29-717「エンジン」

いい感じだ。エンジンがかかってきたぜ。
「うん。とってもいいよ。ただ……」

ただ、何だ?

「動いてくれなきゃ、ムードが出ないじゃないか。」

動くも何も、今の俺にはこれが精一杯だ。
予行演習だと、ここからスムーズに動けるはずだったのだが。

「くっく……。きれいな上級生のお姉さんにご指導を賜ったんだろう」
何を言ってやがる。まあ、確かに十二分にご指導賜ったさ。
ただあれはあくまで練習であってだな。あの人はプロフェッショナルであってだな。
俺は丸っきりの素人であってだな。
素人同士2人きりってのは初めてだったりしているわけでな。
いったい俺は何を言っているんだ。

「まあ、いいじゃないか。落ち着いてくれよ。」
ちくしょう。動いてやる。覚悟しろよ。どうなっても知らんぞ。

「アッーー!! キョンだめーーッ!! 」
気づいたとき、俺の目の前には無残な姿で横たわる、悲しい現実だけが残っていた。



「キョン。君はもう一度教習所でやり直したほうがいいんじゃないかい。
エンジンキーを挿し込むだけで20分も費やした上に、アクセル全開で暴走するとは。」

せっかくお前から借りた車なのに・・・ぼろぼろにしちまうとは。
本当に申し訳ない。すまん。
腹を切れといわれれば腹を切る。
お前のいうことは何でも聞いてやる。本当にごめん。
どうにかして修理代を工面するから、許してくれ!

「ああ、それならいいさ。どうせ橘さんから借りた車だし。
今回の件で発生する費用はすべて向こう経費で持ってくれるそうだ」
 

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最終更新:2008年02月25日 09:40
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