午後からキョンと演劇を見に行く予定だった日の午前中、僕の家に涼宮さんが来た。
黒ずくめで、作り物の大きな鎌みたいな物を持っていて、民話の死神みたいな格好だった。
「涼宮さん、どうしたの?死神みたいな格好で?ハロウィンはとっくに終わったわ」
「死神みたいなじゃなくて、あたしは本物の死神なの」
とうとう頭がイカれたか?
いや、自分では面白いと思っている冗談に決まっている。
「麻雀で勝負するわよ。覚悟してね」
初っ端馬鹿に高い手をツモられたが、その後ジリジリと追い上げ、見事逆転勝利した。
「3連勝したら魂もらおうと思ってたけど、1勝もできなかったわね。というわけで、これは貰っていくわ」
と言って、演劇の券をビリビリに破いた。
「何をするの?涼宮さん!」
僕は破れた券を呆然と見ていた。
気が付いたら涼宮さんはいなかった。
酷いわ。抗議しないと
「ちょっと涼宮さん(以下略)」
「ヒック佐々木さん?何言ってるの?ヒック」
『涼宮さん飲み過ぎですよ』という朝比奈さんの声がする
もしかして酔っているの?
古泉くんが電話を代わった
「涼宮さんは、あなたと彼がデートに行くと聞いてから、ずっと飲み続けています。かれこれ2時間」
ということは、さっきまでいた涼宮さんは?
「え?さっきまで僕の所に涼宮さんが来ていたのだが」
『有希飲んでいる?』という涼宮さんの声に長門さんが答える『飲んでいる。でも、いくら飲んでも酔わないこの体がうらめしい』
「幻覚でなければ、分身ですかね?
それより、御身体は大丈夫ですか?涼宮さんはうわ言のようにあなた達に死ねと言ってます。
何が起こるか判らないですし、今日のデートは取り止めるのが無難かと思います」
「ありがとう」
「そうだ、長門さんに代わりましょうか?」
「あなたは既に安全になった。心配ない」
「ありがとう。長門さん」
というわけで、演劇には行けなくなった。
代わりに映画見に行ったけど。
次の日のニュースで、僕達の行くはずだった演劇場の客席に照明が落下したことを知った。
幸いなことに死傷者はゼロだったが。
(終わり)
最終更新:2007年11月24日 09:36