なぁ佐々木、本当に俺なんかで良かったのか?
「どういう意味だい?キョン」
いやだって、お前はその、美人だし、頭も良いし、性格だってちょっと理屈っぽいが面倒見が良くて頼りになるから、
その気になればもっといい男を捕まえられるだろうに。
それにいつだったか自分で俺の親友だと言ったよな、だからそれ以上は踏み込ませないつもりだと思ってたが。
「くっくっ、嬉しい事を言ってくれるじゃないか。だが先程の問い自体は愚問だね。
確かに僕はキミに対して所謂燃え上がるような恋心というような物は抱いていない。
恐らく今後も抱く事は無いだろう、他の誰に対しても、ね。だのに何故キミを受け入れたかというとだね、僕にとってキミが最も丁度よかったからさ。」
丁度いい?
「そう。僕が求めていたのは100点満点の人なんかじゃない。75点の人なのさ。考えてもみたまえ、
もし僕が完璧な人間であるならば伴侶なんて必要無い。一人で何でも出来るんだから。
生憎僕はそうではないのでね、故にキミが必要なんだ。尊敬出来る点と突っ込みを入れられる点のバランスが取れているキミが。」
突っ込まれるのはともかく、俺にお前から尊敬してもらえるような長所があるとは初耳だな。
「くっくっ、正にそういうところなのだがね。気付かなくて結構、そのままのキミであってくれ給え」
………なんか上手く避わされた気がするが、それはひとまず置いとくとしよう。
要するに、俺にはお前から見て褒められる点とけなせる点の両方あるから良いって事か。
「けなすって、そう言ってしまうと身も蓋も無いじゃないか。まあ概ねその通りなのだけれど。
実の所、中学時代に既にキミは合格ラインの70点に達していたのだが、幸か不幸か今は理想の75点をやや越えてしまっているのだよ。
涼宮さん及びSOS団での活動で振り回される中で得た経験の賜物というべきかな。
ああそれが困るといってるんじゃない、むしろ自分を磨く良い発奮材料になるよ。再びキミと釣り合うようにする為の、ね。
まかり間違っても自分がだらけて評価を下げようなんて事は言わないでくれ給え。」
相変わらず厳しいな。ま、それがお前がお前たる由縁なんだろう、納得も出来た事だし今後とも宜しく頼むぜ、佐々木。
「こちらこそ。宜しく頼むよ、キョン」
なんて話をしてる間、佐々木の表情はいつもと変わらない微笑みを浮かべたままだった。表情はな。
顔色は…まあ察してくれ。勿論俺も突っ込まない。鏡を見せられるに決まってるからな。
最終更新:2007年09月01日 09:47