31-845「プロローグ ~改変!3人のお姫様~」

朝起きるとベッドの上だった。隣には妹。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「さて、今週の学校も今日で終わりだな」
今日は金曜日。
うちの高校では週五日制を執っているので、金曜で一週間は終わりと言うことだ。
「部活部活・・・ッと」
ハルヒの奴はもう先に行っているので部室へは一人で向かう。

カチャリ(我ながら単純すぎる擬音だな)とドアを開ける。
すると、驚いた事に…あのハルヒが熱心に小説を読んでいるではないか。
いや、別に、あいつが本を読まないとかそう言うことじゃなく、「部活」の時に読んでいる事に驚いた。
まぁ、今日はこれで静かになるな。
「キョンくん、こんにちわぁー。お茶入れますね」 と朝比奈さん。
「こんにちは、朝比奈さん。ありがとうございます」 朝比奈さんから淹れ立てのお茶を頂く。
「ところで、ハルヒの奴…どうしたんですか?突然小説なんか読み出して」
「それがですね、持ってきたのは長門さんみたいなんですよー」
「長門が、ですか・・・?」
それはまた珍しい。長門が持ってきた本の中にハルヒが気に入るような物が在ったとは。
「あれはいわゆる“ライトノベル”と言われるものですね」
うわ。古泉・・・いたのか。
「失敬な。あなたが来る前からいたじゃないですか」
「なるほど、ライトノベルならハルヒも読みそうな感じはするが・・・」
「無視ですか」 と言う古泉をさらに無視。
「面白そうですねぇ~」
「朝比奈さんも読めばいいじゃないですか」
「うぅ・・・それがですね・・・」
朝比奈さんは急に風船が縮むように落ち込んでしまった。・・・なるほど。
「ハルヒが読ませてくれないんですね。俺が言ってみましょうか」
「あっ!いいんです!買えばいいんですから!」
「そうですか・・・無理しなくても」
「大丈夫ですよ」
艶やかな唇に人差し指を当てるような仕草をして、輝くような笑顔を見せた。
その笑顔を見ると 「分かりました」 と自然に笑顔になってしまう。
「・・・それにしても、いやに真剣に読んでますね。あいつは」
「ふふっ。内容が内容ですから」
「え?」
「何でもありません」 と言って朝比奈さんは、にこりと笑った。
…その傍では、古泉が寂しそうな顔をして座っていた。

1時間後。ハルヒ(と長門)はまだライトノベルとやらを読みふけっている
「なぁハルヒ。それ面白いのか?」
反応無し。本当に真剣に読んでるみたいだな。
「おい、ハルヒ。・・・おーい?」
「・・・はっ!・・・な、なによ?」
「何を真剣に読んでるんだ?」
「あ、あんたには関係無いでしょ!ほら、今日はちょっと早いけど解散ね!」
まさかの解散宣言。ホントにはえーな。--------------------------第一
その日、SOS団全員で校舎を出ると、佐々木が校門の前に立っていた。
綺麗な顔立ちをしているので結構目立っているが、当の本人は目もくれずに、本を読んでいた。
「あれ・・・佐々木さんじゃない?」
ハルヒが不機嫌そうに言った。ていうかお前まだ読んでたのか。歩きながらはやめろ。
「うるさいわね。それよりあれ、佐々木さんでしょ?」
「そうみたいだな。何してんだあいつ・・・。」 近づいて行き、声をかける。
「佐々木、何してるんだ?こんな所で」 というか何読んでるんだ?
「わ、やぁ、キョン。君を待っていたのさ。少し話がしたくてね」
「あ…その本・・・」 とハルヒが威嚇するような、警戒するような目つきで佐々木を見た(睨んだ)。
「これ?これはね・・・ああ、涼宮さんも持っていたのね」
「・・・!?・・・キ、キョン!さっさと帰るわよ!」
「え?あ、ああ」 何故か呆然となっていた俺は曖昧な返事をした。ハルヒと佐々木の読んでいる本がじ・・・?何かひっかかるが・・・まぁいいか。後で考える事にしよう。考えないと思うが。
「それより、話はいいのか?佐々木」
「いいんだ。今日は少し様子を見に来ただけだったからね」 と言った後に、ハルヒの方へ向き直って、
「この本面白いね、涼宮さん」 とすべてを分かりきったような口調で言い放った。
「え、えぇ、まあ・・・面白いけど…」 と少したじろいだハルヒは、ブツブツ何か言っている。
「じゃあね、キョン。皆さんもさようなら」 そう言って、佐々木はにっこり笑って歩いて行った。
そのうしろ姿を見つめる(睨む)ハルヒ─と何故か長門の目も光っていたのは気のせいか─が今までで一番怖かったな。

