38-573「お喋りな背中」

くっくっくっ、こうして二人で歩くのは久し振りだね。
いや、ノスタルジックで感傷的な気分に浸るなんていつもの僕らしくないかな?
しかし、たまにはいいものではないかと思うんだ。
勿論、そういう気分に浸って情緒を感じるを良しとすると言う事ではなく、
時には過去を振り返って反省と経験の蓄積を確認するという意味でさ。
温故知新という言葉は馬鹿には出来ないよ。

えっ!?何を確認しているのかって?
君という存在は僕が思いも寄らない角度と方向から言葉や思考を引き出してくれるという事さ。
相変わらず、君の病的なほどの鈍感さは改善の兆しを見せてはいないようだが、
誠実さと大事なものを見つめる眼だけは確かなようだからね。
意味が分からない?まぁ、良いさ。

うん?そうだね…もうそろそろバスの時間だ。
まぁ、多少、到着が遅れても問題はない。
待てば良いだけの話だから。
遅れたいなら好きなだけ遅れれば良い。
バスの来ないバス停なんて無いからね、くっくっ。

キョンはどうする?
それはすまない。
やはり君は一緒に待ってくれるんだね。
そういう所はまるで変わっていない。
いや、こっちの話。

確かに最近は少し寒さが身に染みる季節になってきた。
早くバスが来ないと風邪を引いてしまうかもしれない。
体調を整え、何事にも万全に備える事は人間の根幹にも関わる事だと僕は考えている。
体調が優れないとやはり僕でも何をやるにも億劫で面倒になるから。
意外かい?
でも、僕だって一人の人間だから風邪を引けば辛いし、苦しいし、寝込みたくもなるさ。
見舞いの品は密のたっぷり入った林檎にしようではないか?
どっちかがもし風邪を引いたらね、くっくっ。

ふむ…やはり今日もバスは相当、遅れるかもしれない。
この時間帯、バスは渋滞に巻き込まれて到着時刻が不規則になるんだ。
ここまで遅いと歩いて帰った方が早いかもしれないね。
いや、大丈夫だよ。
しっかり防寒対策は取っているし、対策を取っていても風邪を引いてしまう事だってある。

そうかい?それでは、君のお言葉に甘えるとしよう。
君の自転車の荷台に乗るのは本当に久し振りだ。
乗り心地に変わりはないよ。
実に快適。

くっくっ、それはまた失礼な発言ではないかい?
重くなったなんて言われるのは心外だな。
成長したと言って頂きたいね。
少しばかり大人になっただけさ。
そういうキョンも少し太ったのではないのかな?
以前よりも背中が大きくなった気がする。

おっと!しばらく乗らないうちに自転車の二人乗りが下手になったね。
僅かばかり、フラついている気がするが…
怪我をしたくないからすまないが、背中に掴ませて貰うよ。
防寒対策も兼ねてね、くっくっ。

こんな所を見られたら涼宮さんに何をされるか分かったものじゃない。
えっ!?何故、涼宮さんの話が出てくるのかって。
全く…本当に相変わらずだね、キョンは。
まぁ、それが君の良い所でもあるけれども、いつかその鈍感さで身を滅ぼすよ。

やはりこの季節に自転車は寒い。
キョンは大丈夫かい?
そう?汗はちゃんと拭かないと身体を冷やすから気を付けたまえ。
良ければこのハンカチを使うと良い。

でも、久し振りに君の自転車の荷台に乗って二人乗りなんてしたものだから
風邪を引いてしまいそうだ。
今年の風邪は酷いという話を聞いたよ。
健康に気を配ってて免疫がないと
うん、これで風邪を引いたらきっとかなりの重症になるかもしれない。
危険で厄介なものだよ、病というものは。

僕?いや、僕は暖かいよ。
自転車をこいでる君の背中は暖かいからね。
中学生の頃といい今といい、キョン、君にはいつも世話になってばかりだ。
くっくっ、社交辞令は要らない、か…そういう所も変わってないね、君は。

ありがとう、キョン。

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最終更新:2009年02月17日 13:32
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