「悲惨な小テスト」と魔法カード「塾のパンフレット」のコンボにより最下層に落ちていたため
俺に反論の余地はなかったのだ。
俺とて自分の成績に危機感を覚えていないわけではない。
仮にも進学を希望している身としてこのままではいけないと言う気持ちもあったさ。
しかし、今回指定された塾のカリキュラムを見ると話は変わってくる。
週4月水金土。平日は学校が終わってから直行しなければならない時間であり土曜日は日中フルタイムだ。
時間的にSOS団とまる被り。
塾に行くなんて事よりもハルヒの説得をすることを考えて頭が痛くなった。
しかし、お袋は完璧な正論で攻撃してくるのに対しハルヒは理不尽な強制だ。
お袋の言うことを覆すことなど不可能、部活で出来ない等と言おうものならそんな部活辞めろと言われるだろう。
俺は覚悟を決めてハルヒの説得に乗り出すことにした。
翌日の団活動は修羅場だった。
と言っても俺もいい加減慣れた物だ。
事前にハルヒ以外の団員にフォローを入れてもらうように根回ししたうえ切り札「これが飲めないなら辞めさせられる」で
なんとかハルヒを納得させることに成功したわけだ。
でもって本日は塾への初登校。
……塾でも登校で良いんだっけか?初登塾?
まぁどっちでもいいがな。
学校が終わるころには後ろから恨みがましい視線が突き刺さっていた。
しかし此処で相手をしていてはいつまでたっても塾にいけそうに無いのでシカトする。
塾に向かうため坂を下っていると古泉がいつぞやのタクシーに乗ってどこかへ行くのが見えた。
……すまん、今度なんかおごってやろう。
地図を確認しながら20分ほど自転車をこぐと目的の場所へ着いた。
中学のころ通っていたところとは違う塾だ。
あそこの塾は高校受験用みたいなところだったからな。
受付で確認を取って指定された教室の指定された席へ向かう。
先ほどまとめて購入した塾用のテキストがズシリと重い。
とっとと席に着こう。そして荷物を置こう。
鞄を机の横に引っ掛けて渡されたばかりの時間割表に従い数学のテキストを出す。
さて、周りの雰囲気はどんなもんかね。
「…………」
「…………えっと、今日から来たんですけど、今日は何処からか教えてもらえますかね?」
「ああ、38ページくらいからですよ」
「…………」
「…………」
「偶然だな、佐々木」
「奇遇だね、キョン」
こんなことがあるものか。
俺が座った席は中学のあのときの席と同じ。
その隣にいたのもやはりそのときと同じ、佐々木だった。
しかも今回に限っては不思議パワーは一切ない……多分。
なんというかこう……学力別にクラスが別れたりはしていないのか?ここは。
「ここは基本的に自主学習を重んじる塾だからね、そういうのは無いのさ。
それよりもキョン、とうとう御母堂の堪忍袋の緒が切れたのかい?」
「そんなところだ……ま、またよろしく頼むぜ」
「くっくっ……これは僥倖というべきかな?今日から一気に塾に対するモチベーションが上がりそうだよ」
「俺も助かったぜ、気軽に話しができる奴が横にいるってのは心強いよ」
「僕も暗くなる帰りに一人でないというのは心強いね」
「……なんだって?」
「送ってくれるんだろう?昔みたいに二人乗りで、行きが無理になってしまったのは残念だけどね」
「……おう、まかしとけ」
「くっくっ……今日は本当についてるみたいだね」
そこまで話したところで教師、いや講師ってのか?