それから家に帰って、風呂に入って、自分の部屋でシャミとじゃれていると、リビングの方で電話が鳴った。
妹が電話に出たみたいだ。・・・それから廊下をドタドタと走ってくる音がする。
「キョンくんでんわー!おんなのひとからー」 と部屋へ入ってきたついでにシャミを連れて行った。・・・じゃあな、シャミ。
「もしもし、電話変わりました」
「「キョンかい?僕だが、一言だけ伝えたい事があったんだ」」 受話器の向こうで話しているのは佐々木だ。
「佐々木か。伝えたい事って何だ?」
「「明日の朝、君は驚くことになりそうだよ。伝えたい事はこれだけだ。それじゃ、また明日の朝にね」」 電話は一方的に切られた。
・・・・・・なんだってんだ。・・・明日の朝にね、って何だ?・・・・・・佐々木となんかする約束してたか?
「・・・もう寝るか」 考えても何も思いつかないので部屋の明かりを消し、ベッドにもぐりこんだ。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
俺が寝ているのは普通のベッドではなく、ダブル・・・いやトリプル以上はある巨大なベッドだ。
隣に妹が寝ているのはいいとして、明らかに目の前の風景がおかしい。
西洋の王国で見られる宮殿の一部屋だ。・・・とは言っても、実際に見た事があるわけでもなく、ガキの頃にやっていたアニメで見た風な部屋だが。
「な…な…なんじゃこりゃあー!」 自分が冷静に状況を分析していたのに驚いたが、今更になって驚嘆の声がこみ上げてきた。
「ふわぁー。どうしたの?キョンくん」 妹が起きたみたいだ。というか、お前はなんで俺と寝てるんだ。
「なんでって、ここはキョンくんとあたしのへやで、これはキョンくんとあたしのベッドだからでしょー?」
「あーなるほど。じゃあお袋たちは?」
「キョンくんとうとうぼけちゃったの?おかあさんたちはじょうかまちにすんでるじゃない」
「あ、そ、そうか・・・」 うーん?ますます分からない・・・。
「さあ!おきてきがえよー!きょうもいちにちおしごとだよー!」 と言って妹は着替え始めた。 俺は、というと、まだ何が何か分からないのでベッドの上でボーっとしていた。
・・・・・・・・・ん?
「お仕事?何の話だ─」 と俺が言い終わるかその刹那、3メートルはある部屋の扉が蹴り開かれた。
「あんた達!遊びに来てやったわよ!」 そこにはなんと、薄い桃色の豪華なドレスに身を包んだ我らが団長─涼宮ハルヒ─が立っていたのだ。
「ハ・・・ハルヒ、お前なんでそんな格好してんだ!?」 これには流石の俺も驚いたので語気が強まる。
「わーい!ハルにゃんあそんでー!」 そして妹よ、なんで当たり前のように使用人服─メイド服とは言えない、そこそこ高そうなドレスだ─を着ているんだ・・・。
「キョン!あんた…私を呼び捨てで呼ぶなんて、いい度胸ね・・・ぶん殴るわよ」 怖い。
・・・・・・・・・だが、なんで呼び捨てじゃいけないんだろうか・・・?
「まあまあ、ハルヒ落ち着いて。・・・やあ、おはようキョン」 ハルヒを制すように後ろから顔を出したのは・・・。
「さっ・・・・・・佐々木!?」 佐々木も、薄い青のドレスに身を包んでいる。
今さらだが、俺はこの世界でもキョンなのか・・・。
「さあ、妹ちゃんはハルヒに任せて僕たちは朝の散歩でもしようじゃないか。・・・くっくっ」 佐々木が俺の手を引き、部屋の外へ出る。
「あ、ちょっ、あんた!キョンとどこに行くつもり!?」 後ろでハルヒの叫ぶ声と妹の楽しそうな声が聞こえる。
「お散歩だよー」 佐々木はさらっとそう言い残し、俺の手を引き、歩いていく。

