「――――――嘘だっ!?」
俺は目の前の光景にそう言葉を投げつけずにはいられなかった。
忘れたくても忘れられず、棺桶の中にまで持っていくことになりそうな記憶だからな。
単刀直入に言ってしまう。今俺が居るのは閉鎖空間だ。色と生物と音を失ったこの光景、それ以外に考えられない。
しかもだ。さらにやっかいなのはこの風景だ。そしてこの色だ。ここは閉鎖空間だが、ハルヒの生み出した閉鎖空間じゃない。
「さすがはキョン。良い観察眼を持っている」
呑気に俺に拍手を送ってくる奴を見つけ、俺は俺の予想が当たってしまったことに顔をしかめる。
「ここがハルヒが生み出した閉鎖空間じゃない事はすぐ判ったさ。ハルヒはここを知るはずがないからな」
そう、ここは俺が3年間通った中学だ。
「そう、ここは僕とキョンが3年間通った中学だね」
佐々木は懐かしそうに校舎を見上げているが、俺はそんな感傷に浸る余裕がない。
なぜだ。なぜ俺とお前がここにいる?この閉鎖空間は…
「あぁ、そうだね。キミが言わんとしている事は理解しているつもりだよ。
ここは涼宮さんが作りだした閉鎖空間ではない。僕の作りだしたものさ」
なぜだ!なぜお前がそんなことを!
「キョン知っているかい?世界というモノはひどく不平等に出来ているのだよ?」
いきなりなにを言い出す。
「だってそうじゃないか?僕にはこれだけしか与えられなかったモノを」
佐々木が指さした部分をまじまじと見つめてしまい、俺は慌てて目をそらす。
「朝比奈さんと言ったかな?彼女にはあれだけのモノが与えられている。これを不平等と言わずしてどうする?」
ちょっと待て佐々木。お前の言おうとしていることが理解できたが、意味がわからないぞ。
「キョンだって小さくモノより大きなモノがいいのだろう?」
そりゃあ確かに朝比奈さんの特盛りは国の重要文化財に指定されてもおかしくはないだろうが…って、問題はそこじゃないだろ。
「いいや、そこなのだよ。今のままでは僕の胸は平均でしかない。
けれど世界を創り変えることが出来たのなら、そこに新しい僕が立つことが出来たのなら、僕のこの控えめな胸はキョンの言う特盛りになれるかもしれない」
ちょっと待て佐々木!お前は、そんな理由で世界を創り直すというのか!?
「そんな理由と言って欲しくないなぁ。キョン、キミは男の子だから判らないかもしれないけど、女の子にとってこれは死活問題なんだ」
「佐々木――!」
俺は佐々木の肩をつかんで正面から見つめ、言葉を失った。泣いて……いるのか?
「あぁ、もう戻ることはできないのさ。ほら、見てごらん」
涙を溜めた佐々木の視線に促されそちらを見れば「神人!」
「いつだったか、渋るキミから無理矢理聞いたことがあったね。
一度終焉を迎えようとしていた涼宮さんが創りだした閉鎖空間での出来事を。僕は今、それと同じ事をしようとしている。
世界を一度終焉へと導き、そして新たに創世する。僕にはその力があるそうだよ」
「やめろ!やめるんだ佐々木!」
佐々木は俺と目線を合わせようとはせず、俺たちの横で校舎を壊し始めた神人ばかりを見ている。
このままだと本当に世界が終わるのはそう時間がかからないだろうな。だから。
「佐々木、俺実は貧乳萌えなんだ。人にはそれぞれ合った形があると思う。だからお前は今のままが一番かわいいぞ」
俺がそう告げたあと佐々木がなぜか笑ったように見えたが、
いつかの時のように目を閉じて唇を重ねた俺にそのあとのことはよくわからない。
今佐々木は泣いたままなのかそれとも怒っているのか。
とりあえず、次に会ったときにまずは謝ろうと思う。
了
-‐ '´ ̄ ̄`ヽ
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/ / / .ィ ./ヽ.Y l .', ヽ くっくっ。まったく予想通りだよキョン。
,' ! -/7'Y /|' "´ヽ|. !!i ' いつかキミが話してくれた話で、唯一はっきりと聞かせてはくれなかった
! !.ト⌒ リ ⌒ ! !ノ、i ! 涼宮さんに世界の創世をとどまらせたきっかけの部分、
,'' l l l ● ● l丿 ! リ やはり僕の予想した通りだよ。
!;!l|ヘ⊃ 、_,、_,⊂⊃j l丿i/ ありがとうキョン。僕はキミがいるこの世界が大好きさ。
|/⌒l,、 __, イァト|/| |
./ /|___|/ ヽ
|| l 彡,
最終更新:2008年01月29日 20:47