私は存じ上げておりません
平成25年3月29日参議院予算委員会における小西洋之(立憲民主党)の質疑で飛び出した発言。
「改憲はライフワーク」と自称し、かつ成蹊大学法学部卒の安倍聖帝が法学部一年生ならだれでも知っているような憲法学者・芦部信喜の名前を知らなかったため驚かれた。
ネトウヨからの擁護に、聖帝が成蹊大学法学部を卒業したころはまだ芦部は憲法学の大家ではなかったとするものがある。
ネトウヨからの擁護に、聖帝が成蹊大学法学部を卒業したころはまだ芦部は憲法学の大家ではなかったとするものがある。
しかし、芦部信喜は、それ以前の戦後憲法解釈の諸説と戦前憲法の議論を整理統合したうえでアメリカ憲法学の知見をも導入して日本憲法学のスタンダードを作った大御所であり、他学部生でも教養科目として憲法に関する講義を取れば「芦部説」として何らかの形で名前を聞かされるレベルの人物である。
改憲がライフワークのはずの聖帝が、現代憲法を論ずる基礎知識を持たないことがバレた一幕である。
また、安倍晋三は成蹊大法学部をコネ卒業したのでは?と言われている原因のひとつでもある。
また、安倍晋三は成蹊大法学部をコネ卒業したのでは?と言われている原因のひとつでもある。
ちなみに、当質問の発端である小西洋之は法学部卒ではない。
小西議員の質疑内容
この質疑は基礎的な議論にこたえられない聖帝が質疑をクイズあつかいしたり指をさすなと言ってみたり相手を興奮していると揶揄したり小西の名前を呼び間違えたり聞かれてないやつが答えたりネタまみれ。
小西議員は成年後見人制度の問題について実際の裁判を例に質問。政府が控訴する決断をしたことを問題視した。
そこから派生して憲法の中で一番大切な条文は何かと問い、そして自民党会見草案の問題を指摘……したかったようだが安倍聖帝が幸福追求権も芦部信喜も知らなかったためまごついた模様。(議事録を読むと、小西は、幸福追求権から公共の福祉、明治憲法の安寧秩序、そして自民改憲草案の社会秩序へとスムーズに話を展開させていて面白い。小西がやろうとしていることはクイズ大会などではなかったことがよくわかるのだが……。みっともない改憲草案ですよ、はっきり言って。課題が激しく残っている中で、予算委員会でややこしい質問を受けるという状況だ)
以下では読みやすさのために質疑を分割して見出しを付けている。
国会コント
憲法で一番大事なこと
小西洋之 まず、議論に入る前に、現行憲法ですね、総理は憲法を変えると言っておりますから、現行憲法の基本構造についてちょっと整理をさせていただきます。
総理、三権の長である、行政のトップ、内閣総理大臣の立場としてお答えください。憲法の中で一番大切な条文を一つだけ挙げてください。何条ですか。
安倍晋三 一つだけ挙げることはできません。
小西洋之 もう一度聞きます。憲法の下で三権の行政権を率いて国民の権利と自由を守り福祉をつくる、そのための使命を帯びる、憲法上の使命を帯びる内閣総理大臣として、たった一つだけ挙げてください。どうぞ。
安倍晋三 私は憲法遵守義務を帯びておりますから、一つだけ挙げることはできません。(発言する者あり)
小西洋之 今、後ろから優先順位は決められないというやじがありましたけれども、憲法が基本的に分かっていない方。多分、谷垣前総裁はお分かりでしょう。実は、理論的には分かるんです。
あらかじめ答えを書いていくと、憲法で一番大切なのは第13条個人の尊重である。近代憲法における国民主権や人権擁護の価値観に通底している条文である。ここから、小西は質問を具体化しながら答えが13条になる質問を繰り返す。
トーンポリシング「クイズのような質問」
小西洋之 じゃ、そのことを今から解き明かしてまいります。では、じゃ具体的な話、総理、憲法において包括的な人権保障、包括的な人権規定と言われる条文は何条ですか。安倍総理、どうぞ答えてください。
安倍晋三 今そういうクイズのような質問をされても、暫定予算を議論をしているわけでありますから、余り生産性はないんじゃないですか。それだったら、そういうのを聞くんだったら、私に聞かなくても調べればいいじゃないですか。
小西洋之 私は知っています。今総理が答えられなかったことは、大学で憲法学を学ぶ学生が一学期でみんな知っていることですよ。
トーンポリシング「大学の講義ではない」
小西洋之 重ねて聞きます。総理、総理は、日本国憲法において包括的な人権保障を定めた条文、何条か知らないという理解でよろしいですか。どうぞ。
安倍晋三 これは、済みませんけど、大学の講義ではないんですよ。国会で大切な暫定予算の議論をしているんですよ。こんなやり取りが生産的ですか。
小西洋之 暫定予算の質問にふさわしくないと言いましたけれども、憲法の中で最も大切な条文の位置付け、またその内容を知らずに予算を編成し執行すること自体が内閣として失格なんですよ。