とにかくそれが入ってきた。
俺と佐々木は会話を中断しテキストへ向かう。
先ほど佐々木が言ったとおり授業は自主学習を重んじているようで講師はテキストの範囲を適当に指定するとそのまま放置タイムに入った。
数分おきに誰かが質問に行っている。なるほど、こういうやり方なのか。
それにしても……本当に昔を思い出すな。
横目で佐々木のほうを見ると俺には到底不可能な集中力を発揮している佐々木がいる。
……っと、俺もやんなきゃな。
その後は特に変わったことも無い。
ハルヒを相手にしているわけではないのだ、静かに勉学に励めたというわけだ。
……さっぱり解らなかったがな。
「ねぇキョン、塾にはどのくらい来るんだい?」
おおよそ1年ぶりになる二人乗りをしながらの帰路、佐々木が話しかけてきた。
あ、これもなんか久しぶりだな。
なんだか今日は懐かしいという感情に良く出会う日だ。
そこまで年取っちゃいないんだがな。
「ん、週4だな。月水金土」
「僕と同じか、そういえばあの団体はどうしてるんだい?なんて言ったっけ……。
そう、SOS団だったかな?部活は時間的に無理だろう」
「尊い犠牲を代償になんとか納得してもらったよ、塾がある日は休ませてもらってる」
そういえば古泉の奴はまだ閉鎖空間だろうか?
それとももう終わったのだろうか。
ったくハルヒの奴も1団員の出席が悪くなるくらいで怒るなよ……。
「そうか、週4……ね。1日多いのは学校で会える分の帳尻あわせとして……まぁ対等かな」
「何の話だ?」
「いやこっちの話……ねぇキョン、僕は思うんだけどね」
「今まで中学のとき僕と君を結んでいたのは学校だったと思っていたんだけど……その認識は間違いだったみたいだね。
思えば僕らの最初の会話も塾だった。君が塾をやめてから1年後無沙汰して……」
「俺が塾に放り込まれてまた二人乗りしてる、か」
成る程な、確かに学校よりは塾での接点のほうが強かったのかもしれないな。
あの時も佐々木には大分世話になった。
課題を教えてもらったり見せてもらったりな。
見せてもらうほうが圧倒的に多かったのは秘密だがな。
「くくっ、そしてそれはこれからも続くと来ている。
何のことは無い、君と一緒にいたかったら学校を同じにする必要なんか無かった。
君を塾に引き止めればよかったんだ……なんでこんなことに気づかなかったかな……くくっ」
「どうかなぁ……おれは勉学の時間は限りなく削減したい人間なんだがな」
「それでも大学受験まではくるんだろう?」
「まぁ、そうなるな」
ある日突然俺のIQが三倍にでもならない限りはな。
……ハルヒにこれを言うのは止めて置こう、まじでなりかねん。
いくら俺が勉強嫌いでもイカサマまでして頭よくなろうとは思わんからな。
「ねぇキョン。僕は今君が思っている以上に嬉しいんだよ?
久しぶりに座ったここは非常に居心地がいい」
そうだな、今の佐々木はなんだかテンションが高めだ。
荷台なんかそう乗り心地のいいものでもないと思うがな。
……今度荷台にタオルでも巻いといてやるか。
「キョン、そこを曲がるとコンビニがある。ちょっと寄ってくれないか?」
十五分ほどそんな話しをしながら自転車をこいでいると佐々木から注文が入った。
そろそろ着くと思ったが寄り道か。
「ん、いいぜ……なんか買うのか?」
「くくっ、ちょっとね」
駐車場の端に自転車を止める。
佐々木は荷台からゆっくりと降りると
「キョン、買ってくるからちょっと待っててくれ」
とだけ言ってコンビニへ向かった。
数分後、佐々木は袋を持ってコンビニにから出てきた。
袋を掲げながらこちらのほうに来る。
お互いの声が普通に届く距離まで来ると。
「さ、キョン。再び同じ場所で勉学に励めるお祝いだ、おごりだよ」
と言って佐々木は俺に肉まんを一つ手渡した。
「お、サンキュ。肉まんか、そろそろ食い収めだな」
「そうだね、これから暖かくなる。……そうだ、キョン。これからどんどん日照時間も長くなる。
