少し先を歩いていた佐々木が突然立ち止まって俺を振り返り、謎めいた口調でこう言った。
「見せてあげようか?」
「? どうした佐々木、突然」
俺は戸惑わざるを得ない。いつも小難しいことを言うやつだが行動まで難解になるとは思わなかったぞ。
佐々木はこほんと咳をすると、少し赤くなった顔で説明をはじめる。こいつのこういう表情ははじめて見る気がするな。
「いや、あるアニメのヒロインに似てると言われてね。ちょっと真似してみたんだ。”見せてあげようか?” ふふ、似てるかい?」
「いや、俺そのアニメ知らないし、似てるかと言われてもな……。それに見せるところないんじゃないか?」
後半はほとんど無意識のうちに喋ってしまっていた。
「……」
「あ、いや。まだ成長してる最中ってことを言いたくてだな。あ、いや、その」
何を言ってるんだ俺は。焦りのあまり余計なことを口走る。泥沼ってやつだ。
「……見せてあげようかっていう台詞はヒロインがしてる眼帯の下のことを言ってるんだ。キョン、君はさっき僕の胸のあたりを見てなかったかい?」
「ち、違うぞ佐々木。誤解だ」
額に冷や汗がにじみ出るのが分かった。
「ちなみにそのアニメは主人公のクラスメイトやその家族が次々と死んでいくサスペンスホラーなんだ」
「……」
「良かったね、キョン。君が登場人物だったらイの一番に死んでたところだよ」
「勘弁してくれ、佐々木。俺が悪かった」
「別に僕は怒ってないよ? ただ君が何と勘違いしたのか知りたいだけさ」
「う……」
まさか正直に胸と言うわけにもいかず、俺は棒のように突っ立ったままただ冷や汗をかいていた。
冷たい目のまま俺を見詰めていた佐々木が突然はじけるように笑い出した。
「くっくっく。いやいや、ちょっと苛めすぎたかな? 意外と苛め甲斐があって面白いよ、君は」
「おいおい、よしてくれよ……」
俺は安堵のため息をついて、佐々木の後をついて歩き出した。こいつ、意外とSッ気があったりするのだろうか?と思ったりする。よく考えると弁が立つし、相手の弱点をつく攻撃は得意そうだ……。
などと下らないことを考えていると、佐々木がくるりと振り返って胸のあたりをつまみ、悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
「見せてあげようか? この服の下」
(以下は天蓋領域により情報が物理的変動されました。全てを読むにはくっくっくと書き込むか佐々木スレにて続きをお書上げ下さい)
参考作品:2012年放映の綾辻行人原作学園ミステリホラー『Another』。
キャラクター原案:いとうのいぢ。