「僕はネコになりたい」
金曜日の夜、佐々木さんの家での飲み会の最中、佐々木さんが突然そう言いました。
九曜さんはそんな佐々木さんを、興味深そうに見つめていました。
「佐々木さん。何でネコになりたいのですか?」
「ネコになってキョンの体にスリスリしたり、寝床に乗り込んだり、体を洗ってもらったりしたいんだよ」
佐々木さん、酔ってます。そういえば男言葉になってますね。
「―――そんなに・・・なりたい?――――」
なりたいなんて言ったら駄目ですよ、佐々木さん。九曜さんが本気にしますよ。
「なりたい」
「―――ファイナル・・・アンサー?―――」
「ファイナル・アンサー」
とたんに佐々木さんの姿が変身して。
見事なトラネコになりましたが、体格が変わらないので完全にトラですよ。これじゃキョンさん怖がりますよ。
「―――テレポーテーション―――」
佐々木さん消えましたね。九曜さん飲み直しましょう。
「―――京子―――呑み比べ―――」
その頃キョンさんの家、佐々木さんはキョンのベットに潜り込んでいる。
「気がついたらキョンが隣に、幸せ。これは幸せな夢だ。夢なら覚めないでくれ。ずっと抱きしめていたい。キョン」
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俺が目を覚ますと、横にトラが寝ていた。毛並みが立派だなー。
俺、まだ寝ぼけているな、寝直そう。
「キョンくーん、お早う。う、う、う、う、」
妹が来たような気がするが、気のせいだな。
「お母さーん。キョン君の部屋にトラさんがいるよー。怖いよー」
「何馬鹿なこと言ってるのよ。全く」
ギギ-、母親が静かに扉を開けてキョンの部屋を見る。しばらく見た後、母親が扉を閉める。
「確かにトラがいるわね。メスのトラが。全くうちの息子は。いつの間に」
「お母さーん。キョン君食べられないのー?」
「すでに食べられているわね。性的な意味で。そうね、ご飯一人分増やさないと。」
「キョン君大丈夫―?」
「大丈夫よ。それよりあんた、赤ちゃんできたら、赤ちゃんの世話頼むわよ。キョンは毎日あんたのオシメ代えたのよ。恩返ししなさいよ」
「うん、わかったー」
その頃、佐々木邸
「―――しまった――-」
「どうしました?九曜さん」
九曜さんの言葉によれば、魔法が不完全で今頃キョンさん以外には普通に見えているらしいです。
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おいしそうな匂いがする。起きて飯を食うか。
うわ、まだトラがいる。トラを起こさないようにそおっとー
ガバ、うわー、トラが抱きついてきた。放せトラ、いや無闇に抵抗する方が危険か。
食堂に行くと
「お早う、キョン。昨日は楽しみだったらしいわね。そちらのお嬢さんもお早う」
「ガオー(お早う)」
「キョンくーん、お早うー」
(佐々木おねえちゃんがトラさんに見えたのは何でかなー?)
何でまともなんだよ、お前らトラがいるんだぞ、トラが。
「お前らこのトラが気にならないのかよ」
「トラさんかわいいねー」
(酔っ払いのことを大トラと言うらしいねー。
昨夜、酔った佐々木おねえちゃんとキョン君はー。それで赤ちゃんできるんだー)
「お久しぶりですねトラさん。ハンバーグ食べます?」
「ガオー(いただきます)」
もしかして狂っているのは俺か?そうだ長門なら。
Fromキョン To長門『うちにトラがいるんだが、どうしたら良い?家族は何故かトラがいても平気なんだが』
From長門 To キョン『あなたが心配することはない。彼女の願いが叶えば元に戻る。思念体は今回の出来事が観察されて満足している。
でも、私という個体はあなたには失望している。この女たらし(怒、怒、怒、怒、怒)』
Fromキョン To長門『どういうことか詳しく教えてくれないか?』
長門から返事ないな。
でも、このトラは危険なものではないらしいな。よく人に慣れている。
その後、トラといっしょにテレビを見たり、本を読んだりした。
トラは俺の体にひっついてスリスリしてくる。かわいいぞ。
頭や顎や背中を撫でてやると、うれしそうにゴロゴロ鳴く。
そういえば、母親は?
「お母さんは、昔の結婚指輪を探しているってー」
うちの母親は、時々、意味不明のことをするな。
何だトラ?俺を風呂場に連れてきて?いっしょに入りたいのか?やれやれ
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その後のことは、言いたくないな。
佐々木の両親に謝りに言ったり、SOS団の女性全員と鶴屋さんに絶交されたり、国木田と谷口に冷やかされたり。
そういえば、結婚式は明日か。早いな。高校生の分際で結婚するとは思わなかったぞ。
明日、ハルヒ達は来てくれなさそうだな。友達として、俺と佐々木を祝福するのが当たり前じゃないか。
俺が何をしたんだ。それとも、そんなに佐々木が嫌いか?
(終わり)
最終更新:2007年11月13日 08:25