そしたら塾帰り色んな場所に寄らないか?今日のようにコンビニでも、君の好きなゲームセンターでもいい。
土曜日なら早く終わるから映画とかもいいかもしれないね」
「いきなり夜遊び宣言とは不良だな、佐々木……ま、いいけどな、面白そうだ」
「くっくっ、これで君と僕との関係は少なくとも2年弱は確約されたわけだ。中学のときの倍だよ」
そんなことしなくても……。
と、いいかけて止めた。そういえば1年連絡しなかったんだったな。
我ながら薄情なもんだ。
「僕は2年で満足するかな?しないだろうね。僕にとって君はそれくらいの相手だ……とすると今度は大学かな?」
そこまで言われるとなんだかむずかゆいな。
ま、俺だにしたってこいつと話すのは楽しいがな。
「おいおい、大学に行ってまで塾にはこねぇぞ」
「そりゃ普通行く人はいないよ。となるとどうしようか?」
「どーするもこーするも……なぁ」
佐々木の言っていることはわかる。
同じ大学に行きたいってことだ。
しかしなぁ……俺と佐々木では……。
「うん、僕は決めたぞ。キョン、君を僕くらいの学力にまで引き上げることにするよ。
そうすればきっと僕も満足の行く結果になるはずだ」
「おいおい、それは無茶だぞ」
俺と佐々木の学力差は中学時代嫌というほど思い知らされている。
アレから一年たった今それが広がることはあっても縮まっていることはありえないだろう。
「くっく……これから2年弱、僕らは塾で顔を合わすんだよ?夏期講習や冬期講習だってある。
僕のほうも中学で君を教えた経験がある。それだけ時間と条件が有れば大丈夫さ、君ならね」
「そりゃ買いかぶりすぎじゃないか?」
「それが解るのは2年後だよ、じゃあねキョン。また明後日、楽しみにしてるよ」
「おい、此処でいいのか?」
「忘れたのかい?僕の家はそこだよ」
そういって佐々木は近くの家の門を開け中に入っていった。
今の今まで気づかなかったがそういえばこいつは佐々木の家の近くのコンビニだったな。
にしても、だ。
「あんなテンションの高い佐々木は久しぶりだな」
俺を2年で佐々木レベルまで上げるってか……。
あいつは有言実行の奴だ、やるといったらやるだろう。
つまり、俺に出来るできないはともかく勉強させようとしてくるってことだな。
やれやれ、SOS団に塾。今年からはさらにハードになりそうだな。
……勉学にいそしむ宣告を受けたのに俺がそれほど嫌じゃないのはあいつが嬉しそうだったからかね。
『確約』
塾に入れられた。
まぁそろそろかと思っていたがおふくろの堪忍袋の緒が切れたのだ。
はっきり言って勘弁してもらいたかった。
しかし俺の家庭内ヒエラルキーは罠カード「悲惨な小テスト」と魔法カード「塾のパンフレット」のコンボにより最下層に落ちていたため
俺に反論の余地はなかったのだ。
俺とて自分の成績に危機感を覚えていないわけではない。
仮にも進学を希望している身としてこのままではいけないと言う気持ちもあったさ。
しかし、今回指定された塾のカリキュラムを見ると話は変わってくる。
週4月水金土。平日は学校が終わってから直行しなければならない時間であり土曜日は日中フルタイムだ。
時間的にSOS団とまる被り。
塾に行くなんて事よりもハルヒの説得をすることを考えて頭が痛くなった。
しかし、お袋は完璧な正論で攻撃してくるのに対しハルヒは理不尽な強制だ。
お袋の言うことを覆すことなど不可能、部活で出来ない等と言おうものならそんな部活辞めろと言われるだろう。
俺は覚悟を決めてハルヒの説得に乗り出すことにした。
翌日の団活動は修羅場だった。
と言っても俺もいい加減慣れた物だ。
事前にハルヒ以外の団員にフォローを入れてもらうように根回ししたうえ切り札「これが飲めないなら辞めさせられる」で
なんとかハルヒを納得させることに成功したわけだ。
でもって本日は塾への初登校。
……塾でも登校で良いんだっけか?初登塾?