「驚いたかい?この世界の変わり様に」 周りに誰もいない事を確認した佐々木が歩きながら言った。ちなみに俺たちは、念入りに手入れされているであろう綺麗な庭園を散歩中だ。
「え?お前は覚えてるのか?」 驚きながらそう言った。
「もちろんさ。 さて、一通りの説明をしておこうか」
「そ、そうか。よろしく頼む」
「まず、キミと妹ちゃんについてだが、二人はこの王宮の使用人という事になっている。
まあ、妹ちゃんは、ハルヒやその他の娘たちの遊び相手が主だけどね。くっくっ・・・。
キミはまあ、言ってしまえば執事だね。少し他と待遇が違うけどね。 それと、キミ達の両親は城下町で結構有名な商人として働いているよ。心配しなくても大丈夫だ」
うむ・・・。こんな事になっているとは・・・。
「一つ聞くが、お前がハルヒを呼ぶときは”ハルヒ”じゃなくて”涼宮さん”じゃなかったか?」
「ああ、その事は今から説明しよう。 単刀直入に言うと、僕とハルヒは”双子”という事になっている。そしてこの国の「王女」だ。ちなみに顔はそっくりではないから二卵性双生児みたいだね。これで分かったかい?」
「ち、ちょっと待て。じゃあお前たちの親は?」
「それが・・・よく分からないんだ。会った記憶が無いんだよ。ただ、僕とハルヒの乳母は改変前の世界で僕の母親だった人物だ。それだけは確かだ」
「寂しくないのか・・・?父親に会えなくて」
「その辺は心配しなくていいよ。良く似た人がいるから。僕とハルヒの父親を足して2で割ったような人物がね。それに・・・キミもいることだしね」 と言いながら佐々木はほんの少し顔を赤らめたように見えた。
「そうか。それなら良かった。・・・じゃあ長門や朝比奈さんたちはどうしたんだ?」
「長門さんは─ 「私は、隣国の王女」 「「!?」」
・・・気が付くと、そこには長門が立っていた。こちらもまた綺麗なドレスを着ている。
「よう、長門。元気か・・・?」 とりあえず、「ハウアーユー」だ。
「・・・そこそこ」 「ん、そうか」 俺はそう言って笑った。
「・・・本人が来てしまったが・・・とりあえず、彼女はこんな風に隣国の王女だが毎日と言っていいほど城を抜け出して遊びに来る。
来たら来たで庭で本を読んでいる。
キョンは時間が空いたら彼女が本を読んでいるところへよく行っていたみたいだよ。悔しいけど」
佐々木がちょっとしょんぼりしている。
「そ・・・そうなのか?」 「・・・そう」 と言うと、椅子に座り、もう本を読み始めている。
「それで、朝比奈さんだが・・・まあ分かるとは思うが家政婦─つまり、メイドさんだね─をやっている。ちなみに副メイド長は鶴屋さんでメイド長は森さんだ」
「な、なるほど・・・ゴホン」
俺は何かを誤魔化すように咳き込んだ。別に朝比奈さんと鶴屋さんと森さんのメイド姿を妄想したとかじゃないぞ。俺は紳士なんだ。絶対違うぞ。
「・・・少し怪しいが・・・。それと、古泉君も執事として働いている。橘さんは城下町で運送屋として働いていて、九曜さんは・・・正直、ちょっと分からない。神出鬼没と言うところかな」
佐々木が首をかしげると、長門が口を開いた。
「・・・彼女は一応、・・・こちらの宮殿で家政婦として働いている」
「だ、大丈夫なのかっ!?」
お前ら敵対勢力だろ。と思わず突っ込みそうになったが、それより状況確認が先だ。
「・・・大丈夫」 「そうか・・・。安心したぜ」 「多分」 「おいおい・・・」 「心配無用。」 結局四字熟語でトドメを刺された。
「そうか・・・・・・なんかあったらちゃんと言えよ?」   「・・・分かった」
「ああ、それと、僕らの学校のクラスメートだった人─国木田や須藤、それと谷口君だったかな?─たちは、城下町の学校へ普通に通っているよ。この国は平和な国みたいだから安心してくれ給え」
「なるほど。大体把握できた。ありがとうな」
「いえいえ、お安い御用だよ」 そう言って、佐々木は珍しく、にこりと笑った。
ん?ああもちろん、──綺麗だったな。
そういえば、話の核心を聞くのを忘れていた。
「で、何が原因で世界改変が起きたんだ?」
「・・・それは私が説明する」
「ああ、できるだけ簡潔に頼む」 長門はこくりと頷く。
「原因は、涼宮ハルヒが読んでいた小説を涼宮ハルヒが読んだ事。」
「・・・長門・・・今、涼宮ハルヒを2回言ったぞ」
「・・・気の迷い」 ・・・長門にもそんな事あるんだな。
「やっぱり僕が説明しようか。・・・昨日、彼女と僕が読んでいた小説の内容は、この世界と酷似している。
僕は本屋であの本を買って熱心に読んでいるハルヒをたまたま見かけたんだ。
それで、これは何かあるな、と女の勘が僕を北校の校門へ向かわせたんだ」
「佐々木・・・お前、ある意味凄いぞ。いや、ある意味じゃなくても凄い」
「褒められたのか、よく分からないけど・・・。
まあ、そうしたら案の定、彼女はその小説を熱心に読んでいた。そこの長門さんもね。
それで、僕もどうやったかは分からないけど、ハルヒの世界改変へ干渉を図ってみたんだよ。
そうしたら、僕とハルヒが双子という設定になっていた」
「なんでまた、そんな事になったんだか」
「どうやら彼女はキミを独り占めにするつもりだったらしいから、僕も追い出されないように頑張ってみたんだよ。
長門さんもそうしたみたいだったけど、流石に2対1には勝てなかったみたいだね。
結果、他国の王女様という事で落ち着いたんだ。・・・とは言っても彼女には関係無かったみたいだけどね」 佐々木は苦笑いをした。
「油断大敵」
「最近四字熟語が流行ってるのか?」
「マイブーム」
「そ、そうか」

