69-457『きょっこ団、聖戦に備えるの巻き』

今年の恵方は、南南東。
珍しく長門が恵方巻きを作って持ってきた。
「食べて欲しい。」
酢飯にカレーというチョイスは、嫌がらせなのだろうか。しかも一日置いているので、既にカチカチだ。
ハルヒも古泉も朝比奈さんすら冷や汗を流している。
「…………?」
長門が小首を傾げる。いや、長門……これはだな……
「(キョン!有希の心遣いを無にしちゃダメよ!)」
我等が男前な団長様。まず率先するかと思いきや……
「まずはキョンが食べるわ!」
と、まさかの無茶ぶりを宣言した。
……まぁ、味は分かるよな?酢飯にカレーが合うって奴なら、多分気に入るぜ。俺は絶対に無理だがな。
結局、ハルヒも古泉も朝比奈さんも、目を白黒させながら食べた。長門は満足そうだったし、まぁ良しとしよう。

「くっくっ。酢飯にカレーか。斬新な組み合わせだね。」
「笑うな。長門なりに一生懸命だったんだろう。可愛いじゃねぇか。自分の好きなもんで巻物なんてよ。」
学校帰り。佐々木と駅で落ち合い、ベンチで話す。付き合い始めてからは、これが日課だ。
「くっくっ。本当にキミは長門さんを大切にしている。妬けてしまうよ。」
「バカ。SOS団の皆はお前と違うベクトルだ。」
ハルヒも長門も朝比奈さんも古泉も大切な仲間だ。
「さて、キョン。そろそろ行くかい?」
「ああ。」
佐々木と手を繋ぎ、立ち上がる。今日は俺の家で夕食だ。
佐々木お手製の恵方巻きを食べられるかと期待する俺の前に、数人の男女が立ち塞がる。
「鬼は外だ、キョン!」
オールバックの男がパチンコ玉を構える。
「なぁっ?!」
佐々木の手を取り、走り出そうとした俺に冷ややかな声が響く。
「ここでお前が果てるのは、規定事項だ!現地人!」
薄いアッシュの髪の男もだ。
「佐々木!逃げるぞ!」
何とかいない方向へ駆け出す俺達だが……
「うん、それ無理♪」
青髪の女が立ち塞がった。
皆、一様にパチンコ玉を抱えている……。


「お、お前らは何者だ!」
「僕達がキミ達に何かしたのかい?!」
佐々木を守りながら立つ。……奥からマスクをつけたツインテールが歩いてくる……。
「ところ構わずいちゃつくアベック達に、正義の制裁を与える……」
大仰なポーズを取り、ツインテールが俺達を見る。
「その名もステキ」
「「「「きょっこ団!」」」」
……目が点になるとは、この事だろうか。
「……そこのパピヨングラスつけている三人の変態。お前ら谷口に藤原に朝倉か。」
三人のパピヨングラス達が明らかに動揺する。
「違います。彼等はきょっこ団の名もなき修羅なのです!」
「お前、橘だろ。」
ここまでバレバレだと、最早突っ込むのも面倒だ。
「やれやれ。行こうぜ、佐々木。ビビって損した。」
佐々木の手を引き、歩き出そうとした俺に……

「本物の佐々木さんはこのわたしを信頼されているのです!!
だから!なにがあろうといちゃつくはずがないのですッ!よくも!このクソキョンがッ!
わ た し に 佐 々 木 さ ん の『姿』を 見 せ 付 け た な ァ あ あ ー ー ッ!
よりによってこのわたしに! よくもッ! 佐々木さんの手をッ!よくもわたしの前で握ったなァーーーーッ!!
蹴り殺してやるッ! こ の ド 畜 生 が ァ ー ー ー ー ー ッ」   プッツン
何かヤバい音がした。
「暗黒空間にのみ込むのは一瞬だッ! それでは私の怒りがおさまらんッ!
キサマが悪いんだ! キサマがッ! わたしを怒らせたのはキサマだッ! キサマが悪いんだ!
思い知れ! どうだッ! 思い知れ! どうだッ! どうだッ!」
橘が、谷口が、藤原が、朝倉が……俺にパチンコ玉を雨霰と降らせる。
この橘 ま と も じ ゃ あ ね え ………異常だ!
カップルが手を繋ぐ姿を見たことを怒っているのか! こいつらの精神こそが暗黒空間だッ!こいつの心の中がバリバリ裂けるドス黒いクレバスだッ!


「……今日はこの位にしてやるのです。」
ボコボコにされたキョンが倒れる。

「次の聖戦はバレンタインなのです!」
気勢を上げるきょっこ団のマスクの肩を、佐々木が掴んだ。

「ちょーっとお話ししようか?」

ニコニコ笑い、佐々木は橘の肩を掴む。その笑顔はどこまでも美しく……

どこまでも残酷だった。

翌日。
「えらいめに遭ったぜ……」
痛む身体を引き摺り、俺は教室に入る。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
朝倉が真っ青になり震えている……。谷口も同様だ。
こいつらに何があったか、佐々木に尋ねてみたが……

「くっくっ。おいたが過ぎるから、躾をしてあげただけだよ。」

と言うだけで、朝倉達も頑として答えなかった。

次の聖戦を前に、早くも敗北したきょっこ団。

彼女らの明日は、暗く……そして悲しい。

「次は地獄姉妹になるのです!」
「理由はともかく、少しは懲りてはどうかな?橘さん。」

END


(おまけ)

                                ,.-`ー‐- 、
                               ン/'V^ヽ、 ゝ  バックアップ ッテ
                 ,、- ー- ,、         メ《(〈`´〉)》〉ミZ   ツライナア
                 ン,ミヽンミノノ         |.|─ ─| |)ハ\_
               、バ〈《゙`"〉〉〉  ,.A~A、 ⊂jハ、||ヮ ||ノリ.lつ_j .〉ご) .  -━━ ミ
ジツハ,            _ _ イj(√ 厂ル  :(´     `):    .        /:┛┗ : : :\: :\
イニシャル ヲ ナラベルト  (二l _NiつДノつ :(_,人_,谷人):           /: : : ┓┏: :〕: : : : : : \
TRIP ニ ナル ッテイウ             :リ'(! O  O|:          /: : : : |!: /: /:/ ヽ: : ト、: : : \
 シコミ ダッタンダヨネ              :ヾ!、u ロ,ノ:   .      /: : }: : |!/: /:/   \} ヾ: \\
    , -ー- 、                :/i' l `{iつ:   .      l: : : γヽ:リ'¨´ ┃   ┃ |!: : :ト .z≧
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最終更新:2013年06月02日 02:17
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