まぁどっちでもいいがな。
学校が終わるころには後ろから恨みがましい視線が突き刺さっていた。
しかし此処で相手をしていてはいつまでたっても塾にいけそうに無いのでシカトする。
塾に向かうため坂を下っていると古泉がいつぞやのタクシーに乗ってどこかへ行くのが見えた。
……すまん、今度なんかおごってやろう。
地図を確認しながら20分ほど自転車をこぐと目的の場所へ着いた。
中学のころ通っていたところとは違う塾だ。
あそこの塾は高校受験用みたいなところだったからな。
受付で確認を取って指定された教室の指定された席へ向かう。
先ほどまとめて購入した塾用のテキストがズシリと重い。
とっとと席に着こう。そして荷物を置こう。
鞄を机の横に引っ掛けて渡されたばかりの時間割表に従い数学のテキストを出す。
さて、周りの雰囲気はどんなもんかね。
「…………」
「…………えっと、今日から来たんですけど、今日は何処からか教えてもらえますかね?」
「ああ、38ページくらいからですよ」
「…………」
「…………」
「偶然だな、佐々木」
「奇遇だね、キョン」
こんなことがあるものか。
俺が座った席は中学のあのときの席と同じ。
その隣にいたのもやはりそのときと同じ、佐々木だった。
しかも今回に限っては不思議パワーは一切ない……多分。
なんというかこう……学力別にクラスが別れたりはしていないのか?ここは。
「ここは基本的に自主学習を重んじる塾だからね、そういうのは無いのさ。
それよりもキョン、とうとう御母堂の堪忍袋の緒が切れたのかい?」
「そんなところだ……ま、またよろしく頼むぜ」
「くっくっ……これは僥倖というべきかな?今日から一気に塾に対するモチベーションが上がりそうだよ」
「俺も助かったぜ、気軽に話しができる奴が横にいるってのは心強いよ」
「僕も暗くなる帰りに一人でないというのは心強いね」
「……なんだって?」
「送ってくれるんだろう?昔みたいに二人乗りで、行きが無理になってしまったのは残念だけどね」
「……おう、まかしとけ」
「くっくっ……今日は本当についてるみたいだね」
そこまで話したところで教師、いや講師ってのか?
とにかくそれが入ってきた。
俺と佐々木は会話を中断しテキストへ向かう。
先ほど佐々木が言ったとおり授業は自主学習を重んじているようで講師はテキストの範囲を適当に指定するとそのまま放置タイムに入った。
数分おきに誰かが質問に行っている。なるほど、こういうやり方なのか。
それにしても……本当に昔を思い出すな。
横目で佐々木のほうを見ると俺には到底不可能な集中力を発揮している佐々木がいる。
……っと、俺もやんなきゃな。
その後は特に変わったことも無い。
ハルヒを相手にしているわけではないのだ、静かに勉学に励めたというわけだ。
……さっぱり解らなかったがな。
「ねぇキョン、塾にはどのくらい来るんだい?」
おおよそ1年ぶりになる二人乗りをしながらの帰路、佐々木が話しかけてきた。
あ、これもなんか久しぶりだな。
なんだか今日は懐かしいという感情に良く出会う日だ。
そこまで年取っちゃいないんだがな。
「ん、週4だな。月水金土」
「僕と同じか、そういえばあの団体はどうしてるんだい?なんて言ったっけ……。
そう、SOS団だったかな?部活は時間的に無理だろう」
「尊い犠牲を代償になんとか納得してもらったよ、塾がある日は休ませてもらってる」
そういえば古泉の奴はまだ閉鎖空間だろうか?
それとももう終わったのだろうか。
ったくハルヒの奴も1団員の出席が悪くなるくらいで怒るなよ……。
「そうか、週4……ね。1日多いのは学校で会える分の帳尻あわせとして……まぁ対等かな」
「何の話だ?」
「いやこっちの話……ねぇキョン、僕は思うんだけどね」
「今まで中学のとき僕と君を結んでいたのは学校だったと思っていたんだけど……その認識は間違いだったみたいだね。
思えば僕らの最初の会話も塾だった。君が塾をやめてから1年後無沙汰して……」
「俺が塾に放り込まれてまた二人乗りしてる、か」
成る程な、確かに学校よりは塾での接点のほうが強かったのかもしれないな。
あの時も佐々木には大分世話になった。
課題を教えてもらったり見せてもらったりな。
見せてもらうほうが圧倒的に多かったのは秘密だがな。
「くくっ、そしてそれはこれからも続くと来ている。
何のことは無い、君と一緒にいたかったら学校を同じにする必要なんか無かった。
君を塾に引き止めればよかったんだ……なんでこんなことに気づかなかったかな……くくっ」
「どうかなぁ……おれは勉学の時間は限りなく削減したい人間なんだがな」
「それでも大学受験まではくるんだろう?」
「まぁ、そうなるな」
ある日突然俺のIQが三倍にでもならない限りはな。
……ハルヒにこれを言うのは止めて置こう、まじでなりかねん。
いくら俺が勉強嫌いでもイカサマまでして頭よくなろうとは思わんからな。
「ねぇキョン。僕は今君が思っている以上に嬉しいんだよ?
