「キョン。・・・・・・ちょっと聞きたいことがあるんだが、今、いいかい?」
突然の電話に驚いた。
それもそのはず、相手はだれあろう、あの佐々木なのだ。
こいつ意外と暇なんじゃないだろうか?
「あの事件」が始まってから、割と電話をもらう。
「構わないさ。で?聞きたいことって?」
俺は、ベッドに寝転ぶと佐々木に聞いた。
「キョン。・・・・・・・・・ハクション大魔王は、大魔王のくせに割と肩身が狭いのは、なぜだろう?」
「は?」
「これは、考慮する必要性がないか?」
これがハルヒなら「ない」「そんなことで電話してきたのか」「ネットで調べろ」「俺が知るか」と、答えるところだが、
相手は、あの佐々木なのだ。
佐々木は、確かにちょっと変わってるが、常識的でこんな電話なんてしてこない。
俺は、驚き、ベッドから撥ね起き、思わず大きな声で聞き返した。
「お前、大丈夫か?一体どうしたんだ!?」
「え?どうしたって?」
何事もないように答える佐々木に俺は、嫌な汗をびっちりかきだし、矢継ぎ早にまくし立てた。
「お前、変だぞ?こんなこと電話してくるような奴じゃないだろ?」
「勉強がつらいのか?大変だっていってたもんな?有名進学校だから・・・」
「それともあれか?友達がいなくて寂しくてこんな電話を?」
「お前に寄ってくる者がいないって前に言ってたもんな。苛められてるのか?ハブられてないか?」
「ごめんな。俺も去年は、色々、大変でそんなところまで気が回らなかった・・・」
「おまえは、ちょっと変わってるけど、人付き合いは、上手だったもんな。俺は、安心して、心配すらしてなかった」
「これからは、お前の親友らしく連絡を取って・・・・」
「まてよ・・・あれか、例の三人衆。おバカ娘と空気少女と変態野郎に囲まれて困ってるのか?」
「それなら、安心しろ!!俺があいつらから、佐々木!お前を守ってやる!!」
俺がそう言うと、佐々木は、思い出したようにぽつりと言った。
「橘なら僕の隣にいるけど・・・・」
その瞬間、俺の頭は、ぶっちり切れた。もう、こうしてはいられない。
「なに!!あのアーパー娘!佐々木にまで手を出しやがったのか!!もう、許さん!!」
「え・・・別に橘は、何も・・・」
「今どこだ!!安心しろ!俺は、ある機関とパイプがあるんだ!!必ず助け出してやるからな!!」
俺は、佐々木に場所を聞くと電話を切り、古泉に連絡を取った。
皮ジャンを手に取ると、猟犬のような低いうなり声をあげて、家を出た。
するとものすごい数の車と古泉が家の前で待っていた。屈強な頼もしい男たちと森さん。負ける気がしない。
俺は、古泉と森さんと一緒に新川さんの車に乗り込んだ。佐々木!待っててくれ。俺が、必ず!!
「ね、ねぇ。佐々木さん。ちゃんと呼び出してくれました?なんか彼、すごく怒鳴ってましたけどぉー・・・」
橘が捨てられた子犬のような目で僕に聞いてきた。
「くるよ。何か、ある機関の人間を引き連れて、橘をボコボコにしてやるって言ってたけど・・・・」
「な、ななな、なんでそうなるんですか?ちょっと、お話ししたかっただけなのに!!」
「僕もよくわからないけど、そんなに怖い人たちが来るんなら、逃げたほうがいいんじゃない?」
「佐々木さん!い、いい、今、あなたが彼にちゃんと説明してくれればいいじゃないですか!!」
涙目の橘に言ってやった。
「くっくっくっ・・・僕の貴重な勉強の時間を邪魔した罰だよ」
橘は、びっくりして、後ずさりしながら「まさか、まさか・・・」とつぶやいた
「ハクション大魔王とか無意味なこと言い出してるかと思ったら、こういうつもりだったんですか?」
「おいおい。僕は、そこまで非道じゃないさ。ただ、キョンが面倒臭がって”出てこない”というのを待ってたんだが・・・」
「くっくっ・・・ここまでの反響があるとはね。」
「笑い事じゃないです!佐々木さーーーん!!!」
「これって、やっぱり、僕に気があるのかなぁ?ねぇ、どう思う?ねぇ?」
「し、知りません!わ、私、すぐに逃げます!!だから・・・・!!!」
「わかってるよ。ちゃんと説明しておいてあげる」
泣きべそをかきながら、橘は、レシートを取るとすぐに勘定を済ませ、喫茶店から逃げ出した。
領収書も貰わないとは・・・・・・本当に怖い人たちが来るんだな。
その人たちが来るまで、僕は、ここで紅茶1っ杯で過ごさなければいけないのか・・・もっと頼べばよかったよ。
全く、待ってる間にどれくらい勉強できると思ってるんだい?
でも、ま、仕方ないね。
「僕のナイト様が来るまで、大人しく待ってるのもお姫様の仕事だもんね」
などと呟きながら、キョンを待ってる僕は、結構幸せ者かもしれないね・・・・・
最終更新:2009年02月17日 12:23