69-150『A love eternal』

成人式。周りは着物やスーツの人間でごった返す。着物姿の佐々木も、辟易しているようだ。
「形式とは必要だけど、馬鹿馬鹿しいものでもあるね。」
「全くだ。」
辟易する。こんな式典を考えた馬鹿は、どこのどいつだ。
「キョーン!同窓会、18時からだって!北高が20時ー!」
「ああ。ありがとう、国木田。」
とりあえずは、このスーツを脱ぎたい。ムズムズする。
「同感だよ。……朝から見合い写真は撮らされるは、今日は最悪だ。」
「見合い?」
俺の言葉に、佐々木は顔をしかめた。
「成人式に何故着物を着るか、って話さ。家によっては親が見合い写真も平行して撮らせるんだよ。」
僕の家は悲しい哉、写真を撮らせる派でね。
佐々木はそう言うと寂しそうに笑った。
「今すぐどうこうはないだろうが、将来的には考えないといけない話だ。親としては準備をしているだけなのだろうが。」
「結婚、か。確かに何人かは子どももいるしな。」
既婚は、SOS団だと古泉か。森さんと籍を入れていたな。学生結婚。気の早い事だ。
「……佐々木。」
「なんだい?」
「少し風に当たろうぜ。いい加減気分が悪くなっちまった。」

公民館から出て、近くの中学校に入る。
「開放されているとは、気が利いているな。」
中学校は、開放されていた。卒業生へのサービスなのだろう。どうやら一番乗りらしい。
「ああ。……懐かしいね。」
佐々木は目を細める。
「せっかくだし、教室を覗くか。」
俺の提案に、佐々木は首を縦に振った。

教室は、何も変わっていない。……ここには、いつもあの頃の俺達がいる。
「キョン。」
「……何だ?」
暫く教室を眺める俺達だったが、佐々木は唐突に口を開いた。
「さっきの写真の件だが、あれは本当にお見合いに使われる写真なんだ。」
「……そうか。」
「二年か、三年後。僕は、僕の親に従い、お見合いするかも知れない。その時は……」
俺は、佐々木を向き、言った。
「くそったれと伝えろ。今の俺はただの学生で、何の力もない。だが。お前を好きな気持ちは、誰にも負けん。」
佐々木の目が揺れる。ん?お、俺は何を……?あ、あれ?いや、待て、俺。何を気持ちをぶっちゃけているんだ?
わかる奴はここに来い。そして俺にわかるように説明しろ!いや、して下さい!


「……唐突だね。」
「…………堪忍してくれ。」
一生言うつもりはなかったんだが。すまん。俺はお前に親友以上の感情を抱いている。そこは認める。

しかし、これでは、まるでプロポーズ……

「……五年間。考えてみたら、僕は気の長い恋をした……。」
ん?さ、佐々木?何故泣く?い、意味が分からん!
「キョン。返事を言おう。……これからも宜しく、親友……あらため、恋人。」
あ…………え?い、いや、佐々木?あのだな、俺じゃ、お前には似合わな…………

『だせぇ野郎だな!俺!そう、お前だよ!』

教室から、昔の俺の声が聞こえた気がした。……そうだよな。俺は、自分に応えんといかん。
「ああ。……成人式は、立志の誓いらしいな。」
「…………?」
「お前を支えられるような人間になる、とお前に誓う。……俺とこれからも一緒にいてくれ。恋人として。いつかは……共に道を歩く人間として。」

『くっくっ。キョン、聞いたかい?』
『うるせぇ。ほら、お前みてみろ。泣きじゃくりやがって、情けねぇ。』
『うるさいな。君だって相当なものだろ。』
『佐々木。』
『なんだい?』
『宜しくな。』
『くっくっ。こちらこそ。』

To Be Continued 68-889『下戸佐々木』

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最終更新:2013年03月03日 05:33
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