まあ、そのことおきます。じゃ、今総理は人権の包括規定を知らないということをこの国権の最高機関の委員会の議事録に付させていただきました。
トーンポリシング「指さすのはやめた方がいい」
小西洋之 では、聞きます。総理、個人の尊厳の尊重、個人の尊厳の尊重を包括的かつ総合的に定めた条文は何条ですか、憲法、日本国憲法何条ですか。
安倍晋三 まず、余り人を指さすのはやめた方がいいですよ。これは人としてのまず初歩ですから。そのことは申し上げておきたいと思います。
小西洋之 指さすのは、やむにやまれぬ、国民のためにやむにやまれぬとき以外はしません。
国民のためにやむにやまれぬときは指をさすらしい。いいのかよそれだったら
議長に不意打ちされる麻生太郎
小西洋之 では、今、私が問うた質問。個人の尊厳の尊重を包括的に定めた総括的な規定は何条ですか、憲法第何条ですか。
石井一 麻生財務大臣。(発言する者あり)
麻生太郎 今、今言われましたから出てきて……(発言する者あり)ありがとうございました。御指摘をいただきました。もう少しゆっくり出るようにいたします。
もう一回御質問ください。
小西洋之 憲法、日本国憲法において個人の尊厳の尊重を包括的に定めた条文は何条ですか。総理、総理、総理に問うています。
トーンポリシング「子供っぽいことはやめましょう」
安倍晋三 それをいきなり聞かれても、今お答えできません。
それと……(発言する者あり)その、すごいとかいうことではなくて、こんな相手がすぐ答えられないことを今ここで質問して、まるで自分の方が優越に立っているような、そういう子供っぽいことはやめましょうよ。
小西洋之 私の質問が、仮に日本国憲法が五十条、五十一条、五十二条、五十七条まで何を決めていますかと聞かれれば、私も残念ながら明確には答えられません。後ろから今官房長官が助けに入りましたね。
私は、聞いているのは、じゃ総理、カンニングしないで。憲法において、あなたは今、包括的な人権を定めた条文を知りませんでした。では、幸福追求権を定めた条文は憲法第何条ですか。幸福追求権を定めた条文は憲法第何条ですか。どうぞ。
安倍晋三 それ、こういうやり取りは、私、何の意味があるか分かりませんよ。じゃ、これを決めた、憲法九十三条、九十一条は何だとか、そういう、何の意味があるのか分かりませんけどね。これ、やるんだったら大学の憲法学の講義でやってくださいよ。
小西洋之 この条文は、私が問うている条文、じゃ、今議事録として、総理は幸福追求権を定めた条文を知らなかったということを私は付させていただきます。
総理、今総理が答えられなかった条文は、総理が声高に言っている普遍的価値の実現あるいは法の支配の実現、その中枢を成すものです。また、日本国憲法が何のためにあるのか、日本国憲法の下で立法府、行政、司法が何のためにあるのか、全てそこに行き着く究極の条文なんですよ。憲法第十三条ですよ。憲法第十三条を知らない。憲法五十条から五十七条までの条文が分からなくても、具体的、個別に言えなくても、憲法十三条が分からないというのは、これは驚愕の事実ですよ、総理。あきれます。
トーン・ポリシング「何か興奮しておられますけど」
小西洋之 じゃ、総理、じゃ、総理、今お手元に自民党の憲法改正草案で憲法十三条の新旧対照表がありますよね。憲法十三条、日本国憲法の憲法十三条を見て、御自分の言葉で日本国憲法の憲法十三条の意味を説明してください、御自分の言葉で。
安倍晋三 何か興奮して質問しておられますけどね、このやり取り自体に私は何の意味があるのか分からないんですが、要するに、憲法の条文でこれを知っているか、あれ知っているかといっても、全く私は意味を感じません。(発言する者あり)
石井一 それじゃもう一度、小西洋之君。
小西洋之 では、お話、議論してもしようがないということがよく分かりましたので、先に進めさせていただきます。何も知らないということがよく分かりました。
人の名前を間違える
小西洋之 自民党の憲法改正草案は、憲法第十三条、幸福追求権、個人の尊厳、そして公共の福祉、最も重要な人権の原理を定めたその条文について、その公共の福祉を公益及び公の秩序と変更するとしています。今お手元にQアンドAがありますよね。QアンドAを基に、あるいは御自分の言葉で結構ですけれども、どういう目的、内容でその憲法十三条を公益及び公の秩序と変えるのかを御説明ください。
安倍晋三 改正草案においては、自民党の案としては、「全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。」ということでありました。
今、しかし、中西委員はずっと……
小西洋之 小西です。
