「今、気づいたんだが、同じ酒屋からもらったカレンダー、去年と少し違うな」
夏休みもそろそろ終わりかけのある日、私はキョンの家に遊びに来ていた。
少しキョンと話をしたあと、私たちは出かけることにした。その出がけに、ふと彼がそう言った。
「へえ、どんなふうに違うんだい?」
「以前は日曜日が左端だったのが、今度のは右端になっているんだよ。今頃それに気づいてな」
「去年とは違う製作所に、酒屋さんが頼んだのだろうね。まあ、君も去年とは少し違っていると思うのだが」
「どういうところが?」
「夏休みの終わりになっても、課題のことを気にしなくて済んでいるじゃないか。僕と遊びに行けるくらいの余裕がある」
「確かに佐々木の言うとおりだな。少しは人間進歩した、ってことかな」
そんな会話を交わしながら、私達はキョンの家を出た。
キョンが漕ぐ自転車の後ろに乗り、キョンの背中に掴まり、まずはお昼御飯を食べに行くことにする。
行き先は、インド料理店。この前、キョンが長門さんと二人で食事した、あのレストランだ。
彼女に先を越されて、少し悔しい。私も実は興味があって、キョンと二人で来ようと思っていたからだ。
少し欲張ってコ-ス料理。キョンと別々の物を注文して、二人で分けあって、どちらも堪能する。
料理自体も美味しいけど、こうやって食べると美味しさがさらに増す。
キョンと二人で食べるのは、私にとって、楽しく大切な時間だ。
駅に行き、電車に乗り、街中へ向かう。
キョンは服を買わなきゃ、とか言っていた。また背が伸びて、体格が大きくなったらしい。
身体だけでなく、心も人としての中身もキョンは成長している。去年のキョンとは随分違う。
”それは私も同じ”
最近、自分の体の変化に少し戸惑う。自分で言うのもなんだけど、少し女らしさというか、そんな感じが自分でも強く
なったような気がする。そして体だけではなく、心も変化している。
キョンと長門さんが二人で食事をしたと聞いたとき、私も彼女と同じところで食べたいと思った。いささか子供じみて
いるかな、と思うけど、どうしてもそこに行きたくなったのだ。
キョンが女性に優しいのはわかっているけれど、その優しさを独り占めしたいと思うことがある。
”女としての性”
キョンと二人でいるときは、あまり意識しないようにしていたけど、最近少し気持ちが落ち着かないことが増えてきた。
人ごみの中を、二人手をつないで歩く。夏の花火の日の時の様に。はぐれ無い様に、そして思いをつなげるために。
一つの季節が終わりを迎え、私たちの関係もまた、変化していく。
新しい季節の中で、過ぎ行く時の流れの中で、この手が離れないように、二人の思いが繋がるように、不確かな未来を信じて
、私達は前へ進んでいくのだ。
最終更新:2013年02月03日 17:40