いつの頃からだろうか?本を読まなくなったのは。
駅近くの店まで漫画本を買いに行った帰り、佐々木が大きな荷物を抱えているのを発見した。
「やあ、佐々木。荷物持ってやるよ」
「ありがとう」
佐々木はバスで帰る予定だったが、俺の自転車で家まで送ることにした。
そして、佐々木の家でお茶と茶菓子をご馳走になった。
しかし、茶菓子が干し柿とピーナツなのが佐々木らしいと言うか何と言うか。
「干し柿やピーナツは体に良いのだよ」
「別に嫌いというわけじゃないが」
むしろ、大好物だな。
「君は漫画を買いに行った帰りか。漫画しか読まないのか?」
「恥ずかしながら」
「これを貸してあげるよ。これはラノベと言って漫画みたいに楽に読めるものだ。
この作品は妹さんがいつも見ているス〇イヤーズというテレビ番組の原作だよ。今日から君が妹さんに読み聞かせてあげると良いよ」
佐々木の言う通り、漫画みたいに読みやすかった。読み聞かせると妹の夜更かしの癖はすっかり直った。
代わりに一緒に寝てくれと甘えてくる。今でも時々は一緒に寝ているけどな。
「ありがとう。面白かったぞ。読み聞かせたおかげで妹の夜更かしは無くなったよ」
「それは良かった。正直気に入ってくれるか自信が無かった」
「もう読んじゃったので続きを借りれるかな?」
「お安いご用だ。僕の家に来てくれ」
それからというもの、佐々木の持っているラノベを借りるのが日課になった。
日曜日には佐々木の家に入り浸ってラノベを読みあさることもあった。
卒業までに、佐々木の家にある30冊だか50冊だかのラノベは全て読んでしまった。
向こうの家はすっかり第二の実家になって、くつろぐ場所になっていった。
再び本格的な本を読み出したのは長門に会ってから。
そうだ、今度佐々木の家に行って長門がよく読んでいるような難しい本を借りよう。一年以上ぶりだな
(終わり)
最終更新:2008年04月04日 21:21