安倍晋三 あっ、済みません、中西さんじゃなくて小西さんですか。小西さんは知っているか知らないかというだけの質問であって、その精神はどう考えるかということではなくて、知っているか知らないかという質問だけだったので、それに何の意味があるかということは、私は言わざるを得なかったということでございます。
自民党憲法草案について聞かれているのに答えず、先の質問で憲法13条について答えられなかったことについて言い訳している聖帝。何か興奮して答弁しておられますけどね、人の名前を間違えたことについて釈明したほうがいいと思いますよ。これは人としてのまず初歩ですから。
国会(まじめモード)
聖帝抜きに官僚相手に質問をする小西。急に話が回りだす
小西洋之 私は、かつて第一次安倍政権を含め十二年間霞が関で官僚として働いておりました。麻生大臣にもお仕えしたことがございます。で、国政に就いて二年半、立法に携わっておりました。憲法十三条を私は考えなかったことは、公務員時代、国会議員になっても一度もございません。当たり前の基本的な条文です。
憲法十三条の内容解説
小西洋之 では、国会図書館、今日来ていただいています。日本国憲法の憲法十三条の内容を説明してください。
吉本紀 お答えいたします。
一般に、憲法第十三条は三つの柱から成ると解されております。第一に、個人の尊厳の尊重でございまして、これは個人の平等かつ独立の人格価値を尊重するという原理の表明と解されております。第二に、幸福追求権でございます。これは人権保障の一般原理を示すにとどまらず、具体的権利性を有するという見解が通説でございます。第三に、最後でございますが、公共の福祉でございまして、通説的見解によりますと、人権相互の矛盾、衝突を調整するための実質的公平の原理をいうものと解されております。
以上でございます。
小西洋之 ありがとうございました。
憲法十三条の解釈
小西洋之 続いて、憲法審査会で言われました高見先生による憲法十三条の解釈、日本を代表する憲法学者ですけれども、国会図書館お願いします。
吉本紀 お答え申し上げます。
高見教授は、昨年の五月十六日……(発言する者あり)少々お待ちください。
こういうものでございます。ちょっと戸惑って申し訳ございません。
石井一 答弁を続けてください。
吉本紀 はい。
高見教授は昨年五月十六日の参議院憲法審査会において参考人としていろいろと御発言されておりますが、(~引用時に中略~)では読ませて、再現させていただきます。
「公共の福祉という概念というのは、これは憲法で申しますとというか、国家自体の存立目的が言わば国民の権利、自由というのを守るということが前提になって組み立てられているという、そういった概念なわけです。 したがって、この公共の福祉という概念というのは、人権を制約する場合には少なくとも内在的な制約ということでしか説明は付けていないわけですよね。これは、外在的な制約でもって人権制限できるとなると、これはつまり、特定の国家のある目的を引っ張り出してくればそれによって人権制限ができるという、そういう議論になるわけですね。そこのところをぎりぎり、そういったことは駄目だということで組み立てている理論なわけです。したがって、これに公益とか公序という民事法上あるいは刑事法上の、刑法上のそういった概念を用いて説明するとなると非常に広がってしまうわけですよね。」ということでございます。
小西洋之 今、国会図書館が読み上げてくださった公益また公序、すなわち公の秩序、公共の福祉をこの公益と公の秩序という言葉ですり替えると人権制限が限りなく広がってしまう、そのことを私は議論をさせていただきたいわけでございます。
小西しが聖帝と議論したくてもできなかったこの部分大事にする
公共の福祉の解釈論
小西洋之 では、かつて、国会図書館、公共の福祉を自民党草案十三条のように解釈した学説に対する戦後の通説的な学説からの批判について説明していただけますか。芦部教授の。
吉本紀 お答え申し上げます。
一元的外在的制約説というものでございまして、これは日本国憲法が施行された当初における通説でございまして、基本的人権は人権の外にある公共の福祉によって制約され得るというものでございます。これは、後に憲法学者の芦部信喜教授が命名されたものでございます。
この説の問題といたしまして、芦部教授は、公共の福祉の意味を公益とか公共の安寧秩序というような抽象的な最高概念としてとらえているので、法律による人権制限が容易に肯定されるおそれがあり、ひいては明治憲法における法律の留保の付いた人権保障と同じことになってしまわないかということを挙げておられます。
以上でございます。
語録
小西洋之 内閣総理大臣、安倍総理、今述べられました芦部信喜さんという憲法学者、御存じですか。
安倍晋三 私は存じ上げておりません。