勇者と魔王が結ばれる。んなもん他からすりゃ、面白いわけないわなぁ?
しかも俺なんて、ただ単にたまたま筆記試験に受かっただけの似非勇者って言われてたのによ。
故郷に佐々木を連れて凱旋したら、案の定拘束されちまった。やれやれ。
「キョン。子どもの名前は何にする?」
「お気楽だな、お前は。」
佐々木は編み物をしている。因みに拘束は1秒で外された。佐々木が焼き切ったそうだ。
「お気楽だよ。僕は一国の元首。そしてキミはその伴侶。それを拘束するなんて、外交問題になるから。普通に。
どこのトンチキが考えたかは知らないけど、戦力差がありすぎる国に対して戦争なんてやるものじゃない。仮に僕達を殺せば、その瞬間がこの国の終焉さ。
それに。見ただろう?あの兵士達の怯えた表情。個体としての能力で、魔王に敵う者はいない。よって殺される事はないよ。」
確かにな。魔王は最強の存在だ。勇者を除けばな。
似非勇者の俺と違い、本物がいるんだよ、伝説の勇者が、この国には!
「キョン……」
階段から音がする。……フリフリのドレスに着せられた、伝説の勇者……涼宮ハルヒ。
「ウェディングドレスじゃないか。上質な絹をふんだんに使った、贅沢品だね。」
や、やめろ、佐々木……
「お久し振りね、女狐……!」
剣が一閃したかと思えば、牢屋の格子がチーズみたいに切れた。
「ひいいいいいい!」
後退りする俺の前に、佐々木が出る。
「くっくっ。祝福に来てくれたのかい?そのドレスは、私への御祝儀かしら?涼宮さん。」
「そうね、あんたの血にまみれる事になるからね。棺桶で着せておいてやるわ。」
二人の間に火花が散る。
そして。
「エラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラー」
無機質な声が響く。……この声は……
「長門……!」
機械の町の長門有希。対人無敗の女。仮に1対1なら、その戦闘スキルは勇者をも凌ぐ。
しかし、対モンスターにはあまり強くはない。
「迎えに来た。」
長門はそう言うと、俺に真っ直ぐ向かう。立ちはだかるのは、ハルヒと佐々木。
三竦み。ハルヒを倒せば、長門が佐々木にやられる。
佐々木を倒せば、ハルヒが長門にやられる。
長門を倒せば、佐々木がハルヒにやられる。
羨ましいか?いつでも代わってやるぞ?ただ、死んでも文句言うなよ?流れ弾に直撃しちまい、俺は床に倒れた……。次に気付いた教会でも、三人の争いに再度巻き込まれて殺されたが。
どうやら『平穏』からは程遠いな。やれやれ。
END
最終更新:2013年03月03日 05:36