「何? 血液型を教えて欲しい?」
「……何だいキョン、そんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔して」
「俺の勝手なイメージだが、お前は血液型だとか星座だとか、そういうものには懐疑的だと思ってたよ」
「否定はできないね。客観的に見ても、それらの信憑性には多大な疑問が残る。
『迷信だという根拠はあるのか?』という向きもあるにはあるが、それは悪魔の証明というものだ」
「だったら尚更――」
「しかしキョン、こう考えられはしないだろうか。
血液型を持たない人はいないし、星座を持たない人もいない。これらは等しく、遍く全ての人が持っているものだ。
人権なんかよりも確実に――というのはブラックジョークに過ぎるかな。
ともかく、これらを持たない人はいない。つまり、人間である限り、共通の要素であるということだ。
この事実はある状況に於いて、非常に役に立つ可能性がある。わかるかい?」
「ちょっと考えさせてくれ。
……そうだな、初対面の相手と話す時、とか?」
「その通りだ。話が早くて、いつも助かっているよ。
君の言うとおり、初対面の相手との話しの取っ掛かりとしては、こういったものは非常に役立つのだよ。
趣味の話なんかは当たり外れがあるし、収入の話や政治・宗教なんかの主義思想の話を振るのは無礼だ、というのは有名だね。
その点、万人の共通点としての血液型や星座というものは強い。誰もが有する要素であると同時に、ある程度の共通認識もあるからね。
こう考えると、例え非科学的だろうが信憑性が薄かろうが、見方によっては有益だといえるだろう。
……という訳で、血液型だって馬鹿にはできないということだ。理解してくれたかな?」
「ああ、確かにお前の言うとおりだという気がしてきた。
……しかしだな佐々木。その理論だと、お前が俺の血液型を知りたい理由は説明できていないような気がするんだが」
「うぐっ……。君はどうしてそう、どうでもいいところで鋭いんだ……?
まあいい、説明しよう。そもそも血液型というのは――」
「ちょっと待て佐々木。あれ、橘じゃないか?」
「あっ、こんなところに居たんですか佐々木さん!
もぅ、探し回っちゃいましたよ。わたしの本を持ったまま行っちゃうんですから。
え? 本って何か、って? 参ったなあ、周防さんが間違って佐々木さんの鞄に入れちゃったのかなあ?
ちょっと探してみてくれません? タイトルは『意中の彼との相性チェック! 信憑性バツグン、血液型占い』って奴です。
パンジーは持ってませんでしたし、たぶん佐々木さんが持ってると思うんですよ。
……って佐々木さん、何でそんなに震えて――」
最終更新:2008年09月28日 17:14