久しぶりに座ったここは非常に居心地がいい」
そうだな、今の佐々木はなんだかテンションが高めだ。
荷台なんかそう乗り心地のいいものでもないと思うがな。
……今度荷台にタオルでも巻いといてやるか。
「キョン、そこを曲がるとコンビニがある。ちょっと寄ってくれないか?」
十五分ほどそんな話しをしながら自転車をこいでいると佐々木から注文が入った。
そろそろ着くと思ったが寄り道か。
「ん、いいぜ……なんか買うのか?」
「くくっ、ちょっとね」
駐車場の端に自転車を止める。
佐々木は荷台からゆっくりと降りると
「キョン、買ってくるからちょっと待っててくれ」
とだけ言ってコンビニへ向かった。
数分後、佐々木は袋を持ってコンビニにから出てきた。
袋を掲げながらこちらのほうに来る。
お互いの声が普通に届く距離まで来ると。
「さ、キョン。再び同じ場所で勉学に励めるお祝いだ、おごりだよ」
と言って佐々木は俺に肉まんを一つ手渡した。
「お、サンキュ。肉まんか、そろそろ食い収めだな」
「そうだね、これから暖かくなる。……そうだ、キョン。これからどんどん日照時間も長くなる。
そしたら塾帰り色んな場所に寄らないか?今日のようにコンビニでも、君の好きなゲームセンターでもいい。
土曜日なら早く終わるから映画とかもいいかもしれないね」
「いきなり夜遊び宣言とは不良だな、佐々木……ま、いいけどな、面白そうだ」
「くっくっ、これで君と僕との関係は少なくとも2年弱は確約されたわけだ。中学のときの倍だよ」
そんなことしなくても……。
と、いいかけて止めた。そういえば1年連絡しなかったんだったな。
我ながら薄情なもんだ。
「僕は2年で満足するかな?しないだろうね。僕にとって君はそれくらいの相手だ……とすると今度は大学かな?」
そこまで言われるとなんだかむずかゆいな。
ま、俺だにしたってこいつと話すのは楽しいがな。
「おいおい、大学に行ってまで塾にはこねぇぞ」
「そりゃ普通行く人はいないよ。となるとどうしようか?」
「どーするもこーするも……なぁ」
佐々木の言っていることはわかる。
同じ大学に行きたいってことだ。
しかしなぁ……俺と佐々木では……。
「うん、僕は決めたぞ。キョン、君を僕くらいの学力にまで引き上げることにするよ。
そうすればきっと僕も満足の行く結果になるはずだ」
「おいおい、それは無茶だぞ」
俺と佐々木の学力差は中学時代嫌というほど思い知らされている。
アレから一年たった今それが広がることはあっても縮まっていることはありえないだろう。
「くっく……これから2年弱、僕らは塾で顔を合わすんだよ?夏期講習や冬期講習だってある。
僕のほうも中学で君を教えた経験がある。それだけ時間と条件が有れば大丈夫さ、君ならね」
「そりゃ買いかぶりすぎじゃないか?」
「それが解るのは2年後だよ、じゃあねキョン。また明後日、楽しみにしてるよ」
「おい、此処でいいのか?」
「忘れたのかい?僕の家はそこだよ」
そういって佐々木は近くの家の門を開け中に入っていった。
今の今まで気づかなかったがそういえばこいつは佐々木の家の近くのコンビニだったな。
にしても、だ。
「あんなテンションの高い佐々木は久しぶりだな」
俺を2年で佐々木レベルまで上げるってか……。
あいつは有言実行の奴だ、やるといったらやるだろう。
つまり、俺に出来るできないはともかく勉強させようとしてくるってことだな。
やれやれ、SOS団に塾。今年からはさらにハードになりそうだな。
……勉学にいそしむ宣告を受けたのに俺がそれほど嫌じゃないのはあいつが嬉しそうだったからかね。
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-[[17-39「縁」]]につづく
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