31-253「猛虎落地声」

ある日、俺を呼び出した橘は、徹夜開けの顔で言った。佐々木に神能力移した3か月後のことである。
佐々木団の会合だから佐々木に会えると思ってわざわざSOS団を休んで来たのに。昨日会ったばかりだけど。
佐々木はいなくて取巻きの波長が合わない連中ばかりいるので俺はがっかりだ。
「キョンさん、佐々木さんの閉鎖空間を何とかするのです」
「もしかして、また俺の責任と言うのか?」
「キョンさんの責任なのです」
「第一、お前が佐々木なら安全と言ったから佐々木に神能力を移したのじゃないか」
「涼宮さんならとっくの昔に世界は無くなっているのです」
「第一、俺は佐々木を怒らせるようなことは何もやってないぞ」
「――フラクラ――」
「佐々木さんはキョンさんともっと親密にしたいのです。キョンさんが何もしないのが問題なのです」
相変わらず意味わからんぞ、女超能力者


その時、影が最も薄くて、出番の少ない藤原が口を開いた。
「現地人達よ。佐々木の精神を静める良い方法を教えてやらんでもないぞ」
「本当ですか?藤原さん。早速教えてほしいのです」
「しかし、やるのは橘じゃなく」
もしかしなくても、俺だよな?

「なー?俺じゃないと駄目か?」
「あんたじゃないと駄目だ。現地人」

「佐々木達のような異常能力者の精神を抑えるために開発された二つの奥義を教えよう。まず猛虎落地声だ」
「すごく強そうな名前ですね」
「この方法は簡単なようで、なかなか難しい」

皆が注目する中、藤原は立ち上がる。
「現地人。僕の通りにやれ。そうだ、俺の隣りに来い。
 まず目標に向かって距離を取る。
 そして両手をついて『ごめんなさい』
 そう言って額を床に押しつける」

「―――……―――」
「この技は、崖から落ちた虎が痛みを堪えている姿から名付けられた」
「おい、ただの土下座に御大層な名前をつけるな」
「単純ですけど有効な方法ですね」
「――土下座――」

「次に双竜昇天波だ。これは2匹の竜が絡み合って…」
「もう良い。佐々木に謝れば良いのだろ」
佐々木は塾なので、俺は佐々木の塾に行った。

「佐々木。今日は」
「キョンがここに来るのは珍しい。どうしたのかな?」
目標に向かって距離を取って
「ごめんなさい」
「…わかった、昨日のことは忘れることにするよ。今日暇かな?もし良ければ」

そして
「大丈夫か?俺はここの生徒じゃないぞ」
「バレないよ」
デートの類を楽しめると思ったのだがなー。佐々木の塾で一緒に授業とは…
しかし、周囲の生暖かい目は何なんだ?
でも、勉強の楽しさを再び知ることができて良かったよ。俺の隣りの佐々木の体は柔らかくて良い匂いで……ずっと勉強していたい。

これが契機で、俺は塾に行くことになった。
何故かその後、佐々木の閉鎖空間発生頻度は激減した。何故なんだろうかな―?

俺が塾に行き始めて3か月後。俺と佐々木は恋人だと思われるようになっていた。
今の生活に不満は無いが、それ以上が欲しくなっていた。
「キョン大事な話ってなんだ?」
「佐々木、大好きだ。俺と正式に付き合ってくれるか?」
突然の申し出。顔を赤らめて頷く佐々木。
「キスして良いか?」
再び頷く佐々木。俺は佐々木にキスする。

その後、佐々木に閉鎖空間が発生することは無かった。


『おお、双竜昇天波は良く効く』
『キスしているだけじゃないですか。確かに有効ですけど』
『――口付け――』
『もしかして、今日のキョンさんの対応が奥義になったのでは?』
『多分な』

(終わり)

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最終更新:2008年03月16日 20:56
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