「さて、キョン」 佐々木が俺へと向き直り、問いかける。
「なんだ?改まって」
「この世界を元に戻したいと思うかい?」
「・・・どうだろうな。正直、まだ実感が湧かないんだ。…ただ、いなくなった奴がいないんだったら急ぐことは無いと思う」
難しい顔で言った俺の顔を見て佐々木が笑った。
「くっくっ…僕もそう思うよ。・・・じゃあ、城内へ戻ろうか。そろそろ朝食の時間だよ。長門さんも一緒に」
そう言って、佐々木は俺たちを手で招く。
「おお、行くか」
「感謝感激」
「長門さん・・・そう言うんだったら、もっと感情を顔に出して欲しいな」
佐々木と長門のそんなやり取りを聞きながら、周りを見渡すと、太陽の光はさんさんと降り注ぎ、庭園に咲く花々についた無数の雫が、キラキラと宝石のように光っている。
大気は澄み、本当に平和な世界みたいだ。
「まあ、こんな世界もいいかもな・・・」
そう言いながら、思わずニヤけていたらしく、そんな俺を見た長門と佐々木に、
「ユニーク」 「くっくっ・・・そうだね」 と馬鹿(?)にされた。
佐々木なんかはお腹を押さえて笑っている。

─だが、今はそんな事を咎めることも、言い返すこともできずに、ただ天を仰いだ。あの太陽に向かって。

─────────────
佐「これは続かないね」
キ「多分な」
ハ「何よそれ、つまんないの」
長「・・・セブンイレブン」
キ「長門・・・語感は四字熟語みたいだが、それは横文字だ」

鶴「というわけでめがっさ続かないにょろっ!」

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最終更新:2008年04月04日